小説『大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦!!【R-15】【完結】』
作者:はならむ()

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そして、エクセレクター内に強引に突入し、大破したイクスウェス内では機能としては壊滅的であるがかろうじて原型を留めている操縦室でドラえもん除く4人は巨大な水玉に包まれていた。

「つっ……全員、無事……っ?」

「……なんとか……」

「死ぬかと思ったよ〜〜」


どうやらその水玉は衝撃を吸収するもので大破した瞬間に作動し、発生するようだ。


「あちゃ〜……こんな状態じゃあ、もう機能しないヨ……」

周りを見て落胆するミルフィ。
とりあえず前のコンピュータに触ってみるところ、反応はしているが機能は異常をきたしている。
これでは機内からのサポートは不可能だと悟った。

「せめてこの内部だけでもドラちゃんに治してもらいましょう」

「そうだね、ドラ……」

一瞬、全員が静まり返ったがすぐにそれが破られることになる。

「あ゛―――っっ!!ドラえもんは一体どこだ!!」

「そ、そう言えば、甲板に出るって言ってたわよね!?まさかあの超高速移動中に……」
;

段々、嫌な予感しかしなくなる。

「早く探そうヨ!!」


四人は直ぐ様ここから脱出しようとするも操縦室には窓がなく、唯一のドアがぐしゃぐしゃに凹み、歪んでいてとても出られる気がしなかった。

「どうやってここから出るんだよ!!」

「ちょっと待って!!」

エミリアはその『ドア』だったモノを拳で軽く叩くと僅かに軽い音がした。


「下がって!!」


ジャイアン達を下がらせると彼女はあの専用銃である両拳銃の一つの、銃身、グリップ……縦横幅が大きい方を取り出し、その銃口をドアに向けた。


「『ユンク』、エネルギーチャージ開始!!」

瞬間、『ギュオオッ!!』と鈍い音が鳴り響くと共に銃全体が赤に染まり始めた。

数秒後、その『ユンク』がまるで血のように真っ赤に染り、彼女はトリガーをグッと引いた。

(ドワァ!!)

その銃口からはピンポン玉程の光球が放出し、瞬時にドアに直撃し貫通。
その強力な衝撃と光球に蓄積したエネルギーが全体に拡散し、ドアを構成した金属内部から粉砕し、これを破壊した。


「「おおーーっスんゲェ!!」」


ジャイアンとスネ夫はその威力に見とれているが、エミリアは彼らを手でクイクイ招く。

「足場が悪いからゆっくり出ましょう!」

発生した大穴から急いで出るも、後部もかなり酷い。天井や床が歪みすぎて気持ち悪くなりそうだ。

そんな状況でも怪我をしないように慎重に移動する。

しばらく歩いていると行き止まりに差し掛かるが、壁とは違う四角いしきりと出くわした。しかしそれもかなり凹んでいるが。
もう一度、叩いてみるとギシギシ揺れているのが分かる。

「多分、衝撃を与えれば簡単に破壊できるわ」

「ここは俺に任せてくれ!!」 0;
とっさにジャイアンが身を構えて、距離をとり、助走を付けてその壁に体当たりをかました。

鈍い音と共にその壁は前に押し出されるように吹き飛び、つられてジャイアンも一緒に前に倒れかかった。


ついに外に通じる道ができ、急いで三人は外に出て、倒れている彼の元へ駆けつけた。

「タケシ君大丈夫!?」

「なんとか……」


ジャイアンを起こすとすぐにイクスウェスの方へ振り返る全員。

――その凄惨な姿に言葉を失う四人。
もはや飛行機という形をしていなく、ボロボロと化した巨大な鉄の塊とも言える状態が通路を完全に塞いでいた。

よく自分達は助かったなと心の底から思うのだった。


「あ〜あ……あたしの機体が……」

「ドラえもんの復元光線なら治してくれるよ!!早く探そう!!」

「反対側も探す必要があるヨ。向こうへいけるかしら……」
「私が向こうへ行ってみる。ミルフィ、通信機を渡しておくわ」

エミリアはミルフィにコイン状の機械を渡した。

「すぐにかかりましょう!!もしかしたらアマリ―リスの奴らが私達を感知してこっちに向かってくるかもしれないから、いざと言うときはいつでも武器を使えるように備えてて。ミルフィも何かあったらすぐに連絡して」

「「「はい」」」

「今からシールドを使いましょう。ここから何が起こるかホントに分からないから。使い方は知っているわよね?」


四人はシールドを取り出し腹部に押し当て、真ん中にある丸いボタンを当てた。
あの時のように淡い光の塊が各個人を包み込んだ。

「いいわね。なら行動開始よ」

――それぞれ4人はドラえもんの捜索を始めた。周辺は通路であるらしく直線上に真っ直ぐ延び、先は全く見えない。
辺りはどこかヴァルミリオンと同じ雰囲気だ。

ジャイアン、スネ夫、ミルフィの三人で辺りをキョロキョロ見ながら行動していた。

「いないな……どこだよドラえもんは……」

「こんなに狭いんなら探す場所限られるハズなんだけど……」

「もしかしたら宇宙に放り出されたか、もしくは突入時にイクスウェスに潰されたカモ……」

瞬間、三人の背筋が一気に凍った。

「ふっ不吉なこと言うなよっ!!」

「けどあんな超高速移動中に勝手に外に出て無事だったら逆に不思議だヨ!!」
「けどもしかしたらってことがあるかもしれないだろ!?」
「そのもしかしたらって一体何を根拠にして言ってるのヨっ!!」

「ぐぬぅ………」

「二人ともやめなよ!!」


声を張り上げて、口論へと発展し、スネ夫が見かねて仲介しようと二人の中に入っていくが一向に治まらない。
しかし、その時であった。

“誰だそこにいるのは!!”

“連邦かぁ!!”

「「「いいっ!!」」」

渋い男の声が通路の奥から響き、走る音が段々、こちらに近づいてくる。


「うわあ、どうしよどうしよぉ〜〜!!」

「落ちつけスネ夫!!!!」

「どうすんだヨ〜っ!!」

三人は慌てふためき慌てているが段々と足音がもうここまで迫っていた。

………足音の正体は二人のアマリーリス員であり、三人のいた場所へ辿り着くが人の姿も何もなかった。不審に思った彼らは携行していた拳銃を構えて狭い通路の奥に目を凝らした。
「……誰もいない。確かに大声がしたはずだが……」

「敵かもしれん、十分注意しろ」

彼らは焦っていた。連邦の奴らが艦に侵入した今、いつ襲ってくるかわからず、ラクリーマという頼もしい指揮者がまだ帰還していない状態で集団で攻められたらひとたまりもない。二人の顔に緊張が走った。

……何か煙り臭い匂いがする。この奥からだ。二人は周辺を警戒しながらこの匂いの後を辿っていく。
「これは…………」
二人の目に入ったもの、それは以前、『戦闘機だと』思われる巨大な金属の残骸が壁のように奥へ続く通路を塞いでいた。

「……明らかに我々と違う技術と金属で作られたモノだ。ということは……」

「近くに連邦兵がいる可能性が高いな!」

「どうする、中に入ってみるか?でないと奥に行けないぜ?」

彼らは互いに見つめコクッと頷くと一人ずつゆっくり壊れかけた入り口へ入っていった。

……もの見事に潰れて今にも崩れそうな内部空間、プスプスと所々上がる煙が鼻につく。内部は外見に反して広く感じた。

「なあ……もしかしたら俺達はここで……」

「バカなこというんじゃねえよ!ここは俺らの唯一の城だ、何としても守らねえといけねえだろぉが!!」

「ワリィ……」

迫力のある叱咤が響くもどこか不安げな心情が感じ取れる。ただ不安をぶちまけるよりか幾分マシであろうと思ったのだろう。

だがそれは心に余裕のないことを意味していた。

一方、ジャイアン達はと言うとその二人が今いる機体内部の中に隠れていた。
隙間と化した空洞の僅かな隠れ穴に三人は窮屈そうに無理矢理押し入り、敵二人が過ぎ去っていくのをジッと堪えていた。

(せまい〜〜息苦しいよ!!)

(我慢しろよ!!音たてたら見つかるんだぞ!!)


ミルフィに至っては身体が今にも潰れてしまいそうな状態であった。
その僅かな空間を圧迫しているのは何を隠そう、体格が一番大きいジャイアンであった。

息苦しさに加えてむせかえる暑苦しさが三人の不快感を与え、体力を奪っていく。

そんな時である。ジャイアン自身にある危険極まりない信号が彼の体に襲った。それは……。




(……ヤバい……屁がしたくなった……けどここで音を立てたら!!)

生理現象であるが何という運命のいたずらであろうか。段々眉間にシワを寄せていく。しかしスネ夫とミルフィは全く気づいていない。

(ヤバい……耐えられそうにない……)
これでもかと言うくらいに顔を歪ませて堪えているが、もはや彼は我慢の限界であった。ついに。

(…………)

ついに解き放ってしまった。幸い音がなかったがその場合はまさに最悪のパターンであった。

「「「!!!?」」」

ジャイアンから解き放たれた「ソレ」は三人の鼻の中へ、それぞれの嗅覚に容赦なく襲いかかる。
三人は一目散にその隙間から飛び出しのたうち回った。

「ゲホっ!!ゲホぉ!!誰だよオナラしたのは!!」

「もうサイテーっっ!!死ぬかと思ったヨォ!!」

ただ一人何も言わないジャイアンに二人が彼に向かって疑うように目を細める。しかし、

「だっ誰だ貴様らは!!」

振り向くと先ほどの二人がこちらに敵視した眼でこちらを見ていた。

「ひいいいっ!!」

三人はとっさにピンと背筋を伸ばし、後退る。しかし男達はすぐに銃口を三人に向ける。

「タケシ君、スネ夫君早く武器を!!」
二人は急いで幾つかの武器の一つを出そうとするが慌てていてどれにするか決まっていない。
しかし相手は待っていてくれるほど優しいハズがなかった。
「死ねぇ!!」

引き金を弾いた瞬間、二つの銃口が一瞬光ったと思いきや白熱の一本筋がそれぞれジャイアン、スネ夫の胴体に到達。

だが、淡い光が二人の体から発光し、その光線を一瞬でかき消した――。

「なにぃっ!!」

これもシールドを展開したおかげである。

すぐにジャイアンはドラえもんから借りたひみつ道具『ショックガン』を持ち、すぐにその二人組に向け、トリガーを引いた。

青白い光弾2発が二人に直撃、『バチバチ』と電気がほどばしるような音がした後、白眼となり前に倒れた。

「はあ……はあ……っ」

「あわわわっ……」

「タケシ君、スネ夫君大丈夫!?」

青ざめた表情、酷く息を荒らしてその場にへたり込む二人。が、直ぐに息を整えて、互いに目を向き合いゆっくり頷いた。

「……さすがはエミリアさんの言った通り、スゴい効き目だなコレ……」

「う……うん。シールドがなかったら……僕達はきっと……」

改めてこの『シールド』の素晴らしさを思い知った瞬間であった。

その時である。ミルフィが身につけていた通信機から何かが聞こえたのは。

“……フィ……ミルフィ、聞こえる!?”

「エミリア!?」

声の主はエミリアであった。三人はすぐに通信機に耳を傾ける。

「……ドラちゃんを見つけたわ」

瞬間、過剰に反応し三人は互いに笑顔で見つめる。

しかしエミリアの声は明るくなかった――。

“…………とりあえず合流しましょう。三人はあたしのいる方へ向かって――”

「エミリア……?」

……三人はすぐに彼女の方へ向かった。だが、そこに待っていたのは……。


“………”


三人は言葉を失った。確かにこのまん丸で青色の表面をした体はドラえもんである。
原型は留めていたものの、全身がボロボロであり目が完全に白目であった。呼び掛けても何の反応も示さなかった。

「発見した時は大丈夫そうだから安心したけど……多分、体内の回路が完全に……」

「やっぱり……あんな行動は無茶すぎたんだヨ……」

その暗い口調にスネ夫とジャイアンは……。

「ドラえもん、ドラえもん!!」

「起きろよ!!おい!!」

二人は必死で何度もさするが一向に返事はなかった。
最悪のことが頭に浮かび、段々とエミリアとミルフィの顔は青ざめていく。
地球からとは言え、今から100年後という遠い未来から来たドラえもんはエミリア達銀河連邦とは異なる技術で造られているため、全て直すには至難である。
ましてや専門外である二人からすれば全く構造が解るハズなどなかった。

「こうなったら!」
スネ夫は突然、ドラえもんの腹部にあった四次元ポケットに手を突っ込み、無我夢中で漁りまくる。

「何か……ドラえもんを治せるモノ……出てよ、出てよ!!」

やたらめったらに動かす彼の手にふと、何か暴れるように動くものが触れた。
スネ夫はグッと掴み、引き抜いた。
それは……。



「ドララ〜〜♪」

全員、特にエミリアとミルフィの目が点となった。
何とポケットから出てきたのはドラえもんを小型化したようなロボット。体の色は赤色である。

「なに……この……ドラちゃんをちっこくしたみたいなロボット……?」

「『ミニドラ』だ!!」

それはドラえもんのサポートロボット、『ミニドラ』であった。

スネ夫とジャイアンはその『ミニドラ』に助けを求めるような目で見つめた。

「ど、ドラえもんがどうやっても起きないんだ!!」

「ミニドラ、どうかドラえもんを助けてくれ!!」

「ドラドラ……ドラァ♪」

二人の助けに対して、彼は『任せとけ!!』と言わんばかりにポンと胸を叩いた。

するとミニドラは自分の腹部のポケットから何故かホイッスルを取り出し、ドラえもんの前に立つと、高らかに笛を鳴らした。
それに応えるように、

「ドラ、ドラ!」

「ドララ♪」

一匹、また一匹と入れ違いのミニドラがドラえもんのポケットから飛び出した。
しかも彼らはもう修理道具を携えていた。なんと準備がよいのだろうか。

それを見ていたエミリアは顔を真っ赤にして口を押さえていた。

「かっ……カワイイ……あたしも欲しいかも……」

「え、エミリア……」

こんな状況にも関わらず、不謹慎ながらそう発言する彼女に冷たい視線で見つめるミルフィ。

出てきた黄色、緑色、計2匹のミニドラが最初に登場した彼に注目した。

「ドララ、ドラドラドラ、ドララァ!」
……何を喋っているのか分からないが、今に置かれている状況説明と目的、そして各人、どの故障箇所へ向かうのかを話しているのは全員すぐに理解できた。

すぐに彼らの会議が終わり、赤いミニドラ……「赤ドラ」は自身のポケットから懐中電灯を取り出し、それを二匹に向けて光を照射すると、小さかった体が更に縮み、まるで豆粒のようになった。

そして直ぐに自分も光を当てて彼らと同じサイズに変化した。

「ドララ〜〜!」

豆粒と化した彼らは手を使ってスネ夫に向かって何かをジェスチャーしている。
……どうやら自分達をドラえもんの口の中に入れて欲しいと言っているようである。

スネ夫は指示通りに手の平に三匹を乗せてドラえもんの口の位置まで移動させた。

「ドラドラ、ドラ!」
今度はジャイアンに視線を向け、丸い手ををドラえもんの口に示している。

「お、そうかわかった!!」

彼の口が閉じていることに気づいたジャイアンはすかさず強引にこじ開けた。

「ドララァ!」

赤ドラを先頭に三匹は口腔内へ飛び降り、突入していった。

「これで直るといいけど……」

するとエミリアは腰の弾帯に装着されたホルダーからあの2丁拳銃『テレサ』、『ユンク』を取り出した。

「あたし、ドラちゃんが直るまで周辺の警戒と把握をしてくる。
スネ夫君とタケシ君の二人でわたしの反対側の見張りをお願いするわ。
ミルフィはあの子達が出てきたら通信機で連絡して、あたしも二人を呼びに行くわ」

「「「はい(了解)!!」」」

「あと二人とも、もし危険になったらすかさず大声で呼ぶこと、すぐに駆けつけるわ。ミルフィも二人の声が聞き取れたら中継して!!」

――そして各人はすぐに指示の通りに行動を開始した。

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