小説『獣医禁書』
作者:深口侯人()

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―――というわけで、早速第二部・地獄の病院勤務編にいこうと思うが、最初に断っておく。

『この作品はフィクションであり、ここに登場する人物・病院は実物を参考に作られた架空の存在で、実在のものとは一切関係ありません。』

特に院長。
こいつは僕の実体験・院長を元に、友達の話の中に出てくる院長・先輩・お局看護師のいただけない部分を切り取ってプラスした史上最悪の存在だ。
実体験・院長で十分最悪でしたが、ついでなのでさらに悪くしてみました(笑)。
(最悪の事態は悪化する)、マーフィーの法則でありましたね。

ということで、本書の正しい読み方は「この最悪院長は次にどんな最低アクションをしてくれるんだろう?」と想像して楽しみながら読むこと。
ジャンルはブラックユーモア、いわゆる不謹慎な笑いを楽しむ作品です。
それと、ついでに知られざる動物病院の実態や裏側も紹介しますが、全ての動物病院でここに挙げたような行為が行われているわけではありません。あしからず。

一時期、自殺の一歩手前まで追い込まれましたが、笑いにつながれば結果オーライ。
ほろ苦い大人の笑いを楽しんでください。
あと、獣医さんに失望したくないという方はこの先は読まないでね。
きっと夢が壊れます。

それでは、「夢が壊れてもいいから現実が知りたい!!」というチャレンジャーなあなたや「人の不幸は蜜の味。」と言って憚らない正直なあなたは続きをどうぞ。 ―――――


勤務することになった動物病院は、街中にある自宅併設型の個人病院。
1階が病院、2階が院長の自宅だ。
診察室は2つで動物病院としては普通か少し小さめの規模。
院長、勤務医1名、動物看護師4名で構成される小企業だ。
診察時間は一般的な動物病院と同じで9時―12時と15時―20時で、休診日は木曜日、患畜(病気の動物)は何でも見ることにはなっていたが、やはり犬猫が多かった。
大学在学中に1週間ほど見学に通い、診療風景なども見させてもらった。
院長は中年の恰幅の良い温和な感じの人で、従業員たちも仲が良さそうに見えた。
喜んではいけないが、患畜もそれなりに来院するので、良い勉強の場になると思えた。
働く場所はこの病院しかないと思った。
文末は別の意味での過去形です。
理由はすぐに分かります。

臨床獣医の世界では、いずれ開業する予定の地区では修行しない方が良いという暗黙の了解があるらしく、地元を離れて隣県などで研修することが多い。
僕の勤める病院も地元から離れており、見知らぬ土地で独り暮らしとなる。
周りには大学時代の友人も居ないが、最近の通信手段は発達しているので、『距離が離れていても連絡ならいつでも取り合える。』と思っていた。
文末は…以下省略。

ともかく最初に書いた通り、勤務初日の僕の心は躍っていた。
良い職場環境、やりたかった仕事、経済的な親からの自立。
ここまでは順風満帆な人生だ。
この頃は幸せだったなぁ…、それに比べて今は…。
幸せって何だっけ?
少なくとも(ポン酢しょう油がある家)ではない。

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