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「ふぅ・・・やっと着いた」
白い壁を見上げながら俺はため息を吐いた
「心葉、若菜おばさんの病室ってどこにあるの?」
そう聞いてきたのは俺の幼馴染の砂山來未だ。
「302号室だよ」
若菜おばさんというのは俺の母さんで、今は入院中だ。
「三階だね、はやくいこっ」
入院の原因は盲腸、大したことはなかったらしい。
「うぅ〜、さむい」
落ち葉をカラカラと鳴らしながら冷たい風が通り過ぎて行った。
「まったく、ついこの間までは暑い暑いって言ってたのにな」
玄関の自動ドアが開き病院の中に入ると暖かい風が出迎えてくれた。
「ここは天国みたいにあったかいね」
「実際に行った人が多いからかもな」
「ちょっと、そういうこと言わないでよ」
ボタンを押しエレベーターの中に入る。
「男子はいいよねー長ズボンだから寒くなくて」
「そのかわり夏は涼しいだろ」
「冷えは女の敵なんだよ」
三階に着きエレベーターが開く。
「まぁ、制服だからそんなこと言ってたって仕方ないんだけどね」
そんなことを言い合っているうちに302号室に着いた。『如月若菜』と書かれた
ネームプレートを見てドアをノックすると「どうぞ」という母さんの声が聞こえてきた。
ドアを開けると母さんはベッドの上から窓の外を眺めていた。
「身体の調子はどう、母さん」
「こんにちは、若菜おばさん」
「あら來未ちゃん来てくれたの、ありがとうね。身体の方はもうすっかりよくなったわ。
手術ももう終わってるからもうすぐ退院できると思うわ」
「お元気そうでよかったです」
ふと病室内に違和感がして室内を見渡す。
「・・・そうか、花か」
「え?どうしたの心葉?」
ベッドの横、窓側にある棚の上の花瓶に花が挿さっている
「いや、この間来たときは花なんてなかったなって思ってな。誰か来たの?」
すると母さんは突然笑い出した
「そうそう、ふふふ。一昨日叔父さんが来たのよ。
とっても心配していたみたいだけど母さんの姿を見てとっても驚いていたわ、ふふふ」
その時の叔父さんがよっぽどおかしかったのだろう、ひと呼吸おいてから母さんはそう言った。
「一昨日か、ということは・・・」
言いながら棚の前まで行く
「やっぱり、俺水換えてくるよ」
花瓶を持ってベッドの横を通る時に窓の外、さっき母さんが見ていた所をみると、
ベンチに一人の女性が座っていた