小説『ハイスクールD×D改』
作者:ダーク・シリウス()

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別れ、そして―――



戦い決着が尽き一誠は貂蝉たちと共にアグレアスドームに戻った。死んだ成神をリアスの前に投げ放つとヨロヨロと近づき触れる。


「・・・・・イッセー・・・・・・」


『・・・・・』


一誠はそんな彼女を一瞥すると一瞬の閃光が放ち一誠が2人に戻った。すると、一誠がこの時代の一誠に顔を

向けて首を傾げて口を開いた。


「なぁ、どうして俺たちは1つに成ったんだ?」


「同調、共鳴、他にも色々と可能性はあるが・・・・・過去のお前とこの時代の俺が同じ存在だからじゃないか?」


「もう一度やったらどうなるんだろうな」


「流石にもう無理だろう。―――悪魔に対する負がもうスッキリと無くなったからな」


「・・・・・そう言えば、悪魔に対する負の感情があまり無い・・・・・」


「あの呪文は悪魔に対する負の感情を糧にして発動が出来るもんだからな。俺も過去に一度だけ使った事が

あるが・・・・・流石に二度も使うと無くなるか」


「そうか・・・・・じゃあ、この時代のグレモリーに対する感情は何なんだ?」


「哀れだな。愛しい男を亡くした女を見ると不憫に思う」


「・・・・・何ですって・・・・・」


瞳を濡らしたままギロリとリアスはこの時代の一誠を睨む。


「お前たちのお陰でお前たち悪魔に対する負の感情がもう無くなった。もう、お前たちに憎む事も、

恨む事も無いだろうさ。あー・・・・・スッキリした感じがするぜ」


「―――――――」


オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!


リアスの身体から滅びのオーラが迸る。散々、冥界を滅茶苦茶にして家族を、仲間を殺し、

愛しい男を殺してスッキリしたと言う男に激怒した。


「だが、お前が哀れに思う・・・・・。まあ、どうでもいいことだ」


「・・・・・い」


「ん?」


「私は・・・・・私は・・・・・貴方を・・・・・許さない・・・・・!」


立ち上がり身体を震わせながら言い切った。そんな彼女にこの時代の一誠は嘆息して頭を抑える。


「お前がどう思うが俺には関係ない事だ。こっちは目的も果たした。もう、この世界とお前には用が無い」


「――――――――」


「ああ、それと悪魔はまだいるかもしれないぞ?もしそうなら良かったじゃないか、お前が魔王として

纏め上げてやれば力が無い悪魔にとっては―――」


「滅びなさい!」


膨大な滅びの魔力がこの時代の一誠に放った。黒い籠手を装着して前に突き出す。


パキィンッ!


「無理だって、お前には俺を殺す事は不可能だ。諦めろ」


滅びの力を無効化にして一誠はつまらなさそうに呟く。その言動に更に怒り、


「黙りなさい!許さない、許さないわ!私は貴方を絶対に許さない!」


次々と放つ滅びの力。だが、無効化され続けて一誠を消滅する事はできないでいる


「私の仲間を、家族を、イッセーを殺した貴方には絶対に―――」


「じゃあ・・・・・小猫、ゼノヴィア、ロスヴァイセ、ソーナ、真羅、ヴァイラ、他の奴等の気持ちは

どうだったんだよ?俺や仲間がお前等に殺されて、彼女たちは俺や、仲間を失ってどうだったんだよ?

心にどんな思いを秘めていたのか分からないお前じゃない筈だ」


この時代の一誠にそう指摘された瞬間、目を見開き滅びの力を放つ事を止めた。


「今のお前の感情は俺が愛した彼女たちと同じ気持ちだ。分かるか?俺に対する憎悪、怒り、悲しみ、

恨みを向けるように小猫たちもお前たちにそんな感情を向けていたんだぞ」


「わ・・・・・た・・・・・し・・・・・は・・・・・」


「・・・・・俺たちの復讐は果たした。もう二度と俺たちと会う事は無いだろう」


―――アグレアスドームに巨大な魔方陣が現れた。すると過去と未来の幽幻龍騎士団が次々と消失する。


「己の行動に後悔しながら死ね」


「じゃあな、この時代のグレモリー」


2人は手のひらから滅びの魔力を放ってリアス・グレモリーを―――。


―――真魔



冥界から戻るとこの時代の幽幻龍騎士団が再び復活して改めて喜びを噛みしめる。一誠や各両親に抱きつき

泣き付き、喜ぶ。その様子を過去の幽幻龍騎士団が静かに見守っている。


「やっと終わったねー」


「そうだな。過去でもこんな未来に成らないように一応は気を付けよう」


「でも、邪龍たちと出会っても仲間にするんだよね?」


「死んでも死なない奴もいると分かった上に強力なドラゴンだぞ?俺達以外で勝てる奴がいると思うか?」


「あはは・・・・・いないね、うん」


思わず苦笑いをする和樹にヴァーリは口を開く。


「俺はもっと強くなりたいな。未来の娘があの姿に成れたんだ。まだまだ強くなれると分かって嬉しいぞ」


『優先的にケツ龍皇と呼ばれないようにしてくれ。それが私の心からの願いだ』


「・・・・・分かっているよ」


「サーゼクス、セラフォルー、サイラオーグ。この未来に来てどうだった?」


「ああ、色々な意味で勉強になった」


「過去に戻ったらこの時代のようにならないように頑張らなきゃ!」


「息子が魔王に成る事も知れて嬉しかったよ。過去に戻ってミリキャスが大人に成って魔王に成るまで

見守る事が更に楽しみに成ったよ」


「それと、貴方たちに恩を仇で返さないように気を付けます。・・・・・リアスが帰国したら必ず

言いつけますので・・・・・」


「ああ、よろしくな」


グレイフィアが真剣な表情でそう言った。幽幻龍騎士団の力を改めて思い知った過去の魔王たちにとって

絶対に成ってはならない未来を回避すべく心から恩を仇で返す事だけはしないようにしようと決意した。


「・・・・・過去の俺」


そこにこの時代の一誠が近づく。一誠の前に佇むと頭を下げた。


「改めて礼を言う。ありがとう、クロノスたちに力を貸してくれて・・・・・」


「顔を上げてくれよ。未来の俺、俺たちは俺たちだろう?力を貸すのは当然だ」


「・・・・・そう言ってくれるとこっちも嬉しいな」


「それにこっちも色々と勉強になった上に色々と知れて良かった。クロノスたちの事も、この未来の事もな」


「そうか・・・・・そうだ、何か礼をしないとな。お前たちには借りを作った。その借りを返させてくれるか?」


「いや、良いって。気にする―――」


「返さないまま過去に戻ったら俺も過去に行って借りを返さないまでずっと居座るぞ」


「・・・・・」


もの凄い眼力で睨まれて一誠は改めて「こいつはやっぱり俺だ・・・・・」と思った。


「ん・・・・・じゃあ、俺の言う事を聞いてくれるか?出来る範囲で」


「ああ、男に二言はない」


「じゃあ・・・・・」


周りに聞こえないぐらいにこの時代の一誠に耳打ちする―――その瞬間、目を見開いた。


「・・・・・お前」


「出来る範囲だろう?」


「確かにできるけど・・・・・」


「男に二言はない筈だぞ。未来の俺」


「ぐっ・・・・・分かったよ・・・・・はぁ・・・・・」


溜め息を吐くこの時代の一誠に周りは首を傾げて不思議そうにする。一体どんな事を言ったのだろうと。


「そう言えば、グレンデルたちはどうするんだ?」


「当然、俺の中にいてもらうさ」


一誠がこの時代の一誠にそう聞くと身体に宝玉、影から大蛇が出てきた。


『けっ、お前が甦ったんだからしょうがなねぇからな。あー、自由に成れると思ったのによ!』


『自由に成って何処かで暴れたら戻されるのがオチだからな』


『今回は思う存分に楽しめた。過去の兵藤一誠、感謝するぞ』


『そうだな、お前には色々と感謝する』


『本当にありがとうねー!』


『過去の主、ありがとうございました』


『この恩を一生忘れないぞ』


「ははは・・・・・こっちもありがとうな」


各ドラゴンたちに感謝されて一誠は苦笑を浮かべる。そして、一息すると一誠は口を開く


「さて、そろそろ過去の時代に戻りたい。帰らせくれるか?」


「もう帰ってしまうのか・・・・・?」


「ああ、クロノスたちの願いは果たしたし」


「・・・・・そうか、もっとお前と話しかったがな」


「だったら過去に来いよ。この未来が変わらない程度なら行動が出来るだろう?」


「それはそうだが・・・・・」


「もしかしたら今度は俺たちがお前たちに頼る事があるかもしれない。その時はお前たちの力を貸してくれるか?」


「それは当然だ。俺たちは幽幻龍騎士団、過去でも未来でも俺たちは俺たちだからな」


力強く首を縦に振った。その言動に一誠は頷く。この時代の一誠はクロノスに手を招く。


「クロノス、過去の一誠たちを元の時代に送ってくれ。ちゃんとこの時代に連れてきた日日と時間にな?」


クロノスは頷き、足下に巨大な魔方陣を展開した。


「またな!過去の幽幻龍騎士団!クロノスと一緒に遊びに行かせてもらうぞ!」


「僕たちは同じ幽幻龍騎士団!」


「最強の組織であり!」


「無敵の勢力!」


「俺たちを甦らしてくれて本当に感謝する!」


「この恩は一生忘れない!」


「じゃあなあ!」


「またねぇ!」


手を振り、過去の幽幻龍騎士団を見送る。一誠たちも手を振り返事をする。過去と未来。それぞれの時代が

違うが、想いは同じ。仲間を大切にし、家族を愛し強くなる幽幻龍騎士団。魔方陣がより一層に輝き、

一瞬の閃光が放った―――次の瞬間、二つの影が飛びこんだ。


「「「・・・・・えっ?」」」


過去と未来の一誠、クロノスが唖然として呟くが魔方陣は過去の幽幻龍騎士団を元の時代に行く為に時空を

超えて消えた。


「・・・・・おい、クロノスと一緒に向かった奴は誰だ・・・・・?」


「え、えっと・・・・・あそこでショックを受けているヴァーリと未だに手を振っているメイビスさんの・・・・・」


「・・・・・」


「・・・・・」


「・・・・・真剣と書いてマジで?」


「・・・・・うん、真剣と書いてマジだよ」



―――次元の狭間



カッ!


巨大な桜の木の近くに魔方陣が現れた。一瞬の閃光が弾けたと思えば幽幻龍騎士団とクロノスが登場した。

しかし、若干数が多かった。


「・・・・・出迎えに一緒に来たのか?」


「違う」


「はい、違います」


「・・・・・えっと、じゃあどんな理由で俺と一緒に来たんだ?―――ルシフェル、クシュリナ」


「「過去に戻って住んでみたかった。ただそれだけ」」


「・・・・・それ、お父さんたちは知っているのか?」


「アルビオンを返して『過去に戻ってお前と離れて暮らす。ケツ龍皇の娘と言われていないあの時代で

暮らすからさようなら』と言って来た」


「お母さまにキチンと説明して来ました。許してもらえましたので大丈夫ですよ」


「・・・・・お父さんには何も言って来なかったのかよ、クシュリナ」


「だって、言うと絶対に反対しますよ?なら、言わないで言った方が良いに決まっています」


「・・・・・そうだった。こいつらは問題児だったんだ・・・・・」


「お、おい・・・・・クロノス・・・・・?」


二つの影の正体・・・・・未来のヴァーリとメイビスの娘であるルシフェルとクシュリの言葉に頭を抱える

クロノスに一誠が心配そうに話し掛ける。


「・・・・・あー、この時代のお父さん。悪いけど・・・・・この2人をその・・・・・住まわせてくれないか?」


「・・・・・はっ?」


行き成りの申し出に一誠は唖然とする。だが、申し訳なさそうにクロノスは口を開く。


「この2人は俺たちの中で色々と大変な奴なんだ。しかも言った事を曲げない。良い方で言えば真っ直ぐで、

悪い方で言うと頑固な2人なんだ」


「「自覚している」」


「「「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」」」


「お父さんには俺から何とか説得する。今頃、慌てているだろうなぁ・・・・・」


そう言ってクロノスは手を振りながら魔方陣を展開して未来に帰って行った。


「「「「「「「「「「(・・・・・もしかして、面倒事を押し付けられた・・・・・?)」」」」」」」」」」


幽幻龍騎士団は思わず心の中で同じ想いを呟いた。


「えっと、クシュリナです。未来では大変、お世話になったので私たちもその返しに色々と頑張って恩を

返します。皆さん、よろしくお願いします」


「過去のケツ龍皇がまだ広がって呼ばれていないこの時代に住みたいと思って来た。クシュリナ同様、

恩を返すためにこの時代の幽幻龍騎士団に協力する。よろしく頼む」


ペコリと未来に帰る気はないとした態度で一誠たちにペコリと頭を下げた。


「「「「「「「「「「(・・・・・マジで・・・・・?)」」」」」」」」」」


―――未来の真魔


「クロノスゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!」


「言いたい事は分かるから俺をシェイクしないでくれええええええええええええええええええええええッ!」


未来に帰った途端に父さんに肩を強く捕まれ前後に揺さぶられた!


「どうして、2人を連れて帰って来なかったんだ!?」


「しょうがないだろう!?2人は父さんより頑固だって知っているだろう!どうやって連れて帰れと

言うんだ!クシュリナはメイビスのお母さんが言えば何とかなるけどルシフェルは誰も言う事を聞かないんだぞ!?」


「なら、また過去に行くぞ!メイビスと一緒に!」


「嫌だ!俺は疲れた!過去ってそう簡単に行けるもんじゃないんだぞ!?しかも、人数によって

使う魔力も違くなるし今の俺の魔力は空っぽだ!」


「オーフィスから魔力を貰って行けばいい!」


アンタは鬼か!?俺たちの事を心から愛してくれるのは良いけど度が過ぎる!ヴァーリのお父さんは

シクシクと泣いている!?過去のヴァーリのお父さんとは思えないよ!


―――ゴツンッ!


「ごっ!?」


「全く・・・・・死んでもお前は子供に関わるとサーゼクスとセラフォルー以上の親馬鹿か・・・・・」


「お、お母さん・・・・・」


お父さんの頭に思いきり殴った。真龍の拳ってかなり痛いんだよなぁ・・・・・お父さんが頭を押さえて蹲るほどだ・・・・・。


「二度あいつらと会えない訳ではなかろう?なら、この成長を見守るのが親の務めではないのか?」


「うぐ・・・・・そ、それは・・・・・」


「分かっているのならあいつらは放っておけ。あいつらは何時までも子供ではないのだからな。それで、

お前は過去の一誠になんて言われたんだ?」


「・・・・・ああ、『このまま放っておいたら世界が大変な事になるだろうから元に戻してくれ』と言われた」


「・・・・・そう言う事か」


お母さんが苦笑を浮かべ出した。何だろう?と首を傾げるとお母さんが口を開いた。


「この意味を理解しないのならクロノスも過去の時代で学ぶべきかもしれぬな?」


「・・・・・?」


「いや、この時代ではもう戦う事はないだろう・・・・・クロノス、お前も過去の時代で戦いの経験を

積んでくるべきか・・・・・?」


あれ、何か・・・・・雲行きが怪しくなったような・・・・・。


「それじゃあ・・・・・やるとしますか。―――禁手」


お父さんが『無限の創造神龍観音』に成った。すると『命』の宝珠が光輝いた。

・・・・・あっ、そう言う事か。俺は過去のお父さんがお父さんに頼んだ事が今気づいた―――。


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