小説『ハイスクールD×D改』
作者:ダーク・シリウス()

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甦るドラゴン達



―――冥府。


ガイア達の救済に来ている俺達はベンニーアの案内で神殿の深奥にまで進んでいた。ところが次から次へと

ゴキブリのように出てくる死神たちが現れて進行が鈍っている。


(誰が虫―――!)


ズバンッ!


1人の死神の首を躊躇もなく切断してクロノスの背後から襲うとする死神に一刀両断する。ゴグマゴグたちも

腕を変形して機関銃を出して死神たちを屠っていく。フェンリルも神を噛み殺す牙で死神たちを噛み砕き、

爪で切り裂く、恋も呂布の子孫としての力を発揮して戟を振るうと数十の死神が吹っ飛んだり消失したり、

身体を両断されていく。


「流石は父さん達だ!実力も同じだなんてな!」


「我も負けない」


クロノスはエクスカリバーの刀身を伸ばし枝分かれにして数十の死神たちの頭を貫いた。シアとフィリスは

巨大な魔力弾を放って一掃する。しかし、その穴を埋めるかのように死神たちがゾロゾロと群がってくる!

面倒だな!と思っているとベンニーアに呼ばれた。


(旦那。近道しましょうや)


「近道?」


(コキュートスは最下層にあります。ならば・・・・・)


「なるほどな」


ベンニーアの言いたい事が分かった。ならばやる事は1つ!


「オーフィス!ガイア!周りを吹っ飛ばせ!」


ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!


2人の魔力によって神殿が崩壊していく。死神たちも神殿の崩壊に巻き込まれて潰されていき、阿鼻叫喚の

状況に陥った。その隙に俺達はベンニーアの移動方法でコキュートスに移動した。この作戦は時間との

勝負だ。・・・・・だが、事を簡単には進まないだろうがそれを承知して俺達は進む!


―――コキュートス


「さ、寒い!?」


「これは・・・・・我でも寒いと感じるな」


「イッセー、寒い」


真龍と龍神でも寒さを感じるほどか・・・・・!?でも、この寒さは別の感じだ。心が冷たくなるような

そんな感じだ・・・・・。クロノスもフィリスも少し身体を震わせていた。


(コキュートスは別名、『嘆きの川』と呼ばれて今まで裏切った種族がこの川に連れられ永遠に氷漬け

されるんですぜ。氷漬けされた種族が氷の中で嘆く。永遠に・・・・・
)


ベンニーアが流れている川を一瞥してそう言った。周りは常闇のような真っ暗で何も見えない状態だ。

だが、ベンニーアが魔力で辺りを照らして歩を進めてくれるから俺たちも移動できる。・・・・・今の所、

死神たちはいないな。気配や魔力を探知しているけど感じない・・・・・。待ち伏せしている可能性が

大きいな。上ではフェンリルやゴグマゴグたちが奮戦している筈だ。


「こんな場所にお母さんたちが・・・・・」


「それでも助ける」


「ああ、そうだな。早く助けよう。そして、帰るんだ」


「うん!助けようね!」


未来の子供達が気合を入れる。・・・・・俺たちもこの未来のように成るのか?いや・・・・・考えるのは

止そう。今はガイア達を助けるんだ。


(―――)


ふと、ベンニーアの足が止まった。俺たちも足を止めるしかないのでどうしたのか?と疑問を浮かべる。


(旦那、辿り着きやしたぜ)


「・・・・・なんだと?」


(あっしも此処まで来るのは二度目ですが迷わず来れて良かったです)


一安心したと溜め息を吐くベンニーアだが辺りを見回しても何も見えないぞ?


(ここら辺一帯を照らしてご覧くだせぇ)


「・・・・・分かった。クロノス、あれになれるか?」


「ああ、当然だ」


よし、それなら・・・・・クロノスと頷き合って―――


「「禁手ッ!」」


俺たちは大天使になった。そして、6対12枚の金色の翼を眩しいほどに光輝かせて俺たちを覆う常闇を

少しずつ追いこんで最下層の川を、洞窟を照らしていく。―――すると、洞窟の深奥にボンヤリと巨大な

複数の氷が見えた。それがハッキリ見えた時は神々しい光によって洞窟が照らされた時だった。


「―――あれは!」


クロノスが翼を羽ばたかせてその巨大な氷に向かって行った。フィリスもドラゴンの翼を出してクロノスの

あとを追う。シアも浮遊魔法で続く。俺もガイア達も巨大な氷に向かう。―――そしたら、俺の目に

とんでもないものが飛び込んできた。


「「お母さん!」」


「・・・・・これは」


「我だ」


(間違いなく、真龍と龍神ですぜ)


「まさか・・・・・こんな姿を俺が見る事に成るなんてな・・・・・」


巨大な氷の前に近づくと中には・・・・・全長100メートルはある真紅のドラゴンと身長が高い

オーフィスがいた。そして、それだけではなく、周りや奥に視線を向けると・・・・・アルビオン、

ファフニール、ゾラード、メリア、アジ・ダハーカ、グレンデル、サマエル、見た事がない二匹のドラゴンも

氷漬けになっていた。この見た事がない二匹がクロウ・クルワッハとアポプスで間違いないな。


「シア、お前の魔法の力でこの氷を溶かす事が出来るか?」


「・・・・・違う、これはただの氷じゃない。封印式の術式が施されている」


(ファファファ、その通りだ。娘よ)


「「「「「「「っ―――!」」」」」」」


このコキュートスに第三者の声が聞こえた!バッ!と背後に振り向くと大勢の死神とその死神たちの前に

司祭の祭服にミトラという出で立ちで杖を携えていた目玉は無いが眼光の奥を光らせる骸骨がいた!

このオーラと雰囲気・・・・・今まで一度も感じた事がないものだ。プレッシャーもハンパないな。


「ベンニーア。あいつがハーデスか?」


(ええ、あの方がこの死の世界を統治し死の力を司る神、ハーデスさまですぜ)


(・・・・・ほう、そこにいる死神は誰かと思えば最上級死神の一角―――オルクスの一人娘の

ベンニーアではないか?だが・・・・・私が最後に見たときよりは若いな・・・・・。それに、どうして

死んだはずの幽幻龍騎士団の兵藤一誠が若い頃のままで私の前にいる?更に言えば封印されている筈の

グレートレッドとオーフィス、兵藤一誠の中にも封印している筈のドラゴンがいるではないか
)


「お前がハーデスで間違いないな?」


(ああ、そうだとも。私がこの世界を統治し全ての死神を従えている死を司る神ハーデス)


死を司る神ハーデス・・・・・。初めて見るな。中身に肉体がないようだ。


(今度は私の質問に応えてもらおうか?真龍と兵藤一誠の間に生まれた子よ。そこにいる死んだ者や

封印した筈のドラゴンがこの場にいる事を。そして、目的を
)


「お前ほどの神が分からない訳がないだろう。だが、質問に応えよう。・・・・・此処のいる兵藤一誠と

真龍、龍神は―――過去から来た幽幻龍騎士団だ。そして、目的は見ての通り俺達の母親と

仲間を助けに来た」


クロノスは敵意をハーデスに向けた。死神たちはクロノスの言葉に驚愕してざわめく。しかし、

それはハーデスが骨と化となった手を挙げた事でなくなった。


(ファファファ、そうか。それなら上にいるフェンリルや土人形どもが今でも私の部下を屠っている事も

納得した。しかし、過去から来た幽幻龍騎士団・・・・・。ファファファ、懐かしいのう
)


「・・・・・何がだ」


(一度だけ、私は幽幻龍騎士団と雑談した事があったのだ。その時の兵藤一誠は

今のお前ぐらいの若さだった
)


「・・・・・」


(過去の誠と一香もこの時代にいるようだな。あいつらは未知な場所や空間に冒険するのが

楽しいと言う程であったからな
)


ハーデスもお父さんたちと交流を持っていたのか・・・・・。


(過去の幽幻龍騎士団の兵藤一誠。貴殿はなぜ、過去から未来にきてこのテロのような行動を起こす?)


「ははっ、テロか・・・・・。まぁ、確かにそんな風に言われてもしょうがないがどうやらクロノスが

言ったようになっているな?」


(・・・・・何がだ?)


「時は人を変える。それは昔の事を忘れる事もあるって事さ」


(言っている意味が解らんな)


そうか、忘れているようだな。幽幻龍騎士団に牙を向けたらどうなる事を・・・・・!


(さて、昔話をするのも終わりにしようではないか。お前達はこのままそこで封印されている

ドラゴンどもと同じように封印する
)


「はっ!そんな事はできないぞ?」


(ほう、それは何故かな?ここにいる死神は上級、最上級の死神ばかりだ。私もそれなりに戦えるぞ)


「その『死神』はどこにいると言うんだ?」


(なに・・・・・?)


ハーデスが後ろに振り向いた瞬間、巨大な黒い影が死神たちを影の中に引きずり込んでいたところだった。


(・・・・・)


「忘れているのならもう一度教えてやるよ。―――俺達は幽幻龍騎士団。最強の組織であり救済を

求めるものに手を差し伸べ救済する。しかし、俺たちに牙を向けたものには一切の容赦はしない」


俺はハーデスに言う。思い出させてやるよ。


「お前達は敵に回してはいけない組織を敵に回した。過去だろうが未来だろうが関係ない。未来の俺達は

過去の俺たちであり家族だ」


ああ、そうだ。過去だろうが未来だろうが関係ない。時空を超えて未来の幽幻龍騎士団を救済するんだ!


「再び見せてやるよ・・・・・。思い出させてやるよ・・・・・。幽幻龍騎士団の力を・・・・・

想いをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


身体がから気のエネルギーを出し迸らせる。その際に俺の服が吹き飛び、身体に浮かぶ紋様が消失した

。―――刹那


ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!


コキュートスの空間が震えるほどの膨大な気が奔流と化となった。ガイアとオーフィスも真紅と漆黒の

魔力のオーラを奔流と化にして纏い、俺とガイアとオーフィスの三つのエネルギーが混じり合ったその瞬間、

ガイアとオーフィスと呪文を唱え始めた。



「我、夢幻を司る真龍なり!」


「我、無限を司る龍神なり!」


「我、無限を認め」


「我、夢幻を認め」


「我等は認めし者と共に生き!」


「我等は認めし者と共に歩む!」


ガイアとオーフィスは俺の瞳を据えてコクリと頷いた。俺はそんな二人に笑みを浮かべて頷き―――呪文を

2人と一緒に唱えた!


「我は夢幻を司る真龍と無限を司る龍神に認められし者!」


「夢幻の力で我は汝を誘う!」


「無限の力で我は汝を葬る!」


「我は愛すべき真龍と龍神と共に我等は真なる神の龍と成り―――」


「「「我等の力で全ての敵を倒す!我等の力で汝等を救済しよう!」」」


「「「D×D!」」」


ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!


「・・・・・これが、父さんたちと母さんたちの力・・・・・っ!」


「我・・・・・初めて見る・・・・・っ!」


「私もだよ・・・・・・っ!」


俺達の背後で身体と声を震わせて涙を流す。未来の俺達の子供にも見せてやろじゃないか!

なあ、ガイア!オーフィス!


(・・・・・ファファファ、懐かしい力の波動だな。この老いぼれにその力で屠ろうと言うのか?)


『―――ああ、その通りだ。俺達の怒りと悲しみを受けてもらうからな』


(―――ッ!)


俺はハーデスの背後から呟いた。こっちに振り向いても既に遅い!


『はぁっ!』


(ッ―――!)


ハーデスの頬の部分の骨に俺の拳が炸裂した!ビキッ!バキッ!と骨が軋む感触を感じ、

俺の拳が振り切るとハーデスは洞窟の壁にまで吹っ飛んだ。


ドッガアァアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!


「は、速い・・・・・!」


「我の目でも見れなかった」


「これがお父さんたちの力・・・・・」


「シア」


「はい?」


「早く、解除する」


「あっ、はい!直ぐに取り掛かります!」


「俺達はシアの護衛に徹しよう。―――敵もゾロゾロと現れているしな」


そう、俺達の周りにこの洞窟を埋め尽くさんとばかりに死神たちが上下左右、川に魔方陣が現れて続々と

現れた。


(ファ・・・・・ファ・・・・・ファ・・・・・)


『・・・・・?』


(これが・・・・・真龍と龍神の力が融合した力か・・・・・)


深々と壁にめり込んでいたハーデスの頭蓋骨に罅が全身に広がっていた。


(今の一撃でこの有り様・・・・・。ファファファ・・・・・恐ろしい・・・・・ものだな。

その力を・・・・・有するから貴殿たちは・・・・・各勢力に狙われ、殺されたのだ・・・・・
)


ハーデスが喋るごとに罅が更に広まっていくのが死神たちを屠りながら見た。横から鎌を振り下ろす死神に

対してエクスカリバーに膨大な魔力を纏って横に薙ぎ払って死神たちを消滅していく。クロノス達も俺に

負けず確実に倒していく。


『それがなんだ』


(・・・・・)

『勝手に俺たちを恐れたお前達が悪い。俺たちに何もしなければ無害に等しい組織だった筈だ。友好的に

交流をしていけば世界は平和に成っていた筈だったんだ。それなのにお前達は未来の俺達を殺した』


6対12枚の金色の翼を出して大きく広げ光の魔力を集束して極太の柱のような魔力を洞窟中に放った。


ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!


この一撃で死神たちは消滅した。周囲を見渡しても死神の姿はいなかった。


(ファファファ・・・・・・、私の部下をこうも容易く屠った上に全滅か・・・・・)


『・・・・・』


(もう、私も終わりだな。・・・・・そこのドラゴンどもは好きにするがいい)


ボロボロとハーデスの顔が崩れていった。


(ファファファ、さらばだ・・・・・過去の幽幻龍騎士団よ・・・・・)


『・・・・・ああ、じゃあな。ハーデス』


目玉の無い眼光の奥に光るものが無くなった途端にハーデスの顔の形状が一瞬で崩れ砂と化となった。


『・・・・・』


「あっ!氷が溶けるよ!」


「きっと、ハーデスが死んだからだろう」


「お母さん・・・・・」


頭部の鎧のマスクを収納してクロノス達に近づく。氷は洪水のように溶け始めてこの時代のガイア達を

解放していく。そして、溶けだした氷は水と化と成り川として流れ始めた。


ザッパアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!


―――そして、完全に氷が無くなった瞬間。数匹のドラゴン達が川に倒れ込んだ。


「「「お母さん!」」」


「・・・・・」


駈け寄るクロノス、シア、フィリス。俺は鎧を解いてゾラード、メリア、サマエル、

アジ・ダハーカも現世に出す。


「連れて帰る」


『分かりました』


『この時代の僕達は変わらないね・・・・・』


『ドラゴンが変化する訳ないだろう』


『クロウ・クルワッハ、アポプス・・・・・懐かしいな』


アジ・ダハーカは同じ邪龍を見て懐かしそうに見ていた。グレンデルと自分と同じ存在には

興味が無いようだな。


『一誠!』


「・・・・・和樹か?」


俺の耳元に小型の魔法陣が出現した。どうやら和樹のようだ。


「そっちはどうだ?」


『バッチリだよ!僕達の家を奪い返した!いま、真魔に向かって移動している!』


「そうか、こっちも無事に救出したところだ」


『そっか!それはよかったよ!皆も喜ぶよ!』


「そうだな。クロノスとシア、フィリスが泣いてこの時代のガイアとオーフィスに泣き付いているよ」


『僕達はまた救済できたんだね』


「ああ、その通りだ。それじゃあ、また会おう」


『うん!』


小型魔法が消失した。ガイア達はこの時代の家族を肩に担いだり背に乗せたりと行動をしていた。


『・・・・・っ』


・・・・・俺の視界にこの時代のガイアが苦悶の声を呟いた。その声に反応してクロノスが声を張り上げた。


「お母さん!」


『・・・・・クロ・・・・・ノス・・・・・?』


ゆっくりと目蓋を開き、朧気な金色の瞳をクロノスに向けた。


『起きたようだな』


『・・・・・お前は・・・・・我・・・・・?』


『どうやら、長い間に封印されていたせいかお前からドラゴンの力が弱まっている。しばらくは寝たままの

生活になるだろう』


『・・・・・どう・・・・して、我がもう一人・・・・・』


「過去から来たんだよ。この時代のガイア」


『・・・・・』


クロノスの母親であるガイアが俺に顔を向けた。俺は翼を展開して近くによる。


『い・・・・っせい・・・・・』


「もう1人のガイア・・・・・クロノスの願いに俺達、過去の幽幻龍騎士団がお前達を救済に来た。もう、

お前を辛い思いはさせない・・・・・」


『・・・・・一誠・・・・・一誠・・・・・一誠・・・・・』


金色の瞳が潤い涙を流し始めた。巨大な顔を俺に近づけ擦り寄せてきた。俺も真紅の皮膚を撫でる。


「今は眠ってくれ。次に目を開けた時は俺がお前の視界に入っているからさ」


『・・・・・ああ・・・・・一誠』


それだけ呟きもう1人のガイアは気を失った。


「お母さん!」


「気絶しただけだ。心配はするな」


「・・・・・」


「大丈夫だ。また、元気になる」


「・・・・・本当にありがとう・・・・・お父さん」


「ふふっ、お前は『ありがとう』と言うのが多いな。さて、俺達の家に戻るぞ」


巨大な転移用魔方陣を発動してコキュートスから移動する。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――真魔界


カァッ!


壮大な建物の広い庭に巨大な魔方陣が出現した。光が弾けた瞬間に冥府から戻ってきた一誠達の姿が現れた。

少しして、過去と未来の幽幻龍騎士団が庭に集結した。


「お帰りなさい」


「ああ、ただいま。無事に救出したよ」


「はい・・・・・ありがとうございます」


涙ぐみながらネリーがお辞儀した。


「回復の能力を持っているメンバーは直ぐに治療を!外傷はないが念には念をするんだ!」


「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」


『グレンデルとこの時代のアジ・ダハーカ・・・・・邪龍どもはしなくてもよいぞ』


「アジ・ダハーカ。なんでだ?」


『どのぐらい封印されていたかは知らないがこいつらが簡単に―――弱る訳が無いからだ!』


ドガッ!


『ぐお!?』


ゲシッ!


『ぐほっ!?』


ドスッ!


『がはっ!?』


ゴンッ!


『ぶっ!?』


と、そう言いつつグレンデル達を殴ったり蹴ったりした。余りにも乱暴な起こし方をするアジ・ダハーカの

行動に冷汗を流す。そして、乱暴な起こし方をされて苛立ちを見せる4匹の邪龍はガバッ!と起き上がった。


『いってぇなー!誰だ、俺を殴った奴はぁ!?』


『俺だ』


『てめぇか!アジ・ダハーカ!』


『なっ!俺ではない!寧ろ、俺も起こされた方だぞ!?』


『・・・・・あ?ちょっと待てや、どうしてアジ・ダハーカが二匹もいるんだぁ?コイツは夢か?幻か?

グレートレッドが見せている夢幻なのか?』


『戦いと殺ししかないバカな頭が等々、相手を認識する事もできないほどのバカになったようだな』


『よし、アジ・ダハーカ。表に出ろや』


『バカが、此処は既に真魔と言う世界にいるんだ。とっくの昔に表にいる』


『・・・・・何がどうなっているんだ。どうして俺と同じ姿をしたドラゴンがいる』


「気分はどうだ?アジ・ダハーカ」


『・・・・・お前は・・・・・兵藤一誠か?』


「おう、兵藤一誠だ」


この時代のアジ・ダハーカは俺を見て、サマエル、ゾラード、メリア、ガイアを見て困惑の表情を浮かべた。

まあ、普通はそうなるよな。


『・・・・・分からん、俺がもう一匹いると思えば死んだはずの兵藤一誠がいて、グレンデル、

クロウ・クルワッハ、アポプス、アルビオン、ファフニール以外のドラゴンがもう一匹いるとは・・・・・』


「俺達は過去から来た。それで納得するだろう?」


『・・・・・そう言う事か。道理で若いと思った。そうか、過去から来た兵藤一誠か・・・・・』


納得したようだった。一安心しているとグレンデルが顔を近づけた。


『あー、確かに見れば俺を倒して封印しやがったあいつより若いな。いや、俺を封印した頃の奴だな』


「俺がお前を倒したのか?」


『おう!ついでにお前が敵対していた組織も潰してな!』


禍の団のことか・・・・・。


「そこの二匹の邪龍とは初めて会うな・・・・・」


『その様子だと我等と会ってはいないようだな』


「ああ、まだアジ・ダハーカを仲間に入れたばかりだ」


怒れる羊のような角を生やしている東洋の身体のドラゴン。こいつがクロウ・クルワッハ・・・・・。


『過去ならばいずれ出会うだろう。我は「三日月の暗黒龍」クロウ・クルワッハ。

 戦いと死を司るドラゴンだ』


「よろしく。いずれ過去でも仲間にしてやるよ。それでお前がアポプス?」


巨大なキングコブラのような黒と黄色の蛇に問うと頷いて口を開いた。


『闇と混沌を司る「原初なる晦冥龍」アポプス』


「うん、邪龍らしい力を司っているな。お前等は・・・・・」


以前も聞いたこともあるけどやっぱり邪龍らしい力だな。グレンデルが徐に声を掛けてきた


『しっかし、過去のお前と会うなんてなんの因果だ?あいつが死んで俺達は封印されたっていうのに過去の

お前達が俺達を解放してくれてよ』


「クロノスに頼まれたんだよ」


『あいつのガキに?』


「この時代では色々と大変な事が起きていたんだな」


『あっという間だった。訳のわからない笛の音色を聞いたと思えば身体の自由が効かない上に意識を

乗っ取られた。そして、意識が戻ったと思えば・・・・・現世に出ていて兵藤一誠達が死んでいた。

グレートレッドとオーフィスに至ってはサマエルの毒で弱っていた』


『ちっ!あの嫌な音色は俺達を支配するものだろうよ!あの真紅のガキ、今度会った時は

踏みつぶしてやる!』


『我等を支配する事は最も嫌っている事。それを知らずに支配した奴を許す訳にはいかないな』


「未来の俺はお前達を支配はしていないのか?」


『たまに現世に出してくれる。我等の事を考えている事も知っていた』


「そうか・・・・・」


音色・・・・・。音色がサマエル達を支配するのか。


『んで、俺達を助けた理由はなんだ?過去のお前の仲間に成れってか?』


「いや、そんな事はしないし思ってもいない。未来は未来、過去は過去だ」


『じゃあ、何だって言うんだ?』


「―――家族を助ける理由なんてあるのか?」


グレンデルの質問に首を傾げて応えると何故か溜め息を吐いた。


『・・・・・はぁ、お前はやっぱりあいつだな』


「当然だ。未来だろうが過去だろうが俺は俺だ」


『兵藤一誠、これからどうするつもりだ?』


「今は未来の俺達の散らばった神器と神滅具を回収している」


『それが終われば過去に戻るのか?』


クロウ・クルワッハが聞いてきた。俺は首を左右に振って否定した。


「違う。終ったら―――お前達が好きな戦いを始めるつもりだ」


『おほっ!そいつぁいいな!好きなだけ殺して良いのか!?好きなだけ壊して良いのか!?』


「俺たち、幽幻龍騎士団に手を出したらどうなるか忘れているみたいだし思い出してもらうんだ。当然、

好きなだけ暴れろ」


『―――グハハハハハッ!流石は俺を倒した過去のあいつだ!ますます気に入ったぞ!』


『ああ、思う存分に暴れてやろう』


『邪龍を相手にどこまで耐えられるか面白いな』


『あいつが死んだ今、俺達を纏める奴がいない。お前がいる間、従おう』


「そうか、お前たちも俺の指示に従ってくれるか?」


『暴れさせてくれるのならな!』


『例え過去だろうがあいつなのは変わりない』


『ある程度は聞こう』


4匹の邪龍が俺の指示を聞いてくれるなんて・・・・・おっかない事だな。


「一誠!ガイア達の治療は終わったよ!」


「分かった!いま、行くぞ!」


和樹の言葉に反応して気絶しているガイア達に赴く。


『さてと』


『む?』


『殴られたのなら殴り返そうってなぁ!』


ゴンッ!


『グレンデルに一理ある』


ガンッ!


『仕返しだ』


ドスッ!


『死ねないだろうが死ね!』


ドゴンッ!


過去のアジ・ダハーカに叩き起こされた腹いせに殴り返す4匹の邪龍たちに怒る過去のアジ・ダハーカ。


『―――お前等ぁああああああああああああああああああああっ!』


『おっ?やろうってのか?いいぜ、やろうぜ!久々に暴れたい気分だ!』


『ちょっと!こんな狭い場所で暴れようとしないでよ!?』


『なら、広い場所でいいんだな?』


『そういう問題じゃないってばぁ!』


『お前等はじっとする事も出来ないのか?』


『邪龍だからな、暴れたいんだ』


『・・・・・我が邪龍じゃなくて良かったと安心しましたよ』


『過去のお前等は相変わらずだなぁー?もしかして、過去の俺達は変わっていないんじゃないのか?』


『主はグレンデルと会ってはいますが他の邪龍とはまだ会っていませんから分かりませんよ』


『今度は我等が過去に行って暴れるのも悪くないかもな』


『グハハハッ!そいつはいいな!自分と自分の対決ってかぁ!?面白ぇ!』


グレンデルは哄笑を上げた。心底から楽しみだと言わんばかりに。―――その後、グレンデル達は遠くの

場所で結局、大暴れをした。

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