◇ ◇ ◇
「まったく、どうしてこの病院はこんなところに建ってるんだよ」
昨日と同じ場所でため息を吐いた。
この病院は小高い丘の上に建っていて着くまでに結構な距離の坂道があるのだ。
「さてと」
一息おいて病院に入ろうとしたところで、
遠くのベンチに昨日と同じ女性が座っていることに気が付いた。
「ほんとにどうしたものかな」
ネームプレートに『結城弥生』と書かれた病室の前に俺は立っている。
写真を見るからにこの病室の人だとは思うんだけど・・・・
「知らない女の人の病室に入っていくのはなぁ〜」
よし、ちょっと入り方を考えてみよう
パターン1『陽気な男』
コンコン
「こんにちは―、落としも拾ったみたいなんで届けに来ました」
うーんこれだと相手がおとなしい人の場合怖がられるかな
パターン2『謙虚な男』
コンコン
「あの、すみません落し物を拾ったかもしれませんので届けに来ました」
うーんなんかちょっとうっとうしいかな
パター
「あら、あなた結城さんのお見舞い?」
「!?」
ガタン しまった!びっくりして腕がドアに!
どうやら通りすがりの看護師さんに声をかけられたようだ
「誰!?」
という声が病室から響く
「結城さんお見舞いに来る人全然いないから気になっていたのよ」
こうなったらもう入るしかないか、はぁ。
「は、はぁ。そ、そうなんですか」
声をかけてきた看護師さんにそう言いながら俺はおずおずと病室の中に入って行った。