小説『真剣で私たちに恋しなさい!』
作者:黒亜()

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「俺はマロード。お話をしようか。」

「マロード?誰それ?っていうか、いきなりなんなのよ。」


一子はいきなりの事態についていけず、疑問を口に出す。
だが、それはここにいる誰もが同じだった。
ただ言葉として発していないだけ。
そんななか大和は…


(マロード…どっかで聞いた名前だな。)

「あれー?俺、知名度低い感じかな?んじゃあ、これ見てもらえれば少しは
分かってくれるかな。」


すると、画面が砂嵐から1枚の写真に切り替わる。
そこにはよく見た白い粉の入った袋。


「これは…!」

「これって…ユートピア!?」

「そうそう、大正解。いいでしょ、これ。」

「あ!そういや、ゲンさんが言ってた。不確定な情報だけど、ユートピア事
件を裏で取り締まってる奴にマロードっていうのがいるって。実在したって
いうことか!?」

「おぉー、思い出してくれた?それ俺だよー、俺俺。やっぱ知れ渡ってたかー、
俺ってば有名人だから。」

「なんで、その正体不明を守りたいマロードが俺らに直接コンタクトなんて
取ってくるんだ?」

「いやー、俺もこんなつもりじゃなかったんだけどさー。ちょっと計画が変
わってね…(彼のせいで。」

「変わった?」

「ああー、こっちの話こっちの話。それよりさー、ユートピア今すごい流行
ってんだよねー。他にも泡吹いてる愚かな女生徒の画像とかもあるけど…」


バン!

机を叩く音が響く。


「くだらない話をダラダラするな。こんなことを話すために通信を入れてき
たんだったら、さっさと切れ。本題がない話を聞くほど、私は気が長くない。」


痺れを切らして、声を荒らげたのは百代だった。
終始ふざけた態度で悪事を語るマロードに憤りを感じているのは、誰もが同
じ気持ちであった。
なので、クリスもそれに続く。


「確かにそういう話を続けられるなら、こちらが不愉快だ。大体、お前がこ
ちらに用はあるのか?」

「そんな怒んないでよー。俺だって用件もなく、こんなことするわけないで
しょー。」

「だから、それを早く言えと言っているんだ!」

「もうせっかちだなぁ。じゃあ、お望みの本題をしようか。」


一旦、マロードは言葉を切る。
そして、機械的な声で続けた。


「例えば、そうだなー……流川海斗のこととか…」

「海斗はどこにいるの!」
「海斗はどこにいるんだ!」
「海斗さんはどこにいるんですか!」


一子、クリス、由紀江の声がぴったりと重なる。
恐るべき瞬発力でマロードの言葉に反応した。
彼女たちにとって、まさに今一番求める情報だ。
全員が一様に身を乗り出していた。


「いきなり元気になったねー、ちょっと現金すぎやしないかい?」

「海斗に会ったのか?」

「海斗さんは無事なんですか?」

「海斗について何か知ってるなら、なんでもいいから教えて!!」

「焦らない、焦らない。そんなに食い気味で来られたら、逆に教えたくなく
なっちゃうじゃん。」

「ふざけるな!」

「冗談冗談。流川海斗の情報が欲しいなら、今日の夜この場所に来なよ。」


そこでまた切り替わる映像。
映されたのは一枚のビルの外観の写真とその住所だった。
ビルといっても、治安の悪いところにある廃屋といったほうが正しい。


「そしたら教えてあげるよ、彼のこと。」

「そんなことをして何になる?お前にメリットはないはずだ。」


冷静に大和が指摘する。


「あー、やっぱり気づいちゃうか。そう、勿論ただじゃない。このユートピ
ア一連の事件を警察に言ったりしないでほしいんだよね。」

「流石のマロードも警察にはお手上げか?」

「いや、まあ捕まるなんてありえないんだけど、いない方が楽なのは事実だ
しね。」


あくまで軽い口調で言う。


「来る来ないは君たちの勝手だよ。夜までじっくり考えてよ。じゃーね。」

「ちょ、ちょっと!」


一子の叫びも空しく、通信は途絶えた。


「…クッキー、盗聴器とかはついてないか?」

「今現在、電波の受信反応はないよ。こっちの情報が漏れることはないから、
大丈夫。」


大和の考えを汲み取り、答えるクッキー。
大和は頷き、話しはじめた。


「今の話は明らかに都合が良すぎる。警察を恐れてるなら、そもそも俺たち
に接触してこない。そして、時間と場所を指定してきた。十中八九、待ち伏
せされてると考えて間違いない。そのうえで意見を聞きたい。それでも、こ
の場所に行くか?」

「……………………」


軍師の説得力ある言葉に黙る一同。
意外にも最初に口を開いたのは、控えめな由紀江であった。


「私は大事な仲間の皆さんを危険と分かっているのに、行くことは賛成でき
ません。ですが、海斗さんは私の初めての友達…私に勇気をくれた大切な人
です。だから、私は行きます!」

「それなら、自分も同じだ。自分も海斗のことを知りたい。」

「アタシも同じよ。」


クリスと一子もすぐに続く。


「だってよ、大和。俺たちファミリーはいつも一緒、集まりゃ無敵だ。仲間
が助けたいっていうなら、全員協力で決まりだぜ!」


リーダーである翔一が宣言する。
それを見て、当然のように大和は言った。


「ああ。じゃあ早速作戦を説明する。」

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