小説『ゼロの使い魔 世界を渡る転生者【R−18】』
作者:上平 英(小説家になろう)

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『第4話 土くれフーケ登場』



 サイトの治療を終えて、部屋に戻るとキュルケがエクスカリバーの鞘。アヴァロンについて尋ねてきた。

「ダーリンさっきの魔具は、なんなの!? あれだけの重症だった使い魔の怪我を一瞬で治しちゃうし」

 キュルケの問いに嘘を交えながら説明してやる。

「あれは、宝剣を収める鞘でな。その鞘には強力な抗魔力と持ち主に常に回復させる魔法が施されているんだ。俺がその鞘の回復魔法を才人に向けて使ったにすぎない」

 まぁ、本当は、回復魔法なんかじゃなくて、持ち主を不老不死化する能力なんだがな。エクスカリバーを見に宿している俺は、エミヤさんの奥さんに埋め込んだ時の方法を真似ただけなんだ。そう、才人に鞘を埋め込んで、ベッド下ににエクスカリバーを出現させ、鞘がサイトを持ち主だと勘違いし、体を治した後、両方消せば鞘は単なる回復アイテムで通せるといった寸法だ。

「へぇ〜。そうなんだ。それにしても、ダーリンってすごいのねぇ〜」

 キュルケが感嘆の声をだし、ベッドに飛び乗り、艶っぽい顔でこちらを見た。

「まぁ、大魔王だからな」

 俺もそう言って、キュルケのベッドに腰を下ろす。

「ねえ。ダーリン……? 本当にあたしなんかと契約してくれるの?」

 キュルケが不安げに擦りより、太ももに膝枕をするように顔を見上げてくる。本来主人と使い魔の関係を思うとキュルケは、使い魔よりもものすごく弱く、自分よりと考えられないほど身分が高いルシファーが、自分の使い魔に本当になってくれるのか不安を持っていたのだ。

「そう不安そうにするな。前にも言ったが、俺は気に入らない相手と契約する気もないし、一緒にいようとも思わない。俺は、お前を気に入ったから仮契約をしたんだぞ?」

「そう。仮、仮契約なのよ! 私はあなたときちんと契約したいの!」

 膝の上に頭を置いているキュルケの頭を優しく撫でながら語るが、仮契約と言った瞬間。求めるように両手を伸ばす。

 「言っただろう? 俺は、愛し合って契約したいと。だから、今のキュルケとは、契約できない」

 手を取って、優しく語り掛けるが、その内心はキュルケを押し倒し、野獣のように体を貪りたかった。

「もう……」

 キュルケを起き上がらせると押し倒し、これぐらいはいいよな? と思いながら貪るようなキスを何度も交わした。

 そして、それから夜が更けるまでの間、なんとか暴走せずに、欲望を抑え、愛撫止まりで終わった。

 ああ、そうそう。ギーシュと決闘した次の日。俺が才人の体を治療したことを、ルイズから聞いた才人がお礼を言いにきたんだった。

 そして、両手を取って、号泣しながら才人がお礼を言ってきた事をきっかけに友達になった。

 いや〜。才人マジでいい奴だったぞ。

 さすがは、あの我がままなルイズに耐えた男な事はあった!







 そして、俺はキュルケと過ごしながら才人がこき使われる様子を見たり、ルイズにばれない様に手助けしたりと、平和な時を過ごした。

 ちなみに【ガンダールヴ】についてオスマンから俺も呼び出されるかなと思っていたが、一度も呼び出しはなかった。

 まぁ、当然か。才人と俺は関係ないし、オスマンも極力、俺を刺激しないように動いているようだからな。

 それに、俺の原作介入により、いろいろと変わっている。特にキュルケは、才人に向かってアプローチもしないし、キュルケを取り囲むように群がっていた男子生徒も、部屋に乱入してこない。それどころか、俺はもうすでにタバサと出会っている。

 それから約一週間が経ち、虚無の曜日になった。

 キュルケの部屋の窓から、才人とルイズが王都へ武器を買いに行くのを見る。

 くくく、これで才人は、相棒のデルフリンガーと出会うはずだ。

 俺は、ルイズ達が戻ってくるまでキュルケと部屋で過ごした。

 そして、夕方になって帰ってきたサイトの背中に目覚める前のデルフリンガーを確認すると、ルイズの部屋に、キュルケとタバサを連れて尋ねた。

 まぁ、理由は才人が剣を背負って学園に帰ってきたことが気になったと言った。その後俺は、デルフリンガーの試し切りをしに広場に行くように誘導したら、キュルケとルイズが突然喧嘩を開始して、何故か才人が木に吊るされ、魔法の打ち合いに、宝物庫の壁にルイズが爆発魔法をかけ、ヒビを入れ、その後すぐにゴーレム登場。

 ゴーレムを警戒した。タバサは、使い魔であるウィンドドラゴンで空に逃げ、キュルケは俺が抱えて逃げてゴーレムから距離をとったが、ルイズは才人を助けようとして他より、危険な目に遭いながらも脱出した。

 それから、ゴーレムの肩の上にローブに身を包み顔を隠したフーケが降り立ち、宝物庫を漁り、破壊の杖を盗み消える。

 原作通りだな!







 次の日、ルイズに才人。タバサにキュルケ、そして俺の5人が学院長室に呼ばれ、原作通り教師たちが責任を擦り付け合ったが、オスマンが見かねて止め、目撃者がいないかルイズに尋ねた。

 そして結局。犯人への手がかりナシと分かり、秘書のロングビルがいないことをコルベールに尋ねた。

「ときに、ミス・ロングビルはどうしたね?」

「それがその……、朝から姿が見えませんので」

「この非常識に、どこに行ったのじゃ」

「どこなんでしょう?」

 そんな風に噂をしていると、ロングビルが登場した。

「ミス・ロングビル! どこに行っていたんですか! 大変ですぞ! 事件ですぞ!」

 興奮した様子で、コルベールがまくし立てる。しかし、ミス・ロングビルは落ち着き払った態度で、オスマンに告げる。

「申し訳ありません。朝から、急いで調査をしておりましたの」

「調査?」

「そうですわ。今朝方、起きたら大騒ぎじゃありませんか。そして、宝物庫はこのとおり。すぐに壁のフーケのサインを見つけたので、これが国中の貴族を振るえ上がらせている大怪盗の仕業と知り、すぐに調査をしました」

「仕事が早いの。ミス・ロングビル」

 コルベールが慌てた調子で促した。

「で、結果は?」

「はい。フーケの居所がわかりました」

「な、なんですと!」

 コルベールが素っ頓狂な声をあげた。 

「誰に聞いたんじゃね? ミス・ロングビル」

「はい。近在の農民に聞き込んだところ、近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです。おそらく、彼はフーケで、廃屋はフーケの隠れはないかと」

 そこでルイズが叫ぶ。

「黒ずくめのローブ? それはフーケです! 間違いありません!」

 とルイズは断言するが、それは少しばかり違う。だって、フーケは男はずがないからだ。原作介入による物語の変化で、犯人が男になったわけでもなく、秘書のロングビルが犯人だ。なんたって、スタイルがまったく同じだからだ。俺はすでに腰つきと骨格だけで女か男か判断がつくようになったし、昨夜見たフーケの胸は、ロングビルと同じ形をしていたからだ。 

 オスマンは、目を鋭くして、ミス・ロングビルに尋ねた。

「そこは近いのかね?」

「はい。徒歩で半日。馬で4時間といったところでしょうか」

「すぐに王室に報告しましょう! 王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」

 今度はコルベールが叫んだ。

 だが、オスマンは首を振ると、目をむいて怒鳴った。中々の迫力だった。

「ばかもの!王室なんぞに知らせている間にフーケは逃げてしまうわ! その上……、身にかかる火の粉を己で払えぬようで、何が貴族じゃ! 魔法学院の宝が盗まれた! これは魔法学院の問題じゃ!当然我らで解決する!」

 ロングビルは微笑んだ。やはりその答えを待っていたようだ。

 そして、オスマンは咳払いすると、原作さながら有志を募った。

「では、捜索隊を編成する。我と思う者は、杖を掲げよ」

 しかし、誰も杖を掲げない。困ったように、顔を見合わすだけだった。

「おらんのか? おや? どうした! フーケを捕まえて、名をあげようと思う貴族はおらんのか!」

 ルイズは俯いていたが、それからすっと杖を顔の前に掲げ、教師を驚かせ、ルイズに続くようにキュルケやタバサも杖を掲げる。

 そして原作のように3人は怒られる。だが、教師たちの怒鳴り声のなかオスマンが笑みを浮かべて言った。

「そうか。では、頼むとしようか」

 そして、またオスマンの言葉に教師たちは抗議したが、オスマンが「お前が行くか?」と聞いた瞬間。態度を崩し黙る。

 オスマンは、教師たちに向かって、杖を掲げた3人の紹介し始める。

「彼女たちは、敵を見ている。その上、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いているが?」

 タバサは返事もせずに、ぼけっと突っ立っていて、教師たちは驚いたようにタバサを見た。

「本当なの? タバサ」

 キュルケまで驚いてタバサを見た。

 まぁ、最下級といっても爵位だし、シュヴァリエは実力を認められて、初めてもらうことの出来る実力者の称号だからな。

「ミス・ツェルプストーは、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家計の出で、彼女自身の炎の魔法もかなり強力で……しかも、使い魔であるルシファー殿は強いからの……」

 オスマンは俺と目を合わせないようにこちらを見て言った。

「ダーリンもフーケ退治について着てくれる?」

「ああ、当然だ。キュルケを危ない目にはあわせるわけにはいかんからな」

「ふふふっ、ありがとうダーリンっ」

 キュルケは嬉しそうに抱きつき、オスマンは、無視して続ける。

「その……、ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の息女で、その、うむ、なんだ、将来有望なメイジと聞いているが? しかもその使い魔は!」

 それからオスマンは、才人を熱っぽい目で見つめた。

「平民ならがらあのグラモン元帥の息子である、ギーシュ・ド・グラモンと決闘して勝ったという噂だが」

 オスマンは、この時点ですでに土くれフーケは捕まったと思っていた。急ごしらえの部隊だが、隊員はシュヴァリエに伝説の使い魔ガンダールヴだけではなく、世界を統べた大魔王までいるのだ。たとえ相手が国であっても、勝てるはずがない。

 それからロングビルは、フーケの居所という廃屋に案内するためと、怪盗退治に同行した。

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