小説『ゼロの使い魔 世界を渡る転生者【R−18】』
作者:上平 英(小説家になろう)

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『第1話 キュルケの使い魔は魔王様!?』




「あっ、あなた何者?」

 大勢の人間達をバックにルシファーの顔の顔を見上げている女の子が言った。ルシファーより少しだけ背の低い黒いマントの下に、一番上と二番目のボタンを外した白いブラウス、グレーのプリーツスカートを着た女の子で、褐色肌の巨乳美人が立っていた。

 顔は幼さが少し残るものの大人の色気が感じられ、燃えるような赤い髪とメロンのような巨乳と健康的な肢体の女の子だった。

 うむ。どうやらここは本当に『ゼロの使い魔』の世界のようだな。しかも、シチュエーション的に、春の使い魔の儀式みたいだな。それに今回は、しっかりキュルケに召喚されたみたいだし!

「ねぇ、あ、あなた言葉通じる?」

 おっと、やっと目的の世界にこれた感動でボーっとしてしまった。くくくっ! ここは大魔王らしく威厳たっぷりで接するかな?

「ああ。お前が我を呼び出したのか?」

 ルシファーは、長年の経験で得た王としての威厳を放ちながら、キュルケの目の前に立つ。

「えっ!? ええ……あたしが……私が召喚しました」

 キュルケは、ルシファーが放つ雰囲気とルシファーが着ている黒の布に黄金の刺繍を施した服に自分が召喚した使い魔は平民……ましては下級貴族ではないことを理解し、困惑し、自分がとんでもないことをやらかしたんだと思い始め、キュルケの表情が真っ青に変わる様に気をよくしたルシファーは、大気を震わせるように笑う。

「はーっ! はっはっは!!! お前の様な小娘が我を……!! 我を呼び出すとは!! 面白いぞ! 面白いな小娘!!?」

「はぁっ! はいっ……!!?」

 ああ。ビビッてるビビッてる! 怖がってるキュルケは可愛いなぁ……ついついイジメたくなる! 事情とかも知ってるけどココはたっぷりビビらせる方がこの貴族極上主義の馬鹿国では、色々と便利だからな!

 そして、たっぷりと笑い終えたルシファーは、少し屈んでキュルケと目線を合わせ、左手をキュルケの頭に掲げようとした時。横から大声が飛んできた。

「お待ちください!」

 ルシファーはその声に屈んでいた腰を直し、顔を声の方に向ける。

 声の主は、トリステイン魔法学院の教師であるコルベールで、コルベールはキュルケが春の使い魔の儀式で呼び出した者が只者ではないと、雰囲気や服。そして人の身ではありえないほどの膨大な魔力で理解し、ガタガタと震えそうになる体を抑え、なんとか、この者を刺激しないように誠意を込めて話し始めた。

「私は、コルベール。トリステイン魔法学院の教師ジャン・コルベールと申します。まずは、あなたの名前を教えてもらえませんか?」

 くっくっくっ! さすがは元軍人で『炎蛇』と呼ばれていた人間だな。俺を刺激しないようにしながらも、いつでも魔法を発動できるように杖を持ったまま、親切そうに語りかけてくるとは。

 ルシファーは、コルベールに向かって、威厳たっぷりに周りの貴族達にも、聞こえるように自己紹介をする。

「ふふふっ、なかなか賢い人間がいたものだ! よく聞け人間よ!! 俺は魔界を統べる大魔王!! ルシファー・ベルモンド・サーゼルベルグだ!!」

「「「「なっ!? 魔界!!? 大魔王!!!?? 」」」」

 ルシファーの素性を雰囲気や服から、上級貴族かどこかの王だと予想していたコルベールだったがこの答えは予想外だったらしく、だらだらと汗を流しながら茫然と立ち尽くしていた。

「えっ!? あっ! ほ、本当に魔王なの?」

 キュルケは嘘であって欲しいと願い。肩を震えながら、ルシファーに尋ねるが、ルシファーの答えは一言「そうだ」と頷き、キュルケの思考は混乱する。

 だが、キュルケの思考をさらに混乱させる信じられない言葉をルシファーが発した。

「ん? どうした? 使い魔の契約はしないのか?」

「えっ!? あたしでっ!!? 私でいいの!!?」

「ああ。いいぞ」

 キュルケは魔界と言われる場所は知らないが、大魔王と呼ばれる王から使い魔の契約。【コントラスト・サーバント】を許可されたことにより、安堵と喜びと不安が頭の中で入り乱れたが、ゲルマニアの貴族の誇りを支えに、思い切ってルシファーと使い魔の契約をすることに決めた。

「じゃ、じゃあ。始めるわよ?」

「ああ」

「我が名は、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。…………………我が使い魔となせ」

 とキュルケは呪文を長々と朗読し、ルシファーの額に杖を置いた。

 そして、背伸びをして唇を重ねる。

 中々の感触だな……ふふふっ、折角だから舌でも差し込むか?

「ちょっ!? もう儀式は終わっ……うむっ!? ……あむっ……うぅんっ、んむむ!?」

 ルシファーは、唇を離そうとしたキュルケの腰に腕を回し、口内に舌を差込み歯や歯茎をなぞる様に舌を這わせ、歯を開かせるとさらに舌を伸ばして、キュルケの舌を啜る様に舐め、さらに、ルシファーは唇を犯しながら、周りの貴族共にキュルケは俺のモノだということを見せ付け、逝かせた後。唾液のアーチを描きながら唇を離す。

「ぷはぁ……! はぁ…はぁ……あっ……あにゃ……た…いきなりなにを……」

 キュルケはルシファーから開放されると、その場にへたり込みながら、潤んだ瞳でルシファーの顔を見上げた瞬間。ルシファーの胸が輝き始め、コルベールは使い魔のルーンが刻まれているんだと思ったが、光に異変が起き一瞬。広場全体を光で包み込んだ。

「な……なんだったんだ今のは?」

 ん〜? おかしいな? 一応精神操作の術式用に用意していたのに発動しないし、それどころか使い魔のルーンが消えてしまった。やっぱり、キスだけじゃ繋がりが弱いのかな? いや、力の差も関係してるのか? 大魔王と学生だもんなぁ〜。

 ルシファーが何故契約できないか考えていると、生徒に怪我が無いか確認したゴルベールが、ルシファーに近づいて話しかけた。

「ミスタ? 使い魔のルーンは刻まれましたか?」

「いや、出来なかった」

「出来なかったの!?」

「出来なかったのですか!?」

「ああ。どうやら、この方法ではこの娘と契約できないらしいな」

 ルシファーが契約できないと言うと、キュルケとコルベールは同時に俺に詰寄って来た。

「どうしよう……使い魔と契約できないと進級が……」

 キュルケが今にも泣きそうな顔になる様子を見たルシファーは、座り込んでいるキュルケの肩とスカートと太ももの間に腕を差し込み抱き上げて、今度は優しく触れるようなキスを落とし、安心させるように話しだす。

「勘違いするなキュルケよ。この方法では、お前と俺との力の差が激しすぎて出来ないだけだ」

「それじゃあ!」

「ああ。契約する方法はある」

 キュルケは、進級できる希望を見つけて喜び、ルシファーの首に手を回して、今度は自分からルシファーの頬にキスをおとす。

「まぁ、厄介な方法だが出来るぜ。それよりも、今我らを覗き見している人間を始末しないとな?」

 そう言いって、ルシファーは覗き見犯がいる塔の方向を向き、魔法陣を多数出現させ、周りの貴族はルシファーの膨大な魔力と見たこともない魔法陣に言葉を失い。そして、ルシファーが魔法陣を展開させた事と、魔法が放たれるであろう方向から、悟ったゴルベールは慌てて、その場に跪いて許しを請う。

「お待ちください! お待ちくださいルシファー殿!! どうか……! どうか魔法を解除してくださいっ……!!」

 ルシファーは、コルベールを一瞥すると、展開していたすべて魔法陣を消し、コルベールや周りの貴族たちも、魔法陣が解除されたことで、肩に入っていた力を抜き、安堵の息を吐き出した。

「まぁ、いいだろう。ここの場はお前に免じて許す」

 よしっ!! これだけ力を見せ付けて脅せば貴族の馬鹿共も必要以上に近寄ってこないだろう! 作戦通りだな!

ドゴォォォン!!!!!

 ルシファーがコルベールに学院長に会ってくれませんかと頼んでいた頃。少し離れた位置で大きな爆発が起きた。

 爆発……!? まさか!? ルイズか!?

 ルシファーは、キュルケを両手に抱いたまま、爆発があった場所へと向かうと、まさに原作通り、幼児体系の桃色の髪のルイズが、今では懐かしい地球産の洋服を着た才人に使い魔のルーンを刻んでいたところだった。

 おおっ! はるか昔に読んでいた小説の有名なシーンを見れるとは! 

 ルシファーは、二人のやり取りを食い入るように見つめていた。

 そして、才人の左手にルーンが刻まれるところまで見届けたルシファーは、コルベールに案内されて、学院長の下へ向かった。







  
 
 ルシファーが学院長室に入ると、長い白髪、白い髭を生やした老人。学院長のオールド・オスマンが机の前に跪いていた。

「何のマネだ?」

ルシファーが、変な者を見るように視線を向けると、オスマンは、コルベールと同じ用に相手を刺激しないよう言葉を選びながら、謝罪の言葉を述べた。

「先ほどは申し訳なかった……突然、広場に現れた強大な魔力が気になってしまって……ワシ等は、危害を加えるつもりはないので許して欲しいんじゃが……」

 オスマンは、深々と頭を下げ、ルシファーの言葉を待っているが、当のルシファーは、身の程知らずの貴族共に向けての脅しが、ここまで効くとは思ってなかったら、今まで堪えていたのを開放し、心の底から笑った。

 威厳があった雰囲気までも、ただの子供の様に変わった事で、3人の目は点になり、何が起きたか理解出来ずに立ったまま固まっていた。

「くくくく……ああ、すまない。いやはや……くくく……。まぁ、頭を上げてくれオスマン殿」

「「「へ?」」」

 さっきまで、威圧を含んでいたルシファーの声質が変わり、広場でコルベールに見せた態度までもが柔らかいものに変わったことで、3人は呆けた声を上げた。

 ルシファーは、笑い終わるとキュルケを床に下ろし、目頭に溜まった涙を指先でとり、3人に向かって、俺の今までの態度についてネタバラしを始めた。

「まぁ、さっきまでの俺の態度は魔王のモノだったから、驚くのも無理はないが、俺は覗き見された程度で攻撃魔法を放つまで怒やすい王ではないぞ?」

「じゃがあの時……?」

「ああ。コルベール殿への態度と覗き見をしていたオスマン殿へ向けてた攻撃魔法なら、単なる脅しだ」

「あ、アレが脅し……?」

 キュルケが無数に展開された魔法陣と膨大な魔力を思い出し呟くが、ルシファーは気にも特に留めないように、話を続ける。

「ああ。ここの貴族は躾のなっていない餓鬼共ばかりなのでな。魔王である俺にたてつかないように格の違いを見せてやったんだ。普段の俺は、こんな感じだから、まぁ、そんなに過剰に見まがえるな」

 ルシファーはうんざりした様に手を振りながら、自分からは危害を加える気がないことをアピールすると、コルベールが思い出したかのように質問を開始した。

「そうでしたか……。あっ、そうです! あなたは本当に魔王なのですか!? それとミス・ツェルプストーとはどんな契約方法をする気なんですか!?」

 ルシファーは、突然食いかかってきたコルベールにウンザリしながら答える。

「ああ。魔王であることは事実だ。俺の世界である魔界を統治していた大魔王だ」

「だ、大魔王……」

「ああ。俺は、この星ぐらいの……というか魔界全土を完全に支配下に置いた。文字通り魔界の王だ」

「魔界全土……」

「星ですか……」

「…………」

「まぁ。今の俺は、かつて魔界の王であった者で、現在はキュルケの使い魔だから、もう少し砕けた態度でいいぞ?」

「「「…………」」」

 魔界全土を支配下に置く、魔王が学生であるキュルケの使い魔になろうとしていることが信じられない3人は、再び不信そうに怪しむ目をルシファーに向ける。

 そして、そのなんともいえない空気を破って、今度はオスマンがルシファーに質問を投げかける。

「すこしよろしいかルシファー殿?」

「ああ。なんだ?」

「呼び出した側として言い辛いのだが……ルシファー殿は魔王であったのだろう? 魔界を完全な支配下においていた魔王であったルシファー殿がこの世界に呼ばれたことについては、怒りはないのかのぉ?」

「「っ!!」」

 オスマンの質問の真意を察した、キュルケとコルベールは、不安げにルシファーを見つめ、ルシファーが発する言葉に耳を傾ける。

「ああ。俺がいなくなったことで魔界が荒れてないのか? とか、魔界の住民が俺を連れ戻しに来きて、戦争になることを恐れているのなら、その心配は一切ないぞ?」

「心配ない……?」

 自信たっぷりに心配ないと断言したルシファーにオスマンは眉をひそめるが、次のルシファーの発言でこの者に自分たちの常識は通じないことを教えられる。

「俺は、一代で……というか60年ほどで世界統一を果たした王だぞ? そして俺は、魔界統一後40年間平和な暮らしを民に提供していた大魔王である俺が、他の世界に召喚魔法で呼び出されると言う未来を知らなかったはずがなかろう?」

「なっ!? 60年で世界を統一……しかも、40年間統治……青年に見えるがまさか100歳を越えておったとは……しかも、未来を予知していただと……?」

「ああ。俺は魔を極めて神格化したからか歳をとり辛くなったみたいなんだ。あと、俺の世界には未来を見通す巫女がいるからな。その巫女が予知した10年前から、内政などを引き継いで、この世界に来る用意をして来たから、何も心配する必要はない」

「だっ! だっだら、あなたは私に召喚されることが分かっていたと言うの!?」

 キュルケは大声を出しながら、ルシファーに聞くが、ルシファーは、首を振り否定した。

「そこまでは、さすがに解らん。巫女が予知できるのは俺の世界だけなのでな。この世界で誰に召喚されるかは、運任せだった」

 そう言いながら、熱い瞳でキュルケを見つめながら、話を続ける。

「まぁ、気に入らない人間だったら、契約せずにこの世界も俺の支配化に置こうかと思ったが……俺を呼び出した娘は、どうやら俺の主に相応しい素質を持っているようだから、おとなしく使い魔になることを選んだんだ」

「っ!!? えっ? あっ……!? そ、そんなに見られると……こま……困るんだけど……」

 すまんキュルケ! 照れている顔は可愛いが、さっき言ったのは嘘なんです! 誰に召喚されるかとか頼んだの俺だし、いつ召喚されるとか教えたのは巫女ではなくて、実は神だったんだ!!

 ルシファーは内心懺悔のしながら、以前の世界で覚えた鉄仮面を発動させ、熱い視線をキュルケに送り続ける。

「え〜……コホンッ。とりあえずルシファー殿は、ミス・ツェルプストーの使い魔になるという事でいいんですな?」

 オスマンが桃色空気になった学院長室を、咳払いで直し、ルシファーに尋ね。ルシファーは、オスマンの問いに首を縦に振る。

 そして、コルベールがここぞとばかりに、先ほど故意に流した使い魔契約の儀式について聞いてくる。

「ミスタ・ルシファー。ところで、ツェルプストーとはどういう方法で使い魔契約を結ぶつもりですか?」

「あっ! それあたしも気になるわ! どんな方法なの?」

 キュルケもコルベールが聞いた、【コントラクト・サーヴァント】以外の方法での契約が気になるらしく、上目使いで詰寄って来た。 

「まぁ、それはキュルケだけ話す。変に術式をバラして悪用されるもの好かんからな」

「うむむ……! その契約は危険はないのですか?」

 コルベールが心配そうに尋ねてきたがルシファーは、心外そうに言葉を返す。

「俺の契約はお前らの行っている召喚魔法より、比べ物にならんぐらい人道的で平等なものだぞ?」

「それはどういう……?」

「すまんがもう話すことは今のところないので、これで失礼させてもらう。行くぞキュルケ」

「キャッ、ちょっと? 私は自分で歩けるってばぁ……!」
 
 ルシファーは、オスマンに顔と力と身分を明かすと言う用件も済んだし、そろそろ会話にも飽きてきたので、オスマンが話している途中で、キュルケを抱き上げて、部屋から立ち去った。







 ルシファーとキュルケが立ち去った後。オスマンとコルベールは大きなため息を吐いた。まさか、【サモン・サーヴァント】で違う世界……しかも、60年足らずで世界を統べ、40年もの間統治した大魔王と呼ばれる存在が呼び出されるとは、夢にも思いはしなかった。

 そして、嘘みたいな話なのに青年は、それを裏付けるような証拠が多々存在した。まずは、平民や貴族でも出す事が出来ないような立ち振る舞いと雰囲気。人外レベルの膨大な魔力を内包し、魔法の鏡で様子を覗っていたオスマンがいる塔に向かって、杖も持たず両手が塞がった状態で、見たこともない魔法を発動させるという偽る事ができない証拠があった。

 はぁ……ミス・ツェルプストーでなく、ルシファー殿が言う気に入らない者が召喚した場合は、我々は殺されていたかも知れんのか……。まったく……あの者からすればワシらの崇める始祖ブリミルなど凡人に見えるんじゃろうな……。

 オスマンは、100歳を超えても青年のような若さを持つ、まさに神の様な王に、しばらく眠れない夜が続くだろうと、部屋の天井を仰いぎ、コルベールまでも、彼の今後の動向に頭を抱えた。

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ゼロの使い魔F Vol.4 [Blu-ray]
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