◇ ◇ ◇
「あの女の人・・・」
そう言って窓の外を見る若菜おばさん
「あの女の人いつもあそこに座っているの」
そう言われて窓の外に目を向けると綺麗な女性がベンチに座っていた
「ずっとあそこに座ってあんなふうに悲しそうな顔をしているのよ」
言われてみると確かに悲しそうな顔をしている
「気になって仕方がないからいつもここから見守っているの」
「それで私たちが来たとき窓の外を見ていたんですか」
「そうなのよ。私ね、あの女の人にはこの病院に入院している恋人がいるんじゃないかって思うのよ」
・・・それはドラマの見すぎだと思いますけどねぇ・・・
「それはそうと來未ちゃん、心葉とはどこまで進展したの?」
「えぇ!いや、その、あの、べ、別にし、進展も何も私たちはそんな関係じゃ
「でも好きなんでしょう?」
「!・・・・・・・・・はい・・・」
顔が熱い、きっと真っ赤になっているだろう
「駄目よ、ちゃんと気持ちは伝えなくちゃ。あの子頭の回転は速いくせに、そういうことは鈍いんだから」
それは知っていますよ若菜おばさん・・・そのせいで中学三年の時どれだけ苦労したか
「私に何にも言わずに頭のいい進学校に行くことにして」
「? どうしたの來未ちゃん」
「い、いえ何でもないです」
つい思っていたことを呟いてしまった
そうこう言っている内に心葉が返って来た
「あら、もう帰って来たの、もっとゆっくりでもよかったのに」
「なんだよ、俺が帰って来ちゃまずかったのかよ」
「う、ううん。そんなことないよ」
これ以上あの話を続けたくなかったから、正直帰ってきてくれて助かった。