そんな風に驚いているであろう彼女に、俺の右手のトマホーク振り下ろしが迫る。
また驚いたような顔を見せている彼女は、左手の鉄板でトマホークの打撃を受けとめた。
本来なら、トマホークの打撃は防具で受け止めても衝撃で致命傷になる事が多い。
しかし、この攻撃はスピードだけを重視した、紙のような重さの攻撃。
衝撃は無いに等しく、簡単に後ろへと弾かれてしまう。
が、後ろへ弾かれた際の運動エネルギーを殺さずに、そのまま腕を水車のようにグルンと回して下からアッパーのようにトマホークを突きあげる。
「ちっ!!!」
なんとかそれをさっきの短剣で防ぐクリームヒルデ。
そして続けざまに、今度はカランビットナイフがまたフックのように迫る。
「ふっ!!?」
受けきれないと判断したクリームヒルデは即座にバックステップで距離を取ろうとするが、ナイフは防具を付けていない彼女の右肩を斬り裂き、白いシャツを真っ赤に染めた。
模擬戦なのに吹き出る血。俺はそんなものに構っている暇は無かった。
「ぐぁッ!!?」
短い悲鳴を上げて隙だらけになるクリームヒルデ。
しかし闘志は失っておらず、動きはとても遅いものだったが、もがくように剣を振り上げる。
俺はその真下を潜り抜けるように彼女の右脇をくるんと転がって、背後を取った。
「なっ……」
俺はローリングからの中腰のまま振り向かず、がら空きになる彼女の背中にトマホークを思い切り突き刺す。
肉を裂く嫌な感触がトマホーク越しに伝わる。
「がぁああッ!!!!!!」
「クリームっ!!!!!!」
彼女の悲鳴と共に、お姫様の叫びも響く。
そしてクリームヒルデは膝を崩し、前のめりにどさりと倒れ込む。
無理も無い、あんなの喰らったら致命傷だ。
だが、決着はまだ着いていない。
俺は虫の息の彼女に飛びかかるようにまたがると、トマホークを振り上げる。
「待てっ!!!!!!」
お姫様の悲痛な声が耳に入るが、俺は止まらなかった。
クリームヒルデの後頭部に目掛けて思い切りトマホークを振り下ろし……
ガンッ!!!!!!
トマホークの刃が横を向くクリームヒルデの眼前の石畳へ突き刺さった。
いくらなんでも、可愛い子の頭をかち割ったりはしない。
「…………っ」
クリームヒルデは目にジワリと涙をためて心底悔しがった後、目を閉じた。
どうやら完全に気を失ったらしい。