夜の中で轟々と燃え盛る家々、響き渡る悲鳴の数々、道端に転がる無残な死体、か弱い人々に容赦なく血で錆そうな剣を振りかざす兵士。
そんな、この世の地獄のど真ん中に、俺は茫然と立ち尽くしていた。
赤い服の兵士達はこれでもかというぐらいに村と人を壊しつくす。
人に火を付けている奴が居た。
そいつは熱さに苦しむ人を見て笑った。
人を斬り付けている奴が居た。
そいつは人々を一列に並ばせると容赦なく連続で首を撥ね続けた。
子供を殴る奴が居た。
そのクソが何度も何度も子供を殴るとその子はぐったりとして動かなくなった。
ぴしり。
俺の心に亀裂が入った。
その亀裂から俺の理性が漏れ出し、最後に残ったのは人間の中で一番冷たい感情。
「これは過去に起きた再現映像です」
ふと、隣で澄ました顔をしたミカが口にした。
俺はぎりぎりと歯を噛み締める。
「……分かったよ、もうやめてくれ」
「では?」
俺の心に付け入る悪魔が笑う。
俺はひどく疲れたように頷くと、
「契約だ、天使」