小説『ロリコン勇者のファンタジー』
作者:Ciel(Eエブリスタ、ふらん(Ciel)のページ)

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腰のUSPに手を掛ける。
距離は5メートル、万が一攻撃の為に詰め寄られても対応できるはずだ。
しかし隊長は両手を上げて攻撃の意思は無い事を現すと冗談交じりに笑った。

「落ち着け、もう何もしないさ」

俺は何も答えずにゆっくりとUSPをホルスターから抜く。
何もしない、と言われてはいそうですかと握手できるほど俺は御人好しじゃない。
もしかしたら、また誰かの差し金でミカを誘拐しようとしているのかもしれない……今度は懐柔するような方法で。


「目的は何だ?」

警戒を説いていない事を口調でアピールすると、隊長は両手を下げて何かを取り出した。
どうやら茶封筒のようだ。


「ちょっとした調べものだ、受け取れ」

そう言って隊長はこちらに歩み寄ろうとする。
突発的な行動ではないにせよ、攻撃される可能性を予期してUSPの銃口を向ける。
するとピタリと隊長は止まって見せた。


「ゆっくりと封筒を地面に置け」


隊長は頷くと、封筒をゆっくりと地面に置く。


「安心しろ、俺達はもうお前らを狙わない」

「黙れ、後ろを向いてそのまま立ち去れ。馬鹿な真似はするな、殺すぞ」

参ったと言わんばかりの表情を浮かべる隊長は、くるりと反転するとそのまま歩き始めた。
この間も俺は銃口をずっと背中に向け続ける。

隊長が闇に消えるか否かと言う時、ふと隊長が言った。


「王様に借りは返せよ、坊主」


それだけ言うと彼は今度こそ消えた。

後には彼が残した封筒と、やり場のない銃口が廊下を彷徨っていた。

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