小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 「流石に、この光の道まではモンスター共も襲っちゃこねぇか…」

 「俺達を神殿に入れるのが目的なんだろうな。」

 光の道を進むチーム遊戯王とブルーノ。
 此処には童実野町に現れたデュエルモンスターズのモンスターも居ない。

 只管真っ直ぐな光の道をDホイールで進むのみだ。


 「けど、やっぱり凄い大きさだねこれ…」

 「一体此れで何をしようというのかしら。」

 其れは誰もが思った事だ。
 遠くから見ても大きかった神殿だが、近づく毎にその大きさの異様さが嫌でも分る。
 エジプトのクフ王のピラミッドの更に倍はあるだろう。

 「ま、何が待ってようと面倒事起こすタコはブッ飛ばし一択だ!…おし、到着!!」

 光の道を走る事約1分。
 7人のデュエリストは、謎の神殿に到着。

 さて、この神殿で待つものとは…?











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel72
 『お約束のお約束?』











 「…取り合えずぶっちゃけて聞いて良いか?」

 「多分アタシも同じ事思ってるけど、どうぞ。」

 「入り口何処だよ?」

 行き成りだが、遊哉の言うようにこの神殿、内部に入るために入り口らしき物が見当たらないのだ。
 遊哉達が付いたのは誰が如何見ても神殿の正面であるにも関わらずだ。

 「別の入り口があるのか?」

 遊星も捜すが矢張り無い。
 此れは流石に困った物だ。
 到着しても中に入れないのでは意味が無い。


 「ハッハッハ!来やがったな緋渡遊哉!!待ってたぜぇ!!」

 其処に現れた身長も横幅もあるゴツイ大男。
 デュエルディスクを装着している辺り、デュエリストなのだろう。

 「残念だが、此処から先には進めねぇぞ?進みたきゃ俺様を倒すんだな!!」

 如何にも神殿の関係者らしい。
 が、

 「…誰だっけ?」

 「うおい!なんじゃそりゃあぁ!!」

 遊哉はまるで知らない感じ。
 男は叫びながら自分が誰なのかを明かす。

 「俺だよ俺!ハンターK様だ!!テメェが前に大会荒ししてる俺を倒したろうが!!」

 如何やらアメリカから帰国したその日に叩きのめした大会荒しだったようだ。
 其れが何ゆえこんな場所にいるのか…

 「あぁ…そう言えば居たなそんな奴が。5年前に。」

 「半年前だろぉ!?何だ5年前って!?」

 危険な発言しつつ思い出した様子。

 「で?何しに出て来た、やられ専門のモブ雑魚。時間がねぇから簡潔に述べ…無くて良いやメンドクセー。
  兎に角俺達は先に進まなきゃならねぇんだ、邪魔だから退け。もしくはその無駄にでかい身体カンナで削って小さくしろ。」

 「無茶苦茶言うな!というかテメェ、キャラ変わってないか!?」

 「知らん。俺は大概こんな感じだ!」

 ある意味での開き直りと言えるだろう。
 尤も、この忘れられた男が出てきた理由などは大概見当は付く。


 「まぁ、アレだろ?俺へのリベンジ考えてファントムに取り入ったとかその辺が関の山だろ?
  分り易い登場の仕方しやがって……まぁ良いや、要するに此処から先に進むにはテメェを倒すしかねぇんだろ?」

 「その通りよ!だが、前よりも強くなった俺に勝てるかな?」

 矢張り予想通りだった。
 そして、この男が『門番』であるという事も。

 「ハッ…笑わせんなタコ。テメェ如きが俺に勝てると思ってんのか?」

 「なに!?」

 「そんなに俺にぶったおされてぇのかよ…良いぜ相手になってやる!!」

 その事を看破し、しかし先に進む為に遊哉はお得意の挑発。
 幸い相手が単純だったため、即座に其れに乗ってきた。


 「この糞餓鬼が…叩きのめしてやる!」

 「その糞餓鬼に倒された奴が言うセリフかアホンダラ。行くぜモブ!」

 「ハンターK様だ!!」

 「知るかボケ!」


 「「デュエル!!」」


 遊哉:LP4000
 ハンターK:LP4000



 始まったデュエル。
 他のメンバーは何も言っていないが、其処は遊哉に対する信頼だ。
 現れた男程度では遊哉には勝つ事が出来ないと全員が思っていた。

 こと、一度ハンターKを撃滅したのを知っている霧恵は尚更だ。


 「先攻は貰う!…手札から『融合』発動!手札の『沼地の魔神王』と『メテオ・ドラゴン』を融合!来い『メテオ・ブラック・ドラゴン』!」
 『ガァァァ!!』
 メテオ・ブラック・ドラゴン:ATK3500


 先攻を取ったハンターは、行き成り融合で大型モンスターを出してきた。
 融合素材代替モンスターを使ったとは言え、初手からの攻撃力3500は侮れない。

 「くっくっく、ターンエンドだ!」

 尤も、その攻撃力だけで勝った気になっている辺りに『二流臭』がぷんぷんな訳なのだが。

 だが相手が悪い。
 如何に初手から攻撃力3500を出そうとも、相手は『超攻撃力馬鹿』こと遊哉。
 3500以上の攻撃力は速攻で叩き出す筈だ。

 「俺のターン!…何とまぁ…おいモブ、このデュエル――俺の勝ちだ!」

 其れを示すかのような勝利宣言。
 当然ハンターは顔をゆがめる。

 「んだとぉ?1ターンで俺様に勝つ気か?調子に乗るなよ小僧!」

 「勝つ気じゃねぇ、俺が勝つんだよ、このウスラトンカチが!
  相手フィールドにのみモンスターが存在する場合、手札の『シルバー・ドラグーン』を特殊召喚出来る!」
 シルバー・ドラグーン:ATK2000



 「でもって、チューナーモンスター『ブロンズ・ドラグーン』を通常召喚!」
 ブロンズ・ドラグーン:ATK1400


 決してビッグマウスでは無く、速攻でシンクロの準備を整える。
 そして、勝利宣言をした以上、呼ぶモンスターは決まっている。

 「レベル5のシルバー・ドラグーンに、レベル3のブロンズ・ドラグーンをチューニング!
  燃え盛る紅蓮の双眸、そして灼熱の牙よ、全てを焼き払い此処に降臨せよ!シンクロ召喚!烈火の化神『炎龍皇−アグニ』!」
 『貴様か…再び我が炎に焼かれに現れるとは…物好きな奴だ。』
 炎龍皇−アグニ:ATK2900


 呼び出した炎の龍皇。
 此れはハンターにとってはある意味でのトラウマモンスターだ。


 前に戦ったときは、このモンスターに葬られたのだから。


 「炎龍皇…!!」

 「シンクロの素材になったブロンズ・ドラグーンの効果でアグニの攻撃力は300ポイントアップし、相手の魔法効果を受けない!」
 『ふむ…良い感じだ。』
 炎龍皇−アグニ:ATK2900→3200(魔法耐性)


 「更にアグニの効果発動!手札のドラゴンを捨てその攻撃力分、自身の攻撃力をアップする!
  俺は手札の『炎龍皇−アグニ/バスター』を捨て、アグニの攻撃力を3400ポイントアップする!!」
 『自らの強化形態の力を吸収するとは如何なものか…だが、漲ってきたぞ!!』
 炎龍皇−アグニ:ATK3200→6600


 アグニの言う事は一理あるが、手札にきてしまった『/バスター』は少々困る。
 デッキに戻す手段が無ければコストにするのが一番なのだ。

 そして、遊哉のデッキならばアグニの強化コストとしても優秀である。

 「こ、攻撃力6600だとぉ!?」

 「これで、攻撃力はテメェのモンスターを超えたぜ!しかも、テメェにゃアグニの攻撃を止める手段はねぇ!!
  宣言通りにこのターンで終わりだ!焼き尽くせアグニ、『インペリアル・ストライク・バスター』!!」
 『まぁ、我が主に盾突いた己の愚かさを恨むが良い…』



 ――ゴォォォォ!!



 「うぎゃぁ!!」
 ハンターK:LP4000→900


 一気にライフを削り取る。
 そしてこのバトルが成立した以上、ハンターの負けは確定だ。

 「更にアグニの効果。戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える。
  メテオ・ブラックの攻撃力は3500……3500ポイントのダメージを喰らいやがれぇぇ!!」


 ――ゴバァァァァ!!!


 「みぎゃぁぁぁぁ!!」
 ハンターK:LP900→0


 更なる炎が放たれ、ハンターのライフは0。
 手札誘発型の効果ダメージ無効カードは持っていなかった様だ。

 見事宣言通りの1ターンキル達成である。

 「流石だな緋渡。…だが、少し加減したのか?」

 「取り合えずどうしてそう思うのか聞いて良いか遊星?」

 「攻撃力が5桁に届かなかったから。」

 「…何ぼ俺でも常時5桁叩きだしゃしねぇぞ?」

 「そうなのか…」

 しかしながら、遊哉としては比較的大人しめの攻撃力だったのか『加減した』とも思われたらしい。
 単体で13万超える攻撃力をたたき出せば、そうも思われるのも無理は無いだろう。


 「まぁ、勝ったんだからいいだろ。…さてと、こうなるとお決まりの展開が来るんだが…」

 「お決まりの展開って?」

 「ん〜〜…敵の本拠地に着いた途端に、何の脈絡も無い噛ませモブが現れるのはお約束だろ?
  で、そいつを倒すと大抵の場合は隠し扉が現れたり、内部に転送されたり…あとは…」


 ――ヴィン…


 「「「「「「!!!!?」」」」」」

 「こんな風に床に穴が開いて内部に真っ逆さまだったりな?」

 正にお約束。
 遊哉の言うように、突然床が消え全員其処から内部に向かって落下開始!


 「で、そのテンプレ的展開を自分で体験するとは流石に思わなかったけどな!」

 「なんでそんなに余裕なのよアンタはぁぁぁ!!」

 「そりゃあ、更にお約束を言うのならだ、落下しつつも全員無事に、其れも無傷で着地するのもお約束だからだ!!」

 此処まで来ると賞賛に値する。
 尤も、落下しながらもこんな会話が出来ている辺り霧恵も意外と余裕があるのかもしれない。



 ――タンッ



 「…な、無傷で着地できただろ?」

 「凄いな…」

 で、本当に無傷着地成功。
 Dホイールも壊れる事無く着地だ。


 が、他のメンバーは姿が見えない。
 遊哉と遊星、ブルーノは互いに姿が確認できるのだが…


 「遊星、無事?」

 「アキ。あぁ、俺は大丈夫だ。皆は?」

 「アタシも大丈夫。」

 「私も平気よ。」

 「俺も大丈夫だ。」

 如何やら全員無事のようだ。
 とは言え、暗くて近くに居ないと姿の確認が出来ない。

 なので全員のDホイールのライトを点灯し、周囲を照らすと…


 「なに…?」

 「ったく、此処までお約束と来たかよ…!」

 遊哉、遊星、ブルーノ。
 霧恵とシェリー。
 アキと鬼柳。


 この3組でバラバラの場所に着地、更に夫々が着地した場所は大きく離れて床が分かれている。
 その床と床の距離はとても跳び越せるものではない。

 「分断されたって事ね?」

 「みてぇだな。…ま、こうなったらしゃーねぇ!このチームで進んでくしかねぇだろ?
  多分ラスボスの部屋は1個だろうし、どの道も最終的には其処に出るはずだからな。」

 確かに其れしかないだろう。
 各チームが、仲間を信じて自分が進める道を進むより方法は無い。

 「確かに其れしか無さそうだな…OK、最終面に全員で揃って満足しようぜ!」

 そして、やる事決まれば行動も早いのがチーム遊戯王の特徴だ。
 本より目的はこの神殿の鎮圧と消滅。

 ならば、その目的を達成するだけ。
 チームが分断されようとも其れは変わらない。


 「ったりめーだ。多分ラスボスに着く前に、引き篭もりとか変態が出てくんだろうが…蹴散らすだけだ!」

 「えぇ、勿論!」

 故に迷わない。
 全員が改めてDホイールを起動し、夫々が着地した先にある通路を目指す。

 「皆、無事でな?」

 「何が待ってるか分らない…気をつけて行こう。」

 「最終面で会おうぜ!」


 「勿論…気をつけてね?」

 「必ず全員で揃いましょう。」


 「全員で揃って、そしてラスボス倒して大満足しようぜ!」

 「しばしのお別れね…最終面で!」


 そして全員同時に発進。
 進む道の先に何があるかは一切不明だが、そんな物は壁にすらならないだろう、この7人の前には。


 ただ…



 ――ギギギギギ…



 全員が居なくなったその場所は、途端に床が動き1つのフロアに変った。
 如何やら、分断するために態と『離れた地面』になっていた様だ。
 分断は成功と言ったところだろう。


 尤も、その先まで思惑通りいくかは又別問題であろうが…













 因みに…


 「く…くそ〜〜〜!!!」


 チーム遊戯王と、ブルーノが内部を進み始めた頃、遊哉に1KillされたハンターKは完全放置状態であった。
 まぁ、己の力量弁えずに牙剥いた報いだろう………合掌。


















   To Be Continued… 


-72-
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