小説『真剣で私たちに恋しなさい!』
作者:黒亜()

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Side 大和


正直なことを言うと、目の前で何が起こっているのか分からない。
流川が強いというのは一子やクリスにも嫌というほど自分の自慢話のように
聞かされたし、この目でも何回か確認している。
それでも今回の相手は厳しい戦いになるというのは流石に感じた。
1人は元川神師範代だという姉さんクラスにも感じられるほどの男。
もう1人は突然覚醒したかのように力に目覚め、見た感じこっちもパワーで
考えると姉さんに負けていない気がする。
そんな相手との二対一。
腕の立つ不良100人相手の方がまだ楽な気さえする。

だが、あいつはいつもこっちの考えなんか裏切ってくれる。
圧倒的不利な戦いを互角以上で進めて、遂に1人を撃破してしまった。

…まあでも、抱きつくとかいう突飛な行動は予告しておいてほしい。
こちらの女性陣がそれを見て、驚きとか羨ましいとか色々な感情を経た結果、
なんか殺気立っている。
怖いです、真剣で。

それでも相手の女が倒れて、抱きつきが何らかの攻撃手段だったと分かると、
二人も安心したのか平和が戻ってきた。
残りは釈迦堂とかいう相当強い人物。
流川が真正面からにらみ合っている。
それを見て、俺は口を開く。


「九鬼、用意しといてくれ。」


それは直感だった。
次で勝負がつく。


Side out


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


(まずいな…)


釈迦堂は目の前の敵を見据える。
リスクが高いだけだと避けられてきた気の吸収。
特に釈迦堂のような強者なら自分の力でケリをつけたほうが早い。
何も相手の力に頼ってまでそんなことをする必要はないのだ。

しかし、こうして使える奴がいたというのは予想外だった。
自分では先述の理由で要らないと思っていても、敵に回すというのは話が違
ってくる。

なにせ相手の気を吸い取った分、丸々気の量は増えているのだ。
本来、それが上手くいかないから使わない奴が大半なのだが、目の前の海斗
に特に苦しんでいる様子はない。
もし、表に出していないだけだとしても、それを隠しとおせているだけで他
人の気を使うのに何も問題はないだろう。


(次の一手は確実にかわさなきゃやべぇ一撃だ。)


今加算された気が全てこもった究極の一撃。
いくら釈迦堂が自分の強さに自信があっても、戦闘続行は不可能だと冷静に
予想できた。
それだけにこちらから仕掛けることも出来ない。
先制できればいい、なんて賭けは行えないのだ。
避けることのみに全神経を集中させなければならない。


(何の攻撃できやがるんだ…)


釈迦堂は今までの自分の行動を初めてラッキーだと思った。
というのも、相手は自分の攻撃をコピーしてくる。
出してくる技が多岐にわたれば、当然読みにくくなるが、今までに釈迦堂は
警戒していたおかげで使った技は2つのみ。
リングと無双正拳突き。
選択肢が2つだけだというのに加えて、自分が比較的慣れた技。
どちらが来ても、避けられないことはない。


「いくぜ…」


海斗が一気に向かってくる。
速度には気をあまり使ってないことを見ると、釈迦堂が迂闊に攻撃できない
事情を知って、次の一撃に全てをこめるつもりだからだろう。


(どっちだ!リングか…無双正拳突きか…)


近づいてきたからといって、安易にリングの可能性は捨てきれない。
この攻撃さえかわせば、すぐに反撃が出来るのだ。
そして、釈迦堂は見極めた。


「ガッ……ハッ…」


そう確実に見極めた。
だが、海斗の拳が釈迦堂の腹に突き刺さる。
見極めたのに反応が出来なかったのだ。
それは待ち構えた技のどれとも異なったから。
放たれたのは予想外なのによく知った技だった。

―川神流 蠍撃ち

リングや無双正拳突きとはもはやレベルが違う。
まさに基礎の技。
それでも釈迦堂に避ける術はなかった。
使っていないはずの技。

同じ技でも使う者によって、フォームも癖みたいなものもある。
無論釈迦堂も使えるが、海斗と同じ動きではないだろう。
しかし、今の蠍撃ちには既視感があった。
懐かしい気さえするその面影。
意識が落ちていく最中、ちらりと一子の方を見る。


(本当にお前は昔から癖が直ってねぇなぁ…一子…)


釈迦堂はそこで倒れた。


「冬馬!」


九鬼英雄が叫ぶ。
これでカーニバルも終了だ。



―京たちの地点


「九鬼従者部隊参上!さっさと狂った製品を回収するよ!」


あずみ達のメイド部隊が京たちを援護し、マガツを倒していった。


―秘密基地前


「はぁ…瞬間回復ないと疲れるな…」

「ふん、情けない…封印されたらその程度か…」

「お前もへとへとだろう…」


百代とマルギッテの周りには賞金のかけられた風間ファミリーの本拠地を狙
ってきた不良たちが堆く積みあがっていた。



―チャイルドパレス


「モロから通信で街全体でカーニバルが収束に向かってるってよ。」

「こちらも終わったしな。」


クリスの言うとおり、こちらも英雄の説得で一段落ついたところだ。
長かった戦いも終わりを告げる。
一子も喜んでいたが、ふと周りを見渡すと…


「あれ?海斗…?」


どこを見ても、海斗の姿はそこになかった。

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