小説『獣医禁書』
作者:深口侯人()

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―――とにもかくにも、以上のような悪い意味でのドラマチックな展開となった悪夢の3か月が終わりました。
どうですか、この院長…。
最悪っぷりは満足していただけました?
もうそろそろエピソードが出尽くしたと思うでしょ?
でもね…、まだまだあるんですよ!!
ここまできたらこの後も是非見ていってください。
ちょっと一休みしますか?
必要無い?
じゃあ早速続きといきましょう!!―――――


7月。
世間ではボーナスを貰ってウキウキ気分の会社員も多い時期かと思うが、我が病院ではそんな浮かれ気分な奴は存在しない。
何故なら、我が病院ではボーナスのボの字も出てこなかったからだ。
聞くところによると、ボーナスは事業主が従業員の士気を上げるためや日常業務の苦労に報いるために出すものだそうで、そんな無駄な出費を我が院長が行うはずがないのだ。
経理の事は良く分からないが、従業員のボーナスは必要経費ということで、割安で支給できたりはしないのか?
必要経費として支給しても余分な出費となり、利益が減るのが嫌で出さないだけなのか?
いずれにしても、毎年海外旅行を楽しむだの、自家用車3台保有(“往診車”を含む)だの、休日はいつもお出かけして外食だのと豪遊するようなお金や儲けがあるのなら、少しは従業員に還元してくれても良いのではないだろうか?
従業員も過酷な労働環境で働き、ボーナスや各種手当ても貰えず、ミスを責められては懲罰金を徴収されるばかりではやりきれないだろう。

従業員の皆さんはとても言えないと思うので、もはや無関係の僕が代わりに言おう。
『院長、アンタ従業員からさんざん搾取して儲かってんだろ!?ちっとは還元しろよ!!それともなにか?儲けは全部自分の力か?自分独りで病院やれてると思ってんのか?従業員は雇ってやってる感覚か?ふざけんな!!そんな扱いをいつまでも続けてるとみんな病院辞めるぞ!!』
ふーっ、ちょっとスッキリ!!
当時言いたかった事言ったし、最後の一文は最終的に実現するしね…、フフフ。

まぁそんなこんなで、テンションが上がらないまま暑い夏が始まるわけだが、病院では(特に僕にとって)身も凍えるような恐ろしい事態が待ち構えていた…。

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