「そもそも天使様を誘拐など、人間に出来るものなのか?」
鋭いクリームの質問。
確かに、いくら見習いと言えども天使の力はとてつもないらしい……今回誘拐されたのも、俺の身の安全を最優先した結果だそうだ。優しいんだよな、なんだかんだでさ。
と、その質問にはミカが淡々と答えてくれた。
「一部の対悪魔装備を応用すれば、見習い程度なら簡単に捕獲できますよ。先の大戦で対悪魔術式や装備はかなりの発展を見せましたから」
「先の大戦?」
どうやらこの世界の歴史を知らないのは俺だけらしい。
皆納得しているが、知らない事を知らないで済ませられる状況ではないので尋ねる事にした。
そんな俺にクリームが懇切丁寧に教えてくれる、彼女は教師に向いてるな。
「7年前、ラトリア信仰国が禁じられた悪魔の力を用いて周囲の国々に攻め入った事があったんだ」
「7年前……」
七年前。
その、何の変哲もないワードに俺の心は異常に反応を示した。
また、何かが俺の中でフラッシュバックし始める。
「最初は劣勢だったが、とある人物が天使と共に戦況を覆してくれて……」
「もういいでしょう。さ、話に戻りますよ。早いとこ首謀者をブッ飛ばすんですからね」
やや強引にクリームの話を止めるミカ。
しかし今は歴史の授業よりも首謀者を捕まえる事に全力を注ごう。