小説『獣医禁書』
作者:深口侯人()

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後日談。
その後、病院はどうなったのか?
中堅看護師からの情報によると、獣医師を急募するものの、そう簡単に応募が来るわけもなく、”汚物”1人での診療が続いたらしい。(あれ?おかしいな…、僕の替わりはいくらでもいるんじゃなかったのかな(笑)。)
最初は僕のクズ人間ぶりをネタにしたベテラン看護師の媚売りで保たれていた”汚物”の機嫌も、数年ぶりに訪れた大忙しの診療三昧のせいですぐに制御できなくなり、病院内には大嵐が吹き荒れたそうだ。
今までなら、僕に当たって大抵は勢力が弱まっていたのに、今度からは看護師たちに直撃するようになったので堪ったものではなかったらしく、結局、残った看護師たちも皆その後しばらくしてバタバタと辞めてしまったとの事だ。(だから傲慢な態度を続けていると独りになっちゃうって言ったのに…(笑)。)
…今の僕は、自分で問題を引き起こしておいて”汚物”が大変な状況になるのを楽しんでいる悪い奴に思われているかもしれないが、何と思われようと一向に構わない!!
僕も人間だ…、憎い相手の、しかも半分は自業自得の不幸ぐらいは楽しませてもらう!!
ヤツはそれだけの事を僕にしてきたのだ!!!
もっとも、そんな個人的な復讐の巻き添えになった看護師たち、特に何の罪もない新人看護師にはちょっと罪悪感を覚えるが…。
まぁ、今はみんな別の病院に勤めていたり、別の仕事についているそうで、一件落着だよね?

“汚物”のその後は、情報源の中堅看護師が辞めてしまったので詳細は分からないが、ホームページがたまに更新されているので病院は問題なく存続しているようだ。
恐らく、バイトを増員するとか、他の病院に応援を頼むとかして急場をしのぎ、新しい正社員の看護師や獣医師が入ってくるまで耐えたのだろう。
今では、スタッフ紹介欄に新しい獣医師や看護師が名前を連ねているくらいだ。
頼れる人間が居なくても”汚物”の傍若無人ぶりに耐えられるとは驚きだが、よっぽど忍耐強い人材ばかりだったのか。
それとも、”汚物”が態度を改めでもしたのだろうか。
後者であれば、僕のした事も少しは意義があったという事になるので嬉しいが、たまに“従業員急募”のお知らせがトップページに掲載されるのが気になるところではある。
それはそうと、ホームページの院長紹介欄には”汚物”の写真が掲載されているのだが、その写真というのが、”汚物”が愛犬を抱いてニヤけているというもので、まぁ気持ち悪い。
以前、僕が患畜を世話のために抱き上げていた時、”汚物”に「君は本当に動物と戯れる姿が似合んなぁ〜(笑)。」と言われた事があったが、こんな奴に言われたのかと思うとゾッとする。
まぁ、それはともかく、病院のその後はそんな感じで、潰れるまではいかなかったが多少は大変な目にあったみたいなので、これで少しは憂さも晴れたというものだ。

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