こちら、いつもの日常。
「あ、雨! どうしよう、、傘持ってないし濡れるっ」
なんてことだろう、こういうときに限ってふられるとは…
「傘、入れてあげましょうか?」
黒い傘をさした男の人がいつの間にか目の前にいた。顔は、傘で見えない。
「あ。ありがとうございま…」
その人の傘に入ろうとした。
が、なぜかその人は柔らかな物腰であたしをかわした…。
え?ちょ…。
「な、ちょ、まさか…?」
「よぉ」
黒い傘から見えたいたずらな笑みの矢木矢さん。
そう、矢木矢さん。
嗚呼なんていやなタイミングだろうか。
さっきの手紙の内容が頭をかする。何度も、何度も。いっせいにたくさん。
今は、彼に会いたくなかった。
この気持ちは罪悪感からなのだろう。彼の秘密を知ってしまったことへの。
「なぁ、おまえさ」
「はい」
「あの机の上のアルバム、見た?」
「え、えぇ。すみません勝手に見ちゃって」
「まぁいいけど」
「はぁ…よかった。…」