小説『FAIRY TAIL 光の魔法剣士』
作者:ライデン()

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 〜守りたい者達〜


 side ハル

 ハル「はぁ、はぁ、はぁ……マズいな……」


 今俺は楽園の塔の上部を目指している。だが、明らかに体が動かない。


 ハル(斑鳩戦で魔力を使いすぎたか。室内だから回復もままならないか……)


 斑鳩と戦う前に回復しておいた魔力もほとんど使い、体が思うように動かない。

 しかし次の瞬間、塔全体が震え始めた。塔の外壁が少しずつ、ボロボロと音を立てて崩れ始めていく。


 ハル(エーテリオン、か……、あっ!そうだ!)


 俺は急いで回復の準備に入る。

 刹那、光の柱、「エーテリオン」が落とされた。その光は全てを破壊する……筈だった。しかしそれは塔の外壁を破壊しただけにとどまり、その中から巨大なラクリマが現れた。

 そんな中、俺はというと……エーテリオンの光で魔力を回復していた。


 ハル「はぁ…何とかなったか……。」


 ふぅ、予想通り。何とか回復できた。後はこれで。
 俺は換装でTCMを手に取り、第三の剣「シルファリオン」に変える。


 ハル「待ってろ、ナツ…エルザ!」


 side out







 side 三人称


 塔の外壁が崩れて少しした頃、塔上部では―――


 エルザ「ジェラール!貴様に私が殺せるか!」

 ジェラール「っ!?」


 ジェラールの攻撃、天体魔法「アルテアリス」を阻止するべく、エルザがナツの前に飛び出していた。それを見たジェラールは、発動途中だった魔法を止めた。


 エルザ「ゼレフ復活に必要な体なんだろう?」

 ジェラール「あぁ。おおよその条件は、「聖十大魔道にも匹敵する魔道士」の体が必要だ。だが、今となっては別にお前でなくとも良い。」

 エルザ「っ!」

 ジェラール「二人そろって砕け散れ!」


 しかしエルザの行動もむなしく、ジェラールは再び攻撃に出る。ジェラールの上にできるその黒い塊は、照らすものの影を逆に映し出す。


 ナツ「エルザ!どけ!」

 エルザ「お前は何も心配するな。私が守ってやる!」

 ナツ「止めろーーーー!!」

 ジェラール「天体魔法、「アルテアリス」!」


 そして放たれる攻撃。暗黒の塊が迫るが、エルザはナツの前から動こうとせず、その身を持ってナツを守ろうとする。

 そしてエルザが当たると思い、身構えた瞬間――――


 ザッ!


 一つの人影が、エルザの前に立ちふさがる。次の瞬間、エルザ達のいるフロアは爆発に巻き込まれる。





 楽園の塔外部 海上

 ハッピー「爆発した!?」

 ルーシィ「だ、大丈夫…だよね!?」


 ジュビアの魔法で作られた水の球体の中にいるルーシィ達。そんな中、ショウは胸を抑え始めた。


 ミリアーナ「ショウ?どうしたの?」

 ショウ「なんだ、この胸騒ぎは。」





 楽園の塔 上部


 爆発によってできた煙が少しずつ晴れていく。そこには――――


 エルザ「シモン!?」


 塔の床に仰向けに転がっているシモンの姿があった。

 だがその体には、傷一つ(・・・)ついていなかった。


 エルザ「シモン!お前何故「何故だ…」…え?」




 シモン「何故俺を庇った!ハル・グローリー!!」




 エルザの言葉を遮り、叫ぶシモン。そして彼の前にあった煙が少しずつ晴れていくと、そこには確かに彼が叫んだ男がいた。


 エルザ「ハ…ル……」

 ナツ「ハル!」

 ジェラール「ハル・グローリー…まさか俺の魔法を受けて生きていられるとは……」


 ハルの手には巨大な剣が、地面に突き刺さり、面をジェラールに見せるようにして構えられてた。その大剣はいつもハルが背負っているのとは、ひとまわり程大きいものだった。

 しかし、ハルは持っていた剣を放し、両膝と両腕を床につけた。ハルの元から離れた剣は、いつもの姿に戻り、地面に転がる。


 エルザ「っ!ハル!」


 その様子にエルザが駆け寄る。ナツはそれを呆然と見ていた。


 ハル「エルザ、か…。良かった…無事…みたいだな……」

 エルザ「ハル!大丈夫なのか!?何故お前が!」

 ハル「…誰かを守りたい、そう言う…思いは…俺も同じ、だからな……」

 シモン「何故止めた…」


 シモンはゆっくり起きながらハルに問う。


 シモン「何故俺も庇った!俺は…俺はエルザの為に!エルザの役に立つ為に…」

 ハル「死ぬ事が人の役に立つ事だと!ふざけるな!!」

 シモン「っ!」


 シモンの言葉に叫ぶハル。だが体に響いたのか、ハルは咳き込んだ。


 エルザ「ハル!」

 ハル「はぁ、はぁ…。役に立ちたいっていう思いは否定しない。だけどな!その為に死ぬなんて、役に立ったことにはならない!それはただの自己満足だ!役に立ちたいなら、必ず生きろ!何かして、その後礼を言われて初めて「役に立った」って言うんだぜ。」

 シモン「………」


 ハルの言葉に押し黙るシモン。だが、その沈黙はすぐに破られた。


 ジェラール「ふっふふ、ふふふふ…ふっはっはっはっは!下らん!実に下らんよ!ハル・グローリー!そうゆうなれ合いの関係は、ヘドが出る!お前もゼレフに捧げる生け贄の候補だったが、興ざめだよ!だが結局のところ対局は変わらん!どのみち誰もこの塔からは生きては出られんのだからな!」



 ナツ「だまれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」



 響き渡るナツの叫び。それと同時にジェラールは殴られ、ラクリマの壁に衝突した。そして殴ったナツの手には、エーテリオンの膨大な魔力が入ったラクリマの破片があった。ナツはそれにかじりついていた。


 ジェラール「んなっ!?こいつ…エーテリオンを食ってやがる!?」

 ナツ「うおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!」


 だがそれだけでは収まらず、周囲のラクリマから魔力を吸収した。

 そしてジェラールに放たれるエーテリオンの魔力。だがジェラールはそれを難なく避ける。ナツは自ら食ったエーテリオンの魔力に苦しんでいた。


 ナツ「ぐがはっ!あぁ、ぐっ、ぐぅ、ぐあぁああ!!」

 エルザ「なんてバカな事を!エーテルナノには、炎以外の属性も融合されているんだぞ!?」

 ジェラール(強力な魔力を炎の代わりに食えば、パワーアップするとでも思ったか。その短絡的な考えが自滅をもたらした!)

 ハル「いや…あれでいい……」

 ナツ「うおぉぉぉおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」


 だが次の瞬間、ナツの周りに膨大な量の炎が現れる。それはドラゴンのような姿となり、ナツの体に纏われる。そしてナツの体の皮膚が、所々竜の鱗のように変化する。


 ジェラール(こいつ…エーテリオンを取り込んだというのか!?)

 ハル「力に呑み込まれるな…行け!ナツ!」


 ハルが叫んだ瞬間、ナツは走り出し、膝蹴りを食らわす。そのスピードは先ほどのとは桁違いで、ジェラールももろに食らう。


 ナツ「お前が居るから!エルザは涙を流すんだぁ!!」


 ナツは瞬時にジェラールの上をとり、ジェラールを捕らえ勢いをそのままに塔を破壊しながら下に進む。


 ジェラール「小賢しい!ミーティア!」


 ジェラールも負けじと、自らの魔法でナツから離れ、上へ戻る。ナツはすぐに向き直り、自分が破壊した塔のがれきを足場にジェラールを追いかける。


 ジェラール「この速さには付いて来れまい!」


 ミーティアで逃げるジェラール。だが、ナツは足の炎を推進力に変え、その速さを超えた。そしてその勢いでジェラールの腹を殴り、塔の最上階まで飛ぶ。


 ジェラール「バカな!俺は負けられない!」

 ナツ「ぐぉ!?」


 それでもジェラールはナツを突き飛ばし、ラクリマを足場に上空へ飛ぶ。


 ジェラール「自由国家をつくるのだ!痛みと恐怖の中で、ゼレフは俺にささやいた。真の自由が欲しいかとつぶやいた!そうさ。ゼレフは俺にしか感じることができない、俺は選ばれし者だ!俺がゼレフとともに、真の自由国家を作るのだ!」

 ナツ「それは!人の自由を奪ってつくるものなのかぁ!?」

 ジェラール「世界を変えようとする意思だけが、歴史を動かす事ができる!貴様らには、何故それがわからんのだ!?」


 ジェラールの攻撃を避けるナツ。だがジェラールは、上空で新たな魔法陣を描き出す。


 エルザ「アビス・ブレイク!?貴様!塔ごと消滅させるつもりか!?」

 ジェラール「また八年、いや、今度は五年で完成させてみせる。ゼレフ、待っていろ!」


 アビス・ブレイクを放とうとするジェラール。だがその瞬間、一瞬の苦痛が訪れる。それは、エルザとの戦いのときにもらったエルザの一撃のダメージだった。
 その一瞬で、魔法陣は崩れかけた。


 だが…………




 ジェラール「ふざけるな…!ここで倒れる訳には行かないのだ!」



 再び形成される魔法陣。ナツは急いでジェラールに攻撃を仕掛ける。だがそれは間に合いそうにない。


 エルザ(くっ、ここまでか…!)


 下の階にいるエルザがそう思った時、視界の端から一つの影が飛び出す。それはナツとジェラールがいるところへと向かっている。

 そこでナツにも変化が訪れる。ジェラールに向かっていた体が、急に落下し始めたのだ。驚いてその理由を考えたせいか、すぐに対処できない。そして落下の途中、ある人物と入れ替わるようにすれ違う。



 それは――――





 ハル「後は…任せた!」





 TCMを持ったハルだった。


 ナツ「ハル!?」


 ハルはナツが上に行く際に、バンジーガムを付けておいた。それをナツがジェラールに向かって飛んだ時、ガムを縮めナツと入れ替わるように飛んだのだ。
ナツはそのままエルザ達がいる階に着地する。そしてハルはジェラールに向かって突き進む。


 ジェラール「ハル・グローリー!貴様はまた俺の邪魔をするのか!?」

 ハル「そこに俺の大切なもんがあるんだ!それを消される訳には、いかねぇんだよ!」

 ジェラール「真っ先に死にたいらしいな!下にいる奴ら共々、塔ごと消え去るがいい!!」

 ハル「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!(師匠…あなたの剣、使わせてもらいます!)」


 ハルは両手でTCMをつかむ。そしてTCMに埋め込まれたレイブが激しく輝き始め、TCMはその姿を変えていく。



 ジェラール「食らえ!アビス・ブレイクゥ!!」

 ハル「悪しき力を振り払え!聖剣、スターレイヴァーーー!!」



 そして放たれる魔法とTCM最強の剣。

 その二つがぶつかった瞬間、眩しい光と爆発が起きた。





 塔外部 海上

 ルーシィ「眩しい!」

 グレイ「何だあの爆発は!?」

 ウォーリー「やった…のか?」

 ハッピー「ナツ……」

 レット「………」





 塔内部

 エルザ達の位置からは、ジェラール達がどうなったか、爆煙で見えなかった。

 だが、そんな中何かが落ちてきた。それは………


 ハル「ぐっ!」

 エルザ「っ!ハル!」


 攻撃を防いだハルだった。その手にあるTCMは、防いだ影響か完全に折れてしまっていた。


 ジェラール「俺の魔法を…消し去った、だと……!?」

 エルザ「ハル、お前…!」


 エルザの言葉が言い終わる前に、ハルは剣を持っている手を突き上げた。



 ハル「…決めろ…ナツ……」



 その先には、ジェラールと、大量の炎を纏ったナツがいた。


 ジェラール「なっ!?」

 エルザ「ナツ!」


 ハルはジェラールの魔法を防いだ瞬間、爆発の影響で落下する。だがその時、ナツに付けていたバンジーガムを再び発動し、ナツを逆に上空へ飛ばしたのだ。

 ハルの突き上げていた手が地面に落ちる。どうやら魔力の使い過ぎで気を失ったようだ。

 そして上空に飛んだナツはジェラールに攻撃を仕掛ける。


 ナツ「お前は自由になんかなれねぇ!亡霊に縛られてる奴に、自由なんか、ねぇんだよ!」


 ジェラールの目にはその光景が、火竜がこちらに向かってくるように映った。


 ナツ「自分を解放しろ!ジェラールーー!!」

 ジェラール「ぐぅう!!」

 ナツ「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 ジェラール「ぐわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ナツに殴られ上空から真っ逆さまに落ちるジェラール。それは楽園の塔を所々破壊しながら進んでいった。





 塔外部 海上

 ショウ「一体、何が?」

 ウォーリー「何が起こってんだよぉ!?」

ハッピー「あれ、絶対ナツだ。」

 ルーシィ「うん、私もそう思う!」

 ミリアーナ「けど、大丈夫なのあれ!?」

 グレイ「大丈夫、だと思いたいが。暴れまくってるな、アイツ。」





 塔内部

 塔の、エルザ達がいる階よりかなり下で、ジェラールは気絶していた。そして、落下する際にこぼれた聖十魔導士のバッチが床に落ちる。

 ジェラールを殴ったナツも、エルザ達がいる階に着地する。


 エルザ(これが…ナツの真の力。これが……ドラゴンスレイヤー…!)


 side out

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DVD付き FAIRY TAIL 第26巻 特装版 (少年マガジンコミックス)
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