小説『FAIRY TAIL 光の魔法剣士』
作者:ライデン()

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 〜待つのはあまり好きじゃないんだが〜


 side ハル


 ハッピー「マックス対ウォーレン、勝者ウォーレン。ビジター対ナブ、勝者ナブ。ラキ四人抜き。マカオ対ワカバ、戦闘開始…」

 マカロフ「よせぇ!やめんかガキ共!」

 ハル「落ち着きなよマスター」

 ハッピー「町中に術式の罠が張ってあるんだ。それにかかった皆が、戦いに強制されて。これがラクサスの言ってた、「バトル・オブ・フェアリーテイル」…」

 ナツ「何でだよ!意味わかんねー!」

 ハッピー「ナツ……」


 ギルドの入り口に、バトルの途中経過が映し出される。それを見たナツは悔しそうにしていた。それを心配してか、ハッピーとマスターがナツを気にした。だが、


 ナツ「俺も混ざりてぇ!!」

 マカ・ハッピ「「そっちかぁ!?」」


 ナツは結果の方ではなく混ざれないことを悔しがっていたらしく、顔を術式の壁に押し付けなんとか出ようとする。が、はやり通れず壁から離れる。


 ハル「まぁ落ち着けよナツ。そう焦ったって出られないんだからよ。あ、俺ここで」

 レット「む、そうきたか……」

 マカロフ「おぬしらは何故そんなに落ち着いていられるのじゃ!?」


 因に俺はレットと一緒に遊んでいた。因にこれは前世の頃のオセロのようなやつだ。


 ナツ「ハル!お前はいいのかよ!皆戦い始めてるぞ!最強決定戦だぞ!?」

 ハル「そんなこと言ったって出られなきゃ意味ないだろ?それに俺は最強の肩書きなんざ興味ねぇんだよ」

 マカロフ「だからといって遊んどる場合か!?それにナツ、混ざってどうするつもりじゃ!これは最強決定戦でもないわ!」


 突っ込んできたマスターは少し間を置き、腕を組む。


 マカロフ「ラクサスに乗せられて、仲間同士で潰し合っているだけじゃ!制限時間内に雷神衆を倒さねば、エルザ達は砂になってしまう。そうはさせまいと、皆必死なのじゃ!正常な思考で、事態を把握出来ておらん!
      このままでは石にされた者達が砂になってしまい、二度ともとには戻らん」

 ナツ「いくらラクサスでも、そんなことはしねぇよ。ムカつく奴だけど、同じギルドの仲間だ。はったりに決まってるだろ!」

 マカロフ「ナツ……」

 ハル「………」

 ナツ「これはただの喧嘩祭り!つうか何で出られねぇんだ!?」


 ナツ、お前は信じきれるのか。ここまでやるラクサスのことを。まぁそれがお前の良いところであり…少し厄介なところでもあるんだけどな。

 ナツはごちゃごちゃと叫び始め、マスターもじっと黙ったまま考え事をしているようだった。
 するとその時、術式の壁に新たな文字が表示される。


 ハッピー「残り、二時間十八分…」

 レット「残り人数…42人!?」

 マカロフ「この短時間で、もう半分以下になってしまったのか!?」


 くぅ、マズいな…マスが埋まってきた…。レットも強くなったな〜。

 またしばらくして違う文字が表示される。内容はエルフマンがエバーグリーンに負けたというものだった。


 ナツ「くそぉ!グレイはビックスローとやり合ってるし…俺も混ざりてぇ!」

 ハッピー「リーダスもフリードと戦ってるよ!雷神衆が動き出したんだ!」


 ……それにしても、アイツの名前が一つも出てこないな。動かないつもりか?


 ハッピー「リーダスがやられた!」

 ナツ「く〜っ、流石フリード!やりやがるな!」

 ハッピー「のんきなこと言ってる場合じゃないよ!ポーリュシカさんに助けてもらえなくなっちゃったんだよ!?」

 ナツ「いらねぇよ!砂にするなんて、どうせはったりだから」



  『はったりだと思ってるのか、ナツ?』



 突如俺達の後ろから声が聞こえる。振り返ると、そこにはラクサスの姿があった。


 ハッピー「ラクサス!」

 レット「どうやら思念体のようだな」

 ラクサス『つうか、何でお前らがここにいるんだよ。ナツ、ハル』

 ナツ「出られねぇんだよ!」

 ハル「どうゆう訳か、俺達も術式の制限に引っかかっているらしい」

 ラクサス『ほう、それは気の毒に。アイツはお前との再戦、楽しみにしてたのにな』

 マカロフ「ラクサス……」

 ラクサス『仲間…いや、あんたは“ガキ”って言い方してたよなぁ。ガキ同士の潰し合いは見るに耐えられんだろう?
      ナツもエルザも、ハルも参加できねぇんじゃ、雷神衆に適う兵はもう残ってねぇよなぁ?
      降参するか?』


 ラクサスの言葉を聞き、小さく唸るマスター。


 ハッピー「まだグレイがいる!ナツと同じぐらい強いんだ!雷神衆になんか負けるもんか!」

 ナツ「俺と同じだぁ!?アイツが!?」

 ハッピー「だってそうじゃん!」


 だが、そこにハッピーの声が割って入る。それを聞いたナツは声を荒げたが、ハッピーは一言で鎮めた。


 ラクサス『グレイ?ふっふっふっふ、あんなガキに期待してんのかよ!』

 マカロフ「グレイを見くびるなよ、ラクサス!」


 ラクサスはグレイの名前を聞いて笑う。マスターは鬼の形相をそのままに言う。
 確かにグレイの実力はナツとほぼ同等、雷神衆と一対一でやり合っても互角にやり合うだろう。

 だが、相手が相手だ。フリードの術式の場所などを理解している分、こちらが不利になる。
 そんなことを考えていると、グレイとビックスローの結果が現れた。


 ラクサス『グレイ戦闘不能。残り28人』


 現れた結果を静かに読み上げるラクサス。その結果に驚愕する三人。


 ラクサス『ふはははは!だから言ったじゃねぇか!』

 ハッピー「嘘だ!絶対何か汚い手でも使ったんだよ!」

 ハル「よせ、ハッピー」

 ハッピー「でも!」

 ラクサス『その様子じゃハル、お前なんでグレイが負けたか予想がついてんじゃねぇのか?』

 ハル「大方、フリードの術式に誘い込んで有利に持ち込んで、ビックスローの遠隔操作でズガンっといったところか。…よし、ここでこう…して!」

 ハッピー「ほら!やっぱり汚い手で!」

 レット「それは違うぞハッピー。ビックスローはただ術式をうまく使っただけだ。もしいつものグレイなら、マスターが術式にはまっていることから少しは予想がついていたかもしれない。…それじゃここで…こう」

 ハッピー「でもそんなの…」

 ラクサス『だが、それが現実だ。どうだじじぃ、後は誰が雷神衆に勝てるんだ?』

 マカロフ「…………」

 ハッピー「ガジルだ!」

 ラクサス『残念、奴は参加してねぇみたいだぜぇ。元々ギルドに対して何とも思ってねぇ奴だしな』


 ラクサスの言葉に沈黙を保つマスター。ハッピーはガジルの名前を出すが、ラクサスの言う通り、途中経過にはガジルの名前が出てきていない。


 マカロフ「わかった、もうよい。…降参じゃ」

 ナツ「っ!?じっちゃん!」

 マカロフ「もう止めてくれ、ラクサス」


 マスターがついにラクサスに負けを認めた。そしてこの戦いをやめるようにいう。


 ラクサス『…ダメだなぁ。天下のフェアリーテイルのマスターとあろう者が、こんなところで負けを認めちゃぁ!どうしてもって言うんだったら、フェアリーテイルのマスターの座を俺に渡してからにしてもらおう』

 マカロフ「っ!?」

 ナツ「汚ぇぞラクサス!俺とやんのが怖ぇのか!?あぁ!?」

 マカロフ「貴様ぁ、始めからそれが狙いか!?」

 ラクサス『石像が崩れるまで後一時間半。リタイアしたければギルドの拡声器を使って、町中に聞こえるように宣言しろ。“フェアリーテイルのマスターの座をラクサスに譲る”とな!よ〜く考えろよ。自分の地位が大事か、仲間が大事か』


 ラクサスの思念体はその言葉を残し、だんだんと薄れ始めた。
 それに気づいたナツは拳をふるってラクサスに襲いかかるが、勿論相手は思念体。さらには消えかけているのに突っ込むという暴挙に出たナツはギルドの柱にぶつかってしまう。


 ナツ「俺と勝負しないで何が最強だ!何がマスターだ!」

 マカロフ「マスターの座などどうでも良い」

 ナツ「いいのかよ!?」

 マカロフ「だが、ラクサスにフェアリーテイルを託す訳にはいかん!この席に座るには、あまりにも軽い!信念と心が浮いておる!」

 ハッピー「でもこのままじゃ、ルーシィ達が砂になっちゃう…」

 レット「さすがにそれはマズいな。誰かがラクサス達を倒さないと。あ、ここで」

 ハル「ん〜、そう来たか」


 心配し始めるハッピー。相変わらず俺達はボードゲームをしている。
 するとギルド内のバーから、何やら物音が聞こえ始めた。マスター達がこちらに顔を向けると、奥からガジルが顔を出してきた。


 ガジル「ん?」

 ナツ「ガジル!?そこにいたのかよ!?」

 ハッピー「食器を食べるな〜!」

 マカロフ「もしや、行ってくれるのか!?」

 ガジル「あの野郎には借りがあるからな。まぁ、まかせな…」


 と言って勇みよくギルドを出ようとするガジル。だが―――


 ガジル「んがっ!?」

 三人「「「だあぁぁぁ!?」」」

 ハル「やっぱり、か……」

 レット「アイツは何処から何処までを聞いていたんだ?」


 やはり術式の壁に阻まれ、ギルドの外へは出られなかった。


 ナツ「お前も八十歳だったのかぁ!?」

 ガジル「んなわきゃねぇだろ!?」


 そんな二人の口論が続く中、次々と他のメンバーが倒れていった。そして―――


 レット「残りメンバー、三人」

 マカロフ「残り三人だけじゃと!?」

 ナツ「なんでお前まで出られねぇんだよ!?」

 ガジル「しらねぇよ!?」

 ナツ「腹へってきたじゃねぇかよこの野郎!?」

 ガジル「それは本当に知らんわ!?」

 マカロフ「…三人?」


 またしても不毛な口論を始める二人。そんな中マスターは争っている二人と傍観している俺を見る。

 ハル「…三人って、俺達のことだろ」

 ナツ「あ、そっか」

 マカロフ「いや、そっかじゃないじゃろ!?」

 ハッピー「オイラは最初っから頭数に入っていなかったのか!?」

 レット「…なんで、入ってないんだ…。ハッピーはまだしも、俺まで……」

 ハル「あ〜…どんまい……」

 マカロフ「戦える者はもういない。ここまでか……」


 残る三人が俺達だと知り、マスター達は少し慌ただしくなった。
 すると、さっきまでガジルと喧嘩していたナツが、急にエルザ達の方へ歩みだした。


 ナツ「仕方ねぇ!エルザを復活させるか」

 マ・ハッピ「「何!?」」

 ナツ「あ〜あ、せっかくエルザを見返すチャンスだったのによぉ」

 マカロフ「ちょっと待たんかい!お前、どうやって…!?」

 ナツ「燃やしたら溶けんじゃねぇ?石の部分とか」


 マスターがナツに復活の方法を聞きくと、ナツはいとも簡単に答えてみせた。この時、それは一瞬吹き出しかけたが何とか抑えた。


 マカロフ「やめ〜い!!」

 ハッピー「エルザ達は体の芯まで石になっちゃってるんだよ!?」

 レット「それにもし失敗すれば…」

 ナツ「やってみなきゃわかんねぇだろ?」


 周りの不安もなんのその、ナツはそのままエルザの石像を横にし、自分の手に火を灯す。


 マカロフ「よせぇ!エルザを殺す気か!?」

 ナツ「へへ、こうしてあぶって!」

 マカロフ「火でこするんじゃない!」

 ガジル「ていうかてめぇ、手つきがエロいぞ」


 灯した火でエルザを炙り始めるナツ。だが、唐突にエルザの石像の顔にヒビが入ってしまった。


 ナツ「ぐわーーーーー!!」

 マ・ハッピ・レ「「「ぐもぉーーー!!?」」」

 ナツ「しまった割れた!ノリだノリだ!ハッピーノリだーー!!」

 ハッピー「あいさーー!!」

 ガジル「バカ野郎、ノリでくっつくか!俺の鉄をてめぇの火で溶かして、溶接するんだ!」

 マカロフ「貴様らー!!」

 ナツ「ハル、何とかしろーー!!」

 ハル「いきなり俺に振るなよ」


 ヒビが入ったことで皆の様子が一変、とてつもなく騒がしいものになった。そしてそうこうしている間にも、石像に走ったヒビはどんどん広がっていく。


 ナツ「だ〜〜〜!!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさごめんなさごめんなさ〜い!!」


 ナツの謝罪もむなしく、ヒビは全体に広がり、遂にはバギィっと音を立て完全に砕けた………かのように思えた。


 エルザ「…ぁ……」

 皆(ハル以外)「え……?」

 エルザ「熱い…お前かナツ…。何をするかーー!!」

 ハッピー「エルザが復活したー!」


 石像があった筈の場所には、石像になった筈のエルザがいた。
 そのことに皆が驚愕するが、あっけにとられたような顔をしていたエルザが、次第に鬼の形相と化し、ナツにその怒りの矛先が向けられた。結果、起きてすぐのエルザにナツと近くにいたガジルが吹っ飛ばされることとなった。


 マカロフ「よかった。しかし何故?」

 エルザ「それが、私にも…。もしかしたら、この右目のおかげかもしれません」

 ハッピー「エルザ、今の状況わかる?」

 エルザ「あぁ。石になっていても、お前達の声は聞こえていた」

 マカロフ「行ける!反撃の時じゃ!」


 皆でギルドの出入り口に行くと、経過を知らせる文字が残り人数を3から4へと変えていた。


 エルザ「私が復活したことで、残り人数も律儀に変わったか。凝ったことを」

 ハッピー「この4人はエルザとナツとガジル、それにハルのことだね」


 すると、修正された筈の表示が、4人から5人へと変わった。


 ハッピー「残り、五人?」

 マカロフ「な…」

 ガジル「増えた?」

 ナツ「誰だ!?」

 レット「他の皆は石のまま…」

 マカロフ「では一体誰が…!?」

 ハル「…アイツも来たってことだな」

 エルザ「あぁ。今まで町の外にいたから、カウントされなかったんだろう」

 ナツ「まさか…アイツか!」

 ハッピー「嘘ぉ!?」

 マカロフ「アイツが帰ってきおったのか!?」


 エルザと俺の言葉に三人はまたも驚く。まぁ今の今までそういうことにはあまり首を突っ込まなかった奴だからな。驚くのも無理はない。


 ガジル「さっきから誰のこと言ってんだ?」

 レット「ラクサス、エルザ、ハルに続く、フェアリーテイルの最強候補の一人、ミストガン!」


 ガジルの質問に答えるレット。


 エルザ「じゃあ、私も行くか」

 マカロフ「頼んだぞ、エルザ!」

 ハル「………」

 エルザ「…なんだハル。仲間に一言かけるぐらいしないのか?それとも、私が負けるなど思っているのか?」

 ハル「ふっ、そんなのするだけ無駄だろ。…狙うなら、わかっているな」

 エルザ「当然だ。まず狙うはエバーグリーンかフリード」

 ハル「わかってんなら問題ねぇ」


 そう言って俺は右手で拳を作り、エルザに突き出す。


 ハル「行ってこい!」

 エルザ「あぁ!」


 それを見たエルザは俺と同じように拳を突き出し、俺の拳と合わせる。
 そしてエルザは術式の壁を通り越し、勇みよく街へと駆けていった。


 side out

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