五、竜の子
「ナツ、レーナ、見て見て!フェアリーテイルのマーク入れてもらっちゃった!」
「あっそう。よかったな、ルイージ」
「ぐー、っププ」
「ルーシィよ!っていうかレーナ、あんた今寝ながら笑ったでしょ!」
「何言ってんのルーシィ。寝ながら笑えるわけないじゃん。バカなの?」
「ぐ……っふ」
「笑った!今絶対笑った!!」
「ねぇ、父ちゃんまだ帰ってこないの?」
ルーシィが騒いでる中、ナツはマスターに話しかけるロメオを見る。
「くどいぞロメオ。魔道士の息子なら親父を信じて大人しく家で待っておれ」
「だって、三日で帰ってくるって言ったのに、もう一週間だよ!」
「確か、ハコベ山じゃったか」
「そんなに遠くないじゃないか、探しに行ってくれよ!」
しかしマスターはそれを厳しく断る。
ロメオはマスターを殴り、出て行ってしまった。
「厳しいのね」
「あぁはいっても、マスターも心配しているのよ」
その時、バキッという音がし、リクエストボードがナツの拳によって陥没していた。
「レーナ、ハッピー」
「アイ」
「ふあぁ」
ナツは荷物を持ち、フェアリーテイルを後にする。
ハッピーもその後に続き、レーナは眠そうにあくびをしながら猫背気味で出て行った。
「どうしちゃったの?あいつ」
「ナツも、ロメオ君と同じだから」
「え?」
「ナツのお父さんも、出て行ったきり帰ってこなかったの」
ナツはドラゴンのイグニールに育てられた。しかし777年7月7日、突然、その姿を消して、戻っては来なかった。
「ナツは、いつかイグニールと会えるのを楽しみにしてるの」
そういうところが可愛いわよね、とミラジェーンは笑う。
「ん?だったらレーナは?どうしてナツと一緒に?」
少ししか一緒にいなかったが、レーナはちょっとやそっとじゃ動かない。基本寝ている。
「もしかして、レーナもナツみたいに親を……」
ルーシィはしんみりと俯く。
寝てばかりいるダメな子だと思ったけど、実は苦しい過去が――
「ううん。レーナは仕事もせずに寝てばかりいるから、マスターの堪忍袋の緒が切れて、行動力のあるナツと一緒にいさせているのよ」
「やっぱり寝てんのか!!」
しんみりして損した!と憤慨する傍らで、ミラジェーンとエルフマンは顔を見合わせ、視線を下げた。
「本当は外に出しちゃいけないんだけど……(ボソ)」
「え?何か言いました?」
「ううん。何でもない」
ミラジェーンはいつもの笑顔を浮かべ、皿拭きに戻った。
〜あとがき〜
三人称、難しいです。
ハコベ山で、ちょっとオリジナル展開入れます。結果は変わりませんが。
次回。レーナの能力が明らかに!……なるかもしれない!(そこまでいかないかもしれない!)