小説『ゼロの使い魔 世界を渡る転生者【R−18】』
作者:上平 英(小説家になろう)

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『第15話 原作3巻開始! キュルケの悩み と 学院脅迫』





「はい、ダーリン。あ〜ん」

「ああ。あ〜ん。美味いな…」

 現在、俺とキュルケはトリステイン自慢の食堂で一緒に食事を摂っていた。

 まあ、いつもなら俺は使い魔だから外で食うはずだったのだが、アルビオンから帰ってきて急に優しくなったルイズが才人を食堂で生徒たちと同じように食事させたからだ。

 そのせい……いや、おかげで俺はキュルケと朝食を共に出来ているわけだが、キュルケの元取り巻き連中が殺気立っていた。

 そして、キュルケのテンションがアルビオンから帰ってきてから、おかしい。おそらく放って置かれて寂しかったんだと思う。今まで召喚されてからずっと一緒に居たからな。あと、それだけではなくて、キュルケは『微熱』の二つ名が『灼熱』に変わるんじゃないかと言うほど、俺との恋に燃え上がっているようで、日常生活でも献身的に尽くしてくれるし、夜は業火のごとく燃え上がってくれる。

 え〜と、なんていうか、さすがはキュルケだったな。

 一度燃え上がればどこまでも燃える炎で、フェラなど様々な奉仕を覚えていき熟練の娼婦のような腰技などを使ってくるから最高で、闇夜の中、蝋燭の明かりに照らされて輝く褐色の肌に、まるで発情した獣のように精液を求める雌の表情に、俺も心の底から惚れさせられたな。

 今も椅子が1つしかないからと言って、俺の膝に座り、朝食を摂っていた。しかも、周りに見せ付けるように肉を切り分けて食べさせてくるんだから溜まったものではない。それに、毎朝……というか一日中ベタベタしてくるからな。いや、嬉しいんだけど興奮してしまうから少しだけ控えて欲しかった。

 ここまで誘ってくるのは、校内で青姦プレイでもしたいからなのかな?

「ダーリンほら、もっと食べて〜」

「ああ、ありがとう」

 少しばかり悩んだが、キュルケが無邪気な笑顔を浮かべて、嬉しそうに肉を差し出してくるから、まあ今はどうでもいいかと悩むのをやめて、存分に周りに見せ付けてやった。











 朝食を終えて教室に行くとギーシュやルイズに才人が生徒たちから質問攻めにあっていた。

 そして、所要で学園から離れていた俺とキュルケ、タバサにも話を聞きたそうにしていた様子だったが、こちらには、わざわざ近づいて聞くような人間はいなかった。

 はっきり言うとクラスで浮いていたからだ。キュルケは以前大勢の男子生徒を惑わし、勝った男と付き合うと言って、決闘させたが、決闘させるだけさせて、他の男を引っ掛けに行っていた事があり、女子生徒からは不人気で、男子生徒も俺とばかりイチャイチャするので近寄ってこないから、現在、キュルケが話す相手と言ったら数人だけであるし、タバサはガリアからの留学生で、しかも、元々無口で読書ばかりしているから、誰も近寄らない。そして俺も、得体の知れない使い魔と言う事と、人間の使い魔の才人が毎回活躍するので俺に話しかけてくる相手は才人ぐらいしかいない。

 でも、クラスで浮いているからと言って悪いことばかりではない。なんたって最前列の窓側の3人掛けの長机に、タバサ、俺、キュルケの3人で座れるんだからな。本来座るべきの生徒もタバサとキュルケの間には座りたがらないから俺が堂々と席について座れるからいいんだよ。

 そう言えば、マチルダの退職届を出しに行かないといけなかったな。オスマンはマチルダにセクハラを楽しみに生きていたから残念がるだろうな〜。下着覗きも、今のマチルダには、穴あきショーツとかポケット付きショーツとかヒモTとか大人のエロ下着を付けさせているのに、それが見れないなんてオスマンはなんて不幸なんだろう……。いや、オスマンだったら、見せたら鼻血だして死ぬかもしれないな。

 いつものようにキュルケと他愛もない会話を楽しんでいたら、ハゲタおっさん事。コルベールが教室に入ってきて授業を始めた。

「さてと、皆さん」

 授業を始めたコルベールは、嬉しそうに、でんっ! と机の上に妙なものを置いた。

「それはなんですか? ミスタ・コルベール」

 生徒の一人が質問した。

 生徒たち皆、机の上に置かれたものがなんなのか分からないようで、これでいったい彼は何の授業をおっぱじめる気だろう? と生徒たちは興味深くその装置を見守った。

 コルベールはおほん、ともったいぶった咳をすると語り始めた。

「えー、『火』系統の特徴を、誰かこのわたしに開帳してくれないかね?」

 そういうと、教室を見回す。教室中の視線が、キュルケに集まった。ハルケギニアで『火』といえば、ゲルマニアの貴族である。その中でもツェルプストー家は名門であった。そして彼女も、二つ名の『微熱』の通り、『火』系統が得意なのであった。

 キュルケは授業中だというのに、隣にいるルシファーの腕に抱き、ごろごろと喉を鳴らして甘えていた。

「えー……ミス・ツェルプストー?」

「ん? ああ、はい。なんですかミスタ・コルベール?」

「…………『火』系統の特徴を開帳してくれないかね?」

「情熱と破壊が『火』の本領ですわ」

 目線はルシファーの顔に注がれたまま気だるげに答えた。

「そうとも!」

 くじかれた出鼻を直すように、にっこりと笑っていった。

「だがしかし、情熱はともかく、『火』が司るものが破壊だけでは寂しいと、このコルベールは考えます。諸君、『火』は使いようですぞ。使いようによっては、いろんな楽しいことができるのです。いいかねミス・ツェルプストー。破壊するだけじゃない。戦いだけが『火』の見せ場ではない」

「トリステインの貴族に、『火』の講釈を承る道理はございませんわ」

 キュルケはルシファーの腕にしがみ付いたまま言い放ったが、コルベールは気にした様子もなく、にこにこしている。

「でも、その妙なカラクリはなんですの?」

 キュルケは、きょとんとした顔で、机の上の装置を指差す。

「うふ。うふふ。よくぞ聞いてくれました。これは私が発明した装置ですぞ。油と、火の魔法を使って動力を得る装置です」

 キュルケを含めクラスの連中はぽかんと口を開けて、その妙な装置に見入っていた。

 そしてコルベールは、装置を動かし、魔法を使わないですむ未来について語ったが、魔法を覚えるために学院に通っている生徒たちには伝わらなかった。

 キュルケも不満そうにルシファーに小声と尋ねた。

「アレってすごいものなの?」

 ここであの装置について詳しく説明すると面倒なことになりそうなので「後であの装置について色々と説明してやるよ」と言ってここは黙った。

「先生! それ、素晴らしいですよ! それは『エンジン』です!」

 キュルケに小声話し終わると同時に才人が立ち上がって叫んだ。

 それから、才人が話した知識にコルベールが興味を持ち、出身を尋ねて才人が困り、ルイズが変わりに東方のロバ・アル・カリイエの方から来たと言った。

 まあ、俺と違って才人は、ほとんど無力だし、ここで異世界から来ましたと言えば、最悪マッドサイエンティストメイジの巣窟であるアカデミーに連行される可能性が出てくるからな。

 コルベールと才人との話が終わると、さっきコルベールがやったように『発火』の呪文で装置を動かしてみないかと言った。

 そこで、モンモランシーがルイズを挑発し、装置に『発火』の魔法をかけるように言い。ルイズもその挑発に乗り、席から立って装置の元へ行きコルベールの説得もむなしく『発火』の呪文を唱えた。

 はあ〜なんで学習しないかなこのぺったん娘は。

 ルイズの爆発魔法が完成する直前に、装置を転移魔法で亜空間に転移させ、爆発を以前のようにボール玉に閉じ込める。

「せ、成功したの?」

「うそ〜! 成功した…………って、あれはダーリンの魔法?」

「キュルケの使い魔の魔法?」

 目を閉じたり机の下に隠れていた生徒たちは、爆発が起こらないから成功したものだと思ったが、装置のあった場所には、以前の様にボール玉ふわふわと浮いているだけだということに気づいたようだ。

「こ、これは、いったい……? 私の発明品は?」

 装置の心配をして周りを探すコルベールを無視したまま、以前と同じようにボールを掴み外へ投げ捨てた。

 すると、ボール玉が投げられた場所に爆発が起き、校舎を揺らした。

 ルシファーは、「また失敗したのね……」と落ち込んでいたルイズの近くに行き、頭にぽんっと手を置いて言った。

「ルイズ」

「……なによ」

 ルイズは反抗的な目でルシファーを見上げるが、続けて言った。

「お前は自分の魔法系統をマスターしてから使え」

「っ! なにを言って……?」

 ルイズの頭から手を退かし、今度はコルベールの前に立った。

「ああ……わたしの研究成果が……」

 コルベールは未だに爆発で消滅したであろう装置を求めて、爆発が起きた窓の外を虚ろな表情で眺めている姿が可哀想だったので、再び転移魔法で亜空間から装置を取り出してコルベールの目の前に置いた。

「ややっ! これはっ! これはわたしの装置! ありがとう! ありがとうルシファー君!」

 コルベールは虚ろな表情から一変して、飛び上がって装置に頬ずりを繰り返して喜んだ。

「さっすが、あたしのダーリンね!」

 壇上から席に戻るとキュルケが、嬉しそうに抱きついてきた。

「まあな」

 キュルケを完全に堕とし、教室で幾度となくイチャイチャを繰り返しているルシファーに男子生徒だけではなく、女子生徒までも殺気の篭った眼差しで睨んできたが、それを完全に無視して、2人はピンク色の空気を出した。











 夕食を終え、キュルケと共に自室に戻ったルシファーは、コルベールが将来どんなものに進化するかを丁寧に説明した。

「へぇ〜、コルベール先生ってすごいのね〜」

 ルシファーが以前いた世界で実際に開発された機械仕掛けで動く、車や飛行機を映像や動画を記録する魔具を用いてキュルケに説明すると、驚きコルベールの才能を認め、更にルシファーが情事を行いながら『火』について教授したことで、キュルケは『火』系統魔法の見方や、コルベールへの評価を改めた。

「初めて見せてもらったけどダーリンって、本当に世界の王様だったのね……」

 情事が終わり、裸で抱き合っていると、落ち込んだ声音でキュルケが呟いた。

 キュルケはルシファーから見せてもらった魔具に移っていた王冠を被り、ハルケギニアでは考えられない大勢で、様々な人種の国民の歓声に手を振って応えているルシファーの『大魔王』として君臨していた姿が、様々な巨城を背景に写っている映像を見たキュルケは自分の矮小さや身分を卑下して、キュルケは本当に自分がルシファーの隣にいていいのかと考えてしまったのだ。

「『王だった』じゃない。俺は今も王なんだ」

 そんなキュルケの髪を指ですかしながら優しい声音で語り始めた。

「この世界でも、前の世界での妻の事や子共の事。そして俺の国民たちに恥じないように一人の『王』として、この地でも誇りを持って生きないといけないんだ」

「…………ねえ、ダーリン……」

「ん?」

「あたしが……あたしなんかがあなたを召喚して……しかも使い魔にしちゃって、本当によかったの?」

 キュルケはルシファーの胸に顔を埋めながら恐る恐る尋ねた。

「えっ!? うっ、うむむぅっ?」

 ルシファーは胸に顔を埋めて泣き始めたキュルケに無理やり唇を奪い、ベ覆いかぶさるとキュルケの瞳を見ながら言った。

「まったく、以前にオスマンの前でも言っただろう? 俺はここに召喚される事を知っていて、気に入らない相手が召喚した場合は、この国を滅ぼしていたと」

「それは……」

「それに、だ。失敗に終わったが、俺は主への忠誠心を植付けたり、この世界に定着させるための精神操作を受ける事を分かっていて、お前達が使い魔契約。コントラクト・サーヴァント呼ぶ、隷属の呪いを受けたんだが?」

「ええっ!?」

 ルシファーが言った言葉に、さっきまで自分を卑下した気持ちが吹き飛び、逆に疑問が生まれた。

 ルシファーは体の下で驚愕と困惑の表情を浮けべているキュルケの疑問に答えるように話し始めた。

「まあ、そのなんだ……。正直言うと一目惚れみたいなモノだ。召喚のゲートを潜ってお前を見たときに、『こいつの使い魔にならなってもいいか』と思ってな。それに、万が一隷属の契約した後、キュルケが気に入らない女だったら使い魔のルーンを消して、ハルケギニアから姿を消していたし、契約破棄にお互いの合意が必要な魂の契約などはしていない」

 ルシファーが話した事は少しだけ嘘が混じっていた。キュルケに召喚される事は自らが望んであった事だったからだ。だが、望んだといっても100年も前の事で、実のところキュルケの人なりを見てから、決めようと思っていたが、ゲートを潜り、キュルケの姿を見た瞬間。心を奪われ、思わず呪いともとれるコントラクト・サーヴァントに応じてしまった。

「…………つまり?」

 キュルケはルシファーが話した内容を理解していたが、ワザと尋ねた。言葉として聞きたかったから両手をルシファーの頬に添えて、嬉しそうに泣き笑いの表情で尋ねた。

「お前の事が、契約など抜きで好きだ……一人の男としてキュルケが好きだから一緒に居たいんだ」

 ルシファーが話し終えると、キュルケはルシファーの顔を引き寄せ唇を合わせて、再び今度は先ほどよりも激しく、能動的に求め合い、キュルケの全身を白く染め上げた。

 二回目の情事が終わり、浄化魔法で性交の後を消し2人はベッドに裸で横になっていた。

 キュルケの寝顔からは、心の底から幸せを感じている様子が覗え、ルシファーもキュルケの体温をそばに感じながら満足げに寝ていた。











 窓から朝日が差し込み、小鳥が囀り、清清しい朝を迎えようとしていたトリステイン魔法学院の一室で、朝からじゅぶじゅぶと水音が鳴っていた。

 部屋はトリステイン魔法学院が寮として提供した一室であったが、家具やベッドはひと目で高級品と分かるほど金や宝石を使い細工を施され、床にはこれまた高級な絨毯が敷いてあった。

 そして、その部屋の奥。小窓の近くに鎮座しているベッドの上で、男が寝ていた。男の顔は美男子とも取れる精巧なつくりをしていて、体は純白のシーツで覆われていても分かるほど筋肉が発達していた。

 更に男の体を覆っているシーツは、腹の辺りで膨らんでいて、そのふくらみは生き物のように動いていた。

「うあ? うぅん…………うっ、ううぅっ」

 ベッドに寝ている男が呻きながら目を覚ました。

 男は目線を腹辺りに這わせ、腹辺りのふくらみを見て、一息つくとシーツをがばっと捲りあげた。

「おふぁよう、じゅぶ……、だーふぃん」

 シーツを捲りあげると、全裸で褐色の肌をした燃えるような赤い髪のグラマーな美女が、男のペニスを咥えながら、朝の挨拶を行った。

 そして、キュルケと呼ばれた美女が、男のペニスを咥え、舌を這わせ、口が窄まるほど吸いつき、激しく顔を前後させて、男のペニスをしごき出す。

「キュルケ……ううっ!」

 男もキュルケの激しいフェラチオに快楽を感じ、身を任せるように横たわり天井を見上げ、ペニスに神経を集中させた。

「っんん、|射精( だ )すぞキュルケ!」

「ぢ、ぢゅゅぅぅぅ〜〜〜っ」

 男の叫びに合わせる様にキュルケは喉元までペニスを咥えて、搾り取るように吸い付いた。

 すると、びゅるるるるぅぅ〜っとおびただしい量の精液がキュルケの喉を通って、胃袋に流し込まれた。

 キュルケは喉をごくごくと鳴らしながら、美味しそうに一滴も溢す事なく飲んだ。

「うふふっ、ごちそうさま。今日も美味しかったわ」

「ありがとう。気持ちよかったよ」

 男は……大魔王ルシファーはお礼を言って起き上がり、キュルケの頬にキスをした。

 というか、最近のキュルケは今まで以上。今から3日前の告白で益々惚れられてしまい、キュルケはルシファーとの性交にますますはまり込んでゆき、ルシファーに性技の教えを請い、更に技術を高め、ルシファーの精液をまるでワインのように楽しみ、毎朝ルシファーの精液をたっぷりと飲んでから、一日の生活を始めていた。

「さてと、それじゃあ着替えさせて」

 立ち上がりベッドの脇に立ったキュルケが甘えた声で頼んできた。

「ああ。わかった」

 ルシファーはキュルケの頼みを当然と言わんばかりに快諾し、タンスの中から紫色のショーツとスカートやブラウスを用意し、裸体を隠すことなくルシファーを待っているキュルケに悪戯という名の愛撫をしながらゆっくりと服を着せていった。

 そしてその後は、ルシファーが今度はキュルケに服を着せてもらい学院へと食堂へを出発する。

 まあ、お互いの裸は最初の性行為以来ずっと見ているので今さらだな。

 毎朝、裸で抱き合った状態で目覚め、夜はセックスしたり、穏やかに過ごして1つのベッドにお互い全裸になり眠る。

 もはや、お互いの体で見たことない部分などなくなっていた。

「じゃあ、行きましょうか」

「ああ」

 キュルケがドアを開け、一日が始まった。











 学院の食堂で朝食を終え、普段だったらこのまま教室に向かうはずだったのだが、途中でシュヴルーズからオスマンが俺を呼んでいるとの事で、キュルケと別れ学院長室に向かった。

「入るぞ」

 部屋の主の返答を待たずにドアを開ける。

「おお〜、ルシファー殿。わざわざすまんのう」

 部屋にはオスマンとコルベールがいて2人の表情は硬く、緊張しているようだった。

「で、俺に何の用だ?」

 ルシファーは、虚空から黄金の玉座を出して座り、『大魔王』としてオスマンを睨みつけた。

 オスマンとコルベールはルシファーの睨みに本能的な恐怖を感じ、額に汗をかきながら話し始めた。

「あ〜……それがのう。…………お主に挑んだ貴族の事なんだが……」

 ルシファーはオスマンが言った。『挑んだ貴族』について心当たりがあった。

 アルビオンから帰ってきてから、元キュルケの恋人? いや、弄ばれていた男子生徒や取り巻きの男子生徒たちが決闘を挑んできたり、闇討ちをしようとしたのだ。

 そして、ルシファーはそんな男子生徒たちに二度と逆らう事が出来ない様に恐怖と絶望を、心に深い傷を負わせたのだ。

「挑んだ貴族? …………ああ、雑魚たちのことか?」

「………一応、学院のスクウェアクラスも居たんだがのう……」

「それが、どうしたんだ?」

「「…………」」

 最強のクラスであるスクウェアクラスも歯牙にかけていないルシファーの様子にオスマンとコルベールは押し黙る。

「ミスタ・ルシファー。いくら挑まれたからと言っても、あなたはやりすぎです。肉体的にはそれほど怪我を負ったものはいませんでしたが、精神的に深い傷を負ってしまったんですぞ!」

 コルベールが椅子から立ち上がり、言い放つ。

「だから、どうしたと言うのだ? あやつ等が自分でやった事だぞ? それともなにか? ワザと負けろというのか?」

 しかし、ルシファーは気にした様子もなくコルベールに向かって言った。

「そうは言いませんが、相手は貴族の子共なんですぞ? もしも他国の貴族を傷つけ外交問題にでも……」

「忘れておらんか? 我が大魔王で在る事を」

 ルシファーは部屋いっぱいに殺気を放ち、コルベールを黙らせると、玉座の後ろに【王の財宝】を展開し、宝具の矛先を2人に向け、静かに言った。

「「っ!!」」

 オスマンとコルベールはとっさに杖を振るおうとしたが、杖からは魔法が出る事はなかった。

「お前らの魔法は奪わせてもらった」

「なっ!? 魔法を奪う!?」

「うぬぬぬ………」

 ルシファーは【王の財宝】を発動させたまま話し始めた。

「我はな、貴族や王族など知った事ではないんだよ。誰であろうと関係なく、身の程を知らずに我や我の女に手を出そうとするものは、殺す。我は世界を統べた大魔王だぞ? それに万が一にハルケギニアが1つになり、我に挑んだとしても我の敵ではないのだよ。外交問題? そんなものそもそも我には関係ないだろう?」

「だがミス・ツェルプストーが……」

「それも、問題などはない。もしもキュルケに何かしようとするのなら……そうだな〜。今のお前等の様にハルケギニアから魔法を奪い。王政を崩壊させるかな」

「「なっ!」」

「まあ、馬鹿な貴族が我を怒らせない事を始祖とやらにでも祈るんだな」

「「…………」」

 そう言ってルシファーは【王の財宝】しまい殺気をおさめた。

「それで、ここに呼んだのはそれだけか? それだけなら帰らせてもらうが?」

「あ、ああ……」

 ルシファーは玉座を消し、立ち上がって、ドアを開け出て行こうとしたが、思い出したようにオスマンの方に振り返り、懐から一通の手紙を取り出してオスマンに渡した。

「これは……」

「忘れていた。秘書のロングビルから退職届を渡すように頼まれていたんだった」

「退職届!?」

「ああ、アルビオンに実家があって、情勢不安もあり実家に帰るそうだ。あと、今月の給金やら荷物は俺が転移魔法で実家に送る手はずになっているからよろしく頼むな」

 ルシファーは今度こそ部屋から退室した。

「「はぁ〜〜……………」」

 ルシファーが退室したのを確認すると、オスマンとコルベールは揃って大きなため息をついた。

「オールド・オスマン……」

 コルベールは情けない声で、オスマンの名を呼ぶ。

「ミスタ・コルベールよ。今すぐ教員を通して、すべての生徒にミス・ツェルプストーの使い魔を怒らせるマネはしないように徹底させるのじゃ」

「でっ! ですが、彼の被害に会った生徒の親には、どう説明するのですか!? 精神に傷を負った者までいるのに……」

「そやつらに原因があったのも確かじゃし、諦めてもらうしかないじゃろう。それに……あやつを止めれるものはおらんし、下手に刺激してハルケギニアから魔法を奪われたら、平民たちから反乱が起こるやもしれん。更に言うと生活が出来なくなってしまうじゃろう……」

「…………ですが!」

「だったら、お主にルシファーを止める事ができるのか! 未知の魔法を使い、数多くのマジックアイテムを出し、魔法まで奪え、更にはハルケギニアが一つになっても勝てると言い切ったあやつに! それに、国に報告したところで信じては貰えぬし、それどころか兵士などを呼ばれれば、滅ばされるのは目に見えておるではないか! 世界を一代で統べたと言う大魔王に、たかが小国の人間が勝てると思っておるのか!」

 オスマンはコルベールを怒鳴り散らし、早急に教員たちにツェルプストー家の使い魔を怒らせない事を生徒たちに伝えさせた。

 そして次の日。ルシファーは、元キュルケの取り巻き立ちに、キュルケをかけた決闘を一方的に申し込まれ、才人とギーシュが決闘した広場に呼び出され、10人対使い魔1人の決闘騒ぎが起きた。

 オスマンは騒ぎを聞きつけ急いで広場に向かったが、広場ではすでに恐怖に心を犯され、ガタガタと震えている男子生徒に止めを刺そうとしているところだった。

 なんでも、ルシファーは男子生徒が放った魔法を拳圧のみで消し去り、杖をへし折ったうえで30メイルほど離れた『固定化』が施された壁を跡形もなく消し飛ばしたそうだ。

 オスマンは慌ててルシファーに近寄り、杖を捨てて地面に膝をつき頭を下げ、必死に許しを請うた。

 決闘を傍観していた貴族たちは、学院長の必死にルシファーに許しを請う姿に、先日何故教員を通して、ルシファーを怒らせる事を禁じたのかやっと理解した。

 ルシファーはオスマンに免じて、止めを刺すのを止め、キュルケと共に女子寮へ帰っていった。

 後にルシファーに決闘を挑んだ貴族達に、オスマンは厳罰を与え、ルシファーに挑む者も消えうせ、決闘騒ぎは終わった。

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