小説『FAIRY TAIL 光の魔法剣士』
作者:ライデン()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>




 〜無月流vs三刀流〜



 side 三人称


 戦いは激化した――

 元より刀の速さが基礎の無月流、そして、神速を駆使する飛天御剣流を含めたハルの剣。速さはほぼ互角。

 ただ……それでも戦いの均衡は少しずつ崩れていっていた。


 ハル「くっ!(刀の速さに体が反応できない!)」


 ――そう…斑鳩の剣は速い。それは一撃ただが速いだけではなく、一振りの居合いから繰り出される数撃も速いのだ。

 その為、全てを防ぐにはその刀の一撃一撃を見極め、それに合わせ、一本の刀、逆刃刀「真打」のみで弾くか防ぐかしなければならない。

 人の反応速度には必ず限界がある。よって、少しずつハルは押され始めていた。


 ハル「(それでも!)うおぉぉ!」


 だがハルは諦めない。全てではなくとも、致命傷になりかねない一撃は防げている。それなら付け入る隙は必ずどこかにある筈。それをじっと待つように……

 そして―――


 ハル「ここだ!」


 斑鳩の一撃に対し、オーラを込め強化した刀で受け、そして弾く。


 斑鳩「くぅ!」

 ハル「今だ!」


 その勢いで後退する斑鳩。その隙にハルは大きく跳躍する。そして落下する勢いで刀を打ち込む。


 ハル「一刀流…龍槌!」

 斑鳩「ふっ!」


 その一撃を避ける斑鳩。それでも着地後、一歩踏み込み懐に入る。そして峰をつかみ、飛びながら振り上げる。


 ハル「翔閃!」

 斑鳩「くっ!」


 その一撃を斑鳩は鞘にしまった状態の刀で防ぐ。そして切り上げられた勢いで後退し、距離をとる。着地したハルは攻撃の手を緩めない為に、接近する。

 しかしそこで斑鳩の居合いが始まる。慌てて後退するが、既に射程範囲だった為、服を着られ、刀も弾かれた。刀は回転しながら宙に舞い、ショウの近くに刺さる。


 ハル「くっ……」

 斑鳩「どうどすか?うちの居合いは。」

 ハル「あぁ、確かに速いよ……」

 斑鳩「そうでしょうなぁ。しかし…本気も出してないあんさんにそう言われても、実感がありまへんが。」

 ハル「……わかるか?」

 斑鳩「当然。うちの知るあんさんの情報は、三本の刀を使ってくる、もしくは大剣を操る剣士とあります。しかし、今回はどちらにも属さへん。」

 ハル「…そこまで言われてしまうとな……」


 そう言うとハルは両手を前に広げ、突き出した。すると右手に二本、左手に一本の刀がそれぞれ握られた。


 斑鳩「換装の魔法どすか。」

 ハル「あぁ、そうだ。」


 ハルは短くそう答え、右手に持つ刀の一本を口にくわえる。


 斑鳩「ほう、それで三本の刀を操ると?」

 ハル「あぁ、問題はないだろう。」

 斑鳩「なら…試させてもらいます!」


 そう言うや否や、斑鳩は得意の居合いを放つ。それは一瞬で終わったが、斑鳩の顔には驚愕の色が見えた。


 斑鳩(バカな…全て防ぎきった…!?)


 そう、先ほどの数撃の居合いを、ハルは三本の刀で防ぎきったのだった。それは斑鳩も経験した事のない事だった。数撃を防がれる事はあっても、全ての攻撃を防がれたのは初めてだったのだ。


 ハル「さぁ、行くぞ!」

 斑鳩「くっ!」


 そしてそのまま切り合いは始まる。しかしそれは先ほどとは違い、今度はハルの方が優勢だった。どうやら、手数を増やした事で、斑鳩の剣に対応しやすくなったようだ。


 ハル「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 斑鳩「はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 刀と刀(正確には刀と鞘)が交錯し、激しい衝突音が部屋に響き渡る。ショウはこの光景を目の当たりにし、驚愕していた。


 ショウ(これが……これが姉さんが認めた剣士の実力。すごい…僕となんか天と地ほどの差がありそうだ……)


 お互いに打ち合い、しばらく経った時だった。お互いにお互いを弾き、距離をとる。そして遠距離からお互いの剣をぶつける。


 斑鳩「無月流……迦桜羅炎(かるらえん)!」

 ハル「三刀流……土龍三閃(どりゅうさんせん)!」


 斑鳩は刀をしまった状態の鞘で地面を削り、その摩擦で出来た炎で、ハルは手と口にある刀で地面を抉るように振り抜き、それにより生じた土砂で。

 それぞれ迎撃した―――


 斑鳩「くっ……!」


 お互いの技がぶつかり合い、衝撃を生む。それにより爆煙が生まれ、視界を遮る。しかし斑鳩も油断しない。この隙に攻撃されるやもしれないからだ。

 そして―――


 ハル「一剛力羅(いちゴリラ)…二剛力羅(にゴリラ)……!」

 斑鳩「っ!?」


 不意に部屋に響く声。だがその声は正面から聞こえるのではない。斑鳩は即座に気配を探り………

 ゾクリ…!

 すぐに殺気を感じた。そしてそれは……後ろから、しかも少し上からだ。

 振り向き見上げると、そこには両腕を肥大化させた敵の姿があった。既に落下しながら構えをとっている。すぐに後ろへ飛ぶ。だが、そのときにはハルは斑鳩とほぼ同じ高さにいた。


 ハル「三刀流、二剛力斬(にごりざけ)!」

 斑鳩「ぐぅぅ!!」


 そして放たれる一撃。その重さは計り知れず、足を地につけていない斑鳩は、その勢いで木の橋を破壊しながら後退する。

 一撃を放ち着地するハル。だが、時間が惜しいがごとく、そのまま斑鳩の元へ走る。

 後退していた斑鳩も、体勢を立て直す。そして前を見据える。だが、その時には、既にハルが次の一撃を放とうとしていた。


 ハル「三刀流…!」

 斑鳩「っ!無月流…!」


 ハルは両腕を自らの前で交差させ、斑鳩は再び居合いの構えをとる。

 そして―――


 ハル「鬼斬り!」

 斑鳩「夜叉閃空(やしゃせんくう)!」



 二人の体がすれ違う。神速を含み、速さと力のハルの剣。瞬く間に無数の斬撃を放つ斑鳩の居合い。




 結果―――




 バキィィン!

 ハル「ぐっ!」


 手数で劣るハルが、いくつかの切り傷を体に刻み、両手の刀を砕かれ、腕から落ちる。そして口にくわえていた刀がこぼれる。


 斑鳩「勝負あり…どすな…」


 自らの勝ちを確信する斑鳩。着ている服は切られているが、血は一滴も出ていない。


 だが…それでもハルは諦めない。

 斑鳩がこちらを振り返る一瞬。口から落ちる一本の刀を空中でつかみ、換装で取り出した鞘に納め―――


 ハル「一刀流、居合い……!」

 斑鳩「っ!?」


 ―――さらなる一撃を放つ!


 ハル「獅子歌歌(ししそんそん)!!」


 再び二人の体がすれ違う。そして………


 斑鳩「ぐはぁ!!」


 斑鳩の体から血しぶきが舞う。それは、戦いの終わりを示していた。


 ハル「はぁ…はぁ…はぁ……」


 刀を鞘にしまった状態で膝をつくハル。その肩は大きく揺れており、その後ろ姿は先ほどまで繰り広げられていた激闘を物語っていた。


 ショウ「すごい…本当に倒した……!」

 ハル「……てめぇ俺をなめてるのか?」

 ショウ「い、いや、そんなつもりじゃ…!」

 ハル「…わかってる。少し、からかっただけだ。」


 それの一部始終を見ていたショウ。終わったと見て、すぐにハルの元に近づく。
 だが、斑鳩にはまだ意識があった。


 斑鳩「うちが負けるなんて…ギルドに入って以来、初めて、どす…。せやけど、アンタらもジェラールはんも負けどすえ……」

 ショウ「どうゆう意味だよ!?」

 斑鳩「あと5分……。落ちてゆく〜、正義の光は…皆殺し〜……ふふっ、ひどい歌……」


 地面に転がりながらも手を挙げ、一句歌う斑鳩。最後にそう言い残し、意識を手放す。この言葉に一番驚いたのは、ハルだった。


 ハル「5分後だと!?」


 そう、原作とは違い、今から5分後にエーテリオンが発射される。自分から原作介入したとはいえ、ここまで時間がかかっているとは思っていなかったのだ。


 ハル「(時間をかけすぎたか…!)ショウ、今すぐ動けるか!?」

 ショウ「あ、あぁ。」

 ハル「ならレットと一緒に外に出ろ!その間にシモンやウォーリー達に連絡とって、一緒に避難しろ!レット、後は頼むぜ!」

 レット「あぁ、わかった!」

 ショウ「でも、アンタは…?」


 すぐさま指示を出し、避難させようとするハル。ショウは肝心のハルはどうするのかと聞いてきた。
 だが、ハルは当然のごとく……


 ハル「エルザの元に向かう!」


 そう返し、エルザが向かった道を走りだした。


 side out

-50-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




フェアリーテイル ゼレフ覚醒 (初回生産版:「極の巻」同梱)
新品 \4997
中古 \3935
(参考価格:\5800)