小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 私はメデューサ、怪物の載っている書物とかでは人間年齢だと四十歳に見られるからメデューサの娘と考えてもらっても良い。私の特殊能力は生まれつきなのでどうしようもない、私と目を合わせると石化してしまうので友達は作れません。
≪僕がいるよ〜≫
「机さん」
 妄想と取ってもらっても構わないけど私には机さんの声が聞こえる、机さんがいるのだ。妄想を続けるメデューサは寂しさも感じない幸せだと思い込んでいるところである。

「きみはいつも独りだけど友達いないのか〜?」
 さとるが悪気なくメデューサに質問する。
「うわああああああ!!」
 せっかく仮想世界で満足しようとしているのに(虚しい満足感だが)現実世界に戻されて悲しい気持ちになったメデューサであった。

 さとるはメデューサの能力を知らないのか軽い気持ちでメデューサに聞く。
「僕と友達にならない?」
「え……!?」
 メデューサは能力が怖がられていて誰もに近づかれることさえほぼなかったので、最初は聞き違いかと思った。
「転校してきて間もないだろ、僕は。いいかい!?」
 さとるがフレンドリーに誘うと蛇頭娘ちゃん(メデューサのこと)が嬉しさからか体を震わせていた。
(友達……生きてる友達……)
 喜びのあまり感涙しているメデューサ、この喜びをどう表現するか考えているようである。
「……赤飯!! お赤飯……!!」
 メデューサが喜びのあまり、万歳で嬉しさを表現している。
「え、何かおめでたいことあった!?」
 メデューサの尋常じゃない喜びようにビックリしたさとる。彼女が過ごしてきた無為の日常を知っていたら無理のない喜びようであった。

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