小説『ドラゴンクエスト―ダイの大冒険― 冒険家の歩き方』
作者:amon()

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転生!新たな世界へ!!!の巻



「あれ?生きてる?」

 俺は確か、大学の帰りに交通事故にあったはずだ。道を歩いていたら、いきなりトラックが突っ込んで来て轢かれたんだ。

 ヤバい!とは思ったけど、同時にああ終わったな……と冷静に考えていたのも覚えている。

 覚えてるのはそこまで――気が付いたら、このフワフワと宙に漂ってる状態……っていうか、なんだこの白い空間?温かくて気持ちいいけど……。

「ここはあの世とこの世の境目じゃ」

「おわっ!?」

 いきなりの声に振り返ると、なんか木の杖を持ったローブを深くかぶって顔を隠した人?がいた。

「どちら様で……?」

「わしはあの世への案内人じゃ」

 う〜ん、声からすると男……しかも爺さんみたいだな。

 だけど、あの世への案内人って事は……やっぱり俺は死んだみたいだな。

「……そうですか、分かりました。じゃあ、あの世に連れて行って下さい」

「随分と落ち着いとるな、おぬし。若いのに潔い事じゃ」

「だってジタバタしても生き返れる訳ないですし、未練も悔いもないですから」

 大学生活も慣れてきて友達もそれなりにいたし、両親にも散々世話になったけど……正直、退屈だったからな。少し勉強して、漫画を読んだり、ゲームをしたり、学校に通って友達と駄弁ったり……平和で普通で、でも平凡で浮き沈みのない日常。

 勿論、それが本当は尊いものだって言うのは頭では理解しているが、俺としてはもう少しハラハラドキドキする冒険があっても良かった。

「ふ〜む、過去に未練なしか。それは好都合じゃ」

「好都合?」

「うむ。わしはおぬしを転生させる為に、やってきたのじゃ」

「転生?」

 それって普通の事なんじゃ……?輪廻転生って言葉もあるぐらいだし。

「おぬしが考えておる輪廻転生とは違うぞ。あれは魂をサラに戻してから新しい命に生まれ変わる転生じゃからな。おぬしは特別じゃ、記憶・人格をそのままに転生させてやる」

「え、マジですか!?そんな事して良いんですか?」

「そのぐらいの裁量は神より与えられておる。理由は……まあ、気まぐれじゃな。無論、最終的に決めるのはおぬしじゃ。おぬしが普通の輪廻転生を望むなら、その通りにする」

 これは……ネットで良く読んでた2次創作の転生物と同じ状況じゃないか!それは願ってもない事だ。しかし、転生させてくれるのは嬉しいが、2つ気掛かりな事がある。

「あの、転生させてくれるって……どんな世界にですか?あと、人間ですよね?」

 また日本みたいなダラ〜と平凡な世界は嫌だ。少なからず冒険がしたい。それに動物や虫や植物に転生なんかした日には、記憶や人格を持っている事が逆に仇になる。

「安心せい。ちゃんと人間に転生させてやるわい。それに、世界についてもおぬしの望みに叶うはずじゃ」

「本当ですか?で、どんな世界に転生するんですか?」

「それは、先ずおぬしが特別転生をするか否かの答えを聞かねば教えられん。知ってから『やっぱり辞める』とか『やっぱりやる』なんて調子のいい事を言う輩は、わしは嫌いじゃからのう」

「なるほど……それはそうですね」

 転生させてくれるチャンスをくれただけで、充分に好待遇なのに、自分が嫌な世界だからって態度を変えるのは……確かに嫌な感じがするか。

 う〜ん……世界の事が分からない不安は確かにあるが、可能性があるならそれに賭けてみるのも悪くない。どうせ、冒険を求めていた訳だし……うん!決めた!

「転生します!だから、どんな世界に行くのかを教えてください」

「本当に良いのか?おぬしがその世界の事を知っておるかどうかは責任持てんぞ?」

「構いません。だから、教えてください!」

「ファイナルアンサー?」

「ファイナルアンサー!」

「…………」

「…………」

「……よし!ならば教えよう!」

 クイズミリ○ネアかい!?もしかしてこの案内人さん、地球のテレビ番組とか見てるのか?実は暇なのか?

「おぬしが転生するのは『ダイの大冒険』という漫画の世界……まあ、厳密に言うとソレそのものではないんじゃが、限りなくソレに酷似した世界じゃ」

「ダイの大冒険……?」

「知らんか?ドラゴンクエストというゲームを題材にした漫画じゃ」

「ドラクエは知ってますけど……う〜ん」

 言われてみれば、昔、ジャンプにそんなタイトルがあった様な無かった様な……俺、愛読の漫画以外は特集ページとかも読み飛ばしていたからなぁ。

「どうやら知らんらしいな。まあ、それも良かろう。まあ、あの世界なら冒険には事欠かんじゃろうし、魔法や闘気なんかもあるから、楽しめると思うぞ」

「だったら問題無しです!ありがとうございます!案内人さん!」

「よいよい。わしが勝手にやる事じゃ。あと一応忠告しておくが……分かっておるとは思うが、ドラクエの世界にはモンスターもおるし、現代地球の様に医療技術なども発達しておらん。軽い病気でも薬や治療法が無くて命を落とす可能性も十分にある。そこのところを、よ〜く覚えておくんじゃぞ?」

「はい!」

 そういうリスクはあって然るべきだ。そういうスリルのある冒険が俺はしたかった!

「いい返事じゃ。ならば、転生の詰めにはいろうかの。何かこうしたいと言う望みはあるか?」

「え〜と……」

 どうしようかな?いきなり無敵で俺TUEEEするのも悪くはないが……今一つ面白みに欠ける。やっぱり、自分で経験値を積んで強くなって、呪文や特技を覚えるのが冒険の、ドラクエの醍醐味だよなぁ。

 でも、今の俺のまんま転生したら、多分村人か……良くて商人が関の山。強くなれるポテンシャルが欲しいところだ。それに、出来るなら姿形も変えたい。

「あの、こういうのは出来ますか?ドラクエ8の主人公と同じ容姿で、基本ポテンシャルも同じで、呪文・特技も覚えられて、鍛えれば鍛えただけ強くなれる身体にしてもらうっていうのは……」

「ふむ?まあ、そのぐらいなら問題はないが……ドラクエ8なのか?あれの主人公は、顔立ちこそ整っておるが割と平凡な顔じゃと思うが……」

「だから良いんですよ。ククールみたいな美男子系イケメンにすると、多分今の俺と違い過ぎて気持ち悪いと思いますし……」

 ククールが気持ち悪いとか言ってる訳じゃない。ククールはククールでカッコいいと思う。あくまで、自分とのギャップに耐えられないだろうという話だ。

「まあ、おぬしがそう望むなら構わんがの。さて、他には何かあるか?」

「いえ、それ以外は別にいいです。後は向こうで、自分で何とかしますから」

「本当に良いのか?もう少しぐらい、望みを叶えてやれるぞ?」

「大丈夫です」

 自分で冒険して、強くなるのが楽しいんだ。その為には、これ以上何かを貰っちゃダメだろう。

「そうか。では、そろそろ転生させるぞ。もう会う事もなかろうが、向こうへ行っても達者でな」

「はい!色々ありがとうございました!」

「うむ、ではさらばじゃ」

フ……

「って……あれ?」

 さっきまでの浮いてる感覚が……なくなった!?

「あああぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜ッッッ!!!???」

 次の瞬間――俺は下に落ち、案内人さんが一気に遠ざかって行った。

「もっとマシな転生のさせ方はないんすかぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!??」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「ん……?」

 気がついて見れば、辺りは木々が生い茂る森の中だった。

「転生したのか……しかし、酷い転生のし方だったなぁ」

 いきなり落とされるなんて……まあ、無事に転生できたみたいだから、文句を言うのは止めよう。

「あっ、身体が縮んでる!?それに服も変わってる!」

 手を見れば、明らかにさっきまでの俺の手より小さくなっていた。それに服も違う……よく見てみると、ドラクエ8の主人公が着ていた服を小さくした服だ。頭を触ってみれば、バンダナも巻いてる。

 膝のところまである長い裾のくすんだ青色のシャツに黄色のコート、肩から下げた布製のバックに、背中には『兵士の剣』……身体が小さい所為で、ちょっと大きく感じる。


―――――――
????
性別:男
レベル:1
――――――――――
E兵士の剣(攻+8)
E布の服(守+4)
Eバンダナ(守+1)
――――――――――
力:8
素早さ:6
身の守り:6
賢さ:5
攻撃力:16
守備力:11
最大HP:22
最大MP:0
Ex:0
―――――――
剣スキル:0
槍スキル:0
ブーメラン:0
格闘スキル:0
冒険心:0
―――――――
????
HP:22
MP:0
Lv:1
―――――――


「ん?なんだ今のっ?」

 突然目の前に、ステータス画面みたいなのが見えた。案内人さんが付けてくれたのか?なんて言うか……不思議な感じだ。手で触ろうとしても触れないところを見ると、自分の目にステータス画面が投影されているみたいだ。

 もしかして、ゲームの様にコマンドがあるのか?


――――
道具<
呪文
強さ
――――
100G
――――


「うわぁ、コマンド画面もあるんだ……」

 話す、仲間、作戦のコマンドが無いのは多分、話すのは自分の意思で出来る――仲間の状態は自分の目で見るもの――作戦は自分達で伝え合うもの――って事だと思うが……人間の人生に、ゲームの要素を加えてるだけでかなりメチャクチャなのに、変な所で現実っぽいんだな。

「お金も少しだけ持ってるな……え〜と?」

 服を探ってみる。すると、懐に少し厚手の布袋があった。中を取り出すと、『100』と彫刻された硬貨が1枚出てきた。まるで金色の100円玉って感じだ。

「へえ、ゴールドってこんな風になってるのか。まあいいか。で、道具は何かあるのかな?」


―――――
????<
ふくろ
―――――


 カーソルを合わせて決定ボタンを押すイメージをすると、画面が切り替わった。

「ふくろ?袋なんて、財布以外に持ってないぞ?」

 自分のベルト回りや懐を見ても、それらしい物は持ってない。

 一体、何の事だろう?試しにその“ふくろ”とやらを見てみる。


―――――――――
竜神王の剣
メタルキングの槍
メタルウィング
竜神の鎧
竜神の盾
竜神の兜
ゴスペルリング


―――――――――


「な、なんだこれ!?」

 ドラクエ8の主人公最高装備が揃って入ってる!しかも、ゴスペルリングまで……これはもう、あの案内人さんの仕業に間違いないだろう。

「気持ちはありがたいんだけど……何もここまで揃えてくれなくても良いのになぁ」

 これはしばらく封印だ。こんな最強装備をいきなり使ったら、冒険の面白味が減ってしまう。特にゴスペルリングを装備したら、モンスターと戦えなくなってレベルが上がらない。この装備は、もう少し強くなってから必要があれば使う事にしよう。

 さて、もう1つの……俺の持ち物は、っと。


――――――
E兵士の剣
E布の服
Eバンダナ
薬草
案内人の手紙


――――――


「ん?手紙……?」

 なんだろうと思いカーソルを合わせようとイメージしてみたが、一向にカーソルが出ない……。

「あ、もしかしてこのバックの中か?」

 早速、バックを開けて中を見ると、そこには1枚の葉っぱと封筒が入っていた。思った通り、道具コマンドは俺の持ち物全体を表示するみたいだ。とりあえず、封筒を取り出して中を見てみる。

『どうやら無事に転生し、手紙を見つけた様じゃの。色々戸惑っておる事じゃろうから、こうして説明書きを忍ばせておいたのじゃ。もう気付いておるじゃろうが、おぬしにはゲームに近いコマンド画面投影システムを組み込んでおいた。色々と冒険の役に立つじゃろう。ただ、ゲームとは幾つか違う点があるので、それら注意点とおぬしの設定を2枚目に書き記しておく――』

 手紙の2枚目を見てみると、箇条書きで説明文が書かれていた。


1・経験値について――ゲームの様にモンスターを倒す以外でも経験値は溜まり、一定値に達する事でレベルアップする。(例:剣の素振り、筋トレ、マラソン等の修行)

2・ゴールドについて――物の売り買いに必要な通貨。モンスターを倒す事で、モンスターの強さに応じたゴールドが財布内に自動的に溜まっていくシステムになっている。ゴールド通貨は全て硬貨で、『1G』『5G』『10G』『50G』『100G』『500G』と全部で6種類存在する。財布はある一定の大きさまでしか膨らまない仕様になっている上、万が一落としたり、スリに盗られても自動的に懐に戻ってくる様になっているので、安心すべし。

3・おぬしの年齢について――初期、つまり現在の年齢は5歳としておいた。この世界は1年が360日、1ヶ月は30日となっており、1日は24時間、1時間は60分、1分は60秒、時間の感覚は地球と同じである。

4・ステータスの上昇について――ゲームの様にレベルや各ステータス数値に上限はなく、鍛えれば鍛える程上がっていく。要はカンスト無しじゃな。ただし、老化による衰えで数値が下がる事はあるので、“寿命”という限界はあると心に留めておくべし。更に、基本のポテンシャルは同じにしてあるが、どう成長するかはあくまでおぬし次第であり、ドラクエ8の主人公と完全に同じにはならない事も心に留めておくべし。

5・スキルについて――ゲーム同様にレベルアップ毎にスキルポイントが増えていき、任意に割り振る事でスキルを獲得していく。ただし、1度割り振ったスキルポイントは戻せないので注意。

6・特殊スキル『冒険心』について――本来のドラクエ8の主人公の『勇気』と同じにすると、この世界では少々問題になる為、変更した。問題の内容は説明できないので割愛する。また、幾つかの呪文・特技に関しても、同様の問題を避ける為に変更されているので予め了承してもらいたい。詳しくは次項に記す。

7・デイン系呪文の習得不可――6でも記したが、勇者ではないおぬしにデイン系呪文が使えると“勇者”に纏わる問題が生じる為、不可とした。幾つかの特技も同様。

8・新しい技や呪文の習得について――この世界の呪文は、『契約』という形で習得する。しかしこれには適正が必要である。おぬしの場合、レベルアップやスキルにより覚える以外の呪文の習得は、基本的に適正が無い為不可能。ただし、この世界には独特の“派生呪文”という物が存在する。例えば瞬間移動呪文『ルーラ』――これには飛翔呪文『トベルーラ』や合流転移呪文『リリルーラ』と言った派生呪文が存在する。これは適正を『ルーラ』と同じくする呪文の為、契約さえすれば新たに習得可能。また剣や槍の技は、よほど特殊な技術が必要でない限り、自身で練習すれば新たに習得可能。

9・技や呪文の威力について――呪文は賢さと魔力によって威力が変わってくるが、この世界の理に従う形で、基本の威力が変わっている。技も同じく力や闘気によって威力が増減する。また、消費MPについてはドラクエ8の消費量を採用する。

10・“ふくろ”について――これは、バックの中にある内ポケットを指す。生物でなく、おぬしの体積を超えない物であれば、どんな物でも無限に収納可能。内部で状態が変化・劣化する事はなく、食糧も腐る事がない。取り出す時は、頭で取り出したい物をイメージすれば取り出せる。某青狸ロボットの“不思議なポッケ”と考えれば良し。

11・名前について――現在は????となっているが、自分で自分の好きな名前を決めれば、それが登録される。1度決めると、他の名前には変えられない。ただし、偽名として名乗るのは自由。

12・回復呪文について――切り傷や骨折、体内出血などは回復呪文で治療する事が出来る。しかし、手足や指が切り落とされたりした場合、傷口は塞げても、切り落とされた部分の再生は不可能なので注意。ただし、切り落とされて直ぐであり、上手く傷口を繋げる事が出来れば回復呪文で接合する事は可能。また、疲労を回復させる事や、病気や毒による衰弱時に生命力維持する事も可能。

13・毒について――解毒呪文『キアリー』や毒消し草は全ての毒を中和できる訳ではないので注意。毒消し草はバブルスライムやポイズントード等の毒は中和できるが、強力なモンスターの毒になると毒消し草が効かない場合もある。『キアリー』は使い手のレベルによって中和できる毒の強さが変わってくる。同様に教会での解毒も神父のレベルに寄る為、いずれにせよ過信せず、毒にはくれぐれも注意すべし。

14・死亡について――ドラクエ世界には蘇生呪文『ザオラル』『ザオリク』が存在するが、肉体が腐敗したり灰になってしまうと蘇生は不可能なので注意。また、仮に肉体が残っていても死亡から丸1年が経過してしまうと、蘇生は不可能となるのでこれも注意。


「結構、細かいんだなぁ……ん?まだ続きがある……」

 読んでみると、それは案内人さんからのメッセージだった。

『ここまで書いた注意事項をしっかりと心に留めさえすれば、後はおぬしの人生じゃ。好きに生きるがええ。くれぐれも言うておくが、そこはダイの大冒険の世界に酷似した世界であり、漫画の中ではない。そして、おぬしにとっては新たな紛れもなく現実の世界じゃ。生きるも死ぬも、おぬしの行動次第じゃ。転生が済んだ以上、わしはもう、おぬしに何も干渉してやる事はできん。月並みじゃが、おぬしの前途に幸多からん事を祈っておる』

「……十分ですよ、案内人さん。どうもありがとう」

 案内人さんの気まぐれと、気遣いに感謝しつつ、俺は手紙を折りたたもうとした。と、その時、メッセージにまだ続きがあるのに気付いた。

『追伸:この手紙は、おぬしが読み終えた時点から3秒後に消滅する。では、今度こそさらばじゃ』

「え、3秒って……」

 と、戸惑っている間に3秒が経ち……

ボンッ!!

「……ケホッ」

 手紙は軽い破裂音と共に爆発し、俺は煤だらけになった……。

 最後の最後に、とんでもなく古いオチを付けてくれたよ、あの案内人さん……感謝が半分ぐらい吹っ飛んだ。

「ふぅ、さて……それじゃあ、冒険を始めますか!」

 煤を払い落し、気を取り直して立ち上がったその時――

「「「「ピキィ!」」」」

「うおっ!?スライムっ!」

 茂みからスライムが4匹も飛び出してきた。なるほど、1番最初に戦うのはやっぱりスライムなんだな。

「よし!来い!」

 俺は兵士の剣を抜き、両手で構える。少し重いが触れない事はない。

「ピキィ!」

「くっ!」

 スライムの体当たりを避ける。後ろに着地したスライムに隙が出来た。

「喰らえっ!」

 俺は持っていて剣を振り下ろそうとした――が。

「うわっ!?」

 背中に強めの衝撃を受けて転びそうになる。何とか体勢を立て直して振り向いて見れば、他のスライムが跳ねて震えていた。今のはどうやら、あいつの体当たりだったらしい。

 油断していた……相手は4匹だったんだ。

「ピキィ!」

「く、このッ!!」

 また別のスライムが飛びかかってくる――俺は咄嗟に、野球のバットの要領で剣を振った。

「ピギ……ッ!?」

 スライムは真横に真っ二つに切れて、そのまま俺の後ろに落ちる。やった、倒した……!

「……よぉし!次だ!」


 勢いに乗った俺は、一気に他3匹のスライムを倒した――すると。

パパパパッパッパッパ〜♪

「はぁ、はぁ……ん?」

 頭の中で軽快な音楽がなり、ステータス画面が現れる。


―――――――――――――――――――
????は レベルが2に 上がった!
最大HPが 3増えた!
最大MPが 1増えた!
????の 能力が 増えた!
力 +2  素早さ +1
賢さ +2
―――――――――――――――――――


 どうやらレベルアップしたようだ。それで、今の俺のステータスは……?


―――――――
????
性別:男
レベル:2
――――――――――
E兵士の剣(攻+8)
E布の服(守+4)
Eバンダナ(守+1)
――――――――――
力:10
素早さ:7
身の守り:6
賢さ:7
攻撃力:18
守備力:11
最大HP:25
最大MP:1
Ex:16
―――――――
剣スキル:0
槍スキル:0
ブーメラン:0
格闘スキル:0
冒険心:0
―――――――
????
HP:17
MP:0
Lv:2
―――――――


 まあ、あんまり目立って変わりはないか……そりゃそうだな、レベル2じゃあ当然だ。これからじっくり鍛えていくとしよう。

「ふぅ……っと、そうだ。いい加減、自分の名前を決めないと……」

 いつまでも????じゃあ、変だからな。え〜と、どんなのがいいかなぁ?

 勇者っぽい名前は……止めた方がいいか、俺の柄じゃないし。

「う〜ん……“エイト”でいいかな?」

 特に名前に拘りもなかったし、今の俺はドラクエ8の主人公と同じ容姿とポテンシャルを持っている。だったら、ドラクエ8から取ってエイトでも悪くないだろう。

 うん、考えている内に気に入ったな。よし、今日から俺はエイトと名乗ろう!


―――――――
エイト
性別:男
レベル:2
――――――――――
E兵士の剣(攻+8)
E布の服(守+4)
Eバンダナ(守+1)
――――――――――
力:10
素早さ:7
身の守り:6
賢さ:7
攻撃力:12
守備力:11
最大HP:25
最大MP:1
Ex:16
―――――――
剣スキル:0
槍スキル:0
ブーメラン:0
格闘スキル:0
冒険心:0
―――――――
エイト
HP:17
MP:0
Lv:2
―――――――


 名前を決めると、ステータス画面がまた表示されて、名前が登録された。これで一応、俺の名前はエイトになった訳だな。

「よし!それじゃあ……冒険に出発するか!」

 名前も決まり、俺は意気揚々とその場から歩き出した。

 特にアテなんてないが、一先ず、どこか町か村を探さないとな……。



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