小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 アキと鬼柳の前に現れたのは元ノーバディの首領であるアギト。

 先に進むために始まった2vs1の変則デュエル。
 先ずはアキが速攻で自身の最強モンスターである『ピュアホワイト・ローズ・ドラゴン』を召喚して先手を取った。

 だがアギトも負けずに、返しのターンでダークシンクロモンスター『不明存在−フェイスレス・ドラゴン』を召喚。

 始まって僅か3ターンでこの展開。
 アキは勿論の事だが、アギトの実力も矢張り侮れないものがある。


 「フェイスレス・ドラゴン…攻撃力3200…いいわ、本気で来なさい?」

 「ご大層なモンスターだが…精々俺を、俺達を満足させてくれよな!」

 自軍のモンスターを超えるモンスターが現れてもこの2人は恐れない。

 「ククク、もちろんだよ鬼柳京介。君達には最大の満足をお届けするよ…『絶望』と言う名の満足をね!!」

 アギトの身体からどす黒い瘴気が溢れ出し、部屋全体を包む。
 きっと、此処からが『闇のデュエル』なのだろう…











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel74
 『さぁ、満足しようぜ!』











 「此れは…闇のゲーム?」

 「此れが?…どんな物かと思ったが意外に地味だな?」
 アキ&鬼柳:LP4000
 ピュアホワイト・ローズ・ドラゴン:ATK3000



 「地味なのは見た目だけさ。このデュエルではダメージは現実になる!その恐怖を味わうと良い!」
 アギト:LP2500
 不明存在−フェイスレス・ドラゴン:ATK3200


 対峙するデュエリスト。
 そして純白の薔薇龍と顔を持たない闇の竜。

 「くくく…先ずはその龍に沈んでもらおうか!
  バトル!フェイスレス・ドラゴンでピュアホワイト・ローズ・ドラゴンに攻撃!『パラドックス・インフェルノ』!」

 攻撃力で勝るアギトは即座に攻撃を慣行。
 先ずはピュアホワイトを葬り、流れを引き寄せたいのだろう。

 「更にフェイスレスの効果!このカードの攻撃対象になったモンスターの攻撃力を半分にする!」

 「何ですって!?」
 ピュアホワイト・ローズ・ドラゴン:ATK3000→1500


 更に大ダメージを与える事が可能になる効果。
 つまり、フェイスレスの攻撃対象になった大概のモンスターは生き残る事が出来ないのだ。

 だが、アキとて簡単にやらせはしない。

 「リバース発動!トラップカード『ローズ・フォース』!
  私の場の植物族モンスターか『ローズ』と名の付くモンスターが攻撃される時に発動。
  攻撃対象になったモンスターは戦闘では破壊されず、プレイヤーへの戦闘ダメージを800ポイント軽減するわ!」

 トラップを発動し、ダメージ軽減とピュアホワイトの破壊を無効にする。
 勿論戦闘ダメージは受けるも、軽減効果で其処までは削られない。


 アキ&鬼柳:LP4000→3100


 削られたライフは僅かに900ポイント。
 だが、それでも闇の力は凄まじく、物凄い衝撃がアキと鬼柳を襲う。

 「く…」

 アキも流石には押されるが、鬼柳は小揺るぎもせず平然としている。
 此れにはアキもアギトも驚く。

 「鬼柳?」

 「僅か900ポイントとは言え…闇の力だぞ!?」

 「この程度では満足できない…こんな小鳥の囀り程度の一撃じゃあな!」


 ――轟!!


 闇の力をものともしないどころか、鬼柳からあふれ出したオーラが闇の瘴気をも押し返す。

 「俺が戦闘ダメージを受けたとき、コイツ以外の全ての手札を捨て…来い『煉獄龍 エヴィルフレア』!」
 『グオォォォォォ…!』
 煉獄龍 エヴィルフレア:ATK2700


 そして其れと同時に漆黒の炎を身に宿した龍が場に現れる。
 更にこのモンスターを特殊召喚する際に、鬼柳は他の手札を全て捨てている。
 アギトの一撃が、鬼柳の最強状態である『ハンドレス』を作り出したのだ。

 「な…そんな馬鹿な!!」

 「変則デュエルではこう言う事も可能になる。だが、この程度で驚いてくれるなよ?
 エヴィルフレアは自身の効果で特殊召喚した場合、デッキからカード1枚を選択してデッキトップに置く事が出来る。
 この効果で、俺はデッキの『インフェルニティ・デーモン』をデッキトップに置く。」

 更に抜かりなくコンボを仕込む。
 まだターンが回ってきていないにも拘らず、自分の得意な状況に持ち込むのは流石だろう。

 「鬼柳…」

 「臆するなアキ。この程度、遊哉や遊星とデュエルした時に感じた一撃と比べれば蚊に刺された程度も感じないだろ?」

 「…言われてみれば、確かにそうだわ…」

 更にはアキに『闇の力も大した事は無い』と告げる。


 その効果は絶大。
 如何に恐れは無くとも、アキの心の奥底には以前に闇の力によって負けた事がこびり付いている。
 其れが今の一撃で僅かに顔をのぞかせたのだが、鬼柳が其れを引っ込めた。

 流石にチームのリーダを勤めていただけあって仲間への気遣いも見事なものだ。


 「余計な事を…フェイスレスが戦闘ダメージを与えた事でカードを1枚ドロー。カードを3枚伏せてターンエンドだ。」

 反対にアギトは面白くない。
 今の一撃で2人の闘志を削げるかと思ったが、鬼柳にはまるで通じなくそれどころかアキも心を持ち直した。
 こうなっては2人に『闇の恐怖』を与える事は不可能だろう。

 「俺のターン。」

 そして鬼柳のターン。
 先程のアギトのターンであっと言う間にコンボに必要なカードを使えるようにした鬼柳に死角はない。
 デッキトップに置いた『インフェルニティ・デーモン』からの怒涛のコンボの幕開けだ。

 「手札が0枚で『インフェルニティ・デーモン』をドローした場合特殊召喚出来る。」
 インフェルニティ・デーモン:ATK1800


 「更に手札0枚でインフェルニティ・デーモンの特殊召喚に成功したとき、デッキから『インフェルニティ』と名の付くカードを手札に加える。
 俺はデッキから『インフェルニティ・ミラージュ』を手札に加え、そのまま通常召喚!」
 インフェルニティ・ミラージュ:DEF0


 手札0での猛攻――鬼柳の真髄である『ハンドレス』。
 それが速攻でその力を表そうとしてる…デーモンとミラージュはその先駆けだ。

 「この布陣は…!」

 「貴様には触れる事もできない無限煉獄が此れより目を覚ます。
  インフェルニティ・ミラージュは、俺の手札が0の時自身をリリースして墓地のインフェルニティ2体を呼び起こす!
  蘇れ『インフェルニティ・デーモン』『インフェルニティ・ネクロマンサー』!」
 インフェルニティ・デーモン:ATK1800
 インフェルニティ・ネクロマンサー:DEF2000


 2体目のデーモンを呼び出し、更にコンボを繋げて行く。

 「『インフェルニティ・デーモン』の効果で『インフェルニティ・ガン』を手札に加え、そのまま発動する。
  そして、『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果発動。
  手札が0枚の時、墓地から『インフェルニティ』1体を蘇らせる!来い、『インフェルニティ・リベンジャー』!」
 インフェルニティ・リベンジャー:DEF0


 そしてチューナー…無手札からのこの展開力は本当に恐ろしいものがある。

 「インフェルニティ・ネクロマンサーとインフェルニティ・デーモンに、インフェルニティ・リベンジャーをチューニング。
  光と闇、ゼロにて交わりし永劫の時、無限の煉獄より黒き不死鳥が目を覚ます。シンクロ召喚、現れろ『インフェルニティ・デス・フェニックス』!」
 『キョォォォォォ!!』
 インフェルニティ・デス・フェニックス:ATK3000


 鬼柳のデッキの中核をなすシンクロモンスターの一柱である黒い不死鳥が現れる。
 墓地の『インフェルニティ』の効果をコピーするこの不死鳥の顕現は、更なる満足への前奏曲だ。

 「デス・フェニックスは手札0枚の時、墓地の『インフェルニティ』を除外し、除外したモンスターの効果を得る。
  俺は墓地の『インフェルニティ・ネクロマンサー』を除外し、その力をデス・フェニックスに与える!」

 「インフェルニティ・ネクロマンサーの効果を得ただと!?」

 「と言う事は…」

 「その予想で当たりだ。コピーしたネクロマンサーの効果で、墓地より『インフェルニティ・リベンジャー』を呼び戻す。」
 インフェルニティ・リベンジャー:DEF0


 一度走り始めたハンドレスは止まらない。
 再びシンクロの素材がフィールドに揃う。

 「レベル7の煉獄龍 エヴィルフレアに、レベル1のインフェルニティ・リベンジャーをチューニング。
  光と闇が交わる時、その狭間…煉獄より無の支配者が現われる。シンクロ召喚!穿て、『煉獄龍 オーガ・ドラグーン』!!」
 『グオォォォォ…!』
 煉獄龍 オーガ・ドラグーン:ATK3000


 更に煉獄に潜む己のエースたる龍を呼び出す。
 レベル8で攻撃力3000のシンクロモンスターが2体――此れだけでも驚きだがまだ終わらない。

 「手札が0枚の時『インフェルニティ・ガン』を墓地に送り、墓地から『インフェルニティ』を2体まで呼び戻す。
  この効果で現れろ『インフェルニティ・デーモン』『インフェルニティ・リベンジャー』!」
 インフェルニティ・デーモン:ATK1800
 インフェルニティ・リベンジャー:DEF0


 三度揃ったシンクロ素材。
 そのレベル合計は9――最強の存在を呼ぶ準備は完了だ。

 「インフェルニティ・デーモンの効果で、デッキから『インフェルニティ・スルー』を手札に加え、カードを1枚伏せる。
  …行くぞ、レベル4のインフェルニティデーモン2体に、レベル1のインフェルニティ・リベンジャーをチューニング。
  死者と生者、煉獄にて交わる混沌の時、無限の闇より死の女神は放たれる。シンクロ召喚、『煉獄神 ナハトヴァール』!」
 『Anfang.』
 煉獄神 ナハトヴァール:ATK3000


 3体目のシンクロモンスター――煉獄を総べる絶対神の降臨。
 僅か1ターンでこの展開力……恐るべしだ。

 「馬鹿な…僅か1ターンで…!」

 「驚くのはまだ早い…ナハトの効果発動!
  ナハトがシンクロ召喚された時、相手フィールドのモンスターを全て破壊する!消えろ『煉獄の闇』!」

 更にモンスター効果でアギトのダークシンクロを滅さんとする。
 正に隙無しの見事なコンボだ。

 「調子に乗るな…トラップ発動『破壊反射鏡(デストラクトリフレクター)』!
  僕のモンスターが破壊される効果が発動したとき、その効果を無効にして相手モンスターを全て破壊する!」

 それに対し、アギトもトラップで対抗してくる。
 無論その一手は悪くないが――この状況では相手が悪い。

 「悪くない手ね。けど、無手札となった鬼柳に其れは通じないんじゃないかしら?」

 「その通りだ。オーガ・ドラグーンの効果発動!手札が0枚の時、1ターンに1度、魔法・罠カードの発動を無効にし破壊出来る。
  この効果で、貴様の『破壊反射鏡』の効果を無効にし、破壊させてもらうぜ。
  そしてこの効果を発動した場合、オーガ・ドラグーンの攻撃力はエンドフェイズまで500ポイントアップする!」
 『オォォォォォ…!』
 煉獄龍 オーガ・ドラグーン:ATK3000→3500


 破壊反射の一撃も無効にされフェイスレス・ドラゴンは霧散。
 アギトを守るモンスターは居なくなってしまった。

 「…フェイスレスの効果。フェイスレスが破壊されたとき、デッキからモンスター1体を選択して手札に加える事が出来る。」

 「種類を選ばずのサーチ…強力だが、貴様を守るモンスターはもういない…終わりだ。
  バトル、煉獄龍 オーガドラグーンでダイレクトアタック!『煉獄混沌劫火(インフェルニティ・カオス・バースト)』!!」

 攻撃力3500のオーガ・ドラグーンのダイレクトアタック。
 此れが決まればアギトのライフは0だ。

 「くくく…そのダイレクトアタックを待っていた!」

 「なに?」

 「僕がダイレクトアタックを受けるとき、手札の『不明存在−サルガッソー』を特殊召喚しバトルを終了させる!」
 不明存在−サルガッソー:DEF0


 だが、そのダイレクトアタックを逆手に取ったモンスター効果でバトルを終了し、更に場にモンスターを出現させる。

 「更にトラップ発動『不確定の宝札』!僕の場のモンスターが『不明存在』と名の付くモンスター1体のみの場合、カードを2枚ドローする!
  加えてもう1枚、トラップカード『極限への衝動』!手札を2枚捨て、攻守0の『ソウルトークン』2体を特殊召喚する!」
 ソウルトークン:DEF0(×2)


 完璧なまでのカウンターだ。
 止めとなる筈のダイレクトアタックが、逆にアギトの命を繋ぎとめたのだ。

 「一気に3体ものモンスターを揃えたか……そうでなくちゃ満足できないぜ。ターンエンド。」
 煉獄龍 オーガ・ドラグーン:ATK3500→3000


 「くっくっく…僕のターン!」

 カードをドローしたアギトから、先程よりも濃い闇の瘴気が現れる。
 其れが鬼柳の煉獄のオーラとぶつかって凄まじいスパークが起きている。
 おまけにアキが自らのサイコパワーで闇の瘴気を防いでいるせいでそちらでもスパークが。

 アキとアギトは兎も角、この面子では素で煉獄オーラを醸し出してる鬼柳が凄すぎるだろう。

 其れは兎も角としてもアギトの不気味な笑み……何かを狙っているのは間違いない。


 「くくく…フェイルレスの効果で手札に加えたモンスター…其れを見せてあげるよ!
  僕は2体のソウルトークンとサスガッソー、計3体のモンスターをリリース!」

 「3体のモンスターをリリース!?」

 「一体何を召喚しようってんだ…?」


 3体のリリースと言えば真っ先に初代決闘王である武藤遊戯が従えた『神』が思いつく。
 次いでは3体のリリースで召喚した場合に効果を発動する『ギルフォード・ザ・ライトニング』なんかだろう。
 だが、神は既にこの世界には存在しない。

 そうなれば、3体リリースで効果を発揮するモンスターとも思うが…


 「見るが良い…此れこそが『存在しえぬ者』の頂点に立つ矛盾存在!
  3体のモンスターをその身の力とし、現れよ!『存在しえぬ神−ノーバディ』!!」

 アギトが呼び出したのはその何れかでもない。
 3体のモンスターの魂が中空に吸い込まれ、其処から発生した禍々しいまでの漆黒の渦から『ソレ』は姿を現す。


 『キシャァァァァァァァァ!!』
 存在しえぬ神−ノーバディ:ATK?



 完全に姿を現したのは攻撃力不明のモンスター。
 その姿は不気味で醜悪。

 頭部は人間の頭蓋骨を思わせ眼球がなく、身体全体は皮膚を剥がされた人体の如き。
 四肢とは別に背中からも腕が生え、わき腹や胸部には頭と同じ位の巨大な目玉が現れている。


 「…此れは、何て禍々しさなの…?」

 「悪趣味にも程があるな。」

 アキと鬼柳の感想は、此れに対峙した者ならば等しく持つものであろう。
 だが、如何に醜悪な見た目であろうと其処から発せられる圧倒的なプレッシャーは否定できない。

 此れの降臨で更にアギトの瘴気が強くなった位だ。


 「このデュエルの行方は既に決した…存在しえぬ神は何人たりとも攻略なんて出来ないのだからね!」

 自信満々のアギト。

 一切の恐れも怯みもないアキと鬼柳。


 フィールド上で睨み合う最上級クラスのモンスター達。






 このデュエルの結末は果たして……?
















   To Be Continued… 






 *登場カード補足



 不明存在−サルガッソー
 レベル1    水属性
 悪魔族・効果
 自分が直接攻撃を受けるときに発動できる。
 手札のこのカードを特殊召喚してバトルフェイズを終了する。
 この方法で特殊召喚したこのカードはフィールドを離れる場合ゲームから除外される。
 このカードは除外ゾーンからの特殊召喚は出来ない。
 ATK0    DEF0



 ローズ・フォース
 通常罠
 自分フィールド上の植物族モンスター又は「ローズ」と名の付くモンスターが攻撃対象になった時に発動できる。
 攻撃対象になったモンスターはこのターン戦闘では破壊されない。
 また、このターン自分が受ける戦闘ダメージは800ポイントマイナスされる。



 破壊反射鏡
 通常罠
 相手が自分フィールド上のモンスターを破壊する効果を発動した場合に発動できる。
 その効果を無効にし、相手フィールド上のモンスターを全て破壊する。



 不確定の宝札
 通常罠
 自分フィールド上のモンスターが「不明存在」と名の付くモンスター1体のみの場合に発動できる。
 デッキからカードを2枚ドローする。


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