◇4◇
地区予選決勝戦 52―53 残り五秒
慎重にパスを回しゴール下へとパスを繋いで行く。
「紫信!」
「弥生!後はお願い!」
ボールを貰いつつ膝を曲げる、手首は柔らかく。
約五年ずっとやってきたモーション。
身体のバネを使い跳ぶ
誰も追いついては来なかった
シュッ ビーーーーーーー
ボールを放ったと同時にブザーが鳴る。
ガコン
ボールがゴールの縁に当たりクルクルと回りだした。
入れ、入れ!お願い!
タンタンタンタン
ボールが落下し床で跳ねる
ピッピーーーーーーー
審判のホイッスルが鳴る
勝敗が、決した。
「そんなに気を落とさないで、弥生」
結果は52―53 最後のシュートは入らず私たちは予選敗退となった。
「仕方ないよ、あの場面で緊張しない方がおかしいんだよ」
そうだ、私はあの場面で緊張したのだ、プレッシャーに押し潰されたのだ。
「紫信」
「何?弥生」
「あたしバスケやめるよ」
続けられるわけがない
「え」
皆にもひどく責められた
「私はもうバスケはしない」
なぜだろうあれだけ打ちこんで来た事なのに、涙のひとつも出ない
「そっか、じゃああたしもやめる。これから二人で受験勉強でもしようか」
「うん、ありがとう」
堕ちてゆくのはどちらの天使か