〜鎧の奥〜
side ハル
シモン「くそぉ!ウォーリーもミリアーナも通信を遮断してやがる!これじゃあ、どこに居るのかわからねぇ!」
ルーシィ「通信?」
ジュビア「思念伝達魔法ですね。」
俺達はシモン達と和解し、楽園の塔を上っている。だけどルーシィ、それ着るんだったら服持ちながら走るなよ。
グレイ「なぁ、アイツ本当に信用していいのか?確かに、俺達を殺そうとしなかったのは認めるが…(コソコソ)」
シモン「言い訳をするつもりはない。」
グレイ「っ、聞いていやがったか…」
グレイがシモンを疑いジュビアにコソコソ話しかけていたが、シモンに丸聞こえだったらしく普通に返答される。
シモン「あの程度で死んでしまう魔導士ならば、到底ジェラールとは戦えない。それに俺には確信があった。ナツは死なない。」
ルーシィ「あ、あのぉ、私は?」
ハル「ていうかそれ確信か?」
シモン「お前達は、ナツの本当の力に気づいていないんだ。ナツに真のドラゴンの力が宿るとき、邪悪は滅びゆく。」
シモンはそう言ってドヤッてたけど、確かにそうだよな
シモン「いや、一人だけわかっている奴がいるんだったな。」
ハル「……あぁ?」
シモンは思い出したように言って俺を見た。ちょ、ちょっと待て!そこまでわかっているのか、お前は!?
ルーシィ「どうゆう事?」
シモン「同じドラゴンスレイヤーなのに、ナツの力がわからない訳ないだろう。それに長い間近くにいたんだ。奴の成長に気づかない訳がない。」
ハル「……ごもっともなお考えで…」
グレイ「本当なのか?奴の話は。」
ハル「あぁ、確かにそうだ。アイツは今までになく濃密な戦闘を最近になって繰り返してきた。ララバイ事件のエリゴール、ガルナ島の仮面の男、ファントムのガジル。その中でナツは、それ以前よりも大きな成長をしている。そしてナツの内に秘めるドラゴンの力は俺以上だと、俺は思っている。」
グレイ「なっ、アイツがハル以上の力を持っているっていうのか!?」
ルーシィ「でもハルも十分強いし…」
ハル「それは俺の魔法が滅竜魔法だけじゃないだけだ。滅竜魔法だけ使った戦闘なら、俺と今のナツだと本気でやって互角になると俺は思っている。俺自身、まだドラゴンの力という物を完璧に扱いきれていないしな。」
そう、完璧に扱えていない。それはナツも俺も共通している事だ。ただ俺はオーラで体を強化し、力の底上げをしているに過ぎない。昔はオーラも滅竜魔法も使いながら戦った為、俺の方がS級に早く上がれただけだ。今のアイツはもう、S級に行ってもいいとも思っている。まぁ、一人で行かせるのはまだ早いけどな。
俺は原作でナツという人物を知っている。だが、実際に、この世界に来てナツと出会い、原作とは違う何かを俺は感じた。それは今でもわかっていない。だが、奴は俺を、いや、俺だけじゃない。エルザやラクサス、もしかしたらあのオヤジも超えるかもしれない男だ。それは、ただ原作でそうだったからじゃない。ナツと直に出会い、話し、鍛え合って確信したものだ。だからアイツは今以上に強くなる。俺はそう思っている。
さて、話もすんだしそろそろ動くか。
ハル「シモン、俺はこれから別行動に出る。」
シモン「何?」
ハル「俺はナツのように鼻や耳が利く訳ではない。でも、相手の気配や魔力を誰よりも感じやすい。俺が早く上に行って、先にナツを止める。後からお前らと合流できればそれでいい。」
シモン「確かに…だが出来るのか?」
ハル「おいおい、少しは自分が連れてきた魔導士ぐらい信じてみろよ。」
シモン「……わかった。」
シモンは渋々了承した。まぁ半分俺のわがままだからな。ありがたい。
ハル「それじゃ、俺は行くぜ。」
ルーシィ「ちょ、ハル!レットが居ない状況で、上になんか行ける訳ないでしょう!?」
ハル「飛ぶだけが上に行く為の選択しでもないだろ。まぁ見てろって…」
そういって俺は足の裏にオーラを集中させ、一気に放出する。それをジャンプする瞬間に行い、ジャンプの飛距離を伸ばす。
後は手の平と足の裏にバンジーガムを使い、塔の壁に張り付く。付けるも外すも俺のコントロール次第だから、これでカメレオンのように進む事が出来る。
ハル「そんじゃ、行ってくるぜ!」
ルーシィ「ホントあの人って何者なの…?」
俺は壁にくっついて落ちない事を確認し、出来るだけ速く手足を動かし登り始めた。そしてその間にもオーラを「円」で広げ、魔力を感じやすくしている。これはもの凄い集中力と魔力が必要で、他の事はあまり考えてられない。だから既に遠く下の方にいるルーシィの言葉は俺の耳には入らなかった。
ジェラール『ようこそ皆さん、楽園の塔へ。』
ハル「この声は…ジェラールか。」
ナツの魔力を感じた階の窓から入り、少し魔力を探っている最中、ジェラールの声が塔全体に響き始めた。
ジェラール『俺はジェラール。この塔の支配者だ。』
ジェラールの話は原作通り、楽園ゲーム開始のお知らせだった。3対8のバトルロワイヤル。そしてエーテリオン投下の制限時間付き。くっそ!ホント厄介なゲームだな!
俺はこの会話の最中もナツの魔力を追って走る。丁度終わった後、ナツの姿が確認できた。
ハル「ナツ!無事か!」
ナツ「ハル!お前ここまで来たんだな!」
ハル「レットは!?」
ナツ「あそこだ。まだ縄で縛られている。」
ナツは俺の質問に部屋の中を指差し、答えた。確かに奥のソファーで寝っ転がっているレットがいた。無事だったか。
ナツ「それでお前だけなんでここに?」
ハル「お前をここにとどめておく…筈だったんだが。」
ナツ「だが?」
ハル「さっきの話聞いてたよな。」
ナツ「あぁ!勿論だ!」
ハル「…じゃあ聞くが、ここでエルザ達をじっと待つのと、「三人の戦士」とやらと戦うか、どっちがいい?」
ナツ「そりゃ勿論、戦う方に決まっているだろ!」
まぁ、お前ならそう言うよな。この状況だし、戦える奴は戦った方が無難だしな。
ハル「ならナツ。今から言う特徴の人物に出会ったら、俺がこの四角達と一緒にいる事を伝えてくれ。」
ナツ「なんだそれ。エルザ達じゃないのか?」
ハル「あぁ、そいつは俺達の仲間になった奴だ。」
そしてシモンの特徴を簡潔に伝える。ナツはわかったと言ってハッピーと共に最上階を目指し飛んでいった。さて、俺は俺の仕事をしますか。
ハル「レット、大丈夫か。」
レット「な、なんとか…でもこの格好はきつい…」
ハル「今助けるからな。」
俺は逆刃刀を換装で取り出し、レットを縛っていた縄を切った。
レット「ふぅ、やっと楽になった。
ハル「お疲れさん。さて…」
俺は床に倒れている二人を見た。動ける人は、使える人はやってもらわないと……
俺はオーラで正十字架の形をした鎖を親指に具現化し、ウォーリーに当てる。
ハル「癒す親指の鎖(ホーリーリェーン)!」
具現化した鎖を媒介とし、ウォーリーにオーラを与える。ウォーリーの傷がみるみる消えていく。この技は、本来俺自身に効果を与えるもの。だから他人にこの技の効果を及ぼす時はかなりのオーラ、つまり魔力が必要となる。まぁ、今回は怪我の程度がやけどは擦り傷程度だったからマシだけどな。
ウォーリー「うっ…て、てめぇは……」
ハル「しゃべるな。気が散る。」
しゃべりかけたウォーリーを黙らせ、治療を続ける。まぁ、これで一応動けるか。
ウォーリー「てめぇはサラマンダーの仲間…なのか…?」
ハル「ん?まぁそうだな。だが勘違いするなよ。今は味方だ。」
ウォーリー「なんだと?」
ハル「シモンに頼まれたんだ。ジェラールを、倒してくれと。」
ウォーリー「シモンにか…!?」
ハル「確認は後にしてくれ。今はミリアーナの手当だ。」
そしてミリアーナもウォーリー同様に治療した。すぐには目を覚まさなかったが、その間にウォーリーがシモンとの確認を終えた。
ウォーリー「ミリアーナの治療、ありがとう。」
ハル「そんな事はどうでもいいんだよ。さっき変な魔力を感じてな。おそらく魔力融合(ユニゾンレイド)だと思うんだが、それを行ったのが俺達の仲間かもしれないんだ。ミリアーナが起きたらその仲間の救出に向かってくれないか?」
ウォーリー「…わかった。ミリアーナも手当してくれたんだ。お前を信じよう。」
ハル「そうしてくれるとありがたい。」
俺はそう言って窓のふちに足をかけた。
ハル「レット、そこの階段まで俺と飛べるか?魔力の回復をしながら上に向かう。」
レット「勿論だ。」
俺はレットと一緒に外へ出て、太陽の光を浴びながら魔力を回復していく。その間も上へ上へと目指す。
魔力も回復し、塔の内部へ。そしてエルザの魔力を追う。よし、近いな…。そう思いながら長い道を抜けると、そこには脇に桜が咲く一本道だった。そこでは丁度、エルザの鎧が斑鳩によって砕かれているところだった。
斑鳩「見つめるは〜、霧の向こうの、もののけか〜。ジェラールはんを探すあまり、今自分が見えない剣閃の中にいる事気ぃ付いてあらへん。」
ハル「その剣の腕は確かだが、俳句の才はあまりないようだな。」
エルザ「っ!ハル…」
斑鳩「ほう、光の魔法剣士、ハル・グローリーはん。言ってくれますな〜」
ハル「エルザ、お前は先に行け。ここは俺がやる。」
エルザ「ハル、だが…!」
ハル「少しの間でも「相棒」になった相手を、少しは信用してほしいものだな。」
エルザ「っ……わかった、頼む。」
俺の一言にエルザはうなずき先に行こうとする。
ハル「おっと、言い忘れてた。」
エルザ「…?」
ハル「エルザ、お前は強い。だが、その強さはお前自身の力だ。鎧の力じゃない。そうだろ?」
エルザ「…私は…強くなんか……」
ハル「お前のそばには、俺がいるだろ?いや、俺だけじゃない。ナツやグレイにルーシィ、フェアリーテイルの皆もだ。お前にはもう、フェアリーテイルというモノがあるだろ。」
エルザ「………」
俺の言葉にエルザは黙ってしまう。だが、俺は構わず続ける。
ハル「鎧に頼るな。自分を鎧に閉じ込めていたら、勝てる戦も負け戦になるぞ。」
エルザ「っ……何もかもお見通しなんだな。」
ハル「当たり前だ。俺とお前は、パートナーとして組んだ仲だぞ?」
エルザ「ふっ、そうだな……頼んだぞ、相棒。」
ハル「はっ、誰に言ってやがる。任せろ!」
その一言を聞いたエルザは一本道の先を目指す。
斑鳩「行かせる訳がありまへんやろ。」
ガギィィン!
ハル「おいおい、そんな事やらせる訳ないだろ。」
そんなエルザを斑鳩は止めようと剣を振ろうとした。だが、その間に俺が入りその剣を止めた。
斑鳩「うちの剣を止めはるなんて、流石どすなぁハルはん。」
ハル「お褒めいただいて光栄だよ。」
そして剣をお互いに弾き、距離をとる。俺はエルザが進んだ方向に、斑鳩はショウがいる方向に飛んだ。その間にエルザは先に進んでいった。
ハル「行ったな…」
斑鳩「行かせたくなかったんですが、しょうがありまへんなぁ。」
ハル「お前は仕事でやってるみたいだが、一つどうだ?俺と切り合ってみないか?」
斑鳩「それは面白ぅどすなぁ。いいでしょう、あんさんの強さ、うちとどっちが上でしょなぁ。」
ハル「ふ、どうだろうな。」
俺は斑鳩との一騎打ちを提案し、斑鳩は受け入れた。それを聞いた俺は逆刃刀を鞘に戻し、構える。
ハル「フェアリーテイル所属、光の魔法剣士ハル・グローリー!」
斑鳩「ふふ、暗殺ギルド髑髏会所属、三羽鴉(トリニティレイヴン)隊長、斑鳩!」
ハ・斑「「いざ、尋常に…勝負!!」」
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