〜ギルドの怒り〜
side 三人称
ザッ…ザッ…ザッ…
オーラを纏ったハルが、一歩ずつジョゼに近づいていった。
ジョゼ「…はっ!そんな物で私と渡り合おうというのですか!?笑わせるのもほどほどにしなさい!」
そう言ってジョゼは右手を突き出し、指先からレーザーのようなものを発射した。
が………。
バチィ、バチィ!
ジョゼの攻撃はハルが身に纏うオーラにより阻まれ、ハル本体にまで届いてはいなかった。
ジョゼ(なっ!?効いていない!?ならば!)
するとジョゼは右手で衝撃波を放った。だが、ハルはそれを「神速」で避けた。その速さにジョゼは目で追う事が出来なかった。
ジョゼ(くっ、どこだ!?どこに行った!?)
ハル「横だ…」
ジョゼ「っ!?」
不意に横から声が聞こえ、向くとそこには右手で拳を作り構えていたハルの姿があった。
ハルは握った拳を振り上げるようにジョゼに殴りかかった。ジョゼは咄嗟に両手でその攻撃をガードしたが、威力が強力でそのまま浮くように壁の近くまで飛んでいった。
ジョゼ(ぐぅ!なんて力!)
ジョゼは飛ばされながらも空中で体勢を立て直し、うまく着地した。
ジョゼ「ぬぅあぁ!!」
ジョゼも負けじと闇の波動を放ったが、ハルはそれを呼んでか次の攻撃に入っていた。
ハル「超破壊拳(ビックバンインパクト)!」
渾身のオーラを集中し強化した右手によるストレートパンチは、とてつもない衝撃波を生み、ジョゼの魔法をいとも簡単に消し去った。
ジョゼ「な、何!?ぐぅおおおぉぉぉぉぉ!!」
その衝撃波の威力はジョゼのところのも及び、ジョゼの後ろにあった壁までも破壊した。
グレイ「なんだこりゃ……」
エルフマン「す、すげぇ……」
壁が壊れた事によって出来た砂煙が消えていくと、そこには両手を突き出しているジョゼがいた。そしてジョゼの足下の床は、楕円形を形作っていた。
ハル「……さすがはファントムロードのマスター。俺の攻撃を自らの魔法で防ぎきるとは。」
ジョゼ「…さすがにやりますね…ジュピターを防いだ後だというのにこの戦闘力。ですが……そんな強大な魔導士が、マカロフのギルドに他にもいたとあっては……気に食わん…!」
ジョゼはそう言いながら突き出していた両手を降ろし、閉じていた目を開いた。その目は原作のマカロフとの戦いのときのように、禍々しいものとなっていた。
ジョゼ「何故私がマカロフにとどめを刺さなかったかお分かりですか?」
ハル「…………」
ジョゼ「絶望。そう、絶望を与える為です。目が覚めた時、愛するギルドと愛する仲間が全滅していたらどうでしょう?むぅふっふっふ、悲しむでしょうねぇ。あの男に、絶望と悲しみを与えて滅ぼす…楽には逝かせぬ。苦しんで苦しんで苦しみ抜きながら朽ちていくのだ!」
エルザ「下劣な!」
グレイ「あの野郎…!」
エルフマン「漢じゃねぇ!」
ミラ「そこまでするなんて!」
ハル「………」
ジョゼはエルザ達の罵声を浴びながら、なおも語り続ける。
ジョゼ「ファントムロードは、ずっと一番のギルドだった。この国で一番の魔力と、一番の人材と、一番の金があった。だが、ここ数年でフェアリーテイルは急激に力をつけてきた。エルザやラクサス、ミストガンにハル…その名は我が町にまで届き、サラマンダーの噂は国中に広まった。いつしかファントムロードとフェアリーテイルは、この国を代表する二つのギルドになった。はっ……気に入らんのだよ、元々クソみてぇに弱っちぃギルドだったくせにぃ!」
エルザ「ふざけるな!この戦争は、その下らん妬みが引き起こしたとでもいうのか!?」
ジョゼ「妬み?あっはは、違うな!我々はモノの優劣をはっきりさせたいのだよ!」
ミラ「そんな事で……!」
ジョゼ「前々から気に食わんギルドだったが、戦争の引き金は些細な事だった。ハートフィリア財閥のお嬢様を、連れ戻してくれという依頼でな。この国有数の資産家の娘がフェアリーテイルにいるだと?貴様ら…どこまで大きくならば気が済むんだ!」
そう言ってジョゼは突然魔法陣を展開し、ハルに魔法を放った。ハルはそれをはじき防いだ。
ジョゼ「ハートフィリアの金を貴様らが自由に使えたとしたら、間違いなく我々よりも強大な力を手に入れる!それだけは許しておけんのだ!」
ジョゼはさらに魔法陣を展開し、先ほどより多くの魔法を放った。だが、ハルはそれを避けずにまともに食らってしまった。
エ・グ・エルフ・ミ「「「「ハルっ!?」」」」
だがハルは砂煙の中、何事もなかったかのようにジョゼに向かって歩き始めた。
ハル「マスタージョゼ。アンタに言っておきたい事がある。」
ジョゼ「何?」
ハル「ルーシィは家出してきたんだ。家の金なんてこれっぽっちも使えねぇよ。家賃七万の家に住んで、俺達と仕事を共にして、笑って泣いて……アイツはただ一人の人間だ!俺達と変わらねぇ!俺達と同じギルドの…家族だ!」
ハルはしゃべりながらも一歩ずつ、ジョゼに歩み寄っていく。
ハル「戦争の引き金…ハートフィリア家の娘……。ルーシィはなぁ、そんな事望んでねぇんだよ!テメェなんかに、涙を流すルーシィの何がわかる!!」
ジョゼに向かって叫んだハル。それを聞いたジョゼは、笑みを浮かべながら言った。
ジョゼ「これから知っていくさ。私があの小娘をただで父親に引き渡すとでも思うか?金がなくなるまで飼い続けてやる。ハートフィリアの財産全ては、私の手に渡るのだ!!」
グレイ「なっ!?」
エルザ「おのれ……!」
それを聞いたハルは、歩みを止めた。
ハル「……ジョゼ、アンタに言う事がもう一つできた。」
ジョゼ「あぁ?今度は何だね?」
ハル「アンタのいく道は、人の道でも、ましてや魔導士の道でもない……」
するとハルの姿が一瞬で消え、後ろから声が聞こえジョゼは振り向いた。
ハル「それはただの……「外道」だぁーー!!」
ジョゼ「グフゥ!?」
ハルの拳がジョゼの腹にめり込み、ジョゼは反対側の壁まで飛んだ。
そのとき丁度、魔道巨人自体が揺れ始めた。
エルフマン「な、何だ今度は!?」
ハル「多分ナツだな。ガジルを倒したか…」
グレイ「ナツが!?」
飛ばされていたジョゼがゆっくりと立ち上がる。それを見たハルが、またゆっくりと歩き始めた。
ハル「俺には罪がある。マスターの号令についていかずに、ギルドに残った事だ。他にも、守れる筈の色々な物を守れなかった。」
ジョゼ「グッ…!」
ハル「俺は罪を数えたぜ、ジョゼ。今度はお前の番だ。さぁ、お前の罪を…数えろ。」
そう言った瞬間、ハルはまたジョゼの背後に移動し攻撃した。ジョゼは今度はこれを読んでか、その攻撃を避けた。
ジョゼ(く、速い!目では追えるが体が追いつかなくなるのも時間の問題か…!)
そう感じたジョゼはジャンプし後退した。が、ハルはそれに追いつきジョゼの顔を殴る。そして左足の回し蹴りを腹に当て、ジョゼを飛ばした。
ジョゼ「ぐぬぅ!おのれぇ!!デットウェイブ!!」
ジョゼは体勢を立て直し、魔法を放つが、ハルは換装で逆刃刀「真打」を取り出し、ジョゼの魔法を切り裂いた。
ジョゼ「な、何だと!?」
驚愕しているジョゼをよそに、ハルは逆刃刀を構え、「神速」でジョゼに突進した。
ハル「一刀流……九頭龍閃!!」
ジョゼ「ぐおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
そしてハルはジョゼに一瞬にして九つの斬撃を放った。それを食らったジョゼは、またしても壁まで吹き飛ばされた。
グレイ「すげぇ…ジョゼを、倒したのか!?」
エルフマン「何をしたのか見えなかった!」
エルザ「あれは「九頭龍閃」。相手に一瞬で八つの方向からの斬撃と突きを与える技だ。私もあれを一度受けて、鎧を粉々にされた事もある。」
グレイ「エルザの鎧をか!?」
ミラ「すごい…!」
だが、不意にジョゼが飛んでいった方向から音が聞こえた。
ハル「…どうやらまだやるつもりみたいだな…」
そう、その音は壁のがれきをジョゼが吹き飛ばした音だった。
ジョゼ「まだだ……ファントムロードが…この私が…貴様のようなクズギルドの兵などに…負けるなど…あり得ない…あってはならない!」
そう言いながらジョゼはゆっくりとこちらに近づいてくる。
ジョゼ「ハル・グローリー……これから貴様に最大の恐怖と絶望を……与えてくれる…覚悟しろ……光の、魔法剣士ぃ!!」
ハル「残念だが、もう決着はついている…」
ハルはそう言って右手を伸ばした。
ハル「…俺の…勝ちでな。」
そして指をパチンとならす。するとジョゼの動きが急に止まった。
ジョゼ「グッ!体が…動かない…!貴様、何を…したぁ!?」
ハル「悪いが、アンタの体中には俺の技「伸縮自在の愛(バンジーガム)」ってのをつけさせてもらった。それは粘着性、伸縮性、弾性を同時に合わせ持つ糸のようなものでな。それをアンタとこの部屋の床や壁につけさせてもらった。そして今、その糸を縮ませる事でアンタを固定しているという訳だ。」
ジョゼ「そんな物……いつの間に…!」
ハル「勿論、アンタとの戦闘中さ。さて、次で決めてやるよ。」
するとハルの周りに光が纏われた。その量は通常の時より多く、より輝いていた。
ハル「…我は光…世界を照らし、闇を払う光……そう、これは竜の力……」
そしてその光はハルの右腕に集中し始め、さらに輝きを増していく。
エルザ「く…!」
グレイ「眩しい!」
エルフマン「ぐおぉ目がぁ!」
ミラ「うぅ…!」
ハル「さぁ…これで終わらせてやるよ。俺達に、フェアリーテイルにケンカを売ったのが間違いだったって後悔するんだな…」
ジョゼ「グゥ、何をほざくかと思えば…後悔するのは貴様らだ!消えろ!そして歴史上から消滅しろぉぉぉ!」
ジョゼはそう言って魔力を放出し始める。
ハル「…もう遅ぇよ…」
ハルは呟き、ジョゼに向かって走り出した。
ハル「滅竜奥義、光竜剛神掌!!」
そしてジョゼをその輝く右手で殴った。その拳は光の衝撃波を生み、ジョゼはその衝撃波に呑み込まれ魔道巨人の外まで飛ばされた。
フェアリーテイル裏庭 湖付近
アルザック「ん?おい…あれ!」
ビスカ「え?…あれは…光線…?」
カナ「じゃあまさか…ハルが!?」
しばらくすると、空からジョゼが落ちてきた。
マカオ「こいつは…マスタージョゼか!?」
ワカバ「マジかよ!?」
カナ「ハル…やったな…!」
魔道巨人 首部分
ハル「…今の一撃は俺達フェアリーテイルの怒りだと思え。今度フェアリーテイルに近づいたら、殺す気でかかる。肝に命じておきな……聞こえねぇか…」
ハルは自らの技で出来た大穴からそう言って振り返った。するとそこにはアリアが空域・滅を発動しようとしているところだった。
アリア(悲しいなぁ、これならハル・グローリーの魔力を奪える!貰ったぁ!)
エルザ「ハル!!?」
ハル(そうだ!こいつがいたんだ!エルザが倒したと思って安心してたのに…!)
間に合わない、そこにいる誰もがそう思った。
その時、
アリア「グァッ!…ブホァ!?」
アリアが誰かに殴られ、壁にぶつかった。
皆がアリアを殴った人物を特定しようと向くと、そこには…
マカロフ「もう終わったんじゃ、ギルド同士のケジメはつけた。これ以上を望むなら、それは掃滅、跡形もなく消すぞ…。ジョゼを連れて帰れ!今すぐに!」
俺達のマスターだった。エルザ達はマスターがここに来たことに喜び始めた。
マカロフ「ハル、よくやってくれた。」
ハル「…当然の事を…したまで…ですよ…」
そう言うとハルは突然倒れかかった。だが、それをエルザが支えた。
ハル「え、エル…ザ……すまねぇな…もう、魔力が…」
エルザ「心配するな。お前は私が運ぶ。安心して寝ていろ。」
ハル「はは…それは…ありが…たい…」
エルザの言葉に甘えて寝ようとするハル。しかし突然エルザが支えているのと逆の方向からも支えられた。支えたのは…
ミラ「エルザばっかりずるいじゃない。私も運ぶわよ。」
ミラだった。
エルザ「む、別にいいであろう。それにミラは怪我をしているんだ。私が運ぶ。」
ミラ「怪我しているのはエルザだって同じでしょ!」
おい、騒ぐな、寝れないじゃないか。
そうハルが言おうとしたが、もうそんな気力もなく、自らの睡眠欲に任せて意識を手放した。
side out
あとがき
お久しぶりです!作者のライデンです!ようやく更新できました。水曜に更新するとか言っといてこんなに遅くなってしまいました。申し訳ありません。今回は今までで一番長いものとなっています。戦闘描写が難しかった……。
そしてここで報告があります。
なんと、
この小説の総アクセス数が……
ついに………
30万を突破いたしました!!
いやぁ、こんな拙いバカな高校生が書いている小説がここまでいくとは、正直信じられません。これも皆様のご支援があってこそです。本当に、ありがとうございます!!
それでは皆さん、次の更新を楽しみに待っていてください!