小説『大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦!!【R-15】【完結】』
作者:はならむ()

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……開発エリアでもサイサリスはその光景をキツイ目付きで凝視していた。

「……グラストラ……核エネルギーだと……?
連邦の野郎、あんな危険なモン使ってやがったか……」


――先ほど放たれたグラストラ核殲滅ミサイルとは戦略核弾頭ミサイルであり、その威力、攻撃範囲は戦艦級の光子ミサイルに匹敵する。最大の特徴は『その威力を持った兵器を戦闘ユニットで運用が可能』なところにある。

しかし当然、放射能まで発生し、二次、三次被害も凄まじく、使用が限られる武装であり、この『エルファイスマンガリー』に積んでいる両肩のミサイルはまさにこれであった。

グラストラ核エネルギーは『グラストリウム』と呼ばれる放射性物質から取り出される核エネルギーであり、ウランやローレンシウムのようなアクチノイドと同じような物である。
核分裂で地球産の物質以上の膨大なエネルギーが発生し、瞬間的な増量率はNPエネルギーをも上回るが当然放射能も発生する。

しかしこの放射能は特殊でほとんどの金属(厚さ、性質関係なく)を貫通するため、動力としての使用は確実に被爆するため自殺行為であり、利用不可能である。


なので連邦最大の実弾核兵器として使われているが、やはり扱いにくく、その危険な性質からか連邦会議でも『もはや平和や秩序すら破壊しかねない』と使用禁止を訴える声も多数上がっている代物である。
そんな悪魔のようなミサイルが先程、現実で使われた瞬間であった――。

「……あたしらでさえ扱えきれなかったものを……連邦ごときが……」

苦虫を噛み潰した表情を取る彼女。

サイサリス、エルネスの故郷であった惑星ラグラ……『神の軍団』はNPエネルギーと共同で研究が進められていたのだが、その放射能があまりにも毒性が強く、どれだけ多くの人間を被爆、犠牲にしたか分からない。

そして、エルネスの行なっていた人体実験の一つにこれを被験者に直撃照射するという余りにも非道な実験を行っていた。
当然、良い結果が出るハズもなく被験者全員が重度の放射線障害により即死に至った。

――彼女らでさえ扱える代物ではなかったのだ。
本来ならNPエネルギーと共に新世代エネルギーを担うハズであったが――。

…………………………

「敵全機消滅。すぐに弾薬補充急げ!!」
被爆の危険性で一時退避していた実特科中隊は再び隊列を編成する様、弾薬の補充、装填を行う。


「ムーリア軍曹、私の機体も補充だ」

彼女の機体の後方から一機の戦闘機が向かってくる。

ホルスとは違い、無骨なフォルムで至る所に数々のミサイルが取り付けられている……あの核弾頭も一緒であった。

“サーペイザー、ムーリア軍曹到着しました”

「ムーリア、核弾頭だけ補充を頼む!!いつまた来るやも分からん」


“…………”


しかし、その戦闘機『サーペイザー』の搭乗者ムーリアはどこかおどおどした表情であった。


「少佐……あの……」

“どうした?早く補給を開始しろ!”


「我々は……あの核弾頭を使用してしまってよかったでしょうか……。

……あれは間違いなく必要以上の大量破壊兵器ですよ……?」


その問いにメレウルは……。

(ムーリア、甘ったれたこと言うな!!)

彼女のドスの聞いた怒号が中隊の全通信機から響き渡った。

「ここは戦場だ!!今は殺るか殺られるかしかない。連邦とて綺麗事ばかり言ってるワケにはいかないんだよ!!」

“しかし……”


「よく聞け。世の中には『必要悪』って言葉があってな。

平和を守るためにも時には悪魔にならねえといけねえんだよ」

……まさに『毒を以て毒を制す』とよく言ったものである。

;“エミリア大尉がたった今、出撃した模様です!!”


その情報を耳にした彼女の目の色が変わった。

『よし、エミリア大尉の突破を邪魔する障害物や敵を排除する!!
弾薬を装填した砲台から再び砲撃準備を開始しろ。ムーリア曹長は本機の後方で待機』

力がこもった声が張り上がり、部下も急いで準備を始めた。
しかしその直後……。


“メレウル少佐、レーダー上に400機程の敵戦闘ユニットが左右から旋回しながら急接近!!……中にあの男も混じっています!!”

モニターを見ると、右側からレクシー、ユーダが駆るシルバリオン他、スレイヴ、ツェディック含めて200機、左側からはあのセルグラードを持ったラクリーマ、後ろについてくるように残り200機が最終防衛ラインへ突進していた。


『装填はまだか!!』

“ま……間に合いません!!”


『全機、今すぐ戦闘準備。一機たりともラインから艦隊へ行かすな!!』


命令と共にクイストは砲台をその場に放棄し、両腰部分にマウントされたライフルと、擲弾頭発射装置付きの長身バレルを合体させ、即座に各左右に銃口を向けていた。


――そしてラクリーマ達は先程の核攻撃に対して報復しようと突撃していた。

「核なんぞ使いやがって!!各員、死んでいった仲間の弔い合戦だぁ!!
それ以上の破壊力をてめえらに味あわせてやる!!
レクシー、ユーダ、俺は突破してセルグラードで連邦艦隊を攻撃する。お前らで全員を指揮して近くの敵部隊の相手を頼む!!」

『『了解!!』』

徐々に近づきつつあるアマリ―リス勢についにメレウルの機体『エルファイスマンガリー』も動き出し、両手首の250mmの口径を持つ砲身を各左右に向けた。

『ライフルは一点射撃から連射撃モードへ切り替え、十分引き寄せよ!!』


銀色のロングレンジバレル、銃口。その真下に取り付けられた擲弾発射器。そして鈍い光を放つ刃の銀色の銃剣。クイストの標準装備であるレーザー機銃とは全く異なったデザイン、構造だ“敵部隊、射程圏内に入りました!!”

『クイスト全機、一斉射撃!!撃てぇ!!』

――無数の弾丸が高速で飛び交う。エネルギーではなくこちらも実弾であった。
そしてエルファイスマンガリーから放たれるはライフルのような弾丸ではない、小型の実弾ミサイルがまるで機関砲のように連射されながら左右の敵機を次々と追っていく。


戦闘員はすぐに散開。この宙域は弾丸で埋め尽くす銃撃戦の応酬と化した。

さすがの戦闘員も避けきれず圧倒的数の弾丸、そして『エルファイスマンガリー』から放たれる無数の小型ミサイルが直撃を繰り返し、装甲が陥没、または爆発により強度の弱い部分を破壊された。

特に小型ミサイルはなんと敵機を追尾してくるため避けることは困難であり、スレイヴやツェディックの全武装をもってして撃ち落とそうとするがその数が余りにも多すぎために追いつかない。誘爆させようにも他機のライフル攻撃で邪魔される。

何十機かのクイストはライフルを横に傾け、グリップ部分を縦から掴んだ。

トリガーを引くと銃口の下に設置された擲弾発射口から拳4個分の大きさを持った弾体が発射。先が何とドリル状となっており、発射と同時に回転を始めた。

遅めの弾道でヒュルヒュル飛び、一機のスレイヴの胸部に直撃。ドリルにより金属を削りながら内部へ入り込み――。

「!?」

コックピット内に到着した同時に動きは停止、彼の膝の上にポトッと落ちた。

「まさかこれは……」

その戦闘員は息を飲んだ。そのまさかである……。

(ドワっっ!!)

コックピット内が突然爆発を起こし、その機体は静止したまま二度動かなかった……。



「くう……直撃すれば死んじまう……」

ラクリーマは向かってくる弾丸の嵐の中、決死の思いで前進する。セルグラードにログハートのエネルギーをほとんど供給に回しているためにあの超高速機動ではなく、的にされてもおかしくないほど遅かった。

『リーダーを守れ、何としても突破させるんだぁ!!』

4機が即座に彼の回りに配置し、盾のように防衛に入った。


『全機、まずあの中心部にいるデカブツを真っ先に破壊しろ。あれがおそらく隊長機で倒せば部隊はバラバラになる!!』

レクシーはメレウルに狙いを定めて、速攻で全機を向かわせた

そして彼女も自分が標的になっていることが分かると攻撃用レバーを全力で手前に引いた。


『図にのるな!!全機、エルファイスマンガリーからすぐに退避せよ!!』

エルファイスマンガリーの手足含む全装甲から直径1mの丸い孔が大量に出現。
両手、両足全てを広げて大の字のような形になるや、部下達は攻撃を止めて彼女の周辺から離れていく。

『ミサイル、全方位全弾発射―――っ!!』


――展開された穴からおびただしい数のミサイルがマシンガンのように爆炎と共に全方位に向けて一斉に飛び出した。
次々と機体群に直撃するミサイル。みるみる内に大破されていく。

『これで終わりと思うなよ!!』


今度は両腰に装備されたミサイルコンテナが起動、メレウルはすぐに近くにいた敵機4機に照準を定めて発射。


発射された4体のミサイルは先程の無数のミサイルより遥かに巨大だ。

『撃ち落とせ!!』
すぐにレーザー砲でミサイルに狙いを定め、撃ち込むが何とミサイルがまるで意思を持っているかのように自ら光線を避けたのであった。
こちらがどれだけ攻撃しても軌道、位置、全てを読み取って素早く避けで追っていった。

『なんちゅうミサイルだ!!』

もはや、避けるのに必死であった。そして退避していた多数のクイストも駆けつけてくる。

『さあどうするアマリ―リスさんよぉ!!このままだと直撃しちまうぞ!!』

彼女は人格が変わったかのように高圧的になっていた。

『おい、ちいとオイタしすぎるんじゃねえか!?』

『!?』

エルファイスマーガリーの背後に回り込んだ機体がいた。

レクシー、ユーダの駆るシルバリオンであった。

(スバァ―――っ!!)

両手首のエネルギー刀身が真上からエルファイスマーガリーの両肩へ降り下ろされ、両手、両腕が胴体から離れた。

『何い!!』

もはや二人にとってここまでコケにされて我慢の限界であった。

『ダルマにしてやる!!』

瞬間、シルバリオンは下へ移動、今度は両脚まとめて横の一閃を浴びせ、切断。言葉通り、ダルマの姿そっくりとなった。

『〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!』

すっかり顔色を一気に変えてもはや余裕の顔がなくなった彼女、そのモニター前には彼らの機体が現れ――。


『ユーダ、とどめだ!!』

『言われるまでもねえよ!!』

刀身を形成したまま右腕を引く。コックピットを貫こうとしていた。

『ちいっ!!』

メレウルは素早く操作レバーを引き付け、連動て後部スラスターが点火。後退して避けようとした。

(ガシ!!ガシ!!ガシ!!)

3機のスレイヴに逃げれないように取り押さえた。

『このぉ離せぇーー!!』

メレウルはレバーを前後へ乱暴に動かすが振り切ることはできない。

『往生際がワリィんだよ』

『レクシー、ユーダ!!やれえ!!』


仲間の呼びかけに応じて、シルバリオンは突進。右腕を突き出し――。

『うあああ――――っ!!』

高出力のエネルギーで発振した長刀は装甲を溶かして胸部を見事に貫いた……。

“中隊長――ーっ!!”

部隊員全員が叫ぶが彼女の返事はなかった……。


エルファイスマンガリーからイナズマがほどばしるとすぐにレクシー達はその場から離れ――。


(ズ ワ オ ッ ッ ― ― ! !)


大爆発。中の残っていたミサイルも誘爆して、凄まじくそしてキレイさっぱりバラバラとなってしまった。


『よし、隊長機を倒した。あとは部下達だ。
全機、焦るな。一機ずつ確実に破壊しろ!!』


そして彼らはメレウルの部下に狙いを定め、手をバキバキ鳴らす。先程の仕返しをしようとしていた。

一方、彼女の部下は……指揮官がいなくなったことにより混乱に陥っていた。

『メレウル少佐が死んだ……』

『嘘だろォ……あの人が……』

もはや士気が著しく低下していた。しかし、アマリ―リスはそれを好機として逃すはずがなかった。
『全員、チャンスだ!!かかれ!!』

レクシーの合図に襲いかかるアマリ―リス軍団。
逃げ惑う機体、彼女の仇を討とうと特攻する機体……どうすればいいか分からずあわふたしている内に攻撃、巻き添えを食らって吹っ飛ぶ機体……もはや部隊として成り立たなくなってしまった。


『う……うわああああっ―――っ!!』

後方で待機していたあの戦闘機『サーペイザー』が突然、自分の部隊を置いてきぼりにして艦隊へ戻っていった。

そう……サーペイザーの搭乗者でメレウルのパートナーである彼、ムーリアはすでに情緒不安定と化していた。


――そして中央デッキでも……。

「……メレウル中隊長の生体反応消滅……。第26実特科部隊はもはや壊滅するのも時間の問題です……」

“…………”


メレウルの死は誰も信じがたいことであり、誰もなんと言葉を言えばいいかも分からなかった。

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