小説『ゼロの使い魔 世界を渡る転生者【R−18】』
作者:上平 英(小説家になろう)

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『第35話 久々登場! 才人とルイズ! ルクシャナ〜旅立ちまでのカウントダウン〜 』





 ルシファーはガリア王国での授業を終え、現在はキュルケとタバサを連れトリステイン魔法学院へと戻ってきた。

 ルシファーたちがトリステイン魔法学院を訪れた理由は二つ。

 ガリア王国に帰国したと公的になっているタバサの退学届けを出す事と、部屋の荷物の回収。

 そして、キュルケの退学届けを出すためだ。

 ガリア王国に戻ったタバサはもちろん、もともと結婚しないで遊びまわっている事が体裁が悪いと言われてトリステインに留学したキュルケは、ルシファーとすでに婚約済みなので学院に通う理由もなく、学院に通うより正式に婚姻を結び、ルシファーとの子を成すことを望まれている。

 キュルケもルシファーとの子共を産む事を望んでいるので思い切ってタバサと一緒に退学することにしたのだ。

 ルシファー達は、学院長室でオスマンに二人の退学届けを提出し、女子寮の部屋に設置した【ゲート】から新魔国へと戻ろうとしていたら、才人を連れたルイズに呼び止められた。

「ちょっとルシファー!」

「ん? どうしたルイズ?」

「タバサはなんでガリアに行ったのよ!? せっかくガリアから助け出したのに意味ないじゃない!」

「そうだ! なんでジョゼフなんかのところにタバサを返したんだ!」

 ルイズと才人はルシファーに詰め寄る。

「そう言えば説明していなかったな……」

「説明しなさいよ!」

「わかった」

 ルシファーは全て教えるにはマズイ部分が多々あるので、タバサとジョゼフが和解した事を簡単に、掻い摘んで説明する事にした。

「タバサには逃亡生活など送って欲しくなかったからな。王位争いがもともとの原因だったし、ジョゼフと交渉してタバサから王位継承権を無くすことでお互いこれ以上争わない事にしたんだ」

「でもっ! タバサのお母様は……」

「そちらも解決済みだ。解毒も済んでいる」

「ほんとに?」

「ああ。完全に治っている」

 正直に言うと数ヶ月も前に完治していたが……。

「でも、ルシファー。ジョゼフってヤツほんとに信用できるのか?」

 才人がルシファーを疑いの眼差しで睨んだ。

 ルシファーは才人の視線を真正面から見返して呟いた。

「信用している。それに……俺が守る」

「そうかよ……」

 才人とルイズはそれ以上口を出す事を止めた……。

「ああ、そう言えば……」

「なによ?」

「どうかしたのか?」

「なんでお前達二人はタバサがガリアに帰った事を知っているんだ?」

「違うわよ」

「ロマリアのジュリオっていう神官が学院まで『タバサは今どこにいる!?』って血相変えて聞きに着たから、気になって城まで行って姫さ……、アンリエッタ様に聞いたんだ。タバサがガリアに戻ったって」

 ルシファーの問いにルイズと才人は首を振って呟いた。

「そうか……」

 ルシファーは一言呟くと顎に手を当てて思考を巡らせ始めた。

 ロマリアの、神官が、血相を変えて、魔法学院まで着た……? 何故? やはりシャルロットとジョゼットを利用しようとでも考えていたのか。

 まあ、シャルロットもジョゼットもこちらで確保しているから大丈夫だが……。

 一応計警戒しておくか……。

 ルシファーが思考を巡らせていた時、ふいにルイズがルシファーに声をかけた。

「そう言えばルシファー」

 ルイズの声音は少し……、いや、かなり不機嫌さを含んでいた。

 ジト目でルシファーを見上げ、言い難そうに、まるで喉に魚の小骨でも刺さっているかのような不快感を体から滲ませていた。

「どうしたルイズ?」

「……あんた宛に手紙を預かっている事を思い出したわ」

「手紙?」

「ええ。少し前にちい姉さまの病気を治したんですってね」

「ちい姉さま?」

「カトレアさんの事だよ」

 ルシファーが首を傾げていると才人が補足してきた。

「ああ、カトレア嬢の事か。確かに病気を治したぞ」

「……そのことについてはお礼を言うわ。でも……」

 ルイズは呟きながら手紙を差し出した。

 ルシファーが差し出した手紙を受け取り、手紙を開き読み始めようとした時、ルイズは杖を片手にルシファーを射抜くような、絶対零度の視線で睨んだ。

「でも、ちい姉さまに手を出す事は許さないわよ?」

「…………」

 ルシファーはルイズの呟きを聞きながら手紙を読んでいた。

 手紙の枚数は全部で5枚……、1〜2枚目は病気を治してくれた事へのお礼で、残りの3枚は……、|恋文(ラブレター)だった……。

 ルシファーさまのおかげで近くの森まで自分の足で行けるようになりました。

 ルシファーさまは動物がお好きですか?

 ルシファーさまは普段どんな事をなされている方なのですか?

 と、始めは他愛もない質問のようなものだったが、最後の方にくると……。

 どんな女性が好みなんですか? 私は今まで体が弱かった事もあって『いき遅れ』で、あまりご縁がなくてもしよければ……、で途中の文字が消されていたり、もし、よろしければ今度お茶でも〜といったデートのお誘いまで書かれていた。

 おそらく渡す前に内容を覗き見したのであろうルイズはプルプルと手に持った杖を震わせていた。

「まあ、手紙は後でまた読むか……」

 ルシファーは呟くと手紙を破かないよう丁寧に畳んで懐へ仕舞い新魔国への【ゲート】を出した。

「ちょっ!? ちい姉さまにほんとに手を出すんじゃないわよ!? ねえ! 聞いてるの! ねえったら!!?」

 ルイズが大声でルシファーへ向かって叫ぶが、ルシファーはまったく聞こえていない様子で【ゲート】へ向かって歩いた。

「あんた!! 待ちなさい!! ちい姉さまにてを出さないって始祖に誓いなさいよ〜〜〜!!!!!」

 ルイズの叫びは才人と二人だけとなった部屋に空しく響いた……。

 ……そして、才人は見ていた……。

 光の輪に入っていくルシファーが、ルイズの叫びを嘲笑ったのを……。

 こ、こいつ絶対手を出すつもりだ……。

 才人はルシファーが行動を起こした時、確実に怒り心頭で暴走するだろうルイズをどうやって止めようかと悩んだ……。












 ルシファーが退学届けを出しに魔法学院にいっていた同時期に、所変わってエルフの住まうサハラの奥、オアシスがいくつも集まったエルフ達の集落で、ひと際大きな家から言い争いが行われていた。

「だから母さま、わたしは旅に出るって言ってるでしょ!」

「待ちなさいルクシャナ! 蛮族の世界に行くなど許しませんよ!」

「そうだ! それに、なんでそれが僕との婚約解消になるんだよ!?」

 若草色の衣装を着たエルフの少女に、母親と思わしきエルフと短髪で気の強そうなエルフの青年が怒鳴っていた。

「もう! なんども言ってるでしょ! わたしも叔父さまみたいに蛮人世界に行って見たいのよ! わたしは蛮人の事を調べる学者なのよ!?」

「ビダーシャル卿は仕方なく蛮人と交渉するために、危険を冒して蛮人世界に行ったのよ! それがどれほど危険な事か分からないの!?」

「僕との婚約解しょ……!!」

「悪魔の力の使い手が集まっている事も知っているでしょう!? いつ蛮人が砂漠を越えて攻め込んでくるかも分からないのに……!」

「僕との……!」

「ルクシャナ、わたしは心配なのよ……」

「ぼ……」

「母さま……、だけどわたし……」

「…………」

 ルクシャナと母親のムニィラは、ルクシャナの幼なじみで婚約者(?)のアリィーを無視して見詰め合った。

 そんな誰も口を開く事の出来ない状況で、家の扉が開き、エルフの男性が入ってきた。

「お久しぶりですムニィラ様。ん? ……どうしたんですか?」

 部屋の中の視線が集められ、状況を飲み込めないエルフは立ち止まって首を傾げた。

「叔父さま!」

 そんな状況の中、一番に動いたルクシャナはエルフの胸に飛び込んだ。

「どうしたんだルクシャナ?」

「ビダーシャル卿!?」

 ビダーシャルが胸に抱きついてきたルクシャナの頭を撫でていた時、部屋の隅で半ばいじけていたアリィーが大声を出しながらビダーシャルにすがりついた。

「どうしたんだアリィー? 『ファーリス』の称号を持つ者が情けない声をだして?」

「ビダーシャル卿聞いてくださいよ! ルクシャナが蛮人世界に行くなんて言い出したんですよ! それに、それに僕と婚約解消するって〜〜〜〜!!」

 いつもは年若いながらも秀才と同胞達からも認められているアリィーが叫びながら涙を流す姿に、ビダーシャルは帰ってくるタイミングを間違えたようだと本気で後悔していた……。












「で、話を要約すると……。ルクシャナは旅をする事と、アリィーとの婚約解消を伝えるために実家に戻って着た」

「はい、叔父さま」

「話を聞いてムニィラ様は蛮人世界……、旅をする事を反対」

「そうです」

「さらに婚約解消を申し出た」

「はい」

「ぅぅ……、なぜなんだぁぁ……、ルクシャナ……」

 ビダーシャルは双方をとりあえず落ち着かせ、長机に座り状況を整理した。

「…………」

 ビダーシャルは落ち着いて、慎重に呟いた。

「とりあえず、ルクシャナ。なんで旅に出たいんだ?」

「蛮人世界の研究をしたいから、砂漠に篭っているだけじゃ詳しく分からないし……」

「それはここでも出来るだろ!? わざわざ蛮人世界に君が行かなくても……!」

「アリィーとりあえず落ち着きなさい」

「ぐぬぬっ……」

 興奮するアリィーを宥め、ビダーシャルは次の質問に移った。

「じゃあ、婚約解消はなぜだい? アリィーと君は仲がよかったと思っていたんだが?」

「確かにわたしはアリィーが嫌いになったわけじゃないわ」

「そ、それならなぜ婚約解消なんか……!?」

 アリィーの呟きにルクシャナは困ったような表情で呟いた。

「……正直言うとアリィーの事あんまり男の子として見れないのよ」

「「えっ?」」

 ルクシャナの呟きにアリィーとビダーシャルの声が重なった。

 そしてそんな二人を無視してどんどん呟くルクシャナ。

「アリィーって物心つく前から一緒にいたでしょ? もう男の子って言うか兄とか弟とか家族みたいで、好きかって言われたら好きだけど……、婚約者とか男の子みたいには考えられないのよねー」

「…………」

「…………」

 ルクシャナの呟きに化石のように固まってしまうアリィーと、『男として見てません』とはっきり婚約者から告げられたアリィーにどう声をかけていいか分からないビダーシャルだった……。

 そしてそんな二人をよそにまったく口を開かなかったムニィラだったが、ルクシャナの呟いている表情などからある事を予想していた。

「ふぅーー……」

 ムニィラが大きく息をはいた。肺の中の空気を全てはき出す様な長いため息。

「母さま?」

「ムニィラ様?」

 ルクシャナとビダーシャルがムニィラに声をかける。

「ビダーシャル卿、アリィーは申し訳ありませんがお引取り願いますか? 娘と二人で話がしたいので」

 ムニィラは額に手を置いて天井を仰ぎ見ると正面を向き、ビダーシャルと未だに石化しているアリィーを見て呟いた。

「そうですか……、わかりました。ほら、行くぞアリィー」

「…………」

 ビダーシャルはネフテスの評議会本部……、通称『カスバ』と呼ばれるエルフ世界の中枢機関への報告もあったので素直に石化しているアリィーの腕を引いて家から出て行った。

「さてと……、では聞かせてもらいましょうかルクシャナ?」

 親子以外誰もいなくなった家でムニィラは鋭い視線でルクシャナを射抜いた……。

「か、母さま……?」

 母親の視線にルクシャナの顔から大量の汗が流れ落ちる……。

 ムニィラの口がゆっくりと動き、言葉を紡いだ……。

「あなた……、いったい誰に恋したの?」












 ルクシャナは母親の問いに口を|噤(つぐ)み、視線に逸らした。

「な、なにを言ってるのよ?」

 明らかに動揺しているルクシャナにムニィラは大きなため息を吐いて呟く。

「あなたが蛮人世界に行きたがっていた事は昔から分かっていました」

「うぐっ……」

「でも、婚約解消はかなりおかしいでしょう?」

「お、おかしいってなにが?」

「さっきも言っていたけど男の子に対する好意、色恋事に心配するぐらい疎かったあなたが旅に出るぐらいで婚約解消を言い出すわけがないでしょ?」

「っ!?」

「それに旅に出るって言いましたよね? なぜ『蛮人世界に行く』と言わなかったの? あなたなら始めからそう言う筈でしょ?」

「ううっ……!」

「さてと……、ではルクシャナ? いったい誰に恋したの? 母さまに話しなさい」

「……っ!!?」

 ルクシャナは母親の視線と、場の精霊達が母親に集まっていく様子に息を飲み、秘密の話だったが、母親の剣幕にゆっくりと口を開いてしまった……。











 ルクシャナが母親の圧力に負けてから2時間……。

 エルフの証ともいえる三角に尖った耳の先端まで真っ赤に染めながら机に突っ伏しているルクシャナと黒いオーラを纏わせて微笑んでいるその母親の姿があった。

「で、あなたの家に侵入した男に一目惚れしたわけね……」

「一目惚れなんて……!」

「実際にそうでしょ? 家の中に不法侵入した男と一晩語り合ったりしたんでしょ? 同じベッドで……」

「そ、それは……! そ、そうだけど……」

 ルクシャナは自分の痴態……、とくに『粗相』をしてしまった事を話さなかった(話したくもなかった)ので要約すると不法侵入した男を受け入れてベッドで一晩語り合った事になっていたのだった。

 まあ、母親に話した『ベッドで語り合った』だが、それも『裸で』が抜けていたのでルクシャナもこれ以上強く言う事は出来なかった……。

「それで、ルクシャナ? あなたが旅に出るって言い出した理由はその男を捜すためなの?」

「そ、それは……」

「ふぅ〜……、まさか本当に男を探すためだったの……」

 ルクシャナの反応に、ムニィラは完全にルクシャナに惚れている婚約者(?)アリィーに心の中で謝った。

「でも、その男は誰か分かっているの? というか種族は? ……まさか蛮族なの?」

「え、ええっと……?」

 ムニィラの問いに口ごもるルクシャナ。

 口に出していいか悩み、口をパクパクと動かした。

「……ほんとに蛮族なの……?」

「いや、それが……、蛮人じゃなくて、なんていうか『大いなる意思』よりも上の立場の……、人?」

 蛮族に恋をして砂漠を出て行ったエルフの一族が迫害されている事を知っているムニィラは顔を青に染めたが、娘の言葉に完全に思考を止める事になった。

 『大いなる意思』とは精霊を統べる元としてエルフの信仰の行き先となっているもので、その『大いなる意思』よりも上位にある存在に恋をしたと言った娘の正気を疑ってしまったのはムニィラの所為では決してないだろう……。












 気を取り直して……。

「で、ルクシャナ……。あなたはその『大いなる意思』よりも上の存在と出会って恋をして、その人? が砂漠のどこかに国を創っているらしいから探しに行くと言うのね……?」

 両肩に指が食い込まんばかりの物凄い力で掴まれ、真正面から睨まれ、疑い120%に尋ねられたルクシャナは半ばやけくそ気味に叫んだ。

「そうよ! 好きになっちゃったんだから仕方ないでしょ!?」

「……くっ!!」

 ムニィラは娘の肩から手を離し、精霊を使ってビダーシャルに呼びかけた。

『ビダーシャル卿、聞こえますか?』

『はい……。どうかなさいましたか? またルクシャナが?』

『はい、それもありますが相談したい事がありまして……』

『相談ですか? それはアリィー……』

『いえ、アリィーはいいです』

『そ、そうですか……。では、分かりました。丁度報告も終わった事ですしすぐに向かわせていただきます』

『ありがとうございます』

 とムニィラは呟いて通信を止めてルクシャナに向き直った。

「この話は改めてビダーシャル卿を交えて話します」

「はい……」












 そしてビダーシャルを交えてルクシャナはその男……、つまりはルシファーについて説明した。

「で、その男に精霊魔法で攻撃しようとしたら、精霊が怒って自分を攻撃してきたと……」

「ええ、叔父さま。わたしの契約下にあるオアシスの精霊で攻撃しようとしたら、契約を無視して攻撃されたわ」

「それに精霊を操るですか……」

「いえ、母さま。操ると言うか自分から従っていたわ。それに、オアシスの精霊達が活性化したのよ。すごい光景だったわ……、まるで精霊が踊ってるみたいで……」

「そうですか……」

「ふむ……」

 興味深そうに、そして信じられないとビダーシャルとルクシャナはルクシャナの言葉に耳を傾ける。

「それに、黒い髪に黄金の瞳で、体がすごいの! 細身なのに無駄のない筋肉で覆われていて……」

「ほう……」

「…………」

 テンションが上がったルクシャナはそのまま言った。

「だからわたしもう一度彼に会いたいの! 砂漠に国を創るって言ってたし、それに彼は物知りでねっ、蛮族に詳しかったし……、も、もう一度会いたいし……」

 ルクシャナの顔がどんどん朱に染まる。思わず席から立ち上がってしまった自分に羞恥して言葉を濁した。

 その娘の様子を見てムニィラは諦めたように息を吐き、あまり色恋に関心がないビダーシャルまでもがルクシャナの想いに気づき、アリィーの幸せを願った……。

「わかりました……。行きなさい……」

「えっ!? いいの?」

 ムニィラの呟きにルクシャナは席から再び立ち上がった。

 ムニィラは半ば呆れ気味に呟いた。

「ええ、あなたは言っても聞かないでしょうし……、頻繁に顔を見せるなら許します。あと、旅立ってからその男が半年以内に見つからなかったらすぐに家に帰ってきてアリィーと結婚しなさいよ?」

「ほんとに!? ほんとに行ってもいいのね!?」

「ええ……、ですが、他の種族との壁があることだけは覚えておくのですよ?」

「はい! 分かりました!」

 ルクシャナは元気よく返事を返した。

「ム、ムニィラ様……」

 ここで先ほどまで無言だったビダーシャルが口を挟もうと呟こうとしたところで、かぶせるようにムニィラが呟く。

「ビダーシャル卿。申し訳ありませんが蛮人世界に再び戻る時に途中まででいいので娘を連れてっていってくれませんか?」

「し、しかし……」

「お願いしますビダーシャル卿、途中まででいいのです」 

 どうせ見つからないでしょうから、と小声で呟きムニィラは頭を下げた。

「し、しかし……、蛮人世界の王との交渉で資材を調達しなければならなくなりましたので出発は半年ほど先になるのですが……」

「ルクシャナ」

「はい。母さま! 半年後でいいです!」

「ビダーシャル卿」

「……わかりました。半年後……、蛮人世界へ出発する時に一緒に連れて行きます」

 もう逃げられないとビダーシャルは諦めて頷いた。

「ありがとうございますビダーシャル卿」

「いえ……」

「うふふっ! やったわ! 半年後! 半年後ね叔父さま!」

 ルクシャナは半年後ではあるが母親に旅立ちを認められた事に喜んだ。

 そして嬉しそうに飛び跳ねる姪を眺めながら、ビダーシャルは未だに石となっているだろうアリィーへ激を……、

 半年以内にルクシャナの心を射止めることが出来れば……、いや、たぶん無理だな半年でどうこうなるならすでに結婚してるだろうし……。

 送ろうとして止めた……。

 こうして半年後に、ルクシャナはビダーシャルと一緒に旅に出る事になった……。












 ルクシャナが旅に出る許可を貰って喜んでいた時、またまた所変わって……、ゲルマニアのフォン・ツェルプストー領、フォン・ツェルプストー家の屋敷の一部屋で、ルシファーとキュルケが情事に耽ろうと服をお互いに脱がせ合っていた……。

 ルシファーは新魔国にいったん戻り、キュルケを連れて以前連絡した通り学院を正式に退学した事を報告しにやってきたわけだったのだが、領主とその妻……、つまりキュルケの両親に食事に誘われ、そのまま泊まる事になったのだ。

 そして、現在のルシファーはフォン・ツェルプストー家のあからさまな、意図があるであろう性欲増大料理を食し、それなら思い切ってノッテみようと開き直ったところだった。

「ダーリンはベッドに座ってて、まずは飲みたいから、ねっ?」

「ああ、わかった。ふふっ、楽しみだな」

 ルシファーは微笑むと裸のままベッドに座り、肩幅より少し大きく足を開いた。

「ええ、『微熱』のキュルケがたっぷりと楽しませてあげるわ」

 キュルケは妖艶に微笑むとルシファーの股の間で鎌首をもたげている巨大なペニスの亀頭にキスを落とすと、舌を伸ばして亀頭をまずは時計回りにくるりと汚れを舐め取るかのように舐め、次に裏スジから竿を伝って玉袋へと舌を這わせた。

「んちゅ、ぅんっ、うふふっ、厭らしい匂い……、頭の芯からクラクラしちゃう……」

 キュルケはペニスに頬ずりしながら玉袋を指でやさしく解すように弄った。

 そしてさらにキュルケは大きく、上で見つめているルシファーを悦ばせる様に大きく口を開けてペニスを飲み込むように咥え込んだ。

「うぶぶむ……、うぶっ、うむっ……」

 ペニスの3分の2程咥え込んだキュルケは口内で舌を動かした。

 喉の奥に亀頭を当てながら下で左右を裏スジをなぞる様に舌を動かし、口を窄めて吸い出すように吸引し、時おりアクセントとしてペニスを甘噛みした。

「すごくいいぞキュルケ……、それに美味しそうに俺のを咥えるお前は美しい……」

 呟きながら両手でキュルケの頭を掴み引き寄せるルシファー。

「うごっ!? じゅぶぶっ! んぶっ……、んぶぶっ!」

 喉の深いところまで挿入された事にキュルケは驚いたが、すぐに表情を蕩けさせルシファーが動かすままに、精処理道具のように、なすがままに頭を前後に動かさせられるキュルケ。

 じゅぼっ、じゅぼっ、っという水音が静まり返った部屋に響き、キュルケの口からはおびただしいほどの涎が流れ、キュルケの肌にポタポタと落ちた。

「だ、|射精()すぞキュルケ! たっぷりと飲んでくれ!」

 そしてそんな時、ルシファーに限界が、と言っても我慢せずに射精したいという欲望のままに精液を解き放った。

 キュルケの喉にセットされた亀頭からおびただしい量の精液が出され、その精液は直接キュルケの喉を通って胃へと流し込まれた。

 ごくっ、ごくっとキュルケの喉がしきりに動き、それに合わせて口内も蠢いた。

 そして射精が終わるルシファーはゆっくりとキュルケの口からペニスを引き抜いた。

 キュルケはペニスに絡みついた精液まで全て唇で削ぎ落とし、ちゅぽんっと可愛らしい音を響かせ口を離すと両手を頬に添えて、くちゅくちゅと口内で味わうように精液を転がした。

「うちゅっ、うむっ、んんっ! ほんと、いつ飲んでも濃厚で美味しいわ〜。ふふっ、でも今日は普段より濃厚だったわね……? 料理が効いたのかしら?」

 キュルケは口内に残った精液を飲みながら呟いた。

「そうだな……、もう学生でもないし、これでいつでもキュルケを孕ませれるようになったからかも知れないな?」

「ふふっ、それは素敵ね! でも、まだ子育てよりもダーリンと楽しみたいんだけど」

 キュルケは立ち上がってルシファーをベッドへと押し倒した。

 ルシファーもキュルケにされるがままにベッドに仰向けで寝転がる。

「俺もキュルケと楽しみたいな……、あと、子共を産んだとしても子育ての合間を縫ってするつもりだからな?」

「あら? 子共を産んでも休ませてくれないの?」

「当たり前だろう? セックスは夫婦の当然の営みなんだから終わる事などないから覚悟しておいてくれ」

「そうっ、それは楽しみね!」

 キュルケは笑顔を浮かべるとルシファーに跨り、足を大きく開くとルシファーに咥え込む様を見せ付けるように腰をゆっくりと落としていった。

「ん、んんっ! いつ|挿入(いれ)てもダーリンのはすごいわねぇ……、あたしのオマンコが壊れ、そうよっ……!」

 キュルケは口の端から涎を溢しながら|挿入(いれ)る。

 赤く充血し華を咲かせたオマンコで凶悪な、反り返ったペニスを咥えこんでいった。

「ふ、ふふふっ! 全部っ! 全部|挿入(はい)ったわ!」

 キュルケはペニスに串刺しにされて歓喜の叫び声をあげていた。最初は途中まででいっぱいになった膣道が今ではすべてを咥え込み完全に繋がれる事に深く繋がれる事に歓喜し、キュルケは理性の鎖を完全に外して腰を振り始めた。

「あ、あぐぅんっ! ふふふっ!」

 キュルケは燃えるような赤い髪を振り乱しながら、腰で円を描くように回してペニスをドリルのように膣壁を削るように擦り付け、さらに上下に跳ねて雁首を味わい、背を反らせて別の快感を求め喘いだ。

「キュルケっ!」

 ベッドでされるがままになっていたルシファーも腰が自然と浮き上がり、両手を伸ばしてキュルケの動きにワンアクション遅れて踊る褐色の双房を掴んだ。

「うふふっ、ほんと、ダーリンって胸が大好きよねっ」

 キュルケは自分の胸を揉むルシファーの手に自分の手を重ねて快感を味わった。

「ああ、大好きさ! お前のすべてを愛している!」

「嬉しいわ! ダーリン! あたしもっ、あたしも愛してる!」

 ルシファーはキュルケを押し倒し、両太腿を手で掴むと腰の動きを加速させ射精への階段を駆け上っていく。

 キュルケもオマンコを、全身をルシファーに蹂躙されながら悦びを感じ味わった……。

 自分がルシファーに犯されている事を、自分がルシファーを犯している事を、すべてを幸福に感じ巨大な快楽に感じて愛され愛していると言う感情を味わっていた。

「ダーリン! |射精()して! 思いっきり! あたしの中に……!」

「ああ! |射精()すぞ! キュルケ!!」

 ルシファーの叫びと共に腰が前に突き出され、亀頭が子宮口をこじ開ける。

 キュルケも両足と両腕でルシファーを引き寄せる。

 ビュルルッ! ビビュゥゥ、ビュビュッ、っとキュルケの子宮を埋め尽くす白濁した精液。

「ああああ〜〜〜〜!!! い、いくぅううううううううううううう〜〜〜〜!!!!」

 キュルケは力いっぱいルシファーの体を抱きしめながら、子宮を焼く熱に、精子の蠢きを感じて絶頂した……。

「はぁ……、はぁ……」

「はぁ……、はぁ……」

 そして繋がりあったままキュルケとルシファーはお互いを存在を確かめるように唇を合わせ、匂いを嗅ぎ、体を舐めあい、未だに繋がっているペニスを見て笑みを溢した……。











 翌朝……。

「ん……」

 ルシファーが目を覚ますと、口の中に硬くなったモノが含まれていて、さらに目の前に褐色色の暖かな双房に視界を埋め尽くされていた。

 ルシファーはゆっくりと昨夜の事を思い出す。

 そ、そう言えば、昨日はキュルケと始めて……、一回目が終わった後、歯止めが効かなくなって……、3、4? いや、何回したんだ?

 まあ、それは置いておくとして、キュルケもまだ寝ているみたいだし……、久々に甘えようかな……。

 ルシファーは口に含んだキュルケの乳首をさらに深く咥えると、キュルケの体を抱いていた左腕を引き寄せ密着し、赤ん坊のように口内で乳首を転がし、吸い始めた。

「んんっ、ぁぅっ……」

 まだ眠っているキュルケが快感を感じているのか喘ぎ声を漏らした。

 ルシファーは横抱きにしたまま腰を引くとずぶっとした生々しい感触にペニスからのぼり、まだ挿入中であることに気づき苦笑した。

「また繋がったまま寝たのか……」

 そして、ルシファーはキュルケの谷間に顔を擦りつけながら自分の匂いと、混じりあったキュルケの体臭を嗅ぎ、肌を丹念に舐め始めた。

 まるで母親に甘える胎児のように体を密着させ胸に顔を埋めるルシファー……。

 キュルケは狸寝入りを続けたままルシファーの頭を撫でながら、心の中でルシファーの滅多に見せない姿に身悶えていた……。

 ふふふっ、やっぱりダーリンって最高だわっ! もうっそんなにあたしを愛しているの? ふふっ、一生懸命お乳吸ってる姿……、そそるわぁ〜。ほんと、いつもは格好よくて野獣みたいに迫ってくるダーリンがこんなに甘えてくるなんて……、ほんとに妊娠しておっぱい飲ませてあげようかしら? ふふっ、嬉しそうにあたしのおっぱいを飲むダーリン……、ああっ、すっごく楽しみだわ。赤ちゃんの分のお乳足りるのかしら?

 それからしばらく……、部屋にメイドが起こしに来るまで永遠と夫婦の営みは続いた……。















<後書き!>

 とりあえず更新再開!

 アットに入れない間も書いていたので、ストックあります。

 とりあえず、明日中にさらに2話投稿します。

 ルクシャナ旅立ちまで半年! そして結局アリィーが……。まあ、仕方ないか!
 

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