「やっほう、会いに来たぜシェパードたん!」
あくまで俺は笑顔で彼女に対面する。
最後ぐらいはこいつと笑って話したい、そう切実に願ったから。
シェパードはスコップを固い土に突き刺し、軍手を外すと、額の汗をぬぐっていつも通りのツン顔で寄って来た。
こんな時だけ、この顔が可愛くて愛おしいと感じるのは、最後だからだろうか。
「さっきも会ったじゃない。私ガーデニングで忙しいんだけど?」
「ついでに言うとこの後にBL同人誌をご覧になるんですね、アッー!……いやごめんなさいその引きぬいたスコップを元に戻しましょう」
やれやれ、とシェパードはあきれた様子でスコップを手放す。
まだ本題には入れないか。
そもそも俺は、自分が消えることを彼女に言うべきなのか?
俺はここに来てもその答えをまだ出せていなかった。
だけど、礼はしないといけない。こんな俺と、友達でいてくれたこの娘に。
「それで?本当は何しに来たの?」
見透かされていた。
察しだけは昔からいいんだよなぁ、こいつ。
「……うん。その、なんだろう、うむ……」
いざありがとうを言うとなると、少し恥ずかしい気分になってしまうのはなぜだろう?
首を傾げるシェパードに、俺はしどろもどろな回答をしてしまう。
「変なロリコンね、ふふ」
小馬鹿にするように彼女が笑う。
……そんな笑顔見せないでよな、惚れてまうやろ。
……いや古いか?
少しだけ、その笑顔に心の緊張をほぐされた俺は、少しだけ泣き顔を入れた笑顔を見せてみる。
「……、シェパード」
彼女の名を呼ぶ。
すると彼女はちょこっと驚いたような顔を赤く染めた。
「ふ、ふぇ?」
素っ頓狂な声を上げる彼女の目を見て俺は言う。
「今年のコミケ、BL本沢山買えるといいな」
刹那、炎の色が赤から青に変わるように、シェパードの顔から笑顔が消えて怒りの表情が飛び出た。