小説『告白「いじめ」』
作者:蒼月純()

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私に密告してきた彼女から、曖昧だけど悪口の内容がまとめられたメールがきた。

そして帰宅して、母にその話をした。
当人である私より泣きそうだったので

「私、そんなにヤワじゃないけど……」

「うん。わかってるよ。
 あのころ(小学校や中学校)に比べれば逞しいし。
 だけど……なんか寂しいじゃない」

母の心痛は私の人間関係と兄の独身生活だと思うと、どうにかしてあげたい限りだ。

「でもさ、考えてみてよ。人間同士好き嫌いなんて当たり前じゃない。
 だって感情があるんだもの。それに性格の相性だってあるんだから。
 1人の人間に100の性格があったとして、90はイヤな性格だよ。
 残りの10を大事にして、イヤな90をどれだけ受け容れてあげれるがか人間関係の鍵だよ」

「そうだね……」

「そうだよ。赦せないことがいっぱいあって当然。価値観が違うんだもん」

「うん、よくわかってるね」

母の言葉に苦笑した。

「イヤな経験、いっぱいしたからさ。わかるよ」

そこで母はふっと笑った。

「それにしてもその子……周囲の友だちに迷惑かけて馬鹿ね。
 純の悪口言って、周囲の子に自分の不満をぶちまけて、宥めてもらうなんて……
 その子の一人よがりもいいとこだわ。
 だって実際その子と密告してきた子だけで、他の子は純の悪口に賛同しないじゃない。」

「そうだね」

「その密告してきた子も馬鹿ね。自分で自分の首を一人で締め上げるなんて。
 笑えないわ。純の言うとおりなのにね。純のこと嫌いになっちゃえばよかったのに」

「そうだね」

「でもきっとその子には密告したことで、今以上の罰がどこかで下されるのね」
 
そのあとは2人でテレビ見て、笑い転げた。



夕方ごろ、地元を離れた親友と電話して泣いた。

「『死ね』って言葉の残酷性もわからないなんて……日本語を学んでる人間として失格だ」

――わかるよ、純。ソイツは馬鹿だよ。
  ソイツを気にしないで、純。私は貴女のこと好きだよ。
  はっきりしてて、真面目で正義感の強い純が好きだよ。
  だから、他人に流されないでしっかりしていられるんだからさ。
  そんな嫉妬するようなヤツに心かける分が勿体無いよ。

そうやって電話口で宥めてくれた彼女の声が、たまらなくて……

「ありがとう」

――いいよ。ホントにソイツ馬鹿なんだから。
  自分が質問したことに純が丁寧に説明して、それを悪口の種にするなんてね。
  馬鹿馬鹿しい。知識が足りないことにいい加減気づかないんだね。
  基礎を知らないなら、なにごとも基礎からちゃんと予習復習するわよ。

「そうだね」

――なんのために大学いってるのかね。商業だったならそのまま就職すればよかったのに。
  純、そんなヤツ気にする必要ないよ。貴女の良さを知ってる人は他にたくさんいるんだから。

「うん。ホントにありがとう」

――いいよ。また冬休みね。

「うん」

彼女の言葉にどれだけ助けられたか。
ともかく多少なりショックだったろう。

だが同時に悪口を言うヤツも、ソイツに付き合ってるヤツらも、私に密告した彼女も不憫だった。
人の欠点を見抜くすべしかないんだ。不満をさらけだす場所も満足にないんだ。悲しいヤツらだ。
人の欠点をいかに受け容れられるのかが重要なのか……それを理解していない。
不満を信頼をおけれる人間以外に話す危険性を知らないんだ。

だからといって、いじめをただあるべきものと認めたくない。
 
それを経験して変わるべきなのだ。変わらなければ何も始まらないから。
意識を、態度を、習慣を、人格を…………。

いじめる側にも、いじめられる側にも何らかの否がある。


<Fin>

→<あとがき>

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