小説『魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 Side:ルナ


 侵食は止めた、後は彼女が意識を取り戻してくれれば万事行けるが…


 「ぐ…うあぁぁぁ!!!」

 ――ギュルル!!


 「闇の書さん!!何が起きてるの!?」

 「ナハトの暴走が管制ユニットの制御下から離れ始めたんだ…!」

 拙いな…このままだと暴走して手が付けられなくなる。
 出来る事は全てやった、私が脱出する際の衝撃は彼女の意識を覚醒させるには充分だったはずだ…


 「ルナ…」

 「心配するななのは、彼女は必ず目を覚ます…信じるんだ。」

 「…うん!そうだね!」


 とは言え残された時間は少ない、星奈達も騎士達の幻影の相手は楽じゃないはずだ。
 余り時間が掛かると手を付けられなくなる……早く目を覚ましてくれ、八神はやて――夜天の光を宿すものよ!!










 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福52
 『夜天の光、祝福の風』










 No Side


 「思い出した!何でこんな事になってるか、どうしてこんな事になってもうたか!!」

 闇の書の内部、夢の空間にて書の主たる少女――八神はやては其の意識を完全覚醒させていた。
 ルナの読み通り、脱出の際の衝撃が彼女の意識を呼び戻したのだ。

 「どうか…再びお休みを我が主…!」

 其れに対し、闇の書の意志は再び眠るように言う。
 涙ながらに、懇願するように。

 「後何分もしない内に、私は私の呪いで彼方を殺してしまいます。
  ですから、せめて心だけでも……優しく、幸せな夢の中で…」

 溢れ出る涙は止まらない。
 めぐり合えた優しい主、其れを殺したくはない。
 だが、自分の力ではどうにも出来ない。

 其の悲しさと悔しさがヒシヒシと伝わってくる。
 当然はやても其れを感じていることだ。

 「…優しい気持ち、一杯受け取ったよ。……けど、其れはアカン。」

 「え?」

 だが、其れを感じ取って尚、はやては『夢に浸ることはダメだ』と言い切った。

 「私等、ホンマに良う似てる。寂しい思いして、1人やったら出来へん事ばかりで…
  せやけど忘れたらアカン。私は貴女のマスターで、貴女は私の大事な子や。」

 にっこりと笑って、闇の書の意志の頬を撫でながらそう告げる。
 強い意志を宿した瞳に絶望と諦めの色はない。

 まだ幼い小さな少女は、しかし歴代の誰と比べても立派な『書の主』であった。

 「我が主……ですが、ナハトが止まりません…!暴走も…破壊の衝動も…!!」

 其の姿に喜びを感じるも、闇の書の意志は状況の悪さを訴える。
 暴走する異常防衛プログラム。
 其れに突き動かされ、破壊衝動に飲まれている己自身。
 外で戦っている幼き魔導師では止められない現実がある。

 でも、其れを聞いてもはやては諦めない。

 「…止まって!!」

 全神経を集中し、書に『停止』の命令を下す。

 一度も使った事のない魔力が溢れ、車椅子の下から三角形のベルカ式魔法陣が展開され白い魔力が空間を満たす。
 そして其れこそが全てを決着させる一手となった。






 『外で戦ってる方、すみません協力してください!!』

 「はやてちゃん!?」

 「目を覚ましたか…!」

 意識を覚醒させたはやての声が、外の――現実世界のなのはとルナに届いたのだ。

 『この子に纏わりついている、黒い塊を…!!』

 所の内部からのはやての声。
 此れこそが待ちに待った瞬間だった。

 「ギリギリだが間に合った。」

 「ルナ?」

 「融合状態で主が意識を保っている…今なら、今こそが書と防衛プログラムを切り離す時だ!」

 書と防衛プログラムを切り離す最低条件――それが書の主の意識覚醒だ。
 融合状態で意識を保てれば、ある程度プログラムの制御が可能になる。
 其の状態で暴走プログラムを吹き飛ばせば、管理者権限で書の完全制御が可能になるのだ。


 「切り離す……方法は!?」

 切り離しが出来ると聞いてなのはも満身創痍の姿からは考えられないほどの気合が入る。



 問うは其の方法。
 切り離しの方法だ。

 「何も難しくはない。寧ろ私達にとっては一番簡単な方法だ。
  私とお前の純粋魔力砲で、あの黒い塊を吹き飛ばす――全力全壊、手加減無しでな!」

 そして、其の方法は単純明快。
 なのはとルナのコンビにとっては一番簡単で、確実な方法だろう。

 「成程ね…流石はルナ、分りやすい!」
 『That's right.』

 其れを聞いたなのはも笑みを浮かべレイジングハートを構える。
 ルナもブライトハートに力を篭める。

 2人の足元には、桜色のミッド式魔法陣と、銀色のベルカ式魔法陣が展開され幻想的な雰囲気を作り出している。









 そして書の内部では…

 「我が主…」

 「永い時、ずっと1人で頑張ってたんやね……けどそれももう終わりや、もう1人になんてさせへんよ…」

 はやてが優しく、慈しむように闇の書の意志に触れていた。
 優しく、優しく……壊れてしまわないように。

 「名前をあげる、ずっと考えてた名前や。
  もう、世界の誰にも貴女を『闇の書』とか『呪われた魔導書』なんて呼ばせへん。」

 膝立ち状態の闇の書の意志を抱き締め、其の耳にそっと新たな名を告げる。

 「強く支える者、幸運の追い風、祝福のエール――リインフォース。」


 ――パキィィィン!


 新た名を告げた瞬間、永劫の闇とも言える空間が砕け白い光が2人を包み込んで行った。









 現実世界でも…

 「あ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 ナハトの暴走に喰われ、苦しむ闇の書の意志に対し、ルナとなのはは其れを吹き飛ばす一撃の準備を完了していた。
 銀と桜色、2つの魔力が逆巻き、幻想的な雰囲気を醸し出している。


 「N&L、広域殲滅コンビネーション!」

 「エターナルミーティア!」


 ――キィィィィン…


 「撃ち貫け…!」

 「ファイヤー!!」

 『『Break!』』


 ――ドォォォォォォン!!


 放たれた究極至極と言って過言ではないコンビネーション攻撃。

 なのはの砲撃とルナの空間魔法。
 そして無数に発射された射撃魔力弾。

 其の全てが不浄を流す光となって、呪いの根幹を撃ち抜き、貫き、消し去って行く。

 幻想的な光の奔流は、一切の抵抗を許さず暴走体を文字通り『消し去った』。
 攻撃の後には何もない。

 其れは防衛プログラムが一時的とは言え停止した証だ。
 当然、プログラムが停止したとあれば…


 ――シュゥゥゥ…


 「騎士の幻影が…」

 「消えましたね…」

 星奈、冥沙、雷華、フェイトの4人が戦っていた騎士達の幻影も消える。

 「ナノハだ!ナノハとクロハネがぼーえーぷろぐらむを止めたんだよ!」

 「その様だな。リインフォース…否ルナよ、書の内部から帰還したということか、やりおるわ!」

 「あれ?王様なんで呼び方変えたの?」

 「戯け、防衛プログラムが停止し切り離されたのならば直に『奴』が誕生するであろう?」

 「『リインフォース』では区別が付きませんからね…」

 「あ、そっか!」

 「えっと…取り合えずなのはとルナの所に行こうか?」

 防衛プログラムの停止とルナの帰還を喜び、ちょっとした呼び名の変更をして4人はなのはとルナの元へ。







 軌道上においても――


 「防衛プログラムと管制ユニットの分離を確認!」

 「よぉぉぉし!!」

 待機中のアースラで防衛プログラムの停止と切り離しを確認していた。
 過去誰もが行えなかった事の成功に、艦内は沸く。

 「未だ終わりじゃないわ。アルカンシェル、発射待機!」

 「「はい!!」」

 其れを未だ終わりではないとリンディが気を入れなおし、アルカンシェルを何時でも撃てるように待機する。
 諦めない事が引き起こした奇跡は、着々と永劫の呪いを断ち切る手札をそろえて行く。






 結界内部にも新たな戦力が到着していた。

 「デュランダル、少し力を借りる…」

 現場入りしていたクロノ、アルフ、ユーノの3名だ。
 結界内部に入り込んだ3人も又なのは達の元へと向かっている。



 同時に、現場の海の一角には黒い『澱み』が発生。
 最後の敵も出現は近そうだ。








 ――――――








 Side:はやて


 温かい…さっきまでの真っ暗な場所とは大違いや…真っ白で光と温かさに満ちてる…


 ――フワリ…


 …リインフォース。


 「夜天の魔導書と、其の管制融合騎・リインフォース――この身の全てをもって、御身をお護りします。
  ですが、ナハトヴァールは止まりません……切り離された巨大な力は、直に全てを飲み込もうと行動を開始します。」


 みたいやね。
 せやけどまぁ…

 「何とかしよ?行こか、リインフォース。」

 「!……はいっ。」


 リインフォースが光に……そか、一緒にな。


 そや、皆も呼びもどさへんと。

 「管理者権限発動。リンカーコア復帰――守護騎士、破損回帰。」


 ――ポゥ…


 桃色、赤、緑、蒼、そして銀色……皆のコアの色や。

 「おいで、私の騎士達…」

 行こか、皆?
 夜天の魔導書を闇の書と呼ばせた呪いを断ち切りにな…!








 ――――――








 Side:雷華


 「うお〜い、ナノハ、るな〜〜!って2人ともだいじょ〜ぶ!?」

 見た目はナノハの方がボロボロだけど、るなの足と腕痛そう…


 「此れくらい如何って事無いの!」

 「寧ろアレを相手にしてこの程度なら『大した事はない』レベルだ。」


 そうなの?すごいなぁ…
 って、るなそのカタナどうしたの?そんなの持ってたっけ?


 「取り込まれた夢の世界で友からな……と、星奈と雷華にも渡すものがあったんだった。」

 「僕と星奈んに?」

 「何でしょうか?」


 気になるな〜〜?


 「此れだ。蒼が雷華、紅が星奈用らしい。」


 魔力カプセル?
 なんだろ?てか何に使うんだろ?


 「如何やらデバイスの追加機能のようですが…」

 「そ〜なの?」

 じゃあ、バルニフィカスのコアに融合だ〜〜!
 さ〜て、何が起きるかなぁ?


 『…Hello sir.』

 「喋った!?」

 バルニフィカスが喋ったぞ〜〜!!


 『Hello Master.』

 「なんと…インテリジェントの人格プログラムでしたか…此れは驚きです。」

 「いんてりじぇんと?」

 ってことは僕と星奈んのデバイスは、ナノハやへいとと同じになったんだ。
 うん、でもこっちの方が良いね、しんきんかんがわく♪


 『Thank you.』


 うんうん、良いね♪
 そう言えば小鴉ちんはどうなったんだ?


 ――ドォォォォン!!


 「おぉ!?」

 な、なんだぁ?
 物凄い魔力が弾けたぞ!?海の水が柱造ってるぞ!?


 「…書の主が管理者権限を発動したようだ、恐らくこの魔力は…」


 ――キィィィン…


 「ほう?上手くやったな小鴉?」


 ピンクと赤と緑と蒼の魔法陣?


 ……あ〜〜〜ブシドー!!
 それに赤毛と緑のオバサンとムッツリ狼も!!

 ぼるけんりったー勢揃いだ!



 ――パキィィィン…!



 お?……真ん中に出てきたボールの中から小鴉ちんが!
 へ〜〜〜…王様と同じ服か〜。

 「お〜〜い、小鴉ち〜〜〜ん♪」

 金色の剣十字もなんかカッコイイ♪


 アレ?でもさ、クロハネ二号が小鴉ちんと一緒だとするとなんで結界そのままなんだ?
 解けても良いよね?


 「…停止と切り離しは出来たが、マダ終わりじゃない。後数分で最後の敵…『闇の書の闇』が現れる筈だ…!」


 なにぃ!そうなのか!?


 「闇の書の闇…夜天を闇に変えた異常プログラムの成れの果てか…」

 「ならば、私達の手で砕いて見せましょう……白夜の光で闇を引き裂きます。」

 「そうだね、皆疲れてるかもしれないけどもう一頑張り行こう!」

 「永劫の呪いと闇を、今こそ…今度こそ完全に終わらせる。」


 よ〜するに面倒な相手だよね?


 じょ〜と〜!
 僕達が力を合わせれば出来ない事なんてない!

 呪いだろうとノロウィルスだろうと、立ちはだかる奴は全力全壊の一撃大・粉・滅!!
 やれるよねバルニフィカス!


 『No problem.Clear to go.』


 よっしゃ〜!それなら手加減なんてしないぞ!












 呪いなんて、僕達が全力全壊でぶっ壊してやる!














  To Be Continued… 


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