〜友人との誓い〜
side
ナツ「ぐごぉおお!ぐがあぁぁぁ!」
グレイ「大丈夫か、こいつ?」
ルーシィ「三日間寝っぱなしだもんねぇ…」
グレイ「はぁ、エーテリオンを食うとはバケモノだなぁ」
ナツ「今何つったグレイィ!」
ハッピー「起きた!」
パタン…
ハッピー「寝たぁ!?」
グレイ「絡む気がねぇなら起きんじゃねぇ!」
楽園の塔でのジェラールとの戦いから三日。ナツは今もエーテリオンを食い戦った疲労からか、ずっと寝続けていた。
エルザ「今回の件では、皆にも迷惑をかけたな」
ルーシィ「もう、その台詞何回言ってるのよ」
グレイ「ハルも言ってたじゃねぇか。迷惑かけてこその仲間だって」
エルザ「そうだな。そう言えば、あの娘は?」
グレイ「あぁ、ジュビアのことか。もう帰っちまったよ。フェアリーテイルに一刻も早く入りたいからってよ」
エルザ「そうか…」
ルーシィ「そう言えば、ハルの姿が見えないけど…」
グレイ「それなら海岸にでもいるんじゃねぇか?昨日もそこにいたし」
side out
side ハル
ハル「……はぁ…」
俺は折れたTCMを手にし、ぼんやり見ていた。
ハル「……どうしようか。師匠に顔向けできねぇなぁ…」
グレイ「あ、お〜い!ハル〜!」
ハル「ん?グレイか」
グレイ「エルザがショウ達を入れて宴会するってよ」
ハル「あぁ、解った。今行くよ」
俺はTCMを換装の魔法で別空間に送り、立ち上がる。
グレイ「ハル、大丈夫か?」
ハル「ん〜?何がだ?」
グレイ「…いや、何でもない」
夕暮れのアカネビーチのホテルで飯を食う俺達。ショウがグレイやナツの餌食になってたり、ナツの炎の演出、シモンと俺との会話など、色々やれて楽しかったな。
そこに突然、俺達がいる部屋の扉が開かれた。
ルーシィ「皆!ショウ達が見当たらないんの!何か知らない!?」
グレイ「アイツ等がか!?」
ハル「出て行っちまったんじゃねぇか?」
ルーシィ「たぶん…。それとエルザが“花火の準備”と伝えてくれって…」
ナツ「お?花火か!」
ハル「久しぶりだな、アレをやるのは」
ルーシィ「え…?」
俺達の会話を聞いていたルーシィは首を傾げていたが、俺達は出かける準備を始める。
ハッピー「ほらルーシィも!」
ルーシィ「え?でも何をするのか…」
レット「付いてくれば解る」
ハル「そゆこと。そんじゃ、友人としてパッとやりますか!」
ナ・グ「「おう!」」
ルーシィ「だからなんなのよ〜!?」
俺は外に出ながらそう言って、ナツやグレイはそれにのってきた。やっぱりこいつらはノリが良くていい。
エルザ「その強い意志があれば、お前達は何でも出来る。安心したよ。だが、フェアリーテイルを抜ける者には、三つの掟を伝えなければならない!心して聞け!」
ウォーリー「ちょ、抜けるって入ってもねぇのに…」
海岸に船を浮かべていたショウ達四人の真意を聞いたエルザは、そう言いながら壮行会用の鎧に身を包んだ。
エルザ「一つ!フェアリーテイルの不利益になる情報は、生涯他言してはならない!二つ!過去の依頼者に妄りに接触し、個人的な利益を生んではならない!」
エルザ「三つ!たとえ道は違えど、強く力の限り生きなければならない!決して、自らの命を小さな物として見てはならない!」
エルザ「愛した友のことを…生涯忘れてはならない!!」
エルザが言いたいことは三つ目の掟。それが解ったショウ達は、その目に涙を浮かべていた。
そして、三つの掟を宣言していたエルザの目にも、涙が流れていた。
エルザ「フェアリーテイル式壮行会、始め!!」
ナ・グ・ル・ハ「「「「おう!!」」
エルザの合図に、端っこから出てくる俺達。
まずは一番手のナツ。口にためた火をうまくコントロールし、きれいな炎の花火を夜空に咲かせる。
エルザ「心に咲け、光の華…」
グレイ「おぉらぁあ!!」
二番手はグレイ。造形魔法を応用した、氷の花火。その輝きは夜空に浮かぶ数多の星々のよう。
ルーシィ「えぇい!」
三番手にルーシィ。星霊の鍵から打ち出された魔力は、その形を星のように変え、流れ星のごとく咲き、落ちていく。
ハル「最後は俺だ。土産として受け取れぇ!」
最後に俺。某金髪の野菜人の技のようにした手から打ち出された魔力弾は、背景を光に、色とりどりの魔力が飛び交う。
エルザ「私だってほんとは、お前達とずっといたいと思っている。だが、それがお前達の足枷となるのなら、この旅立ちを祝福した」
ミリアーナ「逆だよ〜!エルちゃ〜ん!」
ウォーリー「俺達がいたら、エルザはつらいことばかり思い出しちまう!」
エルザ「何処にいようと、お前達のことを忘れはしない。そして、つらい思い出は明日への糧となり、私達を強くする。人間にはそう出来る力がある。
強く歩け。私も強く歩き続ける!この日を忘れなければまた会える。…元気でな…!」
ショウ「姉さんこそ!」
ミリアーナ「バイバイ!エルちゃ〜ん!」
ウォーリー「絶対また会おうぜ!約束だぜ!」
シモン「いつかまた!会える日を!」
エルザ「あぁ…約束だ!」
ショウ達の船が見えなくなるまで、壮行会の花火は夜空に咲き続けた。
一同「「「「「「「おぉ〜〜!!」」」」」」」
俺達が見上げる先、そこにあるもの。そう、それは……
エルザ「驚いたな…」
ナ・ハッピ「「完成したのか!(んだ!)」
グレイ「新しいフェアリーテイル!」
ファントムの一件で立て直していた、新しいギルドの姿だった。
ハル「ほう、高いな〜」
レット「うむ、以前とは段違いに高く見える」
ルーシィ「そこにしか関心がないの…?」
早速中に入ってみると……
グレイ「オープンカフェか?これ」
ルーシィ「グッツショップまで…」
マックス「いらっしゃい!あ、つうかお前らか。お帰り」
ハッピー「あぁ!マックスが売り子やってる〜!」
ハル「なんだ、久しぶりだな」
マックス「マスターの命令で、この商売の修行にいってたからな」
レット「お前魔導士だろ…」
ルーシィ「マックス・アローゼン!?週ソラにも載ってた!」
マックス「改めてよろしく。話は聞いてるよ、ルーシィ」
ルーシィ「どんな風に聞いてるか、想像もしたくな〜い…」
色々売ってんな〜。多分ナツをイメージしたTシャツに、フェアリーテイルのマークが付いてるリストバンドにマグカップ、ハッピーとプルーがプリントされたタオル。それにいくつかラクリマもあるな。
そしてマックスが勧めてきた商品は……
ハッピー「ルーシィのフィギュアだぁ!」
ルーシィ「えぇぇ!?勝手にそんなもの作らないでよ〜!」
マックス「勿論キャストオフ、可能!」
ルーシィ「きゃあぁ!?」
ん?どうやら俺のもあるんだな。俺のは…TCM構えてるところみたいだな。こう、改めて見ると恥ずかしいな。
なんやかんやでギルドの中に。そこはいつものギルドの酒場とは違い、一段ときれいなテーブルやいす、装飾品なんかがたくさんある、いつものとは大違いのギルドだった。
ル・ハッピ「「きれぇーー!!」」
エルザ「うむ!すばらしいじゃないか!」
グレイ「お?どうしたんだよナツ?」
ナツ「前と違う…」
ハル「そんな風に言うなって。すぐいつものようになるさ。お前がいれば」
ナツ「どういうことだそれぇ!!」
中にはレビィもいて、色々紹介してくれた。酒場の奥にはプール、地下には遊技場、二階は自由に行き来可能。ほんとに変わったなぁ。
マカロフ「帰ってきたか、バカタレ共」
ハッピー「あ!」
エルザ「マスター!」
グレイ「お…!」
マカロフ「新メンバーのジュビアじゃ。かわえぇじゃろ?」
ジュビア「よろしくお願いします!」
マスターからジュビアが紹介された。まぁ実際俺達が入るのを勧めたから驚きはしないんだけどな。
グレイ「あっはははは、ほんとに入っちまうとはなぁ」
エルザ「アカネでは世話になったな」
ジュビア「皆さんのおかげです!ジュビアは頑張ります!」
ハル「おう!これからよろしく!」
ジュビア「はい!」
ルーシィ「よろしくね!」
ジュビア「恋敵!!!」
ルーシィ「違うけど…」
ジュビアから負のエネルギーをまともに受けるルーシィ。あれでユニゾンレイドとか出来るんだからすごいよな……
マカロフ「そしてもう一人の新メンバーじゃ。ほれ挨拶せんか」
グレイ「ん?」
ハッピー「他にもいるの?」
レット「いったい誰が…」
マスターが見る先は俺達の後ろにある一つの席。そこに座っているのは……
ガジル「あぁん!?」
ナツ「ガジル!?」
グレイ「なんでこいつがぁ!」
ジュビア「待って!ジュビアが紹介したんです!」
エルザ「ジュビアはともかく、こいつはギルドを破壊した張本人だ!」
ガジル「ふん!」
マカロフ「まぁまぁ、昨日の敵は今日の友というじゃろう」
ハル「それに一応マスターが認めたんだ。多分だいじょぶなんじゃねぇの?」
エルザ「ハル!?お前なんでそんな…!」
レビィは気にしてないって言うしな。ま、完全に殺気立ってる奴もいるしな。
ナツも納得できないようで、ガジルに突っかかる。
マカロフ「道を間違えた若者を正しき道に導くのも、また老兵の役目。彼も根はいい奴なんじゃよ……と信じたい…」
エルザ「それがマスターの判断なら従いますが、しばらく奴を監視した方がいいと思いますよ」
マカロフ「はい」
マスター、そこははっきりしたがっちゃだめでしょうに。それにそこの二人、犬のようににらみ合ってねぇで、少しは落ち着け。
すると突然ギルド内の照明がいっぺんに消えた。そして、酒場の先にあるステージに一筋のスポットライトが当てられる。そこにはギターを持ちいすに座るミラがいた。
ナツ「よう!ただいま、ミラ!」
ミラ「おかえり。俺ではナツ達が無事に帰ってきたのと、新築祝いもかねて歌います」
「待ってたぞ、ミラ!」
「ミラちゃ〜ん!」
そう言えばミラの歌聞くのも久しぶりだな。俺達は近くのテーブルに座り、じっくり聞く体勢をとる。
ミラ『あ〜な〜た〜のいな〜い〜〜、つ〜く〜え〜をなで〜て〜〜、か〜げ〜を〜お〜とす〜〜、きょ〜も〜ひ〜とり〜〜』
相変わらずきれいな歌声だなぁ…。
マカロフ「どうじゃったハル。向こうでは」
ハル「ん?あぁ、まぁエルザの抱えていた物は消えたし、少なくともアイツ等に悪いことはなかったよ。ただ……」
そこでいったん切って、俺はTCMを取り出す。
ハル「師匠の大事にしていたものを台無しにしちまったからな。少し反省」
マカロフ「そうか、それは残念「でも後悔はしてねぇ!」…ん?」
ハル「俺がやったことには後悔してねぇ。それでいいじゃねぇか」
マカロフ「ふむ、そうか…(こやつもまた、強くなって帰ってきたのぉ。他の子らも。そろそろわしも…)」
ハル「引退なんて考えてねぇだろうな、マスター」
マカロフ「んなぜそれを!?」
ハル「何となくだったが…」
マカロフ「はぁ、お前は相変わらずじゃのぉ」
ハル「ほっとけ」
ミラの演奏も終わり、ステージのライトが一瞬消える。そして再び付いたその時、ステージの上にいたのは白いスーツに身をつつんだガジルだった。
ガジル「俺が作った曲だ。“ベストフレンド”聞いてくれ」
色んなものを投げ込まれながらも歌うガジル。それはあまりうまいとは言えない代物で、投げ込まれる物の量がさらに増える。また何人かの人には受けたらしく、ノッてる人も中にはいた。
ナツ「こんなひどい歌初めて聞いたぞ!がっ!?」
そういうナツに投げられたのは、ガジルが使っていたギター。そしてガジルはというと、ハーモニカを加えながらなにかしゃべってる。いや、しゃべりたいならハーモニカ外せよ。
ナツ「やんのかごらぁ!」
ガジル「シュビドゥバーー!!」
しかしそれはナツには通じたらしく、ナツはキレてガジルとの喧嘩に発展。グレイが動いたことでエルザのイチゴケーキが落ちたり、そのイチゴケーキがエルフマンに踏まれ、エルザがキレたりで、最終的にはギルドが大騒ぎ。
結局ナツとガジルを止められそうなエルザはケーキの恨みで暴走。他の奴らも暴走を始め、マスターは泣くばかり。いつものギルドに戻ったようだが……
ハル「お前ら……いい加減に……程度ってもんを覚えろ馬鹿野郎共ぉーーー!!!!」
最後には俺がナツとガジルを気絶させ、他の奴らには拳骨一発ずつ、エルザには拳骨を入れた後、改めてイチゴケーキを買ってやって、この騒動は終わりを迎えた。
side out