小説『ゼロの使い魔 世界を渡る転生者【R−18】』
作者:上平 英(小説家になろう)

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『第34話 消えた虚無の担い手(候補)と勉強するシェフィールドとイザベラとの和解?』





ルシファーがガリア王国でタバサの王位継承権の破棄と、ジョゼットの回収を行っていた裏側。

 ロマリアの新教皇ヴィットーリオ・セレヴァレはトリステイン王国、女王アンリエッタと会談していた。

 教皇はアンリエッタに、争いをなくし、世界を平和にするためには力が必要だと話し、平和を維持するための巨大な力は、始祖ブリミルの虚無だと言う。

 そして、ロマリアに伝わる『四つの秘宝、四つの指輪、四の使い魔、四の担い手……、四つの四が集いし時、我の虚無は目覚めん』という言い伝えがある事を話した。

 アンリエッタは虚無の担い手がルイズの外にも後3人もいることに驚く。

 教皇は言う。

 強い力には、それに見合う行き先が必要だと。

 その行き先は、始祖ブリミルの『聖地』だと、教皇は言う。

 アンリエッタは教皇の言葉に恐怖した。

 『聖地』とは、砂漠の奥、エルフたちの住処になっているからだ。

 エルフは強力な先住魔法を使う。

 アンリエッタは人間とエルフが争う戦争に恐怖した。

 アルビオンとの戦争でアンリエッタは戦争などもうやりたくなかったのだ。

 教皇は強力な力、『虚無』を使うものではなく、見せるものとして説明する。

 平和的に『交渉』するために、強力な力。『始祖の虚無』が必要だと。

 アンリエッタは突然聞かされた壮大な話に、考える時間をもらえるように言うが、教皇は時間がないと言った。

 その理由はガリア王国現王、ジョゼフだった。

 信仰心がなく、己の欲望のみで生きる狂王ジョゼフに、始祖の虚無を渡すわけにはいかないと、アンリエッタに、神と始祖の僕たるハルケギニアの民の僕である教皇として命じた。

 手持ちの虚無を一つところに集めて、信仰なき者どもより守るように、と。












 アンリエッタとの会談が終わり、ロマリアに戻ろうと飛行船に乗り込もうとした時、空から白い風竜が降りてきた。

「聖下!」

 風竜から降りた金髪で整った顔立ちの青年が、慌てた様子で教王へと詰め寄る。

「どうしたのですか? ジュリオ」

 教皇は冷静な自分の『使い魔』。ジュリオの慌てた様子に内心戸惑いながらも、尋ねた。

 ジュリオは教皇の耳元で呟いた。

「たった今、ガリアでシャルロット姫が王位継承権を破棄するという宣言がなされました!」

「ほんとうですか?」

「はい……」

 教皇は見送りに参列していたアンリエッタの方に向き直る。

「アンリエッタ女王陛下」

「なんでしょう?」

「シャルロット姫はトリステインに|亡命(・・)されたのではないのですか?」

「えっ?」

 アンリエッタは教皇の問いの意味が理解できなかった。

 シャルロット……、青い髪のタバサという小さな女の娘で、トリステインに連れ帰ったから|亡命(・・)しているのでいいのよね?

「|亡命(・・)しているのですか?」

「えっ? あ、はいっ……」

「たった今、ガリア王国で、シャルロット姫が王位継承権の破棄を宣言したそうなのですが……」

「なんですと!?」

 アンリエッタの傍に控えていたマザリーニ枢機卿が声をあげて驚いた。

 いつの間に!? なぜこのタイミングで!?

 マザリーニはタバサの行動に驚いた。

 報告では母親をゲルマニアに匿い、シャルロット姫はトリステイン魔法学院に戻ってきているはずなのに、何故ガリア王国にいるんだと驚いた。

 一方のアンリエッタはと言うと、タバサの気持ちを頭の中で想像し、楽観的とも言える解釈をとっていた。

「……そうですか……」

「どうしたのですか陛下?」

 小声で呟いたアンリエッタに教皇は尋ねた。

「おそらくですが……、シャルロット姫は、トリステインとガリアが戦争にならないために一人であの狂王の元へと行ったのでしょう……」

「なにを言って……」

 ジュリオが口をはさもうとしたが、アンリエッタはまったく聞いていない。すでに自分の世界に入っていた。

「ああ……、シャルロット姫……。トリステインのために一人で狂王のところに向かうとは……」

 教皇はアンリエッタは当てにならないとマザリーニ枢機卿に話しかけた。

「マザリーニ殿、シャルロット姫はトリステインにはいないのですか?」

「わ、わたしも、よく分かっていないのです……。魔法学院に戻ったところまでは報告を受けているのですが……」

 これ以上は時間の無駄だと教皇は判断した。

「ジュリオ。急ぎ魔法学院へ」

「はい!」

「それでは、アンリエッタ女王陛下。虚無の担い手のこと頼みましたよ」

 教皇はそれだけ言うと飛行船に乗った。

 シャルロット姫が王位継承権を破棄してしまうと『計画』がだいぶ狂うな……。

 どうするか……、計画を早めて寺院にいるもう一人の王族を表舞台に引きずり出すか?

 幾度も思考をめぐらしていると、ジュリオが帰ってきた。

「聖下! やはり魔法学院にはシャルロット姫の姿はありませんでした!」

 やはりか……。

 ジュリオの報告を聞きながらため息を吐いた。

 これで、ジョゼットまでいなくなればわたし達の計画は瓦解してしまう……。

「ジュリオ。担い手の可能性があるジョゼットを確保してください。彼女まで失ってしまっては計画を再び作り直さなければいけなくなります」

「はい! 分かりました!」

 ジュリオは再び風竜に跨り、ガリア領土、海に浮かぶ寺院へと向かい飛び立った。











 寺院へとついたジュリオは絶望を感じた。

 ジョゼットがいなかったのだ。

 ジュリオは修道院長に詰め寄った。

「なぜ! ジョゼットはどこへ行ったんですか!?」

 ジュリオの必死の形相に驚きながら修道院長は口を開いた。

「ジョ! ジョゼットの肉親の関係者と言う者が……」

「肉親の関係者……?」

 ジョゼフの手の者か!?

「え、ええ……、ゴドウィーと名乗るくすんだ青い髪の老人が小さな船で……」

「それはいつの事ですか!」

「半日ほど前です……」

 半日……、船も小さいとのことだし、老人ならそう遠くへは行っていないはず……。

「どこへ向かったか分かりますか?」

「お、おそらく、ガリア本土へと向かったと思います……」

 まだ時間がある! ジョゼフの元へ行く前にこちらでジョゼットを確保するんだ!

 ジュリオは風竜に跨る。

 海の上を飛んでいると幸い修道院長から教えられら老人の船を発見した。

 足跡も砂浜に残っていたのでそう時間も経っていないと周囲を探す。

 周囲を風竜と探していると、風竜がある臭いに気づいた。

 ジョゼットを見つけたのか!?

 ジュリオは風竜に従い飛行すると、森の中、光も入らないようなところに立ち止まった。

「ここにジョゼットがいるのか?」

 ジュリオが風竜から飛び降り森を進む。

「この臭いは……」

 鼻をつくような鉄錆のような臭いが香った。

 いやな予感がした。

「こ、これは……」

 ジュリオは見た……。

 大型の獣が暴れまわったと際に折れただろう木々と、血に染まった修道服と、老人が着ていたと思われるローブが見るも無残なボロ切れとかしている様子を……。

「あ、ああ……、希望が……、ぼくたちの希望がぁあああああああ!!!!!!!」

 ジュリオは絶叫した。

 ジョゼットが……! 虚無の担い手が死んだ!!? 

 計画がっ!! 邪魔なジョゼフを殺して、ジョゼットに担い手の力を移すはずだったのに……!!

 どうすれば……! どうすればいいんですか聖下!!

 ジュリオはルシファーが残した『細工(偽の死体)』に完全にはまり、教皇に『ジョゼットは森で獣に襲われて死んだ』と言う、偽りの報告をしてしまったのであった。











 ロマリアへと戻ったジュリオの報告を受けた教皇は、策を組み直す。

 悪ければ数年以内に起こる大災厄……、その大災厄を回避するためにはエルフから聖地を取り返さないといけない。

 そのためには強力な力、虚無が必要であり、さらに攻め込むには虚無だけでは足りない。

 ハルケギニアの国が一つになる必要がある。

 始めの策では、始祖の血筋が作った四つの国、ハルケギニアに存在するロマリア、ガリア、トリステイン、アルビオンにそれぞれの虚無の担い手が王として座るか、始祖の巫女として国を盛上げ、ゲルマニアなどの小国を掌握し、ハルケギニアが一個となってエルフを打倒するつもりだった。

 しかし、色々と問題が発生した。

 自分の母が始祖の遺産である『火のルビー』を持ち去ってしまった事を皮切りに、レコン・ギスタとの内戦で、虚無の担い手がもっとも生まれる可能性があったアルビオン王家の血筋の根絶。始祖を崇めない狂王ジョセフに虚無を得てしまった事。

 今回の、王家の血筋で魔法が使えないジョゼットという虚無の担い手候補を姦計を遣いジュリオに釘付けにさせ、ガリアを刺激し、火種を作り、『聖戦』を発動させ、トリステインに亡命したシャルロット姫を持上げてガリア領土で、シャルル派とジョセフ派に別れさせ、邪魔なジョセフを殺し、シャルロット姫とジョゼットを入れ替え、ジョゼットをガリア王にしてロマリアの傀儡にするという策も、使う前にシャルロット姫の王位継承権の破棄とジョゼットの死亡で策は白紙に戻ってしまった。

 だが、悲観するばかりではいられない。

 自分を含めて虚無の担い手は三人はすでに見つかっているし、もう一人の情報も少しはある。

 各地に放った密偵から、アルビオンの大公にエルフとの隠し子がいたらしいとの報告があり、さらにその子共を殺しに行った兵が記憶の一部を失っているという報告と最近捕まった盗賊がアルビオンの森で記憶を失った者がいた。

 記憶を消す。十中八九『虚無の担い手』だろう。

 アルビオン大陸は狭いし、もう少し調査を進めさえすればもう一人は見つける事ができるだろう。

 それに、担い手の一人であるトリステインの公爵家の末娘であるルイズ嬢はブリミル教徒でサイトと言う使い魔も御しやすい性格だとジュリオから報告を受けている。

 ジョゼフについても虚無には変わりはいるのだから、最悪の場合は殺して新たな担い手を探せばいい。

 世界を救うためには立ち止まれないし、始祖の教えを失ったロマリアの神官たちや教徒たちには聖地の奪還と言う目標が必要なのだ。

「ジュリオ、次の担い手候補を探し出し、世界を大災厄から救うのです」

 頭を垂れている使い魔ジュリオに優しく語り掛ける。

「聖下……」

 ジュリオは顔を上げて教皇を見上げた。教皇の優しい笑みにジュリオは心を癒される。

「安心しなさい。始祖は決して私たちを見捨てたりはしません。諦める必要はないのですよ」

「おぉ……、聖下……」

 ジュリオは教皇に頭を下げた。

 まだ終わりじゃない! ジョゼットの代わりを! 新たな担い手を見つけるんだ!

 教皇の言葉で絶望から立ち直ったジュリオは、新たな担い手を探す決心を固めた。











 一方、ロマリアの隣、ガリア王国のジョゼフの部屋でチェスをしている二人の男が居た。一人は部屋の主である青髪の美丈夫の男現ガリア王国国王ジョゼフで、もう一人は黒い髪に美丈夫、ジョゼフよりも野生的な魅力と二十代の男ルシファーだった。

「ぐぬぬ……」

 ジョゼフが唸った。

「ほれ、どうしたジョゼフ、手が止まっているぞ?」

 ルシファーは笑いながらテーブルの上のワインを飲む。

「これでどうだ!」

「ほれ」

「なっ!? なんだとっ!!?」

 ジョゼフが放った懇親の一手をルシファーがノータイムで切り返したことに、ジョゼフは驚きの声をあげた。

「うぬぬぬ……、これならどうだ!」

「ふっ、焦ったなジョゼフ。これで、チェクだ」

「なんだと〜〜〜!!!」

 ジョゼフの戦績は18戦0勝17敗1分けと散々な結果だった。

 これは唯一まともに打ち合えた弟シャルルが死亡してから初めての敗北だったが、ジョゼフはルシファーに勝てなかった悔しさ以上に、ルシファーと言う遊び相手を見つけたことに喜びを感じていた。

「ルシファー、お前と言う奴は本当に計り知れんな……、まさか、この俺が惨敗するとは夢にも思っていなかったぞ」

「ふふふっ、貴様も一回だけだが、俺と引き分けることが出来るとは思わなかったぞ」

 前の世界で子共たちとの何千、何万とチェスをしてすでにほとんどの手を知り尽くしていたルシファーがまさかジョゼフに『引き分け』に持ち込まれるとは本当に思っていなかった。

「そういえば、部下のエルフにアルビオンの実験農場で精霊の力を宿した鎧付のゴーレム……、ヨルムンガルドだったか? それはどうしたんだ?」

 ルシファーはジョゼフがチェスをしながら話したゴーレムについて尋ねた。

「ああ、アレか。……オレは、地獄を見たいが為、退屈をだったから作ったが、もう別にそんなことは考えておらんからな。正直、もうどうでもいい」

 ジョゼフは考え深そうにグラスに注がれたワインを眺めた。

 そんなジョゼフにルシファーが言った。

「ヨルムンガルドは性能はいいんだろう?」

「ああ。鎧には先住の『カウンター』が込められていて普通の魔法は効かないし、機動性にも優れ、武器も持てるからな」

「う〜ん……、製作するのにも金使っているんだし、勿体無いから盾でも持たせて国境に配備すればいいんじゃないか?」

「ん? なぜだ?」

「そりゃあ、他の国からガリア王国を守るためだろ? この国をよくするなら他国からの侵略を許さず、侵略しないで国力を高める事が大事なわけだろう」

 国をよくすると言う言葉にジョゼフの心は動いた。

 そうだ……。

 オレはシャルルの変わりにこの国をよくしないといけないだ。

 ジョゼフはグラスのワインを飲み干して呟いた。

「そうだったな……。オレはガリアをいい国にしないといけなかったな……」

「まあ、あまり重く考える必要はない。今のところ戦争は起こっていないし、この俺が力を貸すのだからな」

「力を貸してくれるのか……?」

 ジョゼフは心底意外そうにルシファーを見た。

 それにルシファーは当然と応えた。

「当たり前だろう。シャルロットと元オルレアン夫人は俺の妻だし、愛する妻たちの国をよくする事には大賛成だ」

「そうか……、すまないな」

 ジョゼフは頭を下げた。

「おいおいジョゼフ。ここは謝るところではないだろう」

「ははは……、そうだったな。ルシファー、ありがとう」











 ルシファーがジョゼフとチェスをしていた一方で、エルフィアとタバサは、別室。ジョゼフの娘のイザベラのところへやってきていた。

 ジョゼフが改心した事とルシファーに娘との関係を良好にした方がいいという提案により、ぎこちないながらも父親との親子関係を築いたイザベラは心を氷解させた。

 イザベラは過去にタバサに辛く当たっていたことを謝罪し、タバサも謝罪を受け入れた事で、以前のようによりよい関係とは言わないが、最悪だった関係が改善し始めていた。

「エレーヌ。それで父上とチェスをしていたあの黒髪の男性は誰なのですか?」

 イザベラは以前の呼び名でタバサに尋ねた。

「彼はルシファー。わたしたちの夫」

「……へっ!?」

 イザベラは激しく混乱した。

 夫!? 夫と言ったのよね!? ていうか私たち……たち!? 叔母上も!?

 イザベラがエルフィアの方へと視線を向けると、エルフィアは頬を朱色に染めて微笑んだ。

「えっと……、エレーヌ? 本当にルシファーという男が夫なの?」

「うん。ほんとうだよ妹も合わせて」

「妹も!?」

 寺院に居たとか言うジョゼットだったよね!!? ていうか、ジョゼットって四日ほど前から一緒に住み始めたのよね!!?

 もう手を出して……、というか、親子をまとめてなんて不潔よっ!!

 イザベラが顔を真っ赤にして取り乱している姿に心配になったタバサは声をかけた。

「どうしたの?」

「エレーヌ……!!」

 イザベラはタバサの両肩を掴む。

「なに?」

「あの男に酷い事でもされてないわよね!!? 体は大丈夫なの!!?」

 必死の形相で詰め寄るイザベラに驚くが、昨夜ルシファーとエルフィアにさんざん『お仕置き』されたタバサは、特に考えずに呟いた。

「うんん。すごく気持ちよかったよ。すごくあったかくて、幸せなの……」

「エ、エレーヌ……!?」

 ポーっと、惚けた表情で体を震わせるタバサにイザベラは倒れそうになった。

 倒れそうになりながらもイザベラはタバサに尋ねた。

「ま、まさか……、してないわよね?」

「ん? なにを?」

 首を傾げるタバサにイザベラは小声で呟いた。

「あ、アレよ……、よと、夜伽よ……」

「夜伽?」

 さらに首を傾げるタバサに業を煮やしたイザベラは真っ赤になって叫んだ。

「だから! 子作りはしたのかって聞いてるのよっ!!」

「…………っ」

 その問いにタバサは頬を赤くさせて、もじもじと俯いた。

 イザベラはタバサの態度とエルフィアまで頬を染めていた様子にすべてを悟った……。

 ほ、ほんとうにやったんだ……。

 ……、父上と同じぐらい大きい(背丈)ルシファーのモ、モノがよく小さいエレーヌに挿入ったわね……。

 ていうか、まだエレーヌは子共!? それに、伯母上までもっ!? 

 それと、おそらく従妹というジョゼットもすで魔の手にかかっているだろう……。

 いや……、それより、いや、私よりも先に経験したのね……。

 エレーヌが色っぽく感じるわけだわ……。

 イザベラの意識はゆっくりとブラックアウトし、ゆっくりと後に倒れていく。

「どうしたのイザベラ!?」

 倒れるイザベラを支えるタバサ。

「エレーヌが……、エレーヌが、先に、わたしよりも先に……」

 イザベラは、うわ言のように呟き続けた。











 ガリア王家で一夜を明かしたタバサとエルフィアは、次の日の晩、ガリア王宮の一室に造った【ゲート】から砂漠の新魔国へと帰還した。

 ルシファーはと言うと、今朝アルビオンから帰還したジョセフの使い魔であるシェフィールドに呼び出されたので、現在は王宮の地下にある一室で向かい合っていた。 

 部屋は地下という事で窓もなくジメジメしていて、小さな机と椅子が二つ、小さなベッドが一つと簡単な造りの部屋だった。

「それで、なんの用なんだ?」

 ルシファーが尋ねると、シェフィールドは懐から短剣を出して、ルシファーの首に当てた。

「ジョゼフさまになにをした……!!」

 シェフィールドは殺気を放ちながら問いかける。

 ルシファーは殺気に当てられても涼しい顔で応えた。

「ただ単に兄弟のしこりを治して、ジョゼフを改心させただけだが?」

「改心ですって……!!?」

「ああ」

 シェフィールドはルシファーを上から下へと眺めた。こいつに主を改心させる力があるのかと観察した。

「…………、ルシファーと言いましたね」

 シェフィールドはルシファーの瞳を見て言う。

「ジョゼフさまにあの雌豚……、モニエール夫人を愛するように仕向けたのはあなたですか?」

 シェフィールドは憎悪と嫉妬の篭った瞳でルシファーを睨んだ。

「ん? いや、確かに女を愛したり、家族を愛する事が素晴らしい事だということは教えたが?」

 確かにジョゼフが後室の夫人と娘のイザベラと仲が冷めていたから、仲良くなるように説教はしたな。

「そうですか……、そうですかっ……! あなたのせいでっ、あなたのせいで、ジョセフさまはあの雌豚と毎夜交わっていたのですね……、わたしは契約の際のキスまでの経験しかないというのに関わらずっ……!!」

「おいおいなにを……」

 ルシファーが言葉を続けようとしたところで、シェフィールドが短剣を握った手に力を込めて首を切ろうとした……が、ルシファーの薄皮すら傷つけることなく短剣はぽきんっと、折れた。

「なっ!!?」

 シェフィールドは信じられないとルシファーを見た。

「まったく……、そんなにジョセフを愛しているのなら強引に押し倒せばいいものを……」

 ルシファーはやれやれと呟いた。

「お前、男と付き合った経験が少ないだろ」

「うっ……!!」

 シェフィールドは図星を突かれた。

 た、確かに私は男と付き合った経験は2、3回しかない……、しかも……、

「気持ちが重いって言われていつも逃げられたか?」

「な、なんでそれを……!!?」

 シェフィールドはまたしても図星を突かれて戸惑った。

「まったく、ほんとうだったか……、まあ、お前の今の態度たったら男は寄りつかんだろうな」

 シェフィールドはジョセフの使い魔だと紹介されていたが、まさか物凄いヤンデレだったとはな……。

「…………」

 シェフィールドはううっと、胸を押さえた。

 その通りだ……。わたしは、いつも……、いつも……、愛が重いと男に捨てられた……。

 トラウマに思考を落ち込ませていくシェフィールド。

「やれやれ……、手間がかかるなぁ」

 ルシファーは面倒そうにシェフィールドを抱きかかえた。

「なっ!? なにをする!!?」

 じたばたと暴れるシェフィールド。隠し持った武器でルシファーを殺そうとするが、武器はことごとくルシファーの体に触れた途端に壊れてしまう。

 ベッドに寝かせられたシェフィールド。

 ルシファーは服を脱いで椅子にかけた。

 犯されてしまうのか……!!?

 シェフィールドは絶望しそうになるが、ルシファーの発した言葉に驚いた。

「愛欲に狂ってジョゼフや夫人を殺されても困るし、お前にたっぷりと男の堕とし方を仕込んでやる。俺が、一から十まで教えてやるからその技を使ってジョセフを堕とせ」

 ジョセフさまを……、堕とせる?

「……なにを言っているの?」

「だから、性技を習得してそれでジョセフの側室にでもなればいいだろって言っているんだよ」

 そうなればシェフィールドも凶化しないですむだろう。

「側室……、ジョセフさまの側室……」

 シェフィールドはうわ言のように呟く。

 側室なら寵愛を受けることが出来る……、いえ! ジョセフさまとの子共を作ることも夢ではないわ!!

「どうする? 俺の授業を受けてみるか?」

 ルシファーがあらためてシェフィールドに向かって呟いた。

 シェフィールドは頭の中で思考を巡らせる。

 側室、側室、側室、側室……、側室にさえなればあの雌豚と同じステージ……、いえ!! 私が夜伽を覚え、ジョゼフさまに寵愛を……、あの雌豚を蹴落として私がっ! 私が正室に入ることさえ夢ではないっ!!

 雌豚は現在は恋仲止まりなのだから行動は迅速に行わないと……!!

 ジョゼフさま以外の男に触れられるのは気に入りませんが、これは愛の試練として甘んじて受けましょう!!

 私がこの男を利用するのです!!

 この男に抱かれる訳ではありません!!

 この男は……、そう! 魔法書!! 魔法の本なのです!!

 私にジョゼフさまの堕とし方を教える本なら別に抱かれる訳ではないし、ジョゼフさまのために体をはるのですから、これは浮気ではないのです!!

 シェフィールドは覚悟を決めて言った。

「分かりました。ルシファーさま。性技をご教授願いますか?」

「ああ。どんな男でも堕とせる技を教えよう」

「ふんっ、ジョゼフさまさえ堕とせればいい」

 シェフィールドはそう呟くと体から力を抜いた。

 すべてはジョゼフさまを堕とすために……!!!

「じゃあ、始めようかシェフィールド」

「よろしくお願いするわ」











 蝋燭に灯された火が部屋を怪しく照らす。

 狭い部屋のベッド上で絡み合う二人を……。

「そうだ、その調子で舐めるんだ」

 ベッドの上に裸で仰向けで寝転がり、股を開いたルシファーが呟いた。

「ん、んちゅっ……、こうか?」

 同じく裸で、ルシファーの股の間に頭を入れペニスに舌を這わせているシェフィールドはルシファーに言われるがままにペニスを舐め続ける。

 そう。

 現在ルシファーはシェフィールドに性技を仕込んでいた。

 すでにシェフィールドに性技を仕込み始めて三日が経っていて、最初こそ好きでもない男と体を重ねる事を嫌がっていたシェフィールドは、すっかりとルシファーの授業にはまっていた。

 シェフィールドのフェラチオで射精感が高まり、射精しようと思う瞬間。ちゅぅぅぅっとペニスを喉まで挿入して思いっきり吸い付いてきた。

 びっるるるぅぅぅっと、流し込まれる精液。

 シェフィールドは胃の中に精液を流し込まれながら、片手で抱き込むように腰を抱き、もう片方で玉袋を揉み、搾り取るように吸い出した。

 快楽で腰が浮き上がる。

 シェフィールドは元々そっちの才能があったようだ。

 ヤンデレ気質もあってか上達が早い。

 いうならば生粋の肉○器にしてそっちの意味の女王さま。

 SMのどちらも達人級にこなせ、特にすらりと長い美脚による足こきはシェフィールドの淫語と相まって、はまってしまいそうになるし、アナルビーズなどの玩具で責められる姿も艶かしくて愉しい。

 ちなみに、多くのアナルビーズや他の玩具は、砂漠の新魔国の特製品で品種改良した木、【ビーンズ】や【ディル】の木を加工したモノや、合成樹脂から出来ている。

 木製だが、人体に影響なく、さらに木製なので色々と【薬】を染みこませたりと仕込が出来る。

 アナルビーズだけでも50以上もの種類の形状のモノや、さらに弾力のあるゴムや奥まで観賞できる仕様になっている透明なガラスといった様々な素材に加え、ビーズ用の媚薬20種類や大、中、小とサイズにも富んでいる。

 そして、なによりもすべてを受け入れる深い愛情がある。

 まあ、普通の男なら逃げるのも頷ける。

 腰の上でアヘりながら貪るような腰つきと膣のうねり具合、さらに耐久量も優れ、何度射精されようと貪欲に精液を求め、全身を精液で染め上げられて悦ぶ姿を、セックスをただの跡継ぎ作りの方法と考えている軟弱な貴族の男や童貞が見てしてしまったり、シェフィールドにロックオンされ、襲われてしまえば逃げるだろうな……。

 まあ、ジョゼフは普通の貴族や王族とは違うし、もし枯らされてしまうようであれば、滋養強壮の特製ドリンクを飲ませればいいだろう。

 以前、セックスの良さを感じられるように男性用の媚薬を投与して、モニエール夫人とセックスさせて快楽に目覚めさせてもあるし、シェフィールドに押し倒させて強引に快楽に溺れさせればいいから大丈夫だろう。

 とりあえず、目の前で美味しそうに精液を啜っているシェフィールドに今度は【縛りプレイ】や【48手+変則技52手】を教え込むかな。











 数日後……。

 ルシファーに免許皆伝を貰ったシェフィールドは寝室で一人眠るジョゼフに夜這いをかけた。

 そしてその翌日、花の咲いたような笑顔のシェフィールドと、真っ白に枯れ果てたジョゼフが王宮で目撃された。















【後書き!】





 久々の更新!!

 初登場の聖皇さまとイケメン竜騎士ジュリオのやり取りが最終的に全部シェフィールドに持っていかれた……。

 あと、携帯版では長すぎてエラーになるとの事でしたので33、35は前半、後半の二部に分けました!

 次回予告!

 次回は久々の主人公! ルイズ&才人登場!! あと、あの変わったエルフも登場!!

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