小説『大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦!!【R-15】【完結】』
作者:はならむ()

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――そして戦闘員は力を合わせてなんとか二機の撹乱に尽力していた。

しかしその圧倒的火力と隙間のない四方八方の砲撃により、次々に機体を破壊されてその作戦が無意味になりつつあった。

『ちい、このままじゃ全滅すんぞ!!』

『ちょっとまて!?あれはレクシー達じゃねえか!!?』

その時であった。モニターにはあのシルバリオンらしき機鋭が映り、段々こちらへ近づいてくる。 0;しかしその姿は異なっていることを近くなるごとに段々ハッキリ見えた。
;

『よっしゃーっ、戻ってきたぜ!!お前らよく頑張ったな!!』

ついに彼らが戻ってきた。その強化された機体の勇姿を全員を見せつけている。
『レクシー、これがシルバリオンか……?』

『ああっ、サイサリスさんからのプレゼントで強化された【シルバリオン・セルゲイザー】だ!!』


見る者全てを圧倒させる。重装備化したこの機体は両腰部にゼウシウスの同等の折り畳み式長砲身の追加により、両肩、両手首、両腰の計6門の砲身となり背中にはツェディック、追加された『セルゲイナス』の動力炉のある胴体に生えた主翼と尾翼の計4枚がまるで『X』を描くかの如く。
そしてその形に合わせるかのように設置された1番存在感のある4機の大型ドリル、これ一つでも貫通されたら間違いなく戦闘ユニットはミンチになりかねないほどの威力はありそうだ。

『今までの俺らではないことを見せてやる!!ユーダ、存分に暴れてくれ!!』

『お前に言われなくてもそうするつもりだァァ!!』


そう言うとシルバリオンはなんと何も考えていないかのように単機で両機に向かって突撃していった。

あのレクシーからは考えられないような行動だが秘策があるのか、それほどこの機体は強力なのか……。


案の定、『リヒテラ』、『リテレメ』はレクシー達を素早く感知、全砲口を向け――一斉発射。

しかし、レクシー達は避ける様子もなくもはや直撃することを前提に猛スピードで突撃していた。

『ひゃっはァーっ!!地獄への超特急ってか!?』

『レクシー、お前にしちゃあノリノリじゃねえか!』

明らかに彼らの顔は笑っていた。諦めからなのかそれとも……。

その様子をモニター越しで見ていた戦闘員達は……。

『あいつらバカか!!?死ぬ気かよ!!』

『レクシー、はやまるなーーっっ!!』

この行動が理解できず、引き止めようと必死で叫ぶが二人はもはや聞いてはいなかった。

0;(―――――――)

直撃……。シルバリオンはその砲火の光の中へ消えていった――。

他の者は射程範囲外の遠くからモニターを通じてその光景にワナワナ震えていた。それは『絶望』である。


『うわあ…………』

『あのバカ共……ん?』

彼らはすぐにレーダーを確認する。機体の姿はないがその位置には膨大なエネルギー反応が一点残っていた。

『おい、この反応はまさか……』


――彼らは目を疑っていた。これはまさか……。





(そんなんじゃあ俺達を消せねえぞーーっ!!!)

光の中から機体が颯爽と出現。


“レクシー!!?”

――シルバリオンであった。機体には淡い青色の光を纏い、それが機体を保護していたのだ。

――強化前には装備されてなかったあのNPエネルギー障壁である。


『よし、なら反撃開始といきますか!!』

装備された大型ドリル全てを宇宙空間に射出。


『次に攻撃する箇所は……あの位置だ!!』

ユーダの操縦に連動して左手首の砲身を定めた方向へ指した。するとその砲口から細い光線が一瞬で伸び、『リヒテラ』の巨大で広大な装甲面の一部分に到着した。
それと同時に射出されたドリルが高速回転を開始し、一斉に行動を開始、光線が指している部分の装甲面に向かって一気に突撃を開始した。


――光線は地球における『レーザーポインター』の役割をはたすもので、4つのドリルを誘導させることが出来るのである。
元々、遠隔操作で操ることができるこの武装は空間認識能力が高い者が使えば自由自在に動かせる。しかし、それが低い者が使用できるようサイサリスによって組み込まれた救済機能である。

――ついに4つのドリルが『レーザーポインター』の位置へ衝突。
装甲を強引に突貫しようとするがそれを堅固に防ごうとする特殊装甲『リベージュダース』。結合分子がさらに活性化、削れるどころか傷ひとつもついていない。やはり効かないのか……。
だがシルバリオンは今度は右手首の長砲身を突撃しているドリルへと向けた。

『まだ終わったワケじゃねえぜ。ホレ、たっぷりとエサを味わえ!!』

ユーダは右操縦レバーの横にあるボタンをグッと押した。

(ビィィーーー!!)

砲口から今度はレーザーとは違い、まるで懐中電灯のように広範囲へ蒼白光を照射、ドリル全機に万べんに浴びせた。
各ドリル内回路に組み込まれたチップが反応し、同じ内部に搭載した小型NP炉心の増幅装置が始動、光を吸収してさらにエネルギー量は大幅にはね上がった。
それに連動してトルクがさらに高速回転、ドリルの回転数を劇的に増大させ、ついに装甲の衝撃吸収が追いつかずに少しずつ、また少しずつと削れていくではないか。

シルバリオンから発しられる光は止めることなく照射され、ドリルにさらなる恩恵をもたらす。

次第に直撃している装甲面に小さな穴が発生、ドリルの強引さで押しこんでいく――。


『もう少しだ!!ユーダ、手を緩めるなよ』

そしてその攻撃が功をなし装甲面が破壊され、ドリルが次々と内部へ突入していく。
そうなってしまえばもはやドリル達の独壇場。
勢いに任せてドリルはまるで寄生虫のように内部のありとあらゆる回路、機械を全て貫通、粉砕……『食い潰して』いく。
これにより『リヒテラ』に異常が発生。行動、攻撃が停止したのであった。


『よっしゃァァ!!なら次は……』

『あいつか』

もはや機能停止したリヒテラを放置し、二人は残る後方のもう一機『リテレメ』に狙いを定めた。

『リテレメ』はシルバリオンに向けて、先ほどの実弾ミサイルを一斉に発射。全てが彼らへ向かっていく。

しかし強化したシルバリオンに搭乗している彼らに怖いものなどなかった。

シルバリオンの後部にあるセルゲイナスの主翼の装甲面が突然、スライド式で上下に開門し――無数の小型ミサイルが発射された。

その数はリテレメのミサイルよりも遥かに多く、怒涛のごとく宇宙空間に飛び交った。

互いのミサイル同士は衝突、次々に爆発していく。
撃ち落とせなかったミサイルはそのままシルバリオンへ向かっていくが、両腰部の位置にある折り畳み式の砲身部が展開、追ってくる大型ミサイルへと向け――まるで『機関砲』のように小さなエネルギーの弾丸を連続掃射。

今度はレクシーもレバーを動かし、行動を開始。

アクロバットさながらの華麗な軌道を描きながら攻撃、ミサイルを撃ち落としながらリテレメへ接近していく。

「うひょーっ♪さすがはサイサリスさんだぜ!!」

「よくもこんな素晴らしい武装をつけてくれたもんじゃァァァァ!!」

二人はまるでラクリーマのように面白いオモチャを手に入れた如く歓喜している。
そして『リテレメ』はこちら接近させまいと各砲で応戦するがもはや勢いに乗った彼らを止められなかった。

(ガシューッッ!!)

あのドリル達が役目を終え、元の位置へ移動し連結。
そのまま右腕をリテレメへ差し出した。
右腕から直結した長い砲身の先にある丸い『穴』に膨大な量の粒子が収束した。
「くらいやがれ、全炉心のエネルギーを集約したその威力を!!」

シルバリオンに搭載された計7基の炉心が共鳴、膨大なエネルギーが右腕に収束した瞬間、レバーをグッと前に押した。


(ド ギ ャ ア ア オ オ オ オ ! !)


凄まじい威力であった。砲口から放たれた『リテレメ』のエネルギー砲より遥かに極太で高出力の光線があの特殊装甲に活性化させる余地なく一撃で貫いた。
光線は機体の底を突き抜けるも途切れることはなかった。

『これで終わりと思うなァァ!!』

何ということであろう。光線放射を維持し、そのまま砲身を上を突き上げた。光線は動きに合わせて上に向かってゆっくりと装甲と内部を焼き切りながら破壊している。それはまるで巨大な剣を振り上げているようだ。


「だ あ あ り ゃ ァ ァ ー ー っ ! !」

ユーダの力強い叫びと共にレバーを全力で押し出した。
――切り裂いた内部から次々と爆発、それが徐々に波紋のように拡大しながら。


シルバリオンはすぐさま攻撃を止めてこの宙域から脱出。リテレメ全体は爆発箇所が増加、機体そのものを覆い始め……。

(ボボボボーーーっっ!!)

その宙域はすべて吹き飛ばす光と衝撃に埋めつくされた。
機能停止した『リヒテラ』も巻き込まれて誘爆し、さらに拡大する。

「やったな……」

「ああ」

レクシー達はその光景を幾分離れた場所で見ていた。

二人とも喜びと余裕の表情を取っていた。
そして他の者もすぐに彼らの元へ移動、集まってきた。

“二人ともすげえな!!あんなヤバいデカブツをいとも簡単に破壊しやがったぜ”

“全くだ。お前らがあの時くたばってたら完全に俺らも消し飛んでたぜ”


彼から感激されて照れているのかレクシーは頭をポリポリ掻いていた。

「いやあ、サイサリスさんのおかげだぜ。……にしてもこれといい、リーダーの武装といい、こんなヤバい強化パーツを造れるサイサリスさんってあれだな……」

“ああ……絶対に敵に回したくねえぜ、あの人だけは……”

ほぼ全員、ラクリーマと同じことを述べていた。

―しばらくすると爆発が弱まり、肉眼でも確認出来るほどに見えるようになった。二機のあった宙域には爆散した際に弾けた装甲の一部、内部回路、機械類がただ浮遊しているだけであった。

「よし、休んでる暇などねえぜ。また奴らが戻ってくるハズだからまた各チームでそれぞれ迎撃に行くぞ、危なくなったら近くの仲間を呼べ!!」

“おう!!”

レクシーの合図で各機はまた各チームを編成、それぞれの戦場へ向かっていった――。


――銀河連邦側は唖然としていた。先ほど戦果を上げていた試作機が突然現れた謎の敵機によって破壊されたのだから……。

下がっていた連邦各部隊が戦線に復帰、各敵機密集地帯へ戻っていく。

しかし連邦の戦闘ユニット達に大きな行く手を阻む機体が存在した。
レクシー、ユーダの駆る機体『シルバリオン・セルゲイザー』である。

この機体は戦闘ユニットとしては規格外の性能であった。
あの集中砲火攻撃までも耐えた強力のバリアを装備、新たなる追加武装、そしてそれに見合う、あの全長10km以上の『リテレメ』を破壊したその超火力。どれをとっても他の追随を許さなかった。
ただサイサリスの言った通り、重装備化したことにより機動性は多少低下したようだがそんなのはレクシーの操縦技量で十分なんとかなる。

まさにこの機体なら『単機で戦況を覆すことができる』ほどであった。

――シルバリオンはゼウシウスのように両肩、両手首、両腰に装備された計6門の砲身をすぐに展開し前方に照準を合わせた。
狙いは遥か前方に位置する連邦部隊。

コックピット内ではユーダがモニタリング照準し、不気味と笑みを繰り出していた。
――画面には紅い丸がそこに映る敵影全てを囲んでいる。


「行くぜ、光子ミサイル全弾一斉発射!!」


全砲門から濃縮させた高エネルギー球を同時に発射。
一瞬で狙いの定めた位置まで向かっていき、爆発した。

スナイパー機群を攻撃した時よりも爆発範囲が桁違いであり、前方宙域全てを消し飛ばしたのであった。

“…………”

連邦側からすれば、さらなる脅威である。ラクリーマ程ではないが現時点で本機を超える機体はなかったのである。

――銀河連邦とサイサリスの戦闘ユニットにおける設計概念は違っている。
連邦側は兵器としての量産性、汎用性を主とした性能を重点に置いている。各機の性能は平均並みであるが隊員の操縦性と安全性を考えた構造で誰でも扱いやすいように開発されている。パイロットには好かれやすい設計である。


それに対し、サイサリスは『単機で状況一転』を主とし、性能面を追求した設計、開発をしている。
機体同士の合体で強化されるあたり特異性が目立つが、シルバリオンである通り非常に扱いづらい操縦性であるためパイロットからは嫌われやすい。
つまり戦闘ユニットありきのパイロット面ガン無視であるため非常に強力であるが使いこなせなければそれまでであり所謂『ピーキー機』である。

レクシーとユーダがそのシルバリオンというピーキー機を使いこなしているため、連邦製ユニット全般の上を行く性能を持ち、さらに兵装ユニット装着により、強化された本機の性能は『異常』であった。

あの大型ドリルが自由自在に宇宙空間を動き回り、敵機を次々と貫通、ズタズタにしている。

両手首の長砲身から確実に全長数百メートルはある、その幅も太い光の刀身を形成し全て左右横に固定、敵の密集地帯へ突撃。機体が通り過ぎた刹那、軌道上にいた左右の機体全てを両断した。

他にもゼウシウスのように多角方向の長距離射撃が可能となり、実弾ミサイルを無数装備など、遠中近距離攻撃全てがほぼ一撃必殺の火力という彼女の戦闘ユニットにおける概念の『一つの完成形』とも言える機体なのである。

連邦部隊はこの機体により次々に撃破され、劣勢を強いられることとなった――。

しかしまだ望みがあった。ついに作戦を決行する時がきたエミリア一行。

モニターには全てを託すような眼差しを送るカーマインの姿があった。

“エミリア、アマリ―リス艦のバリアが消滅した今、奴らがまたバリアを展開する前に今すぐ発進だ!!”

「了解、これよりエミリア・シュナイダー大尉以下、5名の者はアマリ―リス艦の侵入任務を開始します!!」


“……よし。全員、作戦前に私の話を聞いてくれ!!”


ミルフィとドラえもん、ジャイアン、スネ夫はすぐにモニターを注目した。


「……まず、地球からきた君たちに謝りたい。
こんなことに巻き込んでしまった私を許してくれ……いや許されるハズなどない。
……これは命がけの任務である。下手をすれば君たちまでもが……」

彼の暗い表情を見る限り、かなり責任を感じている様子だ。

「しかし……どうかエミリア達に力を貸してやってくれ。
これは私の、いやここにいる全員の頼みだ」

「「「カーマイン提督……っ」」」


「これは今作戦最大の任務だ、失敗は即ち今作戦全ての失敗を意味する。
だがドラえもん君、君の未来の道具があれば……必ずや任務遂行できると信じている。
そしてその使い方を一番よく知っているタケシ君、スネ夫君、君達の力も必要なのだ!!」


とてつもなく信頼を置かれ、段々自分達の心が奮い起こされていく。


「……分かりました!!僕達に任せて下さい、必ずエミリアさんの役立てるように頑張ります!」

「ここまで来た以上、やるしかないぜ!!
のび太達を救って、あの悪党を懲らしめてやろう、なあスネ夫!!」

「うん!!」

三人の力強い声が決意を固くまとめる証拠となった。

「……頼んだぞ君達、それにエミリアとミルフィ、これは直属の上官としての話だ。

しつこいかもしれないが……絶対に無理をするな!!そしてこの子達をカバーしてやってくれ、いいな!!」

「「了!!」」

「なら……健闘を祈る。互いに生きて……また会おう!!」


その言葉を最後にモニターは途切れた。

「……発進するわ。各人用意……」

「エミリアさん!!」

突然ドラえもんが彼女を呼び止め、すぐに振り向く。

「エミリアさん……さっきはごめんなさい。あんなに不安な声ばかり洩らしたり、ショボンとしたり……。だけどもう泣き言なんか言いません!!」

彼は深く謝罪し、それにつられてジャイアン、スネ夫も、

「俺たち、絶対にエミリアさん達を守ってみせる!!

そしてエミリアさんの辛い思いから救ってあげたいんだ!!」

「ジャイアンの言うとおりだよ。ドラえもんの道具があればどんな奴でもイチコロさぁ!!」

エミリアは軽く頷き、いつものような優しい笑みで三人を見つめた。

「……あたしこそごめんなさい。ただ感情に任せ、あなた達をあんなに怒鳴ってしまって……。

大丈夫、あたしもあなた達を全力で守ってみせるわ、私からすればあなた達は守るに値する大切な人達よ」

「アタシも突入したらこの機内から全力でサポートするヨ!!

これ以上、奴らの好き勝手にさせないんだから!!」


……これで5人の意思は再びまとまり、頑なに強い決意をモノとする――。


「発進するわよ!!各人ベルト固定しっかりできてる!?」

“大丈夫です!!”

「ミルフィ、安全な進路を算出した!?」

「OKヨ!!もう既にイクスウェスにインプットしてあるわ!!」

「了解!!」

エミリアはモニターを開くと画面上にはヴァルミリオンからエクセレクターまでの確定された進路を詳しく表示されている。

それを確認し、自動的に前方がハッチが開放、目の前に宇宙空間が広がった。

「NPエネルギーチャージ完了、プラズマエネルギーチャージ完了、『ツインハイブリッド・ドライヴ』、『リアクターエンジン』、オールグリーン――!!

エミリア・シュナイダー大尉以下5名の特別編成隊、及びイクスウェス、発進します!!」


(ド ン ッ ッ ! !)


ついにカタパルトから射出され、宇宙空間に飛び出したイクスウェス。

「対衝撃保護用NPエネルギーフィールド展開。目標……7800ギャロ、XX88方向のアマリ―リス艦!!」

急旋回で方向を確定させ、機体全体に緑色のエネルギー膜が発生、包みこんでいく――。



「イクスウェス、ただ今発進しました」
「うむ……」

カーマインにその旨を伝え、モニターに移る彼女らの乗るイクスウェスをまるで我が子供のように温かい目で見守っていた。


(頼んだぞ……最後の希望である5人の勇者たちよ!!)

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