「問題はミカの誘拐が王の弱体化を狙った急ぎのプランにすぎないって事だ。資料曰く、ミカの誘拐と俺の無力化が失敗しても別の作戦が、つまりは元々メインだったものがあったらしい……それがなんなのかは、まぁあれだ、知ってた奴を俺が消しちまったから分からないんだが……」
カフェで襲ってきた隊員は、俺にやり返された直後にカフェのトイレで自殺していたらしい。
どうやらそいつはコシェと深く繋がっていたらしく、これで手掛かりが消えちまった訳だ。
「その件は仕方のない事だ、郁葉よ。しかし王の弱体化とは言え、常に支持率80%以上を誇る国の代表だ、一筋縄ではいかんだろう」
うわすげぇなその支持率、元の世界のアホ議員共に見せてやりたい。
だが確かに、王はこの国では大きな勢力を誇る。
一体何をして王を弱らせる気だったんだろうか?
さっき、ミカともこれについて話し合っていたのだ。
「……マリア様だ」
「なに、なんだって?」
不意に、クリームが先程よりも青ざめた様子で何かを呟いた。
全員がそちらへ向く中、俺は訝しむような顔で尋ねる。
「王女様が危ない!」
「どういう事だ!?」
クリームヒルデの告白に一同が混乱する。
だがミカとウルフィアスはハッと理解したように顔を歪め、憤った。
「王が何よりもお大事になさるもの、それはマリアお嬢様だ……クソ、なぜ気が付かなかった!」
「まずいですよ郁葉、お嬢様は魔法学の権威ですし、王はお嬢様を人質に取られたら命を投げ出すかもしれんませんっ!!!」
そこでようやく、あの何を考えているか分からない淡白そうな王の事を理解した。