小説『真剣で私たちに恋しなさい!』
作者:黒亜()

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全員の心が1つに団結した日。
そこからの時間は凄まじかった。


「まずは姉さんの穴を埋める戦力差の確保だ。流石に最強が欠員だと厳しい
ものがあるけど、別に俺たちは姉さんがいるから無敵なんじゃない。皆で力
を合わせるから無敵なんだ。それを見せてやろうぜ。」

「ああ、いっつもモモ先輩が活躍しちまうからな。たまには俺様の一人舞台
も悪かないぜ。」

「ちょっと、ガクト聞いてた!?皆で力を合わせようって言ってるのになん
でワンマンショーになってるのさ!」

「ずるいぞー、俺も前線で活躍するんだー!」

「お前ら…すまないな。あの頑固ジジイ…私はやってないと言っているのに、
誤解は解けそうにない。無理矢理封印を破壊することも出来るんだが、そん
なことをしたらジジイの命がないとか脅してきやがった。」

「大丈夫だ。姉さんがそこまで言うんだ。俺たちはやってないって信じてる
ぜ。まあ、学園長も総代としての立場があるんだろ。」

「アタシからも説得してみるけど、難しいかもしれないわ。人水母を使える
のは、お姉さまとじいちゃん、あとは釈迦堂元師範代くらいだもの。」

「釈迦堂さんか…」

「そういえば、あの全身フードの声は釈迦堂さんっぽかったかも。」

「確かにそれなら全ての辻褄が合うな。何より人水母を使って私に罪を着せ
ることで、じじいたちに粛清を促す。なるほど、私の強さと川神院の性質を
よく知った釈迦堂さんらしい作戦だ。」

「どちらにしろ、モモ先輩の回復は見込めないってことですね。」

「それでも、そこら辺の格闘家よりかは全然強い。流石モモ先輩…」


京が呟くがまさにその通り。
百代は拳を封印されたにも関わらず、その力は武器を所持しないクリスと互
角ぐらいにまで及んでいた。
充分に強いのだが、そこはやはり元が武道四天王でもトップクラス。
被害が痛手であることは明白だ。


「さて、話を戻そう。戦力差を埋めるっていうことについてだが、質より量
の作戦でいこうと思う。そもそも、姉さんの代わりになるような人はそうい
ない。だったら、数で埋めてしまうのが一番手っ取り早い。」

「でも、警察ってわけじゃないよな。」

「ああ。流川海斗の情報料が警察に伝えないこととか言ってたが、あのビル
に罠を張ってた時点でその約束は反故になったも同然。だけど、俺たちは流
川があっちに付いてると聞かされて、通報できない状況になってる。全部、
相手の狙い通りなんだろう。」

「だよなー、国家権力が頼れないとなると…」

「人脈をフル活用しようと思う。勿論、日頃広げている俺の人脈もだけど、
他の皆も協力してくれるような人が知り合いにいたら、力を貸して欲しい。
あとは街の人たちにも呼びかけて、そういうことがあるのをあらかじめ知っ
ておいてもらおう。」

「ごめん、大和。」

「いや、人脈に関しては最初から京には期待してないから…」

「私、ちょっとこの前お友達になった総理に相談してみます。」

「自分もマルさんや軍に協力してもらおう。」


各々が自分の人脈で貢献しようとする。


「そして、マロードの正体か…」

「実はそれについては大体目星がついてる。」

「何!?本当か?」

「流石、軍師ねー。」

「まず、全員が分かってると思うが、巧妙な作戦の数々。頭が良くないとこ
んなことは出来ない。」

「ふむふむ。」

「次に全身フードの男が襲ってきたときのことを覚えているか?あいつが現
れたときに言ってたことを。」

「確か、“バンダナの男”とか言って、キャップを狙ってきたな。」

「そう。あいつは標的を知らない全身フードの男に“バンダナの男”と特徴
を教えて狙うように指示したんだ。こっから分かるのは、相手はキャップの
容姿を知っていて、なおかつ真っ先に狙わせるようなファミリーの要だって
ことも分かってるってことだ。」

「つまり、川神学園の関係者ってことでしょ?」

「え?え?どういうこと?」

「ワン子考えるな、知恵熱でオーバーヒートするぞ!」

「そして、流川が学校に来てたときのことを思い出してみろ。2−Sの榊原
小雪がいきなり懐いてただろ?あんな謎に包まれた女と仲良くなるなんて、
そう簡単なことじゃない。」

「それがどうしたの?」

「よく考えてくれ。ヒントは出揃ってる。頭が良い、川神学園、榊原小雪、
これらのキーワードから連想されるのは1人しかいないんじゃないの?」


全員が顔を見合わせる。


「「「「葵冬馬!!」」」」

「まあ、あくまで予想にすぎないんだけどさ。でも、これだとユートピアを
手に入れてるのも説明がついてしまう不思議。医者の息子だったら入手ルー
トには苦労しないだろ。」

「見事に上手くいくな。」

「まあ、この一週間で裏は取るさ。それで最後に当日の役割分担だ。」


真剣に大和の話に聞き入る。


「京は暴動の鎮圧に参加してくれ。遠距離攻撃はフォローになりやすい。ガ
クトなんかをしっかり守ってやってくれ。俺とクリスとワン子は敵の本拠地
に乗り込む。どんなことにも対応できるように軍師の俺と柔軟性のある二人
が行動を共にする。板垣三姉妹とかも出来れば、俺たちで対処するのがベス
トだ。その他、ファミリー以外の協力者も含めて、役割は考えていくが…」


そこで一旦区切り、由紀江のほうを向く。


「正直、流川に対応できるのは今のメンバーじゃまゆっちだけだ。街をまわ
って見つけ次第流川を倒す重要な役…やってくれるか?」

「はい!!」


由紀江は間髪いれずに気合いの入った声で答えた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そして、カーニバル当日。

―風間ファミリー


「よし、準備は万全だ。崩してやろうぜ、カーニバルを!!」

「「「「おーーー!!!」」」」


―チャイルドパレス


「いよいよですね、地獄をみせてあげますよ…ふふふふ、はっはっはは。」

「トーマ……」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ん?メールか…」


メールを開く。
そこには…

“トーマを助けて。”

ただ一文。


「…背負うって約束したからな。」


俺は立ち上がり歩き出す、外へと。

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