小説『FAIRY TAIL 光の魔法剣士』
作者:ライデン()

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 〜責任を負う覚悟〜


 side ハル

 ナツ「四角ーー!!」

 ルーシィ「大声出さないの!」

 グレイ「下であれだけ派手にやったんだ!今更コソコソしても仕方ないだろ(モグモグ)」

 ルーシィ「何食べてんの!?」

 バルゴ「食堂のようですので、姫もどうぞ。」

 ハル「そうだぞルーシィ。今のうちに食えるだけ食っとけ。腹が減ってはなんとやらだ。」

 ルーシィ「は、はぁ……」


 俺達は楽園の塔の地下から上り、食堂らしき部屋で一休みしながら食い物を食っていた。


 ジュビア「先ほどの扉ですが、魔法で遠隔操作されたものですよ。」

 ハル「そのようだな。」

 バルゴ「完全に気づかれているようです。」

 ルーシィ「じゃあ一体なんで?」

 グレイ「挑発してやがんのかぁ?」

 ルーシィ「挑発…?」


 まぁ近いものではあるな。お、この肉うめぇな。


 バルゴ「それより姫、食堂でそのような格好ははしたないかと。」

 ルーシィ「はしたない!?」

 バルゴ「お召しかえを!」

 ルーシィ「ってここでかい!?」


 何やらバルゴが目を赤く光らせ指を忙しく動かしながらルーシィに迫る。そんな中俺は知らんぷり。そんな事よりこの肉がうまくてな。ナツはパンを一気食い、グレイはがん見、ジュビアはそんなグレイを止めようとしていた。


 バルゴ「星霊界のお召し物でございます。」

 ルーシィ「うっふふ!どう?似合ってるのはわかってるのよ〜」

 グレイ「へぇ〜、結構かわいいじゃねぇか!」

 ジュビア「ジュビア悔しい!」

 ハル「それじゃあ動きにくいんじゃねぇの?」

 バルゴ「どぅえきとぇるぅ」

 ルーシィ「巻き舌風に言わないの!」

 ナツ「どこでハッピーのまねなんか覚えたんだ?」







 その頃、ハッピー達は……


 ハッピー「ぶぇっきしゅん!」

 レット「大丈夫か?」

 ハッピー「う、うん。でもこの状況でオイラ達はどうすればいいの…?」

 レット「せめて腕と足が縛られてなければ…!」


 実がレットは捕まる際、ウォーリーに反撃したため、ミリアーナのひもで縛られていた。







 バルゴ「姫、ご健闘を…」

 ルーシィ「ありがとうバルゴ!ところでアンタ達、よく濡れたままの服で居られるわねぇ?」

 グレイ「こうすればすぐ乾く。」

 ルーシィ「人間乾燥機!?」

 「いたぞ!」 「侵入者だ!」


 ルーシィがそうツッコミを入れた瞬間、塔の兵達が向かってきた。が、その光景はすぐになくなり、代わりに周りに吹っ飛びまくる兵達と双剣を手にしたエルザがいた。


 ナ・グ「「エルザ!」」

 ルーシィ「無事だったんだね!」

 ジュビア「か、かっこいい…!」

 エルザ「っ!お前達が何故ここに…!?」

 ルーシィ「何故って…」

 ジュビア「あの…ジュビアその…」

 エルザ「帰れ!ここはお前達の来る場所じゃない!」


 ジュビアが何か言いたげだったが、それを遮ってエルザが叫んだ。相変わらず強引だなぁ。まぁ、お前の制止で止まるような奴じゃないけどな、こいつは…


 ナツ「こいてんじゃねぇぞエルザ!なめられたまま引っ込んでたら、フェアリーテイルの名折れだろ!あの四角だけは許しておけねぇ!」

 エルザ「帰れと言っている…!」

 ルーシィ「でも…!」

 ナツ「ハッピーが捕まってんだ!このまま戻れっか!」

 エルザ「ハッピーが!?」

 ハル「ついでにレットも持ってかれた。」

 エルザ「レットもか!?まさか、ミリアーナ…?」

 ナツ「そいつどこだ!?」

 エルザ「さ、さぁな…」


 ナツの質問に曖昧に応えるエルザ。それを聞いて、良しわかった、と言ったナツ。まぁ少なくともこいつの鼻は本物だからな。大丈夫だと思うが……


 ハル「ナツ、多分そいつはこの階より上にいるだろう。」

 ナツ「ん?」

 ハル「魔法を使うって事はそれなりに魔力は高いって事だ。だがここまで上がってくるのに、そこまで高い魔力を持つ奴の気配は感じなかった。」

 ナツ「じゃあハッピーと一緒ならそいつは上に!?」

 ハル「おそらくな。」

 ナツ「おっしゃぁ!サンキュウ、ハル!待ってろハッピーーーーーー!!」


 ナツはそう言うや否や、一目散に駆け出していった。アイツもアイツで相変わらずせっかちだなぁ。


 グレイ「あのバカ…!」

 ジュビア「ナツさん…」

 ルーシィ「アタシ達も行こう!」

 エルザ「ダメだ!」


 後を追いかけようとした俺達だったが、それをエルザに止められた。


 エルザ「ミリアーナは無類の愛猫家だ。ハッピーやレットに危害を加えるとは思えん。三人は私が責任を持って連れ帰る。お前達はすぐにここを離れろ。」

 ルーシィ「ダメだよ!エルザも一緒じゃなきゃ!」

 エルザ「これは私の問題だ!お前達を巻き込みたくない…」

 グレイ「十分巻き込まれてるんだよ!あのナツを見ただろ?」

 エルザ「…………」

 ルーシィ「エルザ、この党は何?ジェラールって誰なの!?」

 エルザ「…っ……」

 ハル「言いたくなきゃ無理しなくていいんだぞ?ただ……アイツ等がお前の昔の仲間だって言ってたそうじゃねぇか。だがよ、俺達は「今」の仲間なんだぞ。仲間が困ってて、助けねぇ奴はいねぇだろ。」

 グレイ「そう言う事。」

 エルザ「…帰れ……!」


 俺達がそう言うと、エルザは肩をふるわせながらも断固として意見を変えない。


 ルーシィ「エルザ…」

 グレイ「らしくねぇな、エルザさんよぉ。いつもみてぇに、「四の五の言わずついてこい!」って言えばいいじゃんよぉ。俺達は力を貸す!お前にだってたまには怖ぇなんて思う時があっていいじゃねぇか!」


 グレイにそう言われ、ようやく覚悟を決めたのか、こちらを振り向いた。だがその目には涙が流れていた。


 エルザ「すまない…。この戦い、勝とうが負けようが、私は表の世界から姿を消す事になる…」

 ルーシィ「えっ!?」

 グレイ「どうゆうこった!?」

 エルザ「…これはあらがう事の出来ない未来。だから…だから私が存在している内に、全てを話そう…」







 エルザの口から語られた物はとてつもない事だった。

 この楽園の塔は十年近く前に建てられ始めた、蘇りの魔法、リライブシステムだと言う事。

 そのシステムを作動させる為の生け贄を労働力として働かせていた事。

 その中で、エルザや今回エルザをさらっていった奴らと今回の黒幕のジェラールも、その生け贄だった事。

 ある事がきっかけで、エルザ達を含めた奴隷達が反乱を起こし、その中でエルザは魔法を使えるようになった事。

 そしてそれ以前までのジェラールとは変わってしまったジェラール。


 それは原作で知っている俺でさえ、感慨深いものだった。




 エルザ「私は…ジェラールと、戦うんだ……」


 自らの過去を語ったエルザ。それでも悲しみを抑えられていないのか、話す声が若干ふるえていた。


 グレイ「ちょっと、待てよエルザ。話の中に出てきた、「ゼレフ」って…」

 エルザ「あぁ、お前達も知っているだろう。」

 ルーシィ「確か、ララバイから出てきた怪物も、ゼレフ書の悪魔って言ってたよね!?」

 エルザ「それだけじゃない。おそらくあのデリオラも、ゼレフ書の悪魔の一体だ。」

 ジュビア「ジェラールは、そのゼレフを復活させようとしているって事ですか?」

 エルザ「動機はわからんがな…。ショウ、かつての仲間の話では、ゼレフ復活のあかつきには、楽園にて支配者になれるとかどうとか…」

 ルーシィ「その「かつての仲間達」の事って、どうしても腑に落ちないんだけど…」

 ハル「裏切ってもいないエルザを裏切り者呼ばわりし、裏切った筈のジェラールに今は従っている事、か?」

 ルーシィ「そう、それ!」

 エルザ「私が消えた後で、奴に何かを吹き込まれたのだろうな。しかし私は、八年も彼等を放置した。裏切った事に変わりはない…」

 ルーシィ「でも、それはアイツ等の為でしょ!?それなのに「もういいんだ、ルーシィ」……」

 エルザ「私がジェラールを倒せば、全てが終わる…」


 エルザがそう言って少しして、部屋の外から誰かが入ってきた。


 ショウ「姉さん…その話……。ど、どうゆうことだよ……」

 エルザ「ショウ……」

 ショウ「そんな話で、仲間の同情を引くつもりなのか?ふざけるな!真実は全然違う!」


 やってきたショウの話は、エルザが自分達を裏切り、それに気づいたジェラールが皆を助けた。この結果は、魔法を正しく習得できなかったエルザが、魔法に酔ってしまい招いたモノだという事だ。


 グレイ「ジェラールが、言った?」

 ルーシィ「あなたの知ってるエルザは、そんな事する人だったのかな?」

 ハル「お前が何故エルザを「姉さん」と呼ぶか、もう一度考えてみたらどうだ?」

 ショウ「っ……お前達に何がわかる!?俺達の事、何も知らないくせに…!俺には…ジェラールの言葉だけが救いだったんだ…。だから…八年もかけてこの塔を完成させた!ジェラールの為に…!その全てが…嘘だって……正しいのは姉さんで…間違っているのは、ジェラールだというのか…」

 ?「そうだ。」


 ショウがそう言っていると、また聞き慣れない声が部屋に響いた。すると俺達の後ろ側から、いきなり人が現れた。


 グレイ「てめぇ…!」

 ジュビア「待ってくださいグレイ様!この方はあのとき、グレイ様を身代わりだと知ってて攻撃したんですよ。」

 グレイ「何!?」

 ジュビア「暗闇の術者が、辺りを見えてない訳がないんです。ジュビアがここに来たのは、その真意を確かめる為でもあったのです。」

 シモン「流石は噂に名高い、ファントムのエレメント4。」

 ショウ「どうゆう事だ…?」

 シモン「ショウ、お前達の目を欺き、皆をこの塔に招き入れる為だ。」

 ショウ「な、なんで…何の為にそんな……」


 シモンの言葉に項垂れるショウ。シモンが言うには、自分はジェラールが嘘言っているのだという事を知り、エルザを八年間ずっと信じていたらしい。エルザはシモンと握手し、再会した事に喜び、抱きしめた。


 ショウ「なんで…皆そこまで姉さんを信じられる…。なんで…なんで俺は姉さんを…信じられなかったんだ……。くそぉぉぉーーー!!うわぁぁぁぁぁ!!何が真実なんだ!俺は何を信じればいいんだーー!!」


 信じていたものが崩れ、信じるものの矛先を見失ってしまったショウ。何故エルザを信頼できなかったのか、とどまる事の知らない心の内を、泣き叫んだ。


 エルザ「今すぐに全てを受け入れるのは、難しいだろう…。だが、これだけは言わせてくれ。私は八年間、お前達の事を忘れた事は一度もない…」


 それを見たエルザはショウに近づき、屈んで話し始めた。そしてショウを抱きしめ、続ける。


 エルザ「…何も出来なかった…。私は…とても弱くて……。すまなかった……」

 シモン「だが、今なら出来る。そうだろう?」

 エルザ「……(コクッ)」

 シモン「ずっとこの時を待っていた。強大な魔導士がここに集うのを。」

 ルーシィ「強大な魔導士…?」

 シモン「ジェラールと戦うんだ。俺達が力を合わせて。まずは、サラマンダーとウォーリー達が激突するのを防がねば…」


 こうして、俺達とジェラールとの戦いの火ぶたが、切って落とされた。


 side out

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