第六話 今、そこにある危機
悪人は時に正義となる。
必ずしも正義とは一つの物ではない。
複数の正義とは相容れないものであり、時に大きな衝突を起こすのである。
――ミカ救出から二時間後、王城――
「本当にすまなかった」
疲れたようにソファに座っている俺とミカに、ウルフィアスは深々と頭を下げる。
説明を聞く限り、俺達を襲撃した部隊はウルフィアスが昔に司令官を勤めていた特殊部隊らしい。
特殊部隊は王宮直属らしく、ウルフィアスが気に病む事は無いのだが、本人はそうもいかないらしいのだ。
「もういいって、ミカは無事に取り返せたし。……それに、誇りのある騎士がよそ者に頭を下げるもんじゃないぞ。部下に示しが付かないだろう」
ウルフィアスの見慣れない姿に戸惑うクリームヒルデをチラ見してそう諭す。
そうしてようやくウルフィアスは頭を上げる。
「隊員には厳罰を処す。赦してくれとは言わないが……」
「いや、彼らに罰はいらんだろうよ、ただ命令に従っただけだしなぁ、ミカ?」
その問いかけにミカは頷いて見せる。
問題は……
俺はウルフィアスに近寄り耳元で囁く。
「……問題はその命令を下した奴だ。王が首謀者って事は?」
「それは絶対にありえない」
ウルフィアスは即答する。
どうやら絶対的な自信があるようだ……相当信用があるみたいだな。
「分かった……こっちはこっちで情報を集めてみる。あんたはあんたで調査を頼む」