小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 この空間を簡潔に一言で述べるなら『宇宙』、ソレが最も適切だろう。
 あくまでソリッドヴィジョンで再現された疑似空間だが、本当に床も天上も無い空間に放り出されたような錯覚さえ覚えそうだ。


 その空間に存在するのは水と炎と闇の3体の霊魔導師と1体の聖騎士。
 神の如き姿をした大悪魔。

 そしてそれらの操り手である3人のデュエリスト。


 「まるで宇宙空間…」

 「フィールドが書き換わったというの?」

 先程のまでの気味の悪いフィールドと違う宇宙空間。
 霧恵とシェリーも少しばかり驚いている。

 「ムァッハァ〜〜!闇の住人を総べる魔帝にはソレに相応しいフィールドゥオが必要なのどぅぁ。
  小娘共ゆぉ、か〜みの如き大悪魔の力、その身ぬぃ刻み込むぐあ良い!!」











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel79
 『闇の住人を総べる者』











 「神の如き大悪魔…」

 「また、大きく出たものね…」
 霧恵&シェリー:LP4200
 聖水霊魔導師−エリア:ATK2500
 聖火霊魔導師−ヒータ:ATK4800
 聖闇霊魔導師−ダルク:ATK2800
 剣の聖騎士−セイバー:ATK3700


 「ムァッハッハ〜、まぁ、楽しみにしているが良い!」
 フレディ:LP3400
 魔帝・ムンドゥス:ATK4000


 空間が落ち着き、先ずはムンドゥスの攻守が明らかとなる。
 攻守共に4000の超大型モンスターだ。

 続いてフィールドの謎も明らかになる。

 「さぁとぅぇ…フィ〜〜ルドが何故換わったかが疑問どぅあるぉ?
  これぐぁ魔帝の第1の効果。召喚時ぬぃデッキか手札からフィールド魔法『魔帝空間−魔天』をはつどぅお出来るのダァ。
  魔帝のこの効果どぅえ、わぁたしはドゥエッキから『むぁ帝空間−魔とぅえん』を発動したのどぅぁ!」

 フィールドの変化はムンドゥスの効果だった。
 勿論これ以外の効果も持っているのは間違いない。

 「待って。其れはおかしいわ。エリアの効果でムンドゥスはこのターン効果を無効にされているはずよ?」

 だが、この展開に霧恵が異を唱える。
 確かにエリアには相手フィールドに現れたモンスターの効果を出現したターンのみ無効にする効果がある。
 この効果でムンドゥスの効果は無効になっているはずなのだ。

 「むふはははぁ!ずぁん念だったな小むすめぇ!ムンドゥスの効果は無効にすることが出来んのだぁ!
  そぉもそもにしてぇ、猪口才な魔導師如きの力どぅえ、魔帝に刃向かおうなどかぁた腹痛いわぁ!!」

 その真相はムンドゥスの第2の効果――自身の効果を無効にされない効果だ。
 相手モンスターの効果を無効にする効果を持った霧恵の3体の霊魔導師の力が及ばないモンスターという事になる。

 それでも霧恵とシェリーのフィールドには攻撃力で勝るヒータが居るが油断は禁物だろう。
 態々3体ものモンスターをリリースして召喚されたムンドゥスの力はまだ計り知れないものがある。

 「すわぁらぬぃ、ムンドゥスの効果発どぅお!1ターンに1度、相手フィールド上のモンスター1体を選択ぅ!
  すうぉしとぅぇ、選択したモンスターを同じレベルの『ダークストーカー』をデッキか手札から特殊召喚出来る!
  私は貴様等のフィールドの『精霊魔導師−エリア』を選択し、デッキからレベル8の『ダークストーカー』を特ぅぅ召喚するい!
  現れるうぉ、『ドゥアァ〜〜クスト〜カァ・ネロアンジュエルウォォ』!!」
 『………』
 ダークストーカー・ネロアンジェロ:ATK3000


 第3の効果は相手に依存するとは言え展開能力。
 特に上級モンスターが並んでいる霧恵とシェリーのコンビはムンドゥスの効果を発動するには素晴らしすぎる。

 ランクであるエクシーズは除外だが、レベル8のモンスターを3体も従えた霧恵は魅力そのもの。
 なんせ苦労せずに最上級のモンスターを呼べるのだから。

 その効果で『黒騎士』とでも言うべきモンスターを呼び出し、フレディは陣形を整える。

 「新たなモンスター…!けどその黒騎士にはエリアの力は有効!エンドフェイズまで効果を無効にさせてもらうわ!」
 『水縛の礎ぇ!』

 だが、流石にすんなりは行かせない。
 ムンドゥスには効かなかったエリアの力も新たに現れた黒騎士には有効だ。
 水の鎖が纏わり付いてその効果を無効にする。

 「まぁ、其れは仕方あるまい。どぅぁが、貴様等にはぁ更なる恐怖を見せてやるぉ!
  『むゎ帝空間−魔天』のくぉ果により、私のフィールドの『ダークストーカー』の攻撃力はぁは1000ポイントアップするぃ!
  すわらぬぃ、このカードが存在するかぎるぃムンドゥスの攻撃力は、私の場の『ダークストーカー』の攻撃力の合計分アップするぅ!」
 ダークストーカー・ネロアンジェロ:ATK3000→4000
 魔帝・ムンドゥス:ATK4000→8000


 「そんな効果が…!」

 「攻撃力4000と8000ですって…!!」

 場のダークストーカーを全体強化し、更にその力をムンドゥスに上乗せする。
 このフィールドが有る限り、ダークストーカーは低レベルでも大幅強化がされ、其れが更にムンドゥスに力を与える……恐ろしい効果だ。

 しかもムンドゥスの効果は無効にならない。
 つまり毎ターン強力な上級ダークストーカーを展開できると言う悪夢的なコンボ。
 『魔帝』と言う大仰な名は伊達では無いと言うことだろう。

 「更ぬぃ、『魔天』の中においとぅえ『ダークストーカー』と『魔帝』は相手のカード効果では破壊されぬぁい!」

 「効果破壊耐性まで付加って…やりたい放題ねまったく…」
 「『インチキ効果も大概にしろ』とはよく言ったものだわ…」

 正しくである。
 専用カードとは言え此処まで来ると反則極まりないだろう。

 「むはははは、何とどぅえも言うがいい!どの道このトゥアーンで貴様るぁはお終いドゥアァ!
  ブワトルゥ!!魔帝・ムンドゥスで、聖水霊魔導師−エリアにくぉげくぃ!!『撃滅!魔帝破壊光線んん』!!」

 強大極太の光線が発射されエリアを襲う。
 このバトルが成立すればその時点でゲームエンドとなる攻撃だ。

 だが、勿論そう簡単には終わらせない。
 トリックスターである霧恵が伏せたカードがブラフであるはずが無いのだ。

 「決着にはまだ早い!トラップ発動『精霊の呪縛結界』!
  アタシの場に『霊魔導師』が2体以上存在するとき、『霊魔導師』への攻撃を無効にデッキからカードを1枚ドローする。
  この変則デュエルでは、アタシだけじゃなくシェリーもドローする事ができるわ!」

 霊魔導師の複数展開を使った罠で攻撃をかわす。
 更に変則デュエルを生かしてシェリーの手札も増強する。

 この辺が霧恵の巧さだろう。


 「こしゃくぬあ…ならばネロアンジェロでぇエリアに攻撃するまでどぅぁ!!」

 ムンドゥスの攻撃をかわされ、今度はネロアンジェロで突撃。
 一撃必殺とは行かないが大ダメージを与える事は可能だろう。

 「その攻撃も通さない!トラップ発動『霊魔導の縛鎖』!
  アタシの場に『霊魔導師』が存在する時、相手モンスターの攻撃を無効にし、フィールド上のカード1枚を破壊する!
  この効果でアタシが破壊するのは、フィールド魔法『魔帝空間−魔天』!」

 「ぬぁにぃ!?」

 更にリバースで対抗。
 相手の攻撃を無効にし、その後で1枚のカードを破壊するトラップで『魔天』を破壊。
 此れでムンドゥスの凶悪さも消える。



 魔帝・ムンドゥス:ATK8000→4000
 ダークストーカー・ネロアンジェロ:ATK4000→3000



 このステータスならば倒すのは難しくない。
 しかも次のシェリーは、オーバーレイユニットを持ったエクシーズがある。
 逆転の可能性は十二分にあるのだ。

 「小賢しい小娘どもぐあぁ…ターンエンド。そしてヌウェロアンジェロの効果は復活するぃ!!」

 攻撃は通らずターンエンド。
 だが黒騎士の効果は復活。

 「私のターン!」

 今度はシェリーの番。
 フィールドアドを取り返した今、迷う事は何もない。

 「セイバーの効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、相手モンスター1体の攻撃力を0にするわ。
  この効果でムンドゥスの攻撃力を0にする!」

 「ぐぬぅ…」
 魔帝・ムンドゥス:ATK4000→0


 ユニット効果でムンドゥスの攻撃力を0に。
 魔帝と言えども、剣の聖騎士の効果を無効にはできないようだ。

 「更に装備魔法『アロンダイト』をセイバーに装備。
  装備モンスターが攻撃する時、相手はダメージ計算終了時まで魔法・罠カードを発動できないわ!」

 「ぬぁんだと!?」

 更に装備魔法で強化。
 此れでセイバーの攻撃は確実に通す事ができる。

 「バトル!セイバーでムンドゥスに攻撃!貫け『エクスカリバー』!!」
 『悪しき者よ、消え去れ!』


 先程のバトルのお返しとばかりにセイバーの一撃がムンドゥスを襲う。
 これまた一撃となる攻撃だ。

 アロンダイトを装備したことで重厚になった一撃は問答無用にムンドゥスを両断し滅する。

 「おのるえぇ…だがネロアンジェロの効果があるぅ!!
  ネロアンジェロが存在する場合ぃ、1ターンに1度『魔帝』又は『ダークストーカー』が戦闘を行う事によって発生する私へのダメージを0にするぅ!」

 が、戦闘ダメージは黒騎士の効果で防ぐ。
 更に、


 「ムンドゥスの効果はつどぅお!
  ムンドゥスが相手によって破壊されたとき、私のフィールド上のカードを全て破壊しぃ、デッキか手札から『魔帝・ムンドゥス2nd』を特殊召喚するぃ!
  私はぁ、この効果どぅえぇデッキから『魔帝・ムンドゥス2nd』を特殊召喚んん!!」
 『ムオォォォォォォ…!』
 魔帝・ムンドゥス2nd:ATK5000


 ムンドゥスの効果で、第二形態とも言える『魔帝』を呼び出す。
 その攻撃力は固定値では最大の5000!

 しかもムンドゥスが黒騎士を道連れにしたが逆に有利に作用している。
 この攻撃力5000を超えるモンスターは霧恵とシェリーの場には無い。
 モンスターの総数こそ減ったが、これでこのターンはこれ以上の攻撃は無いだろう。

 「魔帝の第二形態…」

 「如何にむぉ!そしてムンドゥス2ndの効果発動!このカードの特殊召喚に成功したときデッキから『魔帝空間−獄炎』を発動する!
  すうぉして、2ndの効果も無効にはならない!」

 第二形態への変化と共にフィールドが再び入れ替わる。
 今度は灼熱の火山の頂上らしい。

 魔帝は火山のど真ん中――溶岩の中に仁王立ちだ。

 「やってくれるわね。カードを1枚伏せてターンエンドよ。」

 攻撃できないのはどうしようもない。
 此処はシェリーのリバース1で防ぐしかないだろう。

 「私のトゥアァァァン!先ずはフィールド魔法『魔天空間−獄炎』の効果ぁ!
  私の場に『ムンドゥス』と名の付くモンスターが存在する時、相手フィールドのモンスターを全て破壊するぃ!」

 「「何ですって!?」」

 更なる破壊への一手。
 シェリーのリバースは破壊無効効果ではないのか発動しない。

 魔帝第二形態の一撃は3体の霊魔導師と、セイバーをいとも簡単に消滅させてしまった…


 「アタシの霊魔導師とシェリーの聖騎士が…」

 「一撃で…」

 正にインチキ効果だ。
 魔帝が居る限り、この獄炎ではモンスターは殆ど存在できない事になる。

 「更に2ndはぁ、相手モンスターが破壊されるたびに攻撃力が600ポイントアップするぃ!
  このターンに破壊しトゥぁ、お前等のモンスターはぐうぉ計4体うぃ!
  よってムンドゥス2ndの攻撃力は2400ポイントアップ!!」
 『ムォォォォォ!!!』
 魔帝・ムンドゥス2nd:ATK5000→7400


 更に破壊をトリガーにしたバンプアップ。
 何処までもふざけた効果だ。

 「そして2ndは、相手のカード効果を受け付けぬぁい!
  貴様のそのカードがなんであろうとも、おそるるに足りぬわぁ!
  ブワァトルゥゥ!!魔帝・ムンドゥス2ndで小娘どもにドゥアイレクトアトゥアックゥゥ!!『魔帝滅殺爆裂拳』!!」

 「く…トラップ発動『和睦の使者』!此れでこのターンに受ける戦闘ダメージを全て0にするわ!」

 又しても防ぐ。
 互いに一撃必殺の攻撃を防ぎ続ける腕前は凄いものがある。

 だが、防いだと言えどもピンチである事は変わらない。
 先程のターンまでと違って、霧恵とシェリーの場にモンスターは無い。

 逆にフレディの場には7400もの攻撃力を備えたモンスターが居る。
 ライフは互いにたくさん有るとは言え、この状況は余りにも不利だ。

 「此れをも防ぐくぁ…ターンエンドどぅぁ…」

 「アタシの…ターン!」

 この霧恵のターンで状況を整えなければそのままずるずるとやられてしまうだろう。
 と、その時…


 ――キィィィン…


 不思議な音が聞こえてきた。
 其れはただのノイズにしか聞こえないが、フレディにはそうではなかったらしい。

 「ほう…小娘共、い〜い事を教えてやろう。
  今しがた、お前達の仲間ぐぁ、アギトを倒して先に進んだらすぃ…どぅおおやら全滅だけは免れたようどぅあな?」

 そのノイズは恐らく雪花とフレディの間で決められたサインなのだろう。
 今のはフレディの言う事から、アギトの敗北を知らせるもの。

 霧恵とシェリーも仲間が無事で、しかも先に進んだと言う事に正直に安堵する。

 「ふん、それにしてむぉ侵入者を始末できんとは所詮は操り人形と言うことくぁ?
  まぁ、くずはくずるあぁしく闇への供物とぬぁ〜るが良い役立たずのでぇきそこないめぇ!」

 が、このフレディの一言に2人の怒りが一気に高まった。



 当然だ。
 自分達で無理やりに連れて来て洗脳したくせに『クズ』『役立たず』『出来損ない』とは到底聞き流せるものではない。
 如何にアギトがトンでもないロクデナシだとしてもだ。

 「どっちがクズよこの外道が…!」

 「貴方は人としての心を無くしている様ね…」

 「だったらどうしとぅあぁ?人としての心ぬぁど無くてもむわるで問題ない。
  大体にしてぇ如何吠えようとも、貴様等はぁ此処で敗北の闇に沈む運命どぅあ!」

 フレディは聞き入れない。
 実に良い感じに外道状態に成っているようだ。

 「敗北の闇に沈むのはどっちかしらね…」

 霧恵の声が僅かに低くなる。
 其れは本気で怒っている証。

 遊哉に言わせれば『本気で怒った霧恵ほど怖いものは無い』と言うあれだ。


 「覚悟は良いよね外道変人?このターンでアンタを敗北の冥府に叩き落してあげるわ!」

 怒りによって『最強モード』へと変わった霧恵。
 デュエルの終焉は近い…


















   To Be Continued… 






 *登場カード補足



 アロンダイト
 装備魔法
 「聖騎士」と名の付いたモンスターにのみ装備出来る。
 装備モンスターが攻撃する場合、相手はダメージ計算終了まで魔法・罠カードを発動できない。



 魔帝空間−魔天
 フィールド魔法
 1自分フィールド上の「ダークストーカー」と名の付くモンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。
 又、「魔帝」と名の付くモンスターの攻撃力は自分フィールド上に表側表示で存在する
 「ダークストーカー」と名の付くモンスターの攻撃力の合計値分アップする。
 このカードが表側表示で存在する限り、自分フィールド上の「魔帝」および「ダークストーカー」と名の付くモンスターは相手のカード効果では破壊されない。



 魔帝空間−獄炎
 フィールド魔法
 自分フィールド上に「ムンドゥス」と名の付くモンスターが表側表示で存在する場合、1ターンに1度相手フィールド上のモンスターを全て破壊できる。
 また、戦闘で破壊された「ダークストーカー」と名の付くモンスターはエンドフェイズに自分フィールド上に特殊召喚される。(最大2体まで)



 不屈の精神
 通常罠
 エンドフェイズまで自分フィールド上に表側表示で存在する戦士族モンスターは戦闘では破壊されない。
 また、このターン自分の戦士族モンスターが戦闘を行うことで発生する戦闘ダメージは相手も受ける。



 精霊の呪縛結界
 通常罠
 自分フィールド上に「霊魔導師」と名の付くモンスターが2体以上表側表示で存在する場合に「霊魔導師」が攻撃対象になった時に発動できる。
 その攻撃を無効にし、自分はデッキからカードを1枚ドローする。



 霊魔導の縛鎖
 通常罠
 自分フィールド上に「霊魔導師」と名の付くモンスターが表側表示で存在し、相手が攻撃宣言をした時に発動できる。
 その攻撃を無効にし、フィールド上のカード1枚を破壊する。

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