マリアは部屋に戻ると、扉と窓に鍵を掛け、壁に飾られている杖と剣を手に取った。
部屋の外からは断続的に悲鳴と怒号が聞こえてくる……つまり、まだあの隊長は死んでいないようだ。
隊長が時間を稼いでくれている間に、マリアは防御結界を敷く事にした。
暗殺者が一方向からやってくるとも限らないし、なによりあの隊長が死んでしまったら魔法無しではでは暗殺者達を撃退するのは難しいだろうから。
床に白のチョークで魔法陣を描き、杖に魔力を集中させる。
次に集中して言葉を放つ。
「白の精霊よ、私に貴方の知恵をお貸しください……『ブレス』、結界」
ふぅ、っとたんぽぽを飛ばす時のようにそっと杖に向かって息を吹きかける。
すると魔法陣が白い光を放ち、次に魔法陣が分解されて白い粉が部屋の壁を覆う。
これで一安心だった。
この魔法は結界を張った場所に侵入する敵のみを弾く性質を持つのだ。
興味深いのは物理的に弾くのではなく、精神に作用して、自ら入る事をやめさせるという事。
これらの精神に働き掛けるある種の洗脳のような術は彼女が扱う白の魔法を象徴としている。
だが、彼女は甘く見ていた。
突如、天井に穴が開き、数人の暗殺者が飛び出してきた。
驚愕するマリアだが、剣を構えると暗殺者と対峙する。
囲むように暗殺者達は部屋に展開し、各々の武器をマリアに向けた。
「くっ……」
絶体絶命とはこの事だろうか、殺しはしないだろうが、死ぬより酷い事になるかもしれない。
マリアは覚悟を決める。
皆に迷惑を掛けるくらいならここで玉砕してやる、と。
だが、そんなお姫様を救おうと躍起になってる奴もいる。
「おぉぉぉおらぁぁあああああああああッ!!!!!!!!」
刹那、鍵の掛けられた窓ガラスをガシャーンと突き破って一人のロリコン勇者が部屋に突入してきた。