小説『大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦!!【R-15】【完結】』
作者:はならむ()

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一方、あのラクリーマは相変わらず一人でドンパチやらかしていた。

……彼は目の前のクイストのコックピットの前に移動、力ずくでハッチをバリバリ剥がし始め――。


「よう、ご機嫌ですかなァ?」

「ヒィィィィィっっ!!」

ついにコックピットに侵入してパイロットとご対面。
分厚い宇宙服とヘルメットを着用していてどんな顔をしているのか分からないが相手は混乱し、挙動不審となっている。

「挨拶してやんよ、ホレ」

(ギュイイイイッ!!)

……コックピット内は肉がグチャグチャに掻き回される生々しさ、骨がすりつぶされるような鈍い不協和音と共にパイロットの血液と思われる青い液体の海と化した。
その中で歪んだ笑みを繰り出すラクリーマ。
段々、やり方さえも歪んできていた。


瞬時にコックピットから離れ、通信機に手を当ててこう叫んだ。

「各機全員集合、フォーメーション攻撃を開始する!!」

“了解!!”

合図と共に、各機体は彼のいる方向へ一気に集合。早急にスレイヴは全方向に向くように4機で輪を作り、腕部で組み合う。
その状態を一段、また一段と縦一列に重なり合っていく。

ツェディックはその最上、最下に移動し、こちらも全方向にむくように輪を形成していった。


「なっ……なんだこれは……」

その光景を目にした連邦のパイロット達は度肝を抜かれた。
アマリ―リスの機体が果てしなく縦一列に重なりあって……まるで巨大な塔を思わせるフォーメーションをとっていたのであった。

最上部にラクリーマが到着し、真上にブラティストームを突き上げて制止。
瞬時に内蔵された自律回路が発動、レーザー砲を突出し、四方に向けた。

これで準備が整った。その孕んだ狂気と熱さをもった笑みと共に!!

「行くぞ!!全機、全方位一斉発射ァァっ!!」


(――――――――――――)


命令から数秒後にはこの宙域全土は蒼白光によって支配された。

全長一キロ以上はある縦一列、そして全方向に配置された全機体の全砲門、ログハートの炉心と連結したブラティストームのレーザー砲から放たれた光線がこの周辺の連邦ユニットへ無差別に襲いかかる。

「ウオォォォォオオ!!アアアアアアアアっっ!!」

感情が高ぶったラクリーマが叫びに叫ぶ。怒涛の勢い、そして……。




“……………”

ヴァルミリオンの中央デッキ内ではもはや言葉を発する者はいなく、誰もが唖然としている。
奴らの戦法がやりたい放題過ぎて、こちらのペースが掻き回されていた。

「くぅ……ユピテルス砲はまだか!!」
「今95%です。もう少しでチャージ完了します!!」

「早くしろ!!何か嫌な予感がする、その前に本作戦を実行しなければ……」


「提督……?」


彼は感ずいていた。敵艦の主砲らしき攻撃がないし、まだ奴らは何か隠していると。
その考えは的中していた。




「全機、解散。また集団行動をとれ!!」


先ほどの一斉攻撃が終わり、フォーメーションを解除。

あれだけの光線を無差別に放射したら、さすがに敵もただでは済んでいるワケがない。相当な被害を受けていた――。


そしてそこから約60km離れた位置に駐在していた部隊。大口径の大型砲兵器を携えているクイストが計320機、その中央でクイストと異なるフォルムを有する機体。クイストと同サイズであるがそのマッシブな体格とクイストの武装であるライフル銃を2丁、両腰にマウントされている。

『各機に告ぐ。これより第82光特科小隊は長距離砲撃を行う。直ちに砲撃体勢に移れ!!』

その機体に乗っているのはそう、クーリッジであった。

“クーリッジ専用中型戦闘ユニット『ルーベルジュ』。光学兵器だけを装備した光特科部隊を象徴する機体。可変機構を持つ”

その機体『ルーベルジュ』は突如、手足を折り畳み別形態へと変形。
完成させたのはなんと巨大な口径、直線的な砲身を持った『大砲形態』であった。

『全機、一斉発射用意。目標、前方距離120ギャロの敵部隊!!』

砲口内から眩い程の緑色光の塊が集まり、今にも放たれようと砲門から出ようとしていた。


『撃てェ――っ!!』

合図と共にその機体群の砲兵器、そして変形したルーベルジュの『大砲』から、大多数の巨大な光弾が発射された凄まじい勢いで前方へ飛んでいく――。

そしてその射線上にいたスレイヴとツェディックの機体数十機――。

『XX方位、距離120ギャロから無数のエネルギー反応がこっちに向かってくる!?』

『全員今すぐ退避だ!!』

『速すぎる!!無理だ』

しかし彼らにはそんな余裕はなく、その『エネルギー反応』は一瞬でその場所に到達した。

……多数の機体を一撃で貫通し、光弾は弱まることなくそのまま遥か彼方へ伸びていった。
直撃を受けた多数の機体はコックピットや胴体に巨大な穴が発生し、戦闘不能、爆発した。

直撃こそしなかった機体も通り過ぎた多大なエネルギー弾の余波で内部の機械に異常が発生、混乱状態に陥っていた


――そしてルーベルジュ率いる光特科部隊はモニターでその敵部隊がほぼ戦闘不能に陥ったことを確認すると、休憩することなく次の砲撃に備えていた。

『よし、我々は次の砲撃準備だ。今の内に使用した砲の冷却及び、終わり次第エネルギーチャージを開始せよ!!』

クーリッジは表情的に平常であったが。

(ちい、主砲はまだかよ……こちらもかなり被害をうけたってのに……このままじゃさらに増えるぞ。
エミリア達だってまだ発進していないってのに……)

内心は穏やかではなかった。

………………………………


ついにこの時が来た。ラクリーマはウキウキと右腕を振り回していた。

「サイサリス!!いいぞ、リミッター解除だ!!」

“……いいんだな本当に!?”

「ああっ、これはもはや俺らのペースだ。さらに奴らを一網打尽にしてやらぁ!!」

“よし!!なら頑張ってこい、行くぞ!!”

サイサリスは持っていた画面パネルを素早く動かして、真ん中を力強くタッチした。

「リミッター解除!!行ってこいラクリーマァァ!!」




瞬間、ログハートの無数の突起物がグニャグニャに融けて全てが一つに融合、円盤型の巨大なスラスターへ変形し膨大の蒼白い粒子が吹き出した。そして腕全体もさらに変化を遂げて巨大化、見た目もかなり生物的な物となり腕の内部の機械がさらに活性化した。

「行くぜ!!」


……瞬間、彼は消えた。そのままの意味でその場所から姿を消したのであった。
一体彼はどこに……。


同時刻、ここから艦隊方向、約280km離れた宙域にとどまっていた敵部隊。その数は1500機。
中隊クラスだと思われる。

前方では仲間が圧されて今度は自分達の番であると感じ、移動開始の命令を待っていた。

だがその時、


(ドワオォォ!!)

この部隊の中から複数の機体が爆発を起こし、全機が警戒態勢へ移るが、さらに何機、何十機と一瞬で大破されていく。

まるで導火線に火がつけられたかのような光景であった。


センサーには反応しない、姿が見えない。敵がいるとは思えないのに一秒一秒で機体が破壊されていくのだから、対処のしようがなかった。

「ん……!?これは!!」

この部隊の隊長がふとモニターを確認したら小さい何かが映っている。拡大するとそこにいたのは……。

「ああっ!!いつの間にいたんだ!!
全機、あの男がそこにいるぞ!!」


(! ! ?)


部隊全員がモニターを一斉に確認した。
その部隊の中心部で奴がいた。先ほどの右腕が完全に別物で異形の姿であった。

「全機、攻撃開始だ。なんとしてもここで食い止めよ!!」

すぐにラクリーマへ狙い定めて攻撃を開始。周りを気にせず光線を彼一人だけに撃ち込んだ。

しかし、彼はまたその場から消えて多数は光線はすれ違って飛んでいき、その軌道上にいた機体に直撃する。


「なあ!?」


彼のいた場所から前方120m地点のホルス、クイストの計23機が数秒で胴体が縦と横に真っ二つとなり、その端っこで右手の手刀で振り切っている姿のラクリーマが。

そこから彼はなんと遥か上方へ急発進し、普通の人間には……いや、あまりにもムチャクチャな機動力で宇宙を駆け巡り、隊員全員を目を奪った。

それはあの『UFO』を彷彿させる慣性の法則を無視した急制動、急旋回の幾科学的運動であった――。

敵を翻弄、掻き回し、部隊全員が見える位置に一瞬で移動、そこでピタッと立ち止まりログハートを後ろへグッと引き込んで殴るような体勢へ持ち込んだ。


「ヌオオ――っっ!!」


全力で拳を部隊にいる方向を突きだした――。



(ズ ギ ャ オ オ ォ ォ ― ― ― !!!)



拳から放たれた強大なエネルギーの衝撃波が拡散しながら前に広がり。


“ウワアアアッ………!!”


中隊規模の大軍を一気に直撃、一瞬で消し炭に変えた。
しかしそれだけに留まらず、さらに範囲を拡大し、その先にあるのは左側から二番目に駐留していたグラナティキ級5番艦……。


「艦長、凄まじいエネルギーの波動がこちらに向かってきます!!質量は……『ランクA大以上』!?」

「何だとォォーー!?艦内の総員を退避させよ!!」

「間に合わなませ……うぎゃああっ!!」

そのエネルギー波動はついにグラナティキ級本艦さえも覆い喰らいブリッジから後ろへ向かって爆破、艦内にいる何万という数の乗務員が逃げることも出来ないどころか、それを察知すらしていない者もいたが、非情にも全部爆発に飲み込まれていく――。


装甲が原子レベルまで分解、艦自体が粉砕されて形がなくなっていき、そしてそのエネルギーと共に全てが消し飛ばされた――。


「グ……グラナティキ級5番艦……Y351方向、1200ギャロ方向から発生した強大なエネルギー波によって反応が消滅……しました……」


(! ! ?)

その事実が矢のようにヴァルミリオン艦内に突き抜け、激震と絶望を与えさせた。

「いっ、今すぐそこのモニターを映せ!!」


焦り口調で命令、オペレーターも急いでモニター視点を変えた。
そこにドヤ顔でガッツポーズを決めるラクリーマの姿があった。

「ああ……まさかあの男がぁ……」

見る者、知る者全てを震撼させた。しかしそれは連邦側であり、アマリ―リス側にしてみれば相当の吉報である


『おい、リーダーが戦闘艦一隻を一人で破壊したとよ!!』

『なんて人だ!!やっぱラクリーマさんには敵わねえや♪』

グラナティキ級という超巨大な戦艦をたった一人、しかも生身の男によって消滅させられたという前人未到の事実が各組織に伝わった。

連邦からしてみればまさに絶望、アマリ―リスからしてみれば、希望であった。

エクセレクターのオペレーションセンター内のモニターにはそのラクリーマの勇姿を追っており、のび太としずかは彼に恐怖心さえ抱いていた。

「ラクリーマ……あんなに強いなんて……」

「宇宙にこんな人がいるなんて……なんて恐ろしいこと……」

近くにいたオペレーターの一人が二人の横に立ち、モニターを見上げながら腕を組んだ。

「二人とも、なんであの人がこのアマリ―リスのリーダーをしているか分かるか?」

という質問をし、二人を悩ませる。

「えっ……もの凄く強いからじゃないですか?」

「まあそれもあるな。だがな、実際あの人より身体能力が優れる奴なら実は戦闘員の中でも結構いるぞ」

「えっ……なら生身で宇宙に出られることですか?」

「う〜ん……それも間違っちゃいねえがな。
それよりも大事なことがあるんだよ」

「大事なこと?」

「なっ……何ですか?」

モニターには暴れに暴れまくっているラクリーマの姿があった。

「あの人、自分で立てた作戦自体守らねえからな。
とぉにかく一人で先陣に突っ込んで孤立するタイプだからよ。これはリーダーとして見れば完全に失格だよ。
だけどな、ラクリーマさんを見てて分かるんだよな、『負ける気がしねえ』てな」

確かに今はログハートを装着しているから強いからであって、装着していなければただのものすごく強い『人間』止まりである。
それで先ほどの宇宙戦闘に出ていれば間違いなく戦闘ユニットに握り潰されてしまうであろう。

それに敵を見つけるとすぐさま襲いかかる獣のような本能である。
もし敵側に策士がいて、罠を仕掛けていたら絶対に引っ掛かるタイプであり、これは組織のボスとしてはあまりにも相応しくない。
しかし彼にはそれを補えて余りあるのはまさにオペレーターの言ったことであった。

「銀河連邦という俺らより明らかに強い組織を前にしても全く屈しない、臆しないその屈強な精神。
圧倒的戦力差を力ずくで覆すその無茶苦茶さ。
だからあの人見てるとどうにかなるってな。

あの人にはそういうモノを持ってる。俺ら頭の悪い奴らにとってのカリスマ的存在さ」

「「…………」」


――もはや誰も彼を止めれる者はいなかった。目に見えた機体を片っ端から攻撃し、無惨に沈めている。目に見えた機体を片っ端から攻撃し、無惨に沈めている。
しかし、彼の顔には人間性など全く感じられないほどに酷く歪んでいた。


「グアァァっ!!」

あの戦闘訓練に見せた凶暴さがさらに磨きを掛かったようである。
これがラクリーマの真実の顔……即ち仮面を脱ぎ捨て本性を露にした『狂暴にして狂悪』であった。



(ケアァァーーーハハッハハハハハハっっ!!!ギャアアアアアアァァッっっーーーー!!!)




叫ぶ、声が渇れるくらいに叫ぶ。食欲に餓えた野獣がさらに牙を向けて咆哮する。
なんて本当に楽しそうだろうか……こんなラクリーマは戦闘員でさえみたことのない。

そして開発エリアではセルグラードの調整を任せて必死で働く助手達を反対にただそのモニターを見て眺めたまま動かないサイサリス。
もはや我慢できず助手の一人が彼女の方へ向かった。

「サイサリスさん!少しはあなたも手伝ってくれませんか……え?」

彼女は震えている。何か彼女の様子がおかしいことに気づき、もっと近づいてみると何か独り言を喋っていた。

「スゴい……これだよォ……あたしが求めてきたのは……。
ラクリーマが持っている原始的な破壊、殺戮本能、身を凍りつかせるほどの孕んだ狂気……ああっ……見ただけでゾクゾクする……。

ああっ……アソコがジュンジュンしてきたぜ……」

「…………」

見てはいけないものを見てしまった。
アブない発言を繰り出しながら彼女は絶頂を迎えて完全に表情が昇天してしまっている。

次第に右手の指を自分の股間に持っていき、偲ばせて『ジュクっ』と何やら変な音を立てている。
そして糸を引いた液のついた指を『ハァ、ハァ』と喘ぎに近い吐息し興奮しながらペロっとなめた――。。
それを目撃してしまった助手は寒気と同時に気持ち悪さを覚えてしまう。


“こういう人なんだ……”


今、そう考えているに違いない。

「ん?」

サイサリスは横にいる助手に気づくと、これでもかと言うくらい睨み付けて、

「オメエ、何サボってやがる!!一刻も早くセルグラードを調整しろゴラァアアア!!」

「ヒイイイイッ!!」

彼女はビビって逃げる彼を追いかけていく。一体こんなときに何をやっているのだろうか……。

…………………………


「ユピテルス砲、エネルギーチャージ完了しました!!」

「……よし、直ちに主砲発射に移れ!!」



“了解!!”


ヴァルミリオンのエネルギーチャージがついに完了。すぐさま主砲展開へ移行しはじめる。
艦首が上下に割れて、その内部から口径がエクセレクターのリバエス砲と同等の丸型の砲門が姿を顕した。

「目標、前方7200ギャロに位置するアマリ―リス艦。射程範囲内にいる全部隊に退避命令!!」

「了解!!『全部隊に命令する、これよりヴァルミリオンは主砲発射へ移行する……』」

カーマインは耳に付けている通信機にスイッチを入れた。

「エミリア、聞こえるか!?」

“はい提督!!”

「まもなく主砲を発射する。お前たちも直ちに準備だ!!」

“了解しました!!直ちにイクスウェスを起動させます!!”

「頼んだぞ、全てがお前達にかかっている。だが絶対に無理をするな!!」


彼女との通信を切る。息を飲んでモニターを静かに見守っていた。

(頼む、成功してくれ……。もはや多大な被害を受けた私達の一番の賭けだ。エミリア、あの子達……頼んだぞ、そして友達を絶対に救ってやれ……)

彼、いや全隊員の望む考えは全て一致していた。

これで戦況を覆してほしい、これで全てを終わらせるきっかけとなってほしいと。

誰もがそう願っていた。

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