「なんでもないっス……」
銃を構えた佐山を一瞬睨んだものの、ギラリと光る二つの目を見て即座にやめた。
「ならいいんだ」
佐山はようやく颯太から銃口を反らし、ハンマーを起こして入り口の方へと向きを戻した。
颯太の中で、川口と佐山は暴力的な人間とインプットされてしまった。
叱るべきところは間違えていないものの、それを正すための行為が行き過ぎたものだったせいだろう。
その後は大きな騒動は起きなかった。
佐山が彼女から貰ったマグカップを、颯太が手を滑らせて落とし、粉々に砕くという事件があった程度だ。
勿論颯太は怒り狂った佐山に、気絶するまでボコボコに殴られたのは言うまでもないが。