小説『ハイスクールD×D改』
作者:ダーク・シリウス()

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復讐の時



ようやくだ・・・・・。ようやく、俺の、俺たちの両親を殺した元凶を生みだした奴と戦える・・・・・!


『クロノスよ。相手はお前より強い。心して掛かれよ』


ああ、確かに実力は負けるだろう。でもさ、俺にはお母さんが一緒に戦ってくれるんだ。

―――負ける気はしない。


『・・・・・ふふっ、やはりお前は一誠の子供だな。そう言う所がそっくりだ』


ありがとう、嬉しいよ。


『お前の神滅具は我の力が具現化したものだ。我がお前の中に入ればさらに力が昇華されるだろう。

天龍をお前の手で倒すのだ』


当然だ!俺たちが最強の勢力だと思い知らせてやる!と心に決意した時、あいつの左手の甲に緑の宝玉が

浮かび上がった。―――ドライグか


『この波動・・・・・相棒、あいつの中にグレートレッドがいるぞ』


「なんだと・・・・・?」


『グレートレッドだけではない、オーフィス、それに・・・・・アルビオンまでもいるぞ。どう言う事だ、

お前等はコキュートスの深奥に封印されていた筈だ。どうして此処にいる』


ドライグの声音に驚愕が込められている。あいつも表情も驚愕の色を染めている。


『ふん、そんなの決まっているではないか。我等は息子たちに助けられたのだ』


俺の手の甲に金の宝玉が浮かんでドライグと会話をする。


『・・・・・冥府にはハーデスがいる。どうやってあの神を相手に助けられたのだ』


『さぁな、我等は眠っていたから知らないが・・・・・息子たちの話によれば死神どもと神を滅ぼした後で

我等を助けたそうだ』


「なっ、滅ぼしただと!?」


あいつがさらに目大きく見開かせて驚愕した。正確に言うと俺じゃなくて過去の父さんだけどな。


『正確に言うと協力者たちが、だがな』


「協力者たち・・・・・こいつ等の事か」


『3回戦、試合を開始!』


「「「―――禁手ッ!」」」


カッ!


試合開始を告げられた。話しは終わりだ。お前を倒し、あいつも倒す!


「真なる赤龍神帝の鎧」


「無限の龍神の鎧」


「白龍皇の鎧」


俺は全身に真紅の鎧、フィリスは漆黒の全身鎧、ルシフェルは白い全身鎧を着込んだ。


「禁手ッ!」


あいつも赤い全身鎧を着込んだ。・・・・・『赤龍帝の鎧』。―――いや、


「乳龍帝の鎧だな」


『うおおおおおおおおおおおんっ!その名で言うなぁ!』


緑の宝玉から鳴き声が聞こえた。しかし、俺たちはたたみ掛ける


「おっぱいドラゴンが乳龍帝の鎧を着込んだ・・・・・・」


「天龍じゃなくておっぱい龍の間違いじゃないのか?」


『俺は天龍だぁあああああああああああああああああっ!決しておっぱい龍じゃなぃいいいいいいいいっ!』


「乳龍帝ドライグ・・・・・ださっ」


「いや、そっちの方がしっくりくるな。よし、これからドライグの事を『乳龍帝ドライグ』と呼ぼう」


『ぐはぁあああああああああああああああああああああああああああっ!』


「ド、ドライグ!?」


まだ戦ってもいないのにあいつの鎧が解除された。あーあー、あれじゃあまともに戦えないな。

またカウンセラーに通うんじゃないのか?


『心が疲弊した天龍・・・・・憐れな』


「ドライグ!おい、しっかりしろ!」


『あ、相棒ぉ・・・・・すまない・・・・・俺は・・・・・俺はぁ・・・・・』


よし、ある意味倒したぞ!


『・・・・・同情はするぞ』


「くそっ!お前等、良くもドライグを!」


「元の元凶はアンタだと忘れてはいないか?」


「・・・・・・」


俺の指摘に顔を背いた。今でも色々と活躍していると聞いているぞ。おっぱいドラゴンさん?―――さてと、


「成神一成、倒させてもらうぞ」


「くっ・・・・・!」


あいつに俺たち3人は飛びかかる。他の2人は過去の父さんたちと戦い始めていた。有り難いな!


―――幽幻龍騎士団


「おー、あいつの鎧を解除しやがったぞ」


「ドライグを攻めたようね」


「宿主より天龍に攻めるとは凄い事をするね・・・・・」


「過去でも出来る事だな。戻ったらやってみよう」


「面白そうだ」とクスクスと笑いながら心の中で呟いた。


「強いけど脆いと言う事か」


「心が弱いんじゃあダメだな。俺も人の事は言えないけどよ」


「そうだね、一誠は人一倍心が弱いもんね。ついでに寂しがり屋」


「・・・・・ふん」


「ふふふ、可愛い!」


顔が熱くなったのを感じた。そこにルシファーが抱きついてきた。


パキィィィィィィィィィィィィィィィィィィンッ!


と、ステージが氷のステージへと変わった。木場の足を封じる為か?いや、木場は氷の上でも速い。

と言う事は、


「自分が有利になる為に凍らせた訳か」


見れば氷のステージが次々と氷の槍が飛び出してきて木場の足を止めようとする。


『Half Dimension!』


「おっ」


ルシフェルが能力を使った。視界に入った全てを半分にする。クロノスとフィリスは入っていないが

他の奴等がルシフェルの能力によって力が半減した。あれって反則だよなぁ・・・・・。


「フィリス!」


「龍神の―――」


「神龍の―――」


「「咆哮ッ!」」


口から漆黒の魔力が竜巻、膨大な熱量の炎を吐きだして成神たちをステージから追い出した。

呆気ない勝負だったな。これが殺し合いだったらどっちが死んでいたんだろう。


「(・・・・・一誠)」


「(ん?)」


「(悪いがやはり、ワザと負ける事が俺にはできない。―――本気でやってもいいか?あんなものを

見せられては戦いたくてしょうがないぞ・・・・・!)」


顔を隠している仮面をこっちに向けてヴァーリが念話で話し掛けてきた。あいつから高揚が高まっている事を

気付き俺は「失敗した・・・・・」と呟く。真龍と龍神のハーフ、未来の自分の白龍皇の娘。こんな豪華な

相手がいればあいつは戦いたがるに決まっている。俺はそれに気づかず戦わせてしまった。


「(ダメだと言っても聞く気は?)」


「(ないな)」


「(即答かよ・・・・・しょうがない、本気でやれ)」


―――刹那、


ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!


ヴァーリの全身から魔力が迸った。その様子にレヴィアタンたちが驚いた。


「(レヴィアタン、信長。戻って来い。ヴァーリが本気でやりたがっているからよ)」


「(本気!?そんなことしたらバレちゃうよ!)」


「(俺の失敗だ。ヴァーリの性格を知った上で出してしまった。結果、あいつは豪華な相手と本気で

勝負をしたがった。言っても聞かないのなら思う存分にさせた方が良い)」


「(ヴァーリの性格には困ったものですね)」


「(すまないな。これが俺の性分だ)」


ヴァーリが念話で謝罪した。だったら少しはその戦闘狂を抑えろよ。


「我、目覚めるは」


『さあ、行こう!』 『行くぞ!』


「神に認められし二天龍なり」


『我等は、神に認められし天龍!』 『そして、白龍皇なり!』


「無限と共に生き夢幻と共に歩み」


『友と共に歩み!』 『友の敵を屠る為に!』


「我、無垢な真なる白龍神皇と成りて」


『我等は、真なる力を持って!』


「「「「「「「「「「汝を白銀の光輝で鎮めよう」」」」」」」」」」


『白銀の極光龍変化!!!!!』


カッ!


呪文を唱えた瞬間、ヴァーリが膨大な光に包まれるがさらに光はステージ全体を包み込んだ。そして、

光が収まるとそこには身体中に青い宝玉がある巨大な白いドラゴンがいた。


―――グレモリー


「なんですって・・・・・」


どう言う事・・・・・。これは一体、どう言う事・・・・・!?何故、どうしてあそこにアルビオン

がいるの!?それにあの呪文は白龍皇ヴァーリのもの!いえ、そもそもヴァーリは死んだ筈よ!アルビオンも

コキュートスの深奥に封印されている筈!


「リアス・・・・・あれは・・・・・」


「そ、そんな・・・・・」


「アルビオン・・・・・白龍皇・・・・・」


「・・・・・白龍皇が二体・・・・・」


朱乃たちも声を呑む。いえ、この会場にいる誰もが驚愕し唖然としている。


「・・・・・まさか、生きていた?」


いえ、そんな筈はない。私は首を何度も左右に振って頭の中で浮かんだ可能性を消した。すると、

白龍皇の娘がボソリと呟いた。―――まさか!


「我、白龍皇を継ぐ者。我は天龍の力を振るい我の敵を白銀の極光で滅ぼす。我は天龍の力を振るい救済を

求める者に救済の光を注がん。我は白龍皇を継ぎ新たな未来へと導く純真の真なる白銀の白龍神皇と成りて

我は共に歩む者たちと進む!」


カッ!


「真なる白銀の極光龍神帝!」


白龍皇の娘が呪文を唱えたと思えば膨大な閃光に包まれた!その光は彼女の体を大きくして形を

変えていった。大きさは目の前のアルビオンと変わらない。でも、光が止むと2対の巨大な翼、体はまるで

白銀の世界にいると思わせるほどの白く純白で白銀、至る所に青い宝玉が埋め込まれていて額の部分にも

青い宝玉があった。


『ははははっ!アルビオン、見てくれ。目の前のアルビオンが更に俺たちより進化しているぞ!』


『まだまだ私は進化すると言う事だな。良い事を知って嬉しいぞ』


『今の彼女なら赤龍帝を倒せるんじゃないかな?』


『可能性は十分だ』


哄笑を上げる白いドラゴン・・・・・。2匹のアルビオンがいるなんて本当にこれはどう言う事!?

それにさっきから聞く声は・・・・・ヴァーリ・ルシファー!?


『さて、戦うとしようか。ルシフェル!』


『負けない!』


2匹の白い龍が動き出そうとした。―――その時だった。


『その試合、待て!』


『『・・・・・・』』


サイラオーグが声を張り上げて止めた。2匹の白い龍は顔をサイラオーグに向けた。


『なんだ?』


『・・・・・どうして白龍皇が2匹もいるのか説明してもらおうか。それにコキュートスに封印されて

いる筈のアルビオンがどうしてこの冥界にいる事もだ』


手を上げたサイラオーグ。すると、会場から大勢の悪魔、天使、堕天使が飛んで2匹のアルビオンを

囲み始めた。


「私たちも行きましょう。もう、ゲームどころではなくなったわ」


仲間にそう言い、私も2匹のアルビオンに近づく。


『簡単な事だ。コキュートスの深奥にいた『私たち』は助けられたのだ』


白龍皇の娘の声じゃない。アルビオンの声だった。私たち?


『私たちとは?』


『決まっている。グレートレッド、オーフィス、ファフニール、邪龍たち全てのドラゴンがコキュートスの

封印を解いて救われたのだ』


「「「「「なっ!?」」」」」


それが本当だったら大変な事じゃない!でも、コキュートス、冥府には死を司る神が統治している筈。

なのに、どうやって・・・・・?


『冥府にはハーデス殿がいた筈だ。それをどうやって―――』


「ああ、俺たちの協力者が滅ぼしてくれた」


『―――っ!?』


彼の子供がとんでもない事を口にした。滅ぼした・・・・・?あの神を・・・・・?

冥府を滅ぼした・・・・・?


「だからアルビオンは此処にいる。これが何よりの証拠だ」


不敵の笑みを浮かべてサイラオーグに向かって言った。そこまで、そこまでする必要があるの・・・・・?

 貴方たち、そこまで私たちに復讐をしようとするの?


「俺たち『幽幻龍騎士団に、家族に傷つける勢力は徹底的に恐怖と絶望を与える』。これは俺の父親、

兵藤一誠が生前していた頃から言った言葉だ。父さんたちと交流を持ったお前たちはそれを知っていて

覚えている筈だぞ」


『・・・・・』


「そして、お前たちは幽幻龍騎士団に攻撃を仕掛けた。先に手を出したのはお前たちだ」


敵意と殺意が瞳から窺える。確かに・・・・・私たちは彼等に牙を向けた。正当な理由に成り立つ。


「・・・・・」


すると、彼の子供に現龍幻幽騎士団と協力者たちが集まりだした。


「ゲームが中断されて残念だがしょうがない。―――復讐をさせてもらうぞ」


「っ、待ちなさい!」


私は慌ててクロノスに近づく。朱乃たちの制止の声が聞こえるけど彼を止めなければならない!


「復讐をしても彼は喜ばないわ!」


「恩を仇で返すグレモリー家の当主がどの口で言う。父さんが何度もお前を助けたのにお前はしては

いけない事をしたのを自覚しているのか?」


「自覚している!後悔もしてる!あの頃に戻れるのなら謝罪したいわよ!でも、貴方たちが復讐をしたら

どうなるか理解しているのでしょう!?」


「テロリストとされて討伐されるだろうな」


「だったらどうして冥府を滅ぼしたの!?グレートレッドたちを助けるだけでなにも

滅ぼす事もないじゃない!」


「『幽幻龍騎士団に、家族に傷つける勢力は徹底的に恐怖と絶望を与える』。冥府に住む死神たちも

含まれているから当然の事だ」


「っ・・・・・!貴方たちは・・・・・!」


「ところで聞きたいんだけど―――ドラグニルはどこにいる?」


「・・・・・どうして聞くの」


息子の名前が挙がって嫌な予感がしない。だって、この子たちは復讐を目標にしているのだから・・・・・!


「俺の父さんを殺した張本人を殺す為だ」


「っ!?」


「冥界にいるのか?人間界にいるのか?教えてくれ、お前たちの家を把握しているから直ぐにでも

ドラグニルの奴を殺しに行く」


「・・・・・そんな事、言う訳ないしさせる訳にはいかないわ!」


凝縮した滅びの魔法を彼の子供に放った!でも、彼とオーフィスの間に生まれた彼女が黒い籠手を装着して

私の滅びの魔法を打ち消した!その後、彼の子供たちの体から複数の球体が出て来て一瞬の閃光を放った。

光が晴れると久しぶりに見るドラゴンたち・・・・・!


『久しいな、グレモリーの女よ』


「っ・・・・・ゾラードね」


『よくも主を殺してくれたな。全力を持ってこの冥界を滅ぼさせてもらう』


「・・・・・」


怒気が含まれている事を知る。ゾラードは長年、彼と共に過ごしたドラゴン。

怒るのは当然の事よね・・・・・でも、


「冥界には手を出させないわ!」


『あはははっ!此処は冥界だよ?何時でも悪魔を殺せちゃうよ!』


サマエル・・・・・!


『我の光の攻撃は悪魔を一瞬で屠る事ができます。覚悟して下さいね』


メリア・・・・・!


「我の愛しい男を殺して、我等を封印した間によくとまぁ、のうのうと過ごしていたようだな?

―――我等に恩を仇で返して己だけ裕福に、幸せに暮らして貴様は何様のつもりだ・・・・・!

許さん、許さんぞ・・・・・!」


グレートレッド・・・・・!


「この冥界、滅ぼす。冥界周囲に存在する次元の狭間、もらう」


オーフィス・・・・・!


「幽幻龍騎士団!全員、集まれ!復讐の時だ!」


突然、ドーム会場中に響き渡るぐらいの大声で叫びだした。


「何を・・・・・!?」


「俺たちが此処にいるんだ。なら、何処かに俺の家族がいる事になるだろう?」


「―――っ!」


初めて気付いた。そして、幽幻龍騎士団に所属、または交流を持っていた種族は―――この場にいる!


「・・・・・ようやくですね」


「ああ、私たちも動くとしよう」


「私たちの大切な人を、仲間を奪った勢力に復讐を・・・・・!」


「っ、小猫!ゼノヴィア!ロスヴァイセ!」


彼の子供たちに歩み寄る私の眷属!ダメ、行かないで!そっちに行ったら貴女たちも討伐されてしまう!

さらに、上空からも集まりだした。


「リアス」


「ソーナ・・・・・!」


私の無二の親友、ソーナが空から降りてきた。―――眷属を率いて。


「ソーナ、まさか・・・・・貴女までも・・・・・?眷属を率いて・・・・・彼等の味方を・・・・・?」


「私はずっと貴女を憎んでいました。恨んでいました。貴女に対してずっと憎悪を抱いて

この日まで生きていました」


「―――っ!?」


ソーナの瞳にドス黒い何かが籠もっていた。怒り、悲しみ、憎しみ、恨み、色んなものを籠めて

私を見詰める。


「私の夫を、愛しい人を殺して自分は愛しい男と愛し愛されながら生きていた。貴女、良くも平和に

暮らせましたね?良くも私の、私たちの大切な人を殺してのうのうと生きていけましたね?」


「ソ、ソーナ・・・・・!」


「気やすく私の名前を呼ばないでください。恩を仇で返すグレモリー」


「っ―――」


「もう、貴方とは親友でも何でもないです。貴女は私の愛しい夫を殺した憎い女よ」


絶縁とも言える言葉を放って彼の子供たちの所へ集まった。

ソーナ・・・・・私は・・・・・私は・・・・・!


「貴方には失望しましたわ」


「本当ね。私たちの気持ちを味わってもらわないと困るわ」


「レイヴェル、シーグヴァイラ・アガレス・・・・・」


「私たちの大切な人を、仲間を殺した貴女にも大切なものを失くしてもらいましょうか」


「家族、友人、家、仲間・・・・・色んな物を私が全て燃やし尽くしてあげますわ」


幽幻龍騎士団に集結する兵藤一誠と交流、愛され愛した者たち。そんな中、サイラオーグが

私の隣に降りてきた。


「クロノス・・・・・もう、止めてくれる気はないのか・・・・・?」


「サイラオーグのおじさん・・・・・。貴方は何も悪くない、悪いのは俺たちから大切な人を奪った勢力だ。

そこにいるグレモリーが元凶なんだ」


「・・・・・」


「俺たちは復讐を果たす。グレモリーに、三大勢力に、―――世界に復讐をするんだ」


揺ぎ無い決意。それが私の胸に酷く、深く、突き刺さる。私が深くイッセーを愛し、大切に想ったように

ソーナも彼の子供たちも彼を深く愛し。大切に想っていた。それを私たちが奪った。きっと私も彼等の

立場だったら同じ事をしていたかもしれない。―――私たちは本当に悪魔だ。


『魔王と戦う事に成るとはな・・・・・だが、面白い』


アルビオンがそう言うと龍化を解いて仮面をしてフードを深く着込む男に戻った。その男が同じ

仮面とフードの集団に戻る


「お前たちは誰だ?」


「・・・・・」


「俺たちに顔を見せてはくれないか?」


サイラオーグが問う。すると1人の人物がサイラオーグの前に移動してきた。そして、

フードと仮面を取り払って素顔を私たちに見せてくれた。―――だが、


「サイラ・・・・・オーグ・・・・・?」


「・・・・・俺・・・・・?」


その顔がサイラオーグだった。でも、若い。若いサイラオーグだった。私がまだ駒王学園に通っていた

あの頃の姿で私たちの前に立っている。


「・・・・・こんな形で俺と対面するは・・・・・悲しい事だ」


「・・・・・」


声も同じだ。私たちは信じられないものを見ている。これは幻・・・・・?でも、彼から発する闘気は

 紛れもない私の隣にいるサイラオーグと同じもの。―――彼はサイラオーグ・バアルだと言う事に成る。


「お前は・・・・・誰だ?」


「俺は、サイラオーグ・バアル。神滅具『獅子王の戦斧』の所有者でありバアル家次期当主だ」


「次期当主・・・・・?魔王、当主ではないのか・・・・・?」


次期当主・・・・・間違いない。彼は若い頃のサイラオーグだ。でも、どうして此処に・・・・・。


「俺よ。どうして恩人である兵藤一誠を討伐したんだ」


「・・・・・」


「お前は俺だ。お前の夢は俺の夢だ。力と志がある者に相応しい場所を与える世界、俺みたいな悪魔を

2度と生ませない世界にする夢。俺はそんな夢をずっと抱いて生きていた。―――なのに」


サイラオーグの悲痛な表情が私の視界に入った。


「その夢を叶える代価として兵藤一誠を討伐する事が何よりも可笑しいと俺は思う!違うか、

 サイラオーグ・バアルよ!」


「・・・・・っ」


「こんな未来を俺は望んでもいない、見たくもなかった・・・・・。未来はきっと明るく、

 子供たちが笑顔で暮らせる未来だと信じていたのに・・・・・残念だ」


若いサイラオーグに絶望したと表情をされてサイラオーグは何も言えなくなった。


「・・・・・」


不意に若いサイラオーグの肩に手を置く人物がいた。


「・・・・・」


自分の肩に触れる謎の人物に若いサイラオーグは身体を謎の人物に向けて頭を下げた。謎の人物は首を横に

振った。まるで「気にするな」と言った感じで・・・・・。


「貴方は・・・・・誰なの?」


静かに問う。謎の人物は私の質問に応えようと仮面とフードを取り払って素顔を私たちに見せてくれた。

そして、この場にいる全員が驚愕の色を染めあげた。


「そんな・・・・・なぜ・・・・・どうして・・・・・貴方が・・・・・貴方が・・・・・!」


「俺は―――幽幻龍騎士団の兵藤一誠だ」


貴方が此処にいるの―――兵藤一誠!



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