小説『ロリコン勇者のファンタジー』
作者:Ciel(Eエブリスタ、ふらん(Ciel)のページ)

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――第五話 幕開け――













その日の夜、俺は昔の記憶を夢で見た。



2006年、アフガニスタン。


忘れかけていた、随分古い記憶だ。


コトコトコト。
今より一回り小さい俺は、懐かしい面子と揺れる軽トラックの荷台に座っていた。

手には古いライフルが握られていて、妙にしっくりくる。


ふと、左肩に暖かい重みがのしかかる。
そちらを見ると、銀髪の少女が疲れたようにすやすやと眠って俺に寄りかかっていた。

周りの奴らにばれないようにスカーフで顔を隠し、俺は口元を緩ませる。


心が暖かかった。

風で揺らめく彼女の髪を、優しく撫でる。


この時の俺はどれだけ嫌な事があっても、これだけで心が救われた。

ずっとこうしていたい。
彼女の温もりに、触れ続けていたい。


でも、そういうのは決まって叶わない。


突然ピシッという音がして、窓の開いた運転席から血の匂いが漂う。

直後、わずかに発砲音。
皆の身体と表情が強張る。

少女はぱちりと目を覚ますと、俺の手を引いて車から飛び降りた。
俺達に続いて皆も飛び降りる。


着地と同時に転がり衝撃を殺すと、すぐに障害物に身を隠しAKS74Uのセーフティを解除する。


「敵の数はッ!!?」

俺の問いに、ドラグノフを持った奴が答える。

「10人!スナイパーは南東の方角に一人とそれの観測手!距離は400、でかい岩の上だ!」

銃身が短く精度に乏しいAKでは難しい距離だろうがドラグノフならやれない事はない。
俺はカウンターの指示を出すと他のメンバーに目をやる。

帽子を目深に被る少年とさっきの銀髪の少女。


二人とも準備は出来ていた。


「キットお前は援護、ゼェッブは俺と仕掛けるぞ!」

二人が頷くと、俺も頷き、隣に居る少女の頭を撫でる。
彼女がにっこりと微笑むと、それに答えるように俺も微笑んだ。



「Contact front!!! Let&amp;#039;s do this, fuckers!!!」

下劣な英語が近づいてくる。


俺は岩から身を乗り出すと、迷うことなくトリガーを引いた。




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