即座に裾のナイフを右手で引き抜き周囲の警戒をする。
どうやら最初に拘束してきた男はナイフを頭に突き刺され死んでいるらしい……投げナイフだろう。
「何処だ、出てこいっ!」
王女らしからぬ漢気で叫ぶと、コツコツ。
闇の中から足音が聞こえた。
「ご安心を、私は貴女の味方です御嬢様」
そう言って闇の中から現れたのは一人の中年男性……
SKAGの隊長だった。
「お前はだれだっ!」
マリアの返答に隊長は頭を下げ、
「王の直属の部隊SKAGの者です。王の命令で貴方の警護に来たのですが、一足遅かったようです。まさかもう攻めてくるとは」
「お前が王の命令で来たという保証はどこにもないぞ!」
あくまでも疑いを隠さない。
当り前だろう、タイミングが良すぎるのだ。
「しかし敵である保証もありません。……御嬢様、部屋にお戻りください、まだやり残しがあるようです」
隊長は腰から黒塗りのマチェットを取り出すと、マリアに提案した。
マリアは少し悩んで、男に攻撃の意思がない事を悟り、渋々部屋へと戻る。
残された隊長は、マリアの勇ましさに敬意を示すと同時に呆れたような笑みも見せる。
そして切っ先に指を添えて短刀の切れ味を確認した。
「……やれやれ、なめられたもんだ」
そう言うと、いつの間にか現れた真っ黒の衣装に身を包んだ暗殺者達と対面した。
数は10人程、ぐるりと部屋の扉を囲うようにしている。
隊長はその間に割るように扉を背にしている訳で、戦闘は必然的に起こる。
ポロシャツのおっさんを取り囲む忍者の図とはなんともシュールだった。
しかし隊長は笑みを崩さず、指でちょいちょいと忍者たちを挑発する。
「来いよ雑魚共、先生が採点してやる」
次の瞬間、一斉に暗殺者達が隊長に襲いかかった。