小説『魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 Side:なのは


 そろそろ昼休みが終わる時間。
 皆、5時間目の授業の準備…勿論私も。

 授業参観だから、早い人達はもう来てるみたい。

 ルナは…まだ来てないか。


 「気になりますか?」

 「にゃはは…まぁね。やっぱり授業参観は嬉しいのと緊張が半々だよ。」

 「そうであろうな。まぁ、そう硬くならずとも良かろう。寧ろ初めてのことでリインフォースの方が緊張するかも知れぬ。」


 あ〜〜…あるかもね。
 緊張で硬くなりながらも授業を見るルナ……ヤバイ、此れはなんか萌えるの…!


 「どったのナノハ?」

 「雷華?うぅん、なんでもないよ?」

 「そう?なんか考えてたみたいだからさ。う〜〜〜でも、次算数だよ〜〜。僕算数苦手〜〜!」

 「戯け、うぬは体育以外全然ダメであろうが。」


 だね。
 まぁ、雷華は其れで良いと思うの。

 …ルナ、早く来ないかなぁ…










 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福36
 『月の祝福と雲の騎士』










 Side:ルナ


 力の解放…結界内なら外に力が漏れ出す事はない。
 それ以前にシャマルの結界ならばなのはでも感知できないほどの隠密性はあるか…


 「その姿は一体…」

 「力を解放したんだ。強すぎる力故に普段は制御しているがな。」


 『祝福の月光』…此れを発動した状態の私の力は通常の3倍にまで跳ね上がる。
 本より将達よりも強い力を持つのは管制融合騎としてある意味当然の事だ。

 管制者はプログラムの全てを統括する存在だからな。
 書の一部である騎士よりも強い力を有するのは道理。

 お前達ほどの騎士ならばこの力量差は理解できるだろう。
 私は無用な争いはしたくないんだ、出来れば退いてくれないか?


 「確かに、お前は我等を遥かに凌駕する力を持っている様だな『月の祝福』よ。
  だが、そうだとしても我等には退けぬ理由が有る!我等が主の為にも、お前の魔力は貰い受ける!」

 「将…」

 駄目…か。
 仕方ない…今この場は『力』をもってお前達を制するとしよう…

 「如何有っても退かないか…ならば私も、今この時はお前達を倒す事に専念しよう…。
  貫け流星、数多の闇を撃ち貫け。響け、アクセルシューター・バスターショット!」
 「Accel Shooter Buster Shot.」


 お前達の命を奪うような事はしない。
 だが、行動不能くらいにはさせてもらう!


 「全方位型の誘導弾だと!?」

 「ちぃ…だったらどうたってんだ!ぶっ飛びやがれぇ!!」
 「Schwalbefliegen.」

 「させぬ…烈鋼牙ぁ!!」


 ヴィータとザフィーラの反応は流石だな。
 将も誘導弾での対抗こそ出来ないが剣戟で防ぐか。
 だが、此れくらいは予想の範囲内、寧ろ狙いは此方だ!

 「轟け雷鳴。滅せよ、幻槍雷破!」

 「んな!何だこの非常識な魔力弾の数は!?」


 …非常識とは失礼な。
 いや、まぁ凄いとは思うが…3000発超の雷魔力弾を受けきれるか?…行け!


 「ヴィータ、ザフィーラ私の近くに。レヴァンティン!」
 「Schlangebeissen.」

 「舞え、陣風!」
 「Sturmwinde.」


 ――ガガガガガガ…!


 レヴァンティンのシュランゲで防ぐか。
 世界は違えども将の剣の腕前は変わらずか…戦う相手としては厄介だが、少し嬉しいものがあるな。

 とは言え、余り時間は掛けられないな。
 授業開始まで後10分と言うところか…

 騎士達の狙いは私のリンカーコアである事は間違いない。
 結界の外でシャマルが狙っているだろうが…仕掛けてこないな、様子見か?

 …一つ誘いを掛けてみるか。


 「覇ぁ!」

 「なんと、全部叩き落したのか?マッタク、非常識はどちらなのだろうな?」

 「まさか。流石に全てを切り伏せる事などできんさ――流石に少々不覚を取った。」

 「アレだけの物量を相手にして、十にも満たない弾痕では全て叩き落したも同義だろうに…」

 まぁ、直撃させないように操作はしたんだが…
 しかし、どうやってシャマルに誘いをかけるか…正直この3人を『同時に』動きを制するのは難しい。

 …使ってみるか、『究極のスピード』を。
 行けるか、ブライトハート?


 「All right.」

 「よし…では、行くぞ!」



 ――シュン!



 「なに!?」

 「き、消えたぁ!!?」

 「いや、違う。捕らえきれぬほどの速さで動いているのだ…!」


 ザフィーラ正解。
 と言うか私自身驚きだ、此処までの光速移動が可能とは…だが、此れならば行ける。

 「何処を見ている?」

 「「「!!!」」」

 「撃ち抜け!」
 「Divine Buster.」


 「むぅ…烈鋼牙!!」


 今のを跳ね返すか…流石だザフィーラ。
 だが、遅い!


 「!!反射した砲撃をも避けるだと!?」

 「こっちだ。」

 「!…紫電…」


 流石の反応だな将…尤も今の私には通じないがな。



 ――コツン



 「なに!?」


 気付いたか『何をされたのか』位は。
 さて、仕込みは此れくらいでいいか…爆ぜろ!



 ――ドガァァァアァッァァァ!!



 「馬鹿な、何時の間に!!」

 「不可視の炸裂魔力弾…高速移動しながら設置していたのか…!」

 「その通りだ。お前達の周囲――上下左右360度にスフィアは展開されている。逃げ場は無いぞ?」

 尤も威力はとことんまで落としてあるがな。
 だが、此れで誘いの準備は完了した。
 後はシャマルが乗ってくるかだが…此ればかりは賭けだな。

 「咎人達に滅びの光を。星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ。貫け閃光…」


 ――ズブ…


 「!!」

 来たか…『旅の鏡』を利用してのリンカーコア摘出…!


 「…形勢逆転だな?」

 「貰うぜ、テメーの魔力!」


 確かに終わりだろうな普通ならば。
 だが…!

 「形勢逆転?残念だが私は此れを待っていた…!」


 ――ガシッ!


 「「「!!?」」」

 「私のリンカーコアをアウトレンジから摘出する…悪くない手だ。だが、其れを予想していればこんな反撃が可能になる!」


 ――ズルリ…ズシャァァァ!!


 「きゃぁぁ!!」

 「馬鹿な…!」
 「旅の鏡からシャマルを引きずり出しただと…!」


 リンカーコアは簡単に見つけられるものじゃない。
 普通ならば体内に感じた異物感と、己の身体から生えた腕に動揺してそのまま終わりだろうが予想しているならば話は別だ。

 本より、私の目的はシャマルをこの場に引きずり出す事だ。
 これで、終わりに出来る!


 「貴様…!だが、我等を甘く見るな!!」

 「いや…もう既に詰んでいるんだ、シャマルを引きずり出した時点でな!縛鎖!」


 ――ガキィィィン!!


 「なっ!?」
 「ば、バインド…!!」
 「何時の間に…」
 「ぐぬ…外せん…!」


 全ては此処に帰結するように動いたからな。
 …この場は終わりだ!

 「吠えよ!」


 ――バガァァァン!!


 「く…うわぁぁぁ!!」
 「ち…きしょぉぉぉ!」
 「そんなぁ…」
 「ぐぉぉぉぉぉぉ!!」


 バインドの炸裂。
 零距離での一撃は避けようが無いだろう、流石に。

 シャマルだけは意識を刈り取る目的だから肉体的ダメージは抑えるようにしてあるが…


 「きゅ〜〜〜…」

 「風の癒し手は落ちたか…」

 目的達成だな。
 シャマルの意識が落ちれば結界は消える。
 それにダメージは一番低いはずだから目を覚ませば将達の治療も出来るはずだ。


 「く…貴様…!」

 「終わりだ、烈火の将よ。少なくとも今この時はな。風の癒し手は意識だけを刈り取らせてもらったがお前達はそうではない。
  動くのも、今は辛いはずだ。…風の癒し手が目を覚ましたら治療をしてもらえ。」

 後5分…先程のスピードを使えば間に合うな。
 …此れだけ言っておくぞ将よ。
 この行いが主の命令だろうと、お前達の独断だろうとも此度の闇の書の主には『咎』が残る。


 「な…に?」

 「まさか『蒐集は全て独断で主の命ではない』其れで済むと思っているのか?
  …そんな筈が無いだろう。第一級封印指定ロストロギア『闇の書』。その所持者と言うだけで危険視されると言うのに。
  お前達の魔力蒐集に主の意志が有ろうと無かろうと所持者に断罪の剣が向けられるのは避けられない。
  それどころか、お前達の独断だとするなら、其れを知った主殿はどれほど心を痛めるのか…」

 「「「「!!!」」」」

 「目的を語らず、只襲撃しリンカーコアを略奪する…今のお前達は到底『騎士』等とは呼べんよ…」

 …見知った相手に、それも目的も知っているのに罵声を浴びせねばならないと言うのも辛いな…
 だが、気付いてくれ…!蒐集は正しき道でないことを!
 お前達の行為はあの優しき主の心を苦しめるだけだと…!

 「…私が言った事をどう判断するかはお前達次第だ。」

 知っているのに伝える事ができない。
 私が『ソレ』を知っているのは不自然過ぎるが故に伝えられない…将よ…

 「…この場は此れで終わりだ。だが、再び襲撃をかけてきたときは…そのときは容赦しない!」

 「く…!」


 私は此れで行かせて貰う。
 今からなら開始にはギリギリ間に合いそうだからな。

 騎士達よ、もう一度良く考えてみてくれ。
 蒐集こそが真に正しき道であるのかどうかを…な。

 …急ぐぞ、ブライトハート!


 「All right.My Master.」


 まぁ、このスピードなら間に合うかな。


 それにしても、私の言葉は騎士達に届いただろうか?
 …こればかりは確かめる術はないか。



 うん、見えてきた。
 時間は3分前…ふぅ、間に合った。








 ――――――








 Side:シグナム


 「ごめんなさい…大丈夫?」

 「あぁ、大丈夫だ。あの反撃は私にも予想外だった、気にするな。」

 『月の祝福』…何と言う奴だ、我等が束になってもまるで問題にならないとは。
 それどころかシャマルの旅の鏡を逆利用しての一撃、目にも映らぬスピード、その他の魔導…全て次元が違う。

 何よりもさっきの戦闘でアイツはレヴァンティンを抜刀途中だった私の右手に触れていった。
 攻撃モーションの最中の手に…!

 要するにアイツには私達の動きなど止まって見えていたと言う事か…

 「完敗…か。」

 「くっそ〜〜!何なんだよアイツ!出鱈目にも程があるぜ!!」


 確かにな。
 我等と同じ古代ベルカの魔導を使い、しかし近代ミッドの魔導とミッド製のデバイス…異端過ぎる。
 其れに闇の書のみならず我等の事を知っていたのも解せん…アイツはいったい…?


 「厄介な相手が出てきたものだ。これから先如何する?」

 「…我等の行動指針は変わらん。主の命を守るためにも闇の書は可能な限り早く完成させる必要がある。
  闇の書が完成し、その侵食がなくなれば、少なくとも主の病気の進行は止まり命は助かる。」

 「ならやっぱ、速攻で完成させねーとな。はやての命はアタシ達で守んなきゃなんねーんだ!!」


 その通りだヴィータ。
 完成後のゴタゴタはその時に対処すればいい。
 今の我等の目的は主はやての命を救うこと!

 その目的の為ならば、我等は騎士の誇りすら捨てる…!


 「そうね…けど今日は此処までね。皆ダメージが大きいし、私も皆の治療して空っぽだから…」

 「此れも読んでの一撃だったというわけか。」

 それにしても『月の祝福』…何故にこうも脳裏に焼きつく?
 只完敗を喫したからではない…もっと奥深く、まるで最初から知っていたかのように…


 「シグナム?」

 「…なんでもない。確かに今日は大人しく帰った方がいいらしい。…撤収だ。」

 幾らなんでも今の状況は芳しくないからな。


 しかし矢張り気になる。
 …若しかして私は、私達は『途轍もない重要な事』を忘れているとでも言うのか?



 何を馬鹿な。
 我等にはあの心優しい主こそが全て…その命守るためならば蛇蝎となる覚悟だ。

 何人たりとも邪魔はさせん!


 月の祝福よ、次にまみえたならば…

 「その時はお前の魔力は貰い受ける…!」

 我等が目的成就と主はやての命を守る為にも。
 そして、今回の完敗の雪辱の意味もこめてな…!















  To Be Continued… 


 

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